Social Design - Japan Society€¦ ·...

18
日時:2009年2月8日(日)14:00~19:00 会場:インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター 主催:財団法人日本産業デザイン振興会 Japan Society(NY) 国際交流基金 日米センター 協力:greenz.jp Social Design Design + Community + Social Impact The Latest from GOOD Magazine and IDEO

Transcript of Social Design - Japan Society€¦ ·...

Page 1: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

日時:2009年2月8日(日)14:00~19:00会場:インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター主催:財団法人日本産業デザイン振興会   Japan Society(NY)   国際交流基金 日米センター協力:greenz.jp

Social DesignDesign + Community + Social Impact

The Latest from GOOD Magazine and IDEO

Page 2: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

プログラム

挨拶 Japan Society 理事長 Richard Woo 国際交流基金 日米センター 所長 沼田貞昭

1 ソーシャル・デザインとは何か  U.S.編  プレゼンテーション1:Max Schorr(Co-founder & Community Director, GOOD Magazine)  雑誌『GOOD』のコンセプト、コミュニティ活動におけるデザインの役割

  プレゼンテーション2:Casey Caplowe(Co-founder & Creative Director, GOOD Magazine)  雑誌『GOOD』におけるクリエイティビティとデザイナーの役割

  日本編  プレゼンテーション3:池田正昭(クリエイティブディレクター/トーキョーチェンジメーカーズ&             エコプラザ)  日本におけるソーシャルデザインの経緯

2 IDEOとデザイナーズ・アコードについて  プレゼンテーション4:Valerie Casey(Leader, Digital Design Experience, IDEO & Founder,             The Designers Accord)

3 パネルディスカッション「今、デザイナーに求められていること」  パネラー   Max Schorr   Casey Caplowe   Valerie Casey   上田壮一(プロデューサー/Think the Earth プロジェクト)   永井一史(アートディレクター/HAKUHODO DESIGN)  ファシリテーター   池田正昭

4 交流会

進行 財団法人日本産業デザイン振興会 矢島進二

2

Page 3: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米センターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial Designフォーラムを、東京ミッドタウンにあるインターナショナル・デザイン・リエゾンセンターで開催した。

今回のフォーラムはJapan Societyが近年特に注力をしているプロジェクト「日米イノベーターズネットワーク」の一環として実施されたもので、同プロジェクトはビジネス、デザイン、アート、市民社会の分野で活躍しているリーダーや今後の活躍が期待される人々から構成されるコミュニティであり、このネットワークを通じ日米両国が直面する様々な問題の解決策について共に考え、よりよい未来を築くことを主眼としたものである。

開催テーマは昨今世界中で大きな注目を集めている「ソーシャル・デザイン」。デザイナーは社会とどういう関係を持つべきか。デザイナーのクリエイティビティは今後何を生み出すべきなのか。そして「社会をデザインする」というコトは一体どういうことなのか?デザインの意味が拡大する中、既存のデザイナーの枠組みを超える「社会のチェンジメーカー」としてのデザイナーの役割について、最前線で活動をしているゲストを国内外から招き、プレゼンテーションとディスカッションを行った。

海外からは、アメリカで2006年に創刊し、先駆的なコンセプトと先端的なクリエイティブで注目されているメディア『GOOD』の共同設立者、マックス・ショア氏、ケーシー・カプロウ氏と、デザインファーム「IDEO」のデジタルデザイン・エクスペリエンス部門リーダーであり、サステナビリティに向けたグローバルなデザイナーの連帯を目指す「デザイナーズ・アコード」を立ち上げたヴァレリー・ケーシー氏の3名が来日。

国内からは、日本のソーシャル・デザインのパイオニアであり現在はトーキョーチェンジメーカーズ、エコプラザ クリエイティブ・ディレクターの池田正昭氏、Think the Earthプロジェクト プロデューサーの上田壮一氏、株式会社HAKUHODO DESIGN  代表取締役社長でアートディレクターの永井一史氏の3名が参加した。

1.ソーシャル・デザインとは何か第一部では、「ソーシャル・デザインとは何か」をテーマに、『GOOD』のマックス氏、ケーシー氏の2人と、池田氏によるプレゼンテーションが行われた。

1-1【プレゼンテーション1】Max Schorr/マックス・ショア

(Co-founder & Community Director, GOOD Magazine)

雑誌『GOOD』のコンセプト、コミュニティ活動におけるデザインの役割

「典型的に、良い事をするのは利他主義だと言われている。自己利益は脇に置いて、義務的に良い事をやるというのが、今まで"GOOD"と呼ばれていることだった。でもそれは違うのではないか。自分たちがやりたいからやる、それが私たちが『GOOD』を始めたモチベーションのひとつです。」とマックス氏は言う。彼らが『GOOD』を通じて達成したいのは、「良いことをすることが楽しくて、ドキドキ感があって、儲かるような、いわば "GOOD" であることのリブランディング」なのだ。

そこで彼らは既存のものにはない新しいメディアをつくることになる。そのコアバリューとなるのが、Transparency(透明性)、Creativity(創造性)、Authenticity(信頼・誠意)、Utility(効用)、そしてLove(愛)の5つ。「 "WORK + LOVE = GREAT THING" 、この方程式が大好きだ。本当にこれをやりたいという気持ちで、情熱をこめてやることが大切」であり、「Pragmatic(実用的)であり、同時にIdealistic(理想的)でもありたい。それは、profit(利益)とSocial Value(社会的な価値がある)を両立させることだ」とマックス氏は続ける。

3

Page 4: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

その両立の実例としてマックス氏が挙げたのが、「Choose GOOD キャンペーン」である。読者獲得のためにコストのかかるDMをやめ、理念に共感するNPOと提携し、『GOOD』の購読申込によってNPOへの寄付になるという画期的な仕組みを考案した。DMだと一件あたり平均45ドルの費用がかかるのに対し、こちらでは一件20ドルで済むうえに、素晴らしい活動をしている団体を支援できる。寄付金額も、2009年までに100万ドル以上を超えるなど大きな成果を生み出した。

続いてマックス氏は、"No green to green to no green" というスライドを見せながら、「誰も環境のことを話さなかった時代から、今は誰もが環境のことについて話す時代になっている。いずれは環境が当たり前になり、誰も環境のことを言わなくなるような世の中を作っていきたい」と述べ、デザインにおいても「 "Design to Social Design to Design" 、つまり、ソーシャル・デザインがこれからのデザインにおいて当たり前になってくる」と指摘した。

最後に、「ダンスができないのだったらあなたの革命なんて乗りたくない」( "If I can't dance, I don't want to be part of your revolution. " Emma Goldman)という言葉を引用し、「自分たちがやりたいからやる、楽しめるからやる」ことの大切さを強調し、プレゼンテーションを締めくくった。

【プレゼンテーション2】Casey Caplowe/ケーシー・カプロウ

(Co-founder & Creative Director, GOOD Magazine)

雑誌『GOOD』におけるクリエイティビティとデザイナーの役割

ケーシー氏は、『GOOD』が大切にするコンセプトを「YOU + US = GOOD」というフレーズで表現する。「 "GOOD" というコンセプトはとても複雑だ。人によっていろいろな事を意味する言葉だから、みんなのアイデアが必要となる。『GOOD』がオープンであればこそ、様々な分野の人が『GOOD』に集まり、コラボレーションが生まれると思っている。」

そこで彼らは創刊号の表紙に、よくあるセレブの写真ではなく、読者がそれぞれ気になるトピック=パーソナルなマニフェストを書けるスペースを用意した。「これは、あなたの気になるものが何であれ、一緒にやりましょうという、我々からの呼びかけでした。入稿ギリギリのところで思いついたアイデアでしたが、我々にとって本当に根幹となる部分なのです。」

それはエディトリアルデザインのコンセプトにもあてはまる。「空間のような雑誌にしたかった。つまりいろいろな人たちと付き合える、いろいろな人たちがいろいろなアイデアを試せる雑誌なんだ。出版するというよりも会議をやる感覚。『GOOD』は参加するみんなの希望と能力と情熱の交差点(インターセクション)なのです。」

『GOOD』の知名度が高まった一つの要因は、質の高いインフォグラフィックの表現だ。世界の軍事費、大型チェーンの売場総面積といったデータを視覚化することで、数字だけでは見えなかった事実を浮き彫りにし、複雑な社会問題の理解に役立っている。「これはデザイナーとコラボレーションするための場といえます。彼らにとっても我々にとっても素晴らしい機会であって、我々はトップレベルのデザインを活用できるし、デザイナーの方はただ外見をデザインするだけでなくて世界に貢献しているということを紹介できるのです。」とケーシー氏は言う。

『GOOD』にとっては、オープンでクリエイティブなコミュニティが特に重要であり、「様々な協力のプロセスによって、コンテンツもどんどん改善されていくのです。」と締めくくった。

4

Page 5: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

1-2【プレゼンテーション3】池田正昭

(クリエイティブ・ディレクター/トーキョーチェンジメーカーズ&エコプラザ)

日本におけるソーシャル・デザインの経緯

池田氏のプレゼンテーションは、日本のソーシャル・デザインの系譜を俯瞰する内容だった。まずソーシャル・デザインの先行世代として、ソーシャル・ムーヴメントの世界的なリーダーとして活躍している坂本龍一氏、80年代から90年代にかけて、日本の思想に多大な影響を与えた柄谷行人氏、デザイナーとして社会問題にコミットするジョナサン・バーンブルック氏という3人のキーパーソンを列挙した。続いて、1997年の京都会議に始まり、1998年のNPO法成立や1999年の地域通貨の盛り上がり、といった時代のマイルストーンを挙げた。

そのような流れを受けて池田氏は、2001年に雑誌『広告』の編集長となり、雑誌のコンセプトを "future social design" とした。「それまでの "design" は "きれいな装飾をする" とか、"ビジュアル・エフェクトをつくる" だとかと思っていたが、それの考えが地域通貨を広めていたマイケル・リントンとの出会いによって変わってきた。"お金をデザインする" (マネー・デザイン)ということを彼から聞き、その考え方や活動を軸に雑誌をつくることになった。」と池田氏は言う。雑誌の中でプロジェクトを立ち上げ、その進行を誌面で伝える "Project based Magazine" であった。残念ながら1年でリニューアルされることになってしまったが、渋谷で活動するNPO法人「アースデイマネー・アソシエーション」や川を取り戻そう運動(渋谷川グッドデザイン計画)など、この頃の『広告』をルーツとするソーシャルなプロジェクトは数多く現在も継続している。

現在、池田氏は、浜松町にある環境学習館「港区エコプラザ」の管理・運営を行っている。また同時に展開しているのが「more trees」だ。これは森林整備、植林、森林保全を目的とした活動で、高知県の森の間伐材を活用したプロジェクトでは、プロダクトデザイナー深澤直人氏がベンチのデザインを行った。「日本の森は大半が人工林だが、ほとんどが放置されています。森を再生するには間伐して、その木を有効に使う必要があり、その使い方の一つとしてベンチを作りました。単なるモノのデザインではなく、人々が継続的に森と関わっていくきっかけをつくり、みんなで森をよくするシステムのデザインであり、これは私の考えるソーシャル・デザインのひとつです。」と、池田氏は説明する。

池田氏は感慨深げに、「今や、ソーシャル・デザインという言葉が当たり前となった。今の時代にもう一度 "future social design" を考えてみたい。」と述べ、チェンジメーカーをネットワークし、社会起業家を支援する「トーキョーチェンジメーカーズ」など、他の進行中のプロジェクトも紹介し、発表を締めくくった。

5

Page 6: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

2.IDEOとデザイナーズ・アコードについて続く第二部では、「IDEOとデザイナーズ・アコードについて」をテーマに、IDEOのデジタルデザイン・エクスペリエンス部門のリーダーであり、デザイナーズ・アコードを立ち上げたヴァレリー・ケーシー氏がプレゼンテーションを行った。

【プレゼンテーション3】Valerie Casey/ヴァレリー・ケーシー

(Leader, Digital Design Experience, IDEO & Founder, The Designers Accord)

IDEOとデザイナーズ・アコードについて

「ポジティブインパクトのための条件づくり」というタイトルについて、「私は意図的にこの言葉を使っています。なぜなら、誰でも自分自身で変えられるというメッセージを込めたいのです。」とヴァレリー氏は言う。

IDEOは世界で初めてのマウスをデザインするなど、世界でも有数のデザインファームだ。IDEOでは、人間の行動を観察することから考える「デザイン思考」、失敗例もシェアするなどオープンソースで取り組む「ネットワーク」、そして、「お金と心のバランスを取ること」という3つの要素を大切にしているという。

前半では、「IDEOの仕事の3分の1はソーシャルインパクトに関する案件」という通り、米国赤十字の献血者募集キャンペーンや、大手医療団体の緊急処置室(ER)の設計の見直し、ノキアのゲーム・プラットフォーム、バンクオブアメリカの預金キャンペーン、ケニアでの人力ポンプの普及など、IDEOの事例の中で特にソーシャルな分野の活動を紹介した。

続けてヴァレリー氏は、「デザイナーが作っているのは、物ではなく結果なのです。デザインが影響を与えるということを、私たちはつい忘れてしまう。ある糸を引っ張ったならば、それを与えるのか奪っているのか、何かの性質を変えてしまうのか、そのことを忘れてはならない。」と、デザイナーの責任について言及した。だからこそ「サステナビリティはデザイナーが当たり前のように考えなければならないことの一つ」と強調する。

しかし、ヴァレリー氏自身もそう考えるに至ったのは最近のことという。「1年半ほど前は、企業のトップとサステナビリティの話をすることはほとんどなかった。そしてサステナビリティという原則を仕事に取り入れる機会に恵まれたとき、自分にまったく知識がないことに気付いたのです。ブランドやビジネスについてはうまく語れるのに、サステナビリティについては語れない。そして私は知らないことを受け入れ、一緒に考えればいいのだと考えるようになったのです。」

それで2007年7月に立ち上げたのがデザイナーズ・アコードである。最初の動きは非常にスローだったが、一年前には加盟者が21カ国3500人に達し、2009年1月の時点では100ヶ国 15万人以上が賛同するなど急激な成長を見せている。「ガイドラインの中には貫き通すのが難しいこともある。まずはあるクライアントのコンセプトがこうだった、こういう難題に直面した、どういうリソースを使ったといったリソースや事例を、ウェブサイトで共有することから始めている。素晴らしいプロジェクトを開発したことを自慢するのではなく、途中経過を明らかにし、そこまでの成果と残りの課題を共有することが重要なのです。」とヴァレリー氏は続ける。

最後にヴァレリー氏は、「私を含め多くの人たちは問題がなくなることを願うが、それでも一旦問題を見てみると、もう目を瞑るのは不可能だ(A lot of people ‒including me- wish the problem would go away. But once you see it, it’s impossible to unseen.)」というポール・ホーケン氏の言葉を引用し、気づき始めたデザイナーの結束を訴えて発表を締めくくった。

6

Page 7: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

3.パネルディスカッション「今、デザイナーに求められていること」第三部では、「今、デザイナーに求められていること」というテーマでパネルディスカッションが行われた。池田氏をファシリテーターに、これまでのプレゼンテーターに加え、Think the Earthプロジェクトの上田壮一氏、HAKUHODO DESIGNの永井一史氏もパネリストとして議論に加わった。

パネラー

・Max Schorr *文中「マックス」

・Casey Caplowe *同「ケーシー」

・Valerie Casey *同「ヴァレリー」

・上田壮一(プロデューサー/Think the Earth プロジェクト) *同「上田」

・永井一史(アートディレクター/HAKUHODO DESIGN) *同「永井」

ファシリテーター

・池田正昭 *同「池田」

まずは、永井氏、上田氏の活動紹介から始まった。

永井氏のソーシャルなテーマとの関わりは、2000年に「WWF」というNPOの広告を作ったことが始まりだった。ただ、そのときは社会的な関心というよりも、そのようなフィールドでどのような新しい表現ができるか、というクリエイターとしての関心が大きかったという。

2005年に、雑誌『広告批評』のエコ・クリエイティブ特集の企画で、永井氏は、環境系NPOのコミュニケーション、マーケティング、ブランディングをボランティアでやることを宣言した。「結果は想定より少なかったとはいえ、ソーシャル・テーマとの関わりを真剣に考えるきっかけとなった出来事だった。」

エントリーがあったNPOの一つに、エコに関する新しいビジネスモデルを募って、そこを援助していく仕組みを作ることを目指すアースデイ・エブリデイという団体があった。現在では環境省などの支援を得て官民協働事業で行われている「eco japan cup」につながっているもので、このネーミング作りから、マークのデザイン、広告やポスター作りに永井氏が携わった。2008年で3年目を迎え、かなり大規模なイベントになってきているという。

永井氏はその他にもNPOの仕事はボランティアでいくつか取り組んでいたが、ボランティアではできることに限界があると感じていた。次第に、「デザインそのものが、新しいフィールドに進んでいかなければいけない」と感じるようになっていった。そうした流れを受けて取り組み始めたのが社会的な課題に対してデザインという方法論で解決することを目指す「+design project」だ。一つ目のテーマが震災である。「日本において震災の問題は大きい。仮に東京に起こった時に、震災生活を想像して、そこにどういう課題があるのかを見つけ、それをデザインでうまく解決できないか。」と、活動への思いを述べた。

続いてThink the Earth プロジェクトの上田氏は、自身の経歴を語るところから始めた。大学で情報工学を学び、メディアに関心を持ち、広告代理店で6年間、広告マーケティング、テレビ番組などのコンテンツの企画に携わっていた。

上田氏にとってターニング・ポイントになったのが、1995年に故郷の神戸で起きた地震。人間が作ったものが20秒の地震で全て壊れた様子を見て、「物を作ることの意味を考えさせられた。」という。その後の一、二か月は絶望が満ちていたが、復興に向かう人間のエネルギーを次第に感じるようになっていったことに、上田氏は大きな影響を受けた。

7

Page 8: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

上田氏はもともと星が好きな少年だったという。「『地球母なる星』という写真集を見て、地球は一つだ、というホリスティックな感覚に包まれた。」と自身の経験を語った。「この写真集が出た1988年は冷戦の真っただ中だったが、だからこそなおさら大きなインパクトを自分にもたらすこととなった。」

そして、上田氏がその写真集から着想を得て、宇宙から見た地球をリアルタイムに見られるようにするために作ったのが「地球時計アースウォッチ」だ。アースウォッチを作るときに様々な人と出会い、その縁がきっかけで、Think the Earthプロジェクトを立ち上げることになった。

当時は環境問題に対する世間の関心は皆無で、しかもNPO活動をしている人たちは正しいイメージがあってとっつきにくかったという。そのため「持続可能な社会をどうやって実現するかというのは重要なテーマだが、そのためにコミュニケーションやクリエイティブの力で、まずは人々の関心を高くすることを考えていた。」と立ち上げ時の思いを述べた。

最後に「今年はNASAが50周年で、アポロが月に辿り着いて40年という年。実はまだ40年しか経っていない。だから、私たちは本当に宇宙からの視点で、ひとつの地球をみんなでどうよくしていこうかと考えられる、初めての世代だと感じている。世界の人たちが集まって考えられる、すごくいい時代が来ていると思っている。」と自身の紹介を締めくくった。

以下、主なディスカッションの内容である。

永井 (ヴァレリー氏へ)デザイナーズ・アコードで、デザインの方法論を共有するのは新しい考え方だと思う。その共有について、もう少し詳しく聞きたい。

ヴァレリー デザイナーズ・アコードのモデルに、「コーペティション(co-opetition)」がある。競争(competition)と協力(cooperation)を足すという概念だ。コンペティターが誰かを特定し、どうしたらコンペティターがコラボレーターになるかを考える。それによって、競争環境がまったく変わっていく。

一つは、特許とか知財になっていない情報を、ベストプラクティスという形で共有することができることだ。例えばIDEOがサステナビリティについてのトレーニング用の様々な教材を作ったが、デザイナーズ・アコードで最初にシェアしたのはそれらの教材だった。もちろん制作にあたってはずいぶんな投資をしたが、長期的にはそれを無料で配布するほうがデザイン界のためによいと判断した。実際配布してみると、ポジティブなフィードバックや、特定業界向けのカスタマイズなどと、どんどん増強されていった。

二つ目には、クライアントの機密を守らなければならず、第三者に話をするには許可を得なければならないということがある。デザイナーズ・アコードに則って変化を推進するためには、特許でない情報はシェアをする、というような契約を結ぶ必要がある。

実際の試みとしては、IBMが中心となって取り組んでいる環境技術の特許を開放する「エコ・パテントコモンズ」というプログラムが面白い。特許を全てコモンズに入れて、誰が特許を使っても構わない、罰金を払うことなく皆が使っていいというプログラムだ。産業界の方が我々よりも早く動いていると思う。デザイナーズ・アコードが動くことによって、企業に力を与え、また教育機関ももっとオープンになるということにつながると思う。

永井  デザイナーズ・アコードは、スローな滑り出しから急に人が増えた。『GOOD』も、今7万と増えている。ここ3、4年の動きは、10年前と比べると特筆すべきものがあるように思う。このタイミングなのは何故か?

8

Page 9: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

マックス  『GOOD』も読者を増やすのに苦労したが、イベントで人を集めたりするなど、第一号が出たときには何とか一万人になっていた。それからは安定して増えている。今はインターネットがあるし、同じような理念で活動しているデザイナーズ・アコードもあるから、広がりが増しているのだと思う。

ケーシー  池田さんのプレゼンテーションの中で日本の事例があったが、そうした一つ一つが今の現実につながってきていると思う。受け手の変化も感じている。2006年に『GOOD』を始めた当初は、「これは新しいアイディアだ」ということを訴えていればよかったが、2年経つと、もうみんなそんなことは分かっていて、「分かっているから、実際どうすればいいのか?」という反応になってきた。だからデザイナーズ・アコードのようなものが実現してくる。もはやアイディアだけじゃなく、具体的にどのようなステップをとっていくか、どうやってそこにもっていくかが問われている。私たちもそれにフォーカスしている。

ヴァレリー  気候変動に対する意識が世界中で強まったことがあると思う。ネットワークやコミュニケーションの手段が広まったことも大きい。景気後退は、とにかく変化しなければならないきっかけになるという意味で、いい機会だと思う。また、一つのデザイン会社がデザイナーズ・アコードに入ると、別のデザイン会社がそれを見て加入する、という競争関係のポジティブ・スパイラルで増えていった側面もあると思う。

上田  10年前は環境と経済を両立させようとか、サステナビリティという言葉に誰も耳を傾けなかったが、この4、5年で大きく変わってきた。しかも、デザインという領域でこうした環境の話ができるようになってきたのが、すごく面白いと思っている。今までは資本主義の論理の中で、ものやサービスを売って企業が儲けるために、デザイナーのクリエイティビティを使ってきたのが、今は社会をよくするためにデザイナーの能力を使っていく方向になってきた。デザインの概念がどんどん広くなり、デザイン、デザイナーの役割が改めて問われていると思う。私の考えでは、具体的な方向性を見せるのがデザイナーの役割だと思っている。一方で無関心な人たちに、どうやって関心を持ってもらうかはすごく重要なテーマであったが、今は関心を持っている人たちが多くなり、そういう人たちをどう巻き込んでいくかに視点が移ってきていると思う。その方法や、何か取り組んでいることがあれば聞いてみたい。

ヴァレリー 複数の戦略でやらないとダメだと思う。政府だけではダメ。政府も、業界も、教育機関も、個人的な関わりがあって、重層的になってこそ人々を巻き込むことができると思う。

ケーシー  私も多面的なアプローチが必要だと思う。そして、どこで最も自分の貢献を最大化できるかということをデザイナー、クリエイター、企業人という立場から考えるべきだと思う。

池田 (マックス氏へ)ご自身はデザイナーではないという話をされていたが、そんなマックスさんにとってのデザイナーの定義について説明を聞きたい。それと、『GOOD』の財源について。広告なのか、ほかに方法があるのか。その2点について伺いたい。

マックス  私のプレゼンテーションの絵を描いたのは私なので、そういう意味では私もデザイナーかもしれないが、デザイナーとしての訓練は受けていない。私自身は「問題解決者」だと思っている。財源については、広告が第一。パートナーシップをいろんなところと組んでいる。メンバーからも収入を得ることができるけれども、第一には広告収入である。

9

Page 10: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

池田 (ケーシー氏へ)クリエイティブのクオリティを維持するために、どういう工夫をしているか。一人だけではないと思うが、どういうチームの組み方をして、毎号あれだけのクオリティを維持しているか。

ケーシー  ほかの人と協力し、優秀な人を探している。これ自体がおもしろい。幸いなことに、我々のプロジェクトには、みんなが参加したがってくれる。質を維持する問題については、とにかくオープンにすること。そうすると、ボトムアップでたくさんのコンテンツが生まれてくる。もちろん、それがいいか悪いかは議論になるので、どういう尺度で評価するか、基本的なルールだけは決めるようにしている。正しい枠組みを設定すれば、素晴らしい結果につながるし、作品群としても一貫性のあるものになっていると思う。

池田  日本に来て、可能性やヒント、これはおもしろいと思ったことは何かありましたか?

ヴァレリー  見たものは全部興味深く触発されることばかりだった。例えば、昨日はMUJI(無印良品)の方に会った。アメリカにはMUJIフェチというのがいて、MUJIは特別なものというイメージで見られているが、日本のMUJIの方とお話すると正反対だった。「MUJIはブランドではない。簡素、本質的なものだけをやる」と言っていたのが印象的だった。それともう一つインスピレーションを受けたのは、人々が濃密な暮らしをしているということだ。人間がこれだけ密集して、こんなに文明的に暮らすことができるのか、という発見があった。狭い場所でも人間が豊かになれる家を作っている建築家と会った。デザイナーは、そういうことに取り組んでいかなければいけないと思った。

ケーシー  会う人、見るものすべてが本当に楽しく、魅了された。自分の期待していたことと違っていることもあったが、それも刺激になった。ヴァレリーと同じように、人口密度の高さには驚いた。それから、極端に見えるようなものでも均衡がとれていると感じた。こういう印象はアメリカや他の国では感じたことはない。

ヴァレリー そこがポイントだと思う。日本にいるとバランスがとれていると感じる。アメリカだと、必要最低限のところでしかつながっていないという感覚を覚える。会話のレベルを高めていこうということはあまりない。アメリカは、日本よりも何倍も国土が広いから、ある意味ではそれは当然かもしれないが。ところがここ日本では、知的な刺激が常に飛び交っている。もちろん、日本の全てを見たわけではないけれども。

ケーシー グローバルとローカル、アメリカと日本の共通点や相違点が見えたのが面白かった。IDEOも『GOOD』もグローバルを意識している。私たちが考えるアイディアと同じようなものが日本にもあって、似ているけれども若干の違いがあったり、グローバルだと思っていたことが実はグローバルではなかったり、いろいろな発見があった。とにかく、みな同じ船に乗っていて、同じ問題に直面し、取り組んでいると感じられたことがよかった。

池田  デザインもコミュニケーションもプロセスが大事。だけれども、コミュニケーションをとっている間に、とっとと取り組まなければならない緊急課題というのが地球上にたくさんあると思う。そういう緊急を要する課題に対してデザインは何ができるのか、という質問をなげかけてみたいと思う。

10

Page 11: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

永井  緊急か緊急じゃないかということより、人々のコネクションをどうやって作るかということだと思っている。その関わり方は緊急の場合においても、時間がある場合においても、原則変わらないと思う。

上田  いわゆる狭い意味でのデザインは、緊急の場合には機能しないと思う。神戸の震災の場合、被害が少なかったところは、普段からコミュニティがしっかりしていたところだと言われている。つまり、あえてそれをデザインという言葉でいうと、普段からきちんとコミュニティがデザインされていたところほど二次災害は少なかった。デザインが緊急時に何かできるというよりは、緊急時になった時のために、いろいろなデザインができると思っている。

永井  想像する力もひとつデザインの大きな力ではないかと思う。頭の中でそういうことをシュミレーションして、その時の問題とか、気持ちとかを想像しながら、それに対する課題は何があって、どういう解決のしかたがあるかを考えることもデザインだと思う。

上田  そういう意味では、KIVAというプロジェクトは素晴らしい。単にお金を投資して人を助けるのではなく、人に何らかのコミットメントをするということが、その人が暮らしているその場所そのものにも、つながりを生むことになるはずだからだ。そのことによって、例えばその場所に何かが起きたときに、助けてあげようという気持ちになる。神戸はすごく近いので、日本人はすぐにそこに感情がいくけれど、そういう意味では遠いところにどうやって思いをつないでいくかとなると、例えばコンピュータネットワークを使った何かしらのインフォメーションデザインによってできるかもしれないとか。そうした点ではまだ、いろいろな余地があるのではないかと思う。

ヴァレリー 毎朝、目が覚めた時に、あなたは基本的に一日をデザインするわけであって、そういう意味では全員、デザイナーだ。そう考えると、よりよい行動を常にデザインすることができる。例えば、水筒やエコバッグを持つとか、今まで知らなかった人と話してみるとか、こうした小さな積み上げのようなことで。やはりそうしたことの積み重ねが一番大事だと思う。だから、ちょっとずつ積み上げていくことをやっていくこと。それがいずれ大きなことにつながっていくのだとみなさんに言いたい。

池田  まとめの意味で、"GOOD" とは何か、デザインとは何かについてご意見をお聞かせください。

ケーシー  "GOOD" は、常に我々に提起されている問題であり、追求すべきテーマだ。答えを持っているわけではないし、相対的な問題だと思う。むしろ、知らないということを認めることに力があると思う。答えは分からないけれどトライする、ということが大事だと思う。"GOOD" というのは、改善する、前進することであり、大切なのは認識することだと思う。ベターというのは、悪さを少なくすることを意味していると思う。例えば、ゴミを少なくするほうがゴミを多くするよりもベターである。でも、ゴミが残ることには間違いない。つまり、"GOOD" とは改善であり、追求だと思う。完璧に近いことを追求するということ。そしてデザインは、私たちがそこに到達するのを助けてくれるものだと思う。私にとっての"GOOD" とは、問題解決のことであり、改善するそのプロセスのことだと思う。

ヴァレリー  "GOOD" を定量化することはできないと思う。ケーシーが言ったように相対的だと思う。重要なことは、オープンであるということだ。デザインは問題解決、というの

11

Page 12: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

はその通りだと思うけれど、私にとって今重要なのは、デザインとはすべての行動の文脈を理解することだ。私がどういう行動をとれば、それがどういう脈略を持つのかを理解する、それがデザインだと思っている。

上田  "BAD" があるから"GOOD"という概念があると思う。個人的な話だが、"GOOD" とはモチベーションにつながっているもののような気がする。こっちがいいのではないかと言われた時に、そのことに参加してみようとか、自分にもその方向だったら何かできるのではないかというように。デザインとは何かというのは、人よりも早く未来を見せる方法のような気がしている。たぶん誰もが毎日できることで、デザイナーという職業の人たちだけじゃない。デザイン・マインドを持つということで、例えば、今日の夕飯を何にしようというのも、ひとつのデザイン・マインドだと思う。それだけでちょっとワクワクして楽しくなってくることが、デザインなのではないかなと思う。

永井  "GOOD" は難しいので、デザインについて。私個人は社会的テーマにもともと関心が高かったわけではなく、むしろ、自分のやっている仕事、デザインということを素直にずっと続けていった時に、そこに辿り着いたという感じがある。ということは、私が特別なのではなく、デザインという考えの中に、たぶん社会的なことも、もともと含まれていたのではないかというのが私の感想である。デザインとはそもそも調和だと考えている。その調和の中にはもちろんお客さんとその商品や企業との関係もあるし、社会との関係もある。いろんな要素が究極的には満たされて初めてデザインとして理想のものが生まれてくるように思う。そういう意味で、デザインという方法論の中に、そうした要素が初期設定されているような気がする。だから私も、遅ればせながら、なんとなく自分の仕事を突き詰めていくうちに、そこに、まさに最近気がついたという感じがする。それが私の考えるデザインについてである。

池田  海外ゲストの3人から、これからデザインを職業にしていこうという参加者のみなさんに、ひとことずつメッセージを頂ければと思う。

ヴァレリー  まずはデザイナーズ・アコードに入ること。そして、何故デザイナーになりたいのか、自問自答することだと思う。キャリアのはじめの頃にその問いに答えることができれば、デザイナーとしての準備が十分に整うはずだ。

マックス  『GOOD』の仕事を始めた頃は、我々は24歳だったし、「君たちは若すぎる」とずいぶん言われた。自分たちでも、若すぎるかもしれないという思いはあったが、あの時やらなければ、あれだけのエネルギーは出せなかったと思う。だから大事なのは、とにかくやってみることだと思う。小さなことかもしれないが、真面目にそれをやる。どんな決定も真面目に行う。誰も見てなくてもちゃんとやっていれば、そのパワーはどんどん強くなる。

ケーシー 私自身の経験から話すと、前進する、追求することだと思う。やりたいと思う理由は分からなくてもいいと思う。やってみて、途中で学習するのでもいいと思う。とにかく、やってみることが私個人の信念だ。デザインであろうとなかろうと、関心を持ってベストを追求する、自分のポテンシャルを追求するということが大事だと思う。どの方向に自分が連れていかれようと、進路変更したとしても、それはそれでいいと思う。

12

Page 13: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

■プロフィール

マックス・ショア(Max Schorr)Co-founder & Community Director, GOOD Magazine

雑誌『GOOD』の共同創立者兼コミュニティ・ディレクター。マックス・ショアは共同創立者として雑誌の編集方針を創り上げ、「Choose GOOD(良いことをしよう)」キャンペーンを立ち上げた。このキャンペーンは、雑誌の定期購読者が購読料全額を、提携したNPOの中から好きなものを選んで寄付をするもので、5万人以上が定期購読者となり100万ドル以上を集めた。社会をより良くすることを目的に、政治問題から環境、アートとデザイン、持続可能なライフスタイル、社会起業事業などのテーマをとりあげる。雑誌発行の他、ウェブサイト、ビデオ製作にも力を入れている。また、ライブのイベント事業をサンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンジェルス、オースチン、サンディエゴなど全米各地で主催し、読者や参加者によるコミュニティ作りを図っている。GOOD設立以前は、マサチューセッツ州アンドヴァーにある名門校フィリップス・アカデミーでマイノリティの学生に数学と科学を教えるプログラムの教師と責任者を務めた。ウェズリアン大学卒。

ケーシー・カプロウ(Casey Caplowe)Co-founder & Creative Director, GOOD Magazine

雑誌『GOOD』の共同創立者兼クリエイティブ・ディレクター。『GOOD』のビジョン確立に参与しクリエイティブの責任者として、編集方針と雑誌のデザイン、ブランディングを手がけている。カプロウの構想のもとで『GOOD』は、優れたデザインと個性的なビジュアルによって、創刊した年に早くも全米雑誌賞にノミネートされた。また2008年はクーパー・ヒューイットの投票で選ぶデザイン賞部門で2位に選ばれた。ビジュアル・コミュニケーションに重点を置くカプロウは、斬新なグラフィックを駆使して、データや情報を表現し、ウェブ上でもインターアクティブな要素を取り入れたプロジェクトや、オンライン・ビデオの独特の作風をデザインしただけでなく、ウェブサイト「good.is」のデザインリニュアール全体を指揮。様々なメディアを使ったプロジェクトを通じて、将来的に同社がさらにオープンで、他者と協力するブランドに創り上げていくための基礎を構築している。GOOD設立の前には、2つのアパレル関連のベンチャー企業を立ち上げた。ブラウン大学卒。

ヴァレリー・ケーシー(Valerie Casey)Leader, Digital Design Experience, IDEO & Founder, The Designers Accord

IDEO社デジタル部門で顧客サービスに関する戦略を担当。世界的な企業や組織の製品、サービス、ネットワーク、ビジネスモデルをよりよくデザインすることにより、社会と環境にポジティブなインパクトを与えることを目指す。2007年にNPO「デザイナーズ・アコード」を創立。デザイナー、企業、教育機関から構成されるグローバルな連合体として、地球環境の保護と持続可能な社会を活動や製品に取り込むことを目指す。現在100カ国以上から約140,000人が参加している。IDEO社の前は、フロッグ・デザイン社のエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターとして、グローバル・デザイン部門の調査、デザイン戦略に携わる。それ以前は、サンフランシスコのペンタグラム・デザイン社でインタラクティブ・デザイン部門を立ち上げた。ケーシーの実績は現在まで数多くの雑誌に取り上げられている。2008年にはフォーチュン誌で「知るべき指導者」、ファースト・カンパニー誌で「デザインのマスター」と評された。国際的著名人で、活動は講演や大学教育など多岐にわたる。スワースモア・カレッジ卒。エール大学で文化理論とデザインの修士号を取得。2008年6月号『GOOD』でケーシーの活動が紹介される。WEB:www.ideo.comWEB:www.valcasey.com

Page 14: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

池田正昭(Masaaki Ikeda)クリエイティブディレクター/トーキョーチェンジメーカーズ、エコプラザ

1961年神戸市生まれ。1985年東京大学文学部卒業後、同年株式会社博報堂入社。コピーライターを経て、同社が発行する雑誌『広告』の編集者に。2001年に「future social design」をテーマに同誌をリニューアル。雑誌から社会変革が立ち上がることを試み、地域通貨アースデイマネーなどを誕生させる。同誌編集長解任後、2003年夏に環境ムーブメント「打ち水大作戦」を創始。2006年3月同社退社後、みなと環境にやさしい事業者会議(2006)、more trees(2007)、港区立エコプラザ(2008)、トーキョーチェンジメーカーズ(2008)などを立ち上げる。毎日アースデイ株式会社代表取締役社長。WEB:www.tokyochangemakers.comWEB:www.eco-plaza.net

上田壮一(Soichi Ueda)プロデューサー/株式会社スペースポート COO クリエイティブ・ディレクターThink the Earthプロジェクト プロデューサー

1965年兵庫県生まれ。東京大学大学院 機械工学修士課程卒業。96年広告代理店を退社後、フリーランスとして映像・インターネットなど様々なジャンルの企画とディレクションに携わる。主な作品はワールドインターネットエクスポ'96・日本テーマ館「センソリウム」、テレビ番組「いのちの響」など。1997年に地球時計アースウォッチを企画したことがきっかけで、2000年、ソーシャル・クリエイティブの拠点として株式会社スペースポート設立。ビジネスを通じた社会貢献活動を目的とする非営利団体「Think the Earth プロジェクト」のプロデューサーとして、地球時計wn-1(グッドデザイン賞)や写真集『百年の愚行』(NY-ADC銀賞)、ビジュアルブック『1秒の世界』、『世界を変えるお金の使い方』、『気候変動+2℃』、携帯電話アプリケーション「live earth」など、社会性とデザイン性に優れたプロジェクトを次々と手掛ける。その他、「ネイチャーネットワーク」(日経インターネットアワード受賞)、「先見日記」などウェブサイトの企画・制作も行っている。食と環境をテーマとしたビジュアルブック『たべものがたり』を3月に発行予定。WEB:www.thinktheearth.net

永井一史(Kazufumi Nagai)アートディレクター/株式会社HAKUHODO DESIGN 代表取締役社長

1961年生まれ。1985年多摩美術大学美術学部デザイン学科卒業後、博報堂入社。2003年ブランディングを中心とした会社、株式会社HAKUHODO DESIGNを設立。主な仕事に、サントリー「伊右衛門」「ザ・プレミアム・モルツ」、日産自動車「TEANA」、資生堂「企業広告」、日本郵政「民営化」「年賀キャンペーン」など。日経広告賞グランプリ、クリエイター・オブ・ザ・イヤー、ADC賞グランプリ、毎日デザイン賞など受賞多数。WEB:www.h-plus-design.com

Page 15: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

■GOOD MAGAZINE

雑誌『GOOD』は、2006年9月に創刊した隔月誌。購読者数70,000人。オーナー兼ファウダーはベン・ゴールドハーシュで、26歳時に創刊。GOOD社は、良いことを行い、良い生き方を求める人々を対象としたメディア会社で、社会をより良くすることを目的に、政治問題から環境問題、アートとデザイン、持続可能なライフスタイル、社会起業家と多岐にわたるテーマを『GOOD』では取り上げている。雑誌のデザインクオリティは高く、ビジュアルとメッセージを巧みに融合した紙面づくりを行ない、業界紙メディア、インダストリー・ニュースレターで同年に創刊された最も注目すべき雑誌の一つと評価された。また2008年は、4つの賞をフォリオ雑誌賞から受賞するなど高い評価を得ている。現在は、ウェブ、ビデオ、ライブのイベントを通じて、会社の事業と読者のコミュニティ拡大を図っている。また様々な非営利団体との共催イベントなども頻繁に行っている。

WEB:www.good.is

*日本からも定期購読の申込がWEBから可能です。なおこの定期購読料は提携する非営利団体への寄付となります。

Magazine: State of the Planet

The Obama Generation Takes the Helm

An intro to our State of the Planet report.

Learn more

Magazine: State of the Planet

Shop Till You Drop?

Two different takes on conscious consumerism.

Learn more

Magazine: Marketplace

Chewing the Fat

GOOD and Dan Barber taste ethical foie gras.

Learn more

Advertisement

Project 014: Nominees, PleasePosted by: GOOD on December 10, 2008 at 9:03 pm

Sometimes, a hero’s work goes without praise.

But here at good, we think that’s a shame. We think

that the people who are making strides toward

excellence deserve a pat on the back and a round of

applause. And we think that you deserve to know

about them.

Beginning this year, we’re assembling an annual list

of people, businesses, and institutions driving

change in the world, and we’re calling it the good

100. But in order to…

Read & Discuss

Filed under: Magazine : Issue 014 Categories: Magazine

Share Discuss GOODmark ?

All You Can Eat ( 9 Articles)

Growing numbers of farmers, chefs, and consumers have

Blogs Magazine Video Events Community SEARCH

3

Page 16: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

■The Designers Accord

The Designers Accord(ザ・デザイナーズ・アコード)は、デザイナー、教育者、ビジネスリーダーが、環境と社会により良い影響をもたらすために協力するグローバルな連合体である。デザイナーズ・アコードに則った実践者となるには、グループあるいは個人の場合も、デザイナーズ・アコードが設けた五箇条のガイドラインに沿って行動を起こす必要がある。またデザイナーズ・アコードの会員となることで、環境や社会問題を解決するための方法論、情報、経験を共有するコミュニティに加わることができる。デザイナーズ・アコードのビジョンは、持続可能な社会を作り出すための原則を、デザインの実践や製造過程に反映させることにある。気候変動や人道的諸問題に対して創造的かつ前向きに立ち向かうために知恵を集結し、クリエイティブなコミュニティにイノベーションをもたらすことが使命である。デザイナーズ・アコードでは、競争に走らずに、問題解決のための最善の方法を出来る限り共有し、効果的かつ迅速に現状を変えていくことを奨励している。・実践者は、すべてのクライアントや顧客と、ビジネスが社会と環境に及ぼす影響について話し合い、持続可能なビジネスを行うための代替案を取り入れる。・持続可能な製品、サービス、ビジネスを創り出すための機会や問題点について話し合う場をオンライン、そして実生活で持つ。ビジネス誌「ファースト・カンパニー」は、デザイナーズ・アコードの試みは「組織のトップから現場の人間の考え方だけでなく、歯ブラシから飛行機といった製品の製造の過程まで、デザイン界の文化に変容をもたらしている」と評している。ビジネスウィーク誌は、デザイナーズ・アコードは「デザイン界におけるサステナビリティに対する考え方に新しい基準を設けた」と述べている。GOOD、フォーチュン、ニューヨーク・タイムズ、ドウェル、プリント、エンバイロメンタル・リーダー、アドエイジ、クリエイティビティを含む数多くの新聞や雑誌は、デザイナーズ・アコードがデザイン界に新しい変革をもたらしたと一致した見解を持っている。デザイナーズ・アコードは、デザインのあらゆる分野で活躍する100カ国以上、15万人の会員から成り立つクリエイティブなコミュニティである。会員の半数以上は米国人ではない。*デザイナーズ・アコードを取り入れている大手デザイン会社:IDEO、フロッグ・デザイン、コンティニュウム、スマート・デザイン、ジバ、BMWデザインワークス、ペンタグラム*デザイナーズ・アコードを取り入れている企業:オートデスク、ジョンソン&ジョンソン(消費者製品デザイン)、スチールケース、GOOD誌、サッピ・ファイン・ぺーパー、モーホーク・ペーパー、ニュー・リーフ・ペーパー*デザイナーズ・アコードを取り入れている教育機関:プラット・インスティチュート、サバンナ・カレッジ・オブ・アート・デザイン、ヘルシンキ美術デザイン大学、カリフォルニア・カレッジ・オブ・ザ・アーツ大学院デザイン学科、南カリフォルニア大学デザイン学部、モンテレー工科大学デザイン学校、フィンランド・アート・デザイン・リソース・センター、ニューメキシコ・スタジオ・オブ・デザイン・ラス・クルセス、ニュージーランド・オタゴ科学技術学校デザイン学部、スウィンバーン大学デザイン学部、バンクーバー海洋水族館科学センター*米国の2大デザイン団体AIGA(米国グラフィックデザイナー協会)とIDSA(米国工業デザイナー協会)とCUMULUS(世界最大の芸術・デザイン大学の連合組織クムルス)は、デザイナーズ・アコードに支持を表明。フォーラム・フォー・ザ・フューチャー、ディーエム・アイ、アーキテクチャー・フォー・ヒューマニティー、o2も支持を表明している。

デザイナーズ・アコードは2007年7月にカリフォルニア州で非営利団体として設立された。

詳細についてはウェブサイトをご参照ください。www.designersaccord.orgお問い合わせはメールでご連絡下さい。[email protected]

Page 17: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

●デザイナーズ・アコードに参加するためのガイドライン

デザイナーズ・アコードの目的は、プラスとなる影響を創り出していくことであり、下記の3つの方法で参加ができる。

実践者(デザイン会社、一般企業、教育機関)クリエイティブ・コミュニティの中で、ガイドラインに沿って仕事をしていくと誓った組織立ったグループ。

支持者(アーチスト、フリーランスのデザイナー、学生)ガイドラインを個人で行っている活動に結びつけ、各々のコミュニティの中で、デザイナーズ・アコードの動きを広く伝える活動を行う人々。

推奨者(組織)米国グラフィックデザイナー協会や米国工業デザイナー協会のように、デザイナーズ・アコードに対する意識を高め、教育やアウトリーチのプログラムのための基盤を供給する組織。

実践者、支持者、推奨者は皆、下記の基本行動規範を守る。※傷つけない。コミュニケーションをとり、お互いに協力をする。学び続ける。教え続ける。意味のある変革を推進する。理論を実践する。

実践者のためのガイドラインは、デザイン会社、一般企業、教育機関の三つに分けられ、業界によって微妙に異なる。

デザイン会社の実践者1)公にデザイナーズ・アコードへの参加を宣言する。2)すべてのクライアントと、ビジネスが社会と環境に及ぼす影響と、持続可能な事業を行うための代替案についての

対話を始める。環境や社会に対して責任を持ったデザインや業務工程を進めるために、クライアントとの契約の再作成を行う。持続可能なデザインのための戦略的かつ物質的代替案を提供する。

3)持続可能性および持続可能なデザインについて、同じチームのメンバーが学ぶためのプログラムを実施する。4)倫理的見地からみてフットプリントを考慮する。自社の二酸化炭素・温室効果ガス排出量(カーボン・フットプリン

ト)を測定し、毎年排出量を減らすことを誓う。5)デザインの視点からの環境と社会問題への理解を向上させるために、持続可能なデザインの共有の知識ベースに積

極的に貢献する。

一般企業の実践者1)公にデザイナーズ・アコードへの参加を宣言する。2)持続可能なデザインのための戦略的かつ物質的代替案を提供し、顧客によるマイナスの影響を減らす手助けをする

ことを誓う。3)持続可能性および持続可能なデザインについて、同じチームのメンバーが学ぶためのプログラムを実施する。4)倫理的見地からみてフットプリントを考慮する。自社の二酸化炭素・温室効果ガス排出量(カーボン・フットプリン

ト)を測定し、毎年排出量を減らすことを誓う。5)デザインの視点からの環境と社会問題への理解を向上させるために、持続可能なデザインの共有の知識ベースに積

極的に貢献する。

教育機関の実践者1)公にデザイナーズ・アコードへの参加を宣言する。2)同じ教育プログラムの中のすべての学生と同僚と、ビジネスが社会と環境に及ぼす影響と、持続可能な事業を行う

ための代替案についての対話を始める。環境や社会に対して責任を持ったデザインや業務工程に重点を置いて、カリキュラムや課題の再作成を行う。持続可能なデザインを生み出すための戦略的かつ物質面での代替案に焦点を当てた授業内容、講演、課題を提供する。

3)持続可能性および持続可能なデザインについて、同僚が習うためのプログラムを実施し、これらのコンセプトがカリキュラムに取り込まれるよう計画する。

4)倫理的見地からみてフットプリントを考慮する。自分が勤める組織の二酸化炭素・温室効果ガス排出量(カーボン・フットプリント)を測定し、毎年排出量を減らすことを誓う。

5)デザインの視点からの環境と社会問題への理解を向上させるために、持続可能なデザインの共有の知識ベースに積極的に貢献する。

Page 18: Social Design - Japan Society€¦ · 2009年2月8日、財団法人日本産業デザイン振興会、Japan Society、国際交流基金日米セ ンターは、デザインと社会との関係をテーマとしたSocial

●デザイナーズ・アコードの実践者になるには

デザイナーズ・アコードは、実践者になるための基準を意図的に低くしています。同時に我々は、デザイナーズ・アコードによる行動への喚起が、声明だけに終わらないことが重要だと考えています。我々は実践者が、いかにしてガイドラインを遵守しているか、毎年、公平な立場にある支持者からなる外部の委員会(米国グラフィックデザイナー協会と米国工業デザイナー協会からのメンバーも含む)に提示する他に、デザイナーズ・アコードに関する話し合いをする場に参加することを求めています。

※デザイン会社の実践者は、Design Directoryにプロフィールを設けて、そのプロフィール・ページに、実践者になる旨をリクエストしてください。そのリクエストがデザイナーズ・アコードに送られます。我々は、リクエストを審査し、3日以内にお返事を差し上げます。(デザイン会社によるリスティングは無料です)

※一般企業あるいは教育機関として実践者になる場合は、下記までメールを送ってください。[email protected]メールには下記の情報を記入してください。デザイナーズ・アコードは、参加理由を審査しリクエストに対してお返事をします。

・参加理由・企業/組織名・業務概要・所在地・URL・規模(教員数、学生/職員数)・連絡先(名前とメールアドレス)