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75 1. はじめに 首都高速道路の鋼製橋脚の隅角部には、多くの疲労き裂 が発見されており、その対策工事が進められている。 鋼製橋脚隅角部の損傷の原因としては、 ①大型車両の通行が近年増加したこと、重量超過車両が 存在すること等により、繰り返し大きな荷重が作用す ること。 ②都市内の制約の多い条件から、梁の張出し長さや柱間の 幅が大きく、隅角部の発生応力が大きい構造であること。 ③隅角部は3本の溶接線が交差し(3線交差部)、溶接の 溶け込みが不完全になりやすいこと。 ④隅角部にはせん断遅れによる応力集中が発生すること 等が考えられる。 そこで、疲労き裂が発見された橋脚には、それらの原因を 解消するため、隅角部の応力低減のための補強と溶接の不完 全部を除去する補修をセットとした工事が行われている。 鋼製橋脚隅角部補強工事 2-3 は、首都高速道路の向島線、 小松川線、深川線、湾岸線、三郷線、中央環状線、川口線 において、事前に実施された点検にて、き裂が発見された 28 橋脚の 32 隅角部を対象とする補強・補修工事である。 本稿では、その工事の概要を示す。 なお、本工事の対象は、いずれもき裂の長さが 30mm 未 満の比較的損傷が軽微な箇所であった。そのため、工事に 緊急性は無いと判断され、計画的な施工が可能であった。 2. 工事概要(工事の流れ) 工事の流れを図 -1 に示す。 1既存資料の照査・現橋確認 製作時図面、設計計算書、耐震性向上工事等のしゅん功 図書、事前の点検結果の照査と共に、実橋の調査を行い、 設計・施工の条件を整理した。 2全体施工計画の作成(施工順序の決定) 本工事の特徴として、工事範囲が広範であり、対象橋脚 数が多いことが挙げられる。また、街路上の箇所が多く、 施工に交通規制を伴う箇所もあった。そこで、工事を円滑 に進めるため、工事に先立ち、工事対象橋脚の位置、交通 規制の必要性など現地状況、補強、補修の施工条件、設計 難易度などを考慮し、施工順序を決定した。 3補強設計・施工 補強設計および施工は、現橋の応力低減と補修時の安全 確保の観点から全橋脚を対象に、「鋼製橋脚隅角部の補強設 計施工要領」 1 (以下「補強要領」と略す)に基づき実施した。 鋼製橋脚隅角部に発生したき裂に対する補強および補修工事 工事報告 9 岩 崎  初 美 渡 口  雅 人 IWASAKI Masato *** WATARIGUCHI **** Hatsumi 4き裂調査 事前の点検結果で確認されていたき裂の進展状況や新た なき裂の有無の確認、そして、き裂補修実施の判定のため、 対象箇所の内外面のき裂の調査を行った。 5き裂補修設計・施工 き裂調査で補修が必要と判断された場合のみ、補修設計 と工事を、 「鋼製橋脚隅角部の疲労き裂除去の手引き」 2 (以 下「補修の手引き」と略す)に基づき実施した。 図 -1 工事の流れ 3. 補強工事 設計は、まず既存の図面に基づき補強構造を決定し、そ れに実橋の寸法測定結果を反映させた。また、既存の耐震 補強用ブラケットや排水管、点検通路等の添架物の配置や 機能も含めて検討を行った。 施工は、足場設置後、最初に、設計と施工性検討のため に既設部材寸法等の詳細な調査を実施した。次に、施工の 支障となる添架物を撤去し、補強要領に基づいた要領で補 強部材を設置した。 補強構造は、隅角部の応力を50%削減することを条件 とし、角柱の橋脚には当て板補強、丸柱の橋脚にはリング 補強とした。 3-1. 角柱の橋脚(当て板補強) 補強要領では、角柱の橋脚については、当て板補強を施 工することとしている。当て板の設計は、過去の検討結果 により、隅角部の構造の適用範囲と標準設計方法が確立し 首都高速道路株式会社 鋼製橋脚隅角部補強工事2‐3 ― 伊 藤  慶 昭 永 野  智 宏 河 井  誠 * ** ITOU NAGANO KAWAI Yoshiteru Tomohiro Makoto * ** *** **** ㈱ IHIインフラ建設 橋梁事業部/橋梁工事1部 ㈱ IHI インフラ建設 橋梁事業部 / 橋梁工事 2 部 ㈱ IHIインフラ建設 橋梁事業部/橋梁設計部 ㈱ IHIインフラ建設 技術計画部

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1. はじめに 首都高速道路の鋼製橋脚の隅角部には、多くの疲労き裂が発見されており、その対策工事が進められている。 鋼製橋脚隅角部の損傷の原因としては、

①大型車両の通行が近年増加したこと、重量超過車両が存在すること等により、繰り返し大きな荷重が作用すること。

②都市内の制約の多い条件から、梁の張出し長さや柱間の幅が大きく、隅角部の発生応力が大きい構造であること。

③隅角部は3本の溶接線が交差し(3線交差部)、溶接の溶け込みが不完全になりやすいこと。

④隅角部にはせん断遅れによる応力集中が発生すること等が考えられる。 そこで、疲労き裂が発見された橋脚には、それらの原因を解消するため、隅角部の応力低減のための補強と溶接の不完全部を除去する補修をセットとした工事が行われている。 鋼製橋脚隅角部補強工事2-3は、首都高速道路の向島線、小松川線、深川線、湾岸線、三郷線、中央環状線、川口線において、事前に実施された点検にて、き裂が発見された28橋脚の32隅角部を対象とする補強・補修工事である。 本稿では、その工事の概要を示す。 なお、本工事の対象は、いずれもき裂の長さが30mm未満の比較的損傷が軽微な箇所であった。そのため、工事に緊急性は無いと判断され、計画的な施工が可能であった。

2. 工事概要(工事の流れ) 工事の流れを図-1に示す。1既存資料の照査・現橋確認 製作時図面、設計計算書、耐震性向上工事等のしゅん功図書、事前の点検結果の照査と共に、実橋の調査を行い、設計・施工の条件を整理した。2全体施工計画の作成(施工順序の決定) 本工事の特徴として、工事範囲が広範であり、対象橋脚数が多いことが挙げられる。また、街路上の箇所が多く、施工に交通規制を伴う箇所もあった。そこで、工事を円滑に進めるため、工事に先立ち、工事対象橋脚の位置、交通規制の必要性など現地状況、補強、補修の施工条件、設計難易度などを考慮し、施工順序を決定した。3補強設計・施工 補強設計および施工は、現橋の応力低減と補修時の安全確保の観点から全橋脚を対象に、「鋼製橋脚隅角部の補強設計施工要領」1(以下「補強要領」と略す)に基づき実施した。

鋼製橋脚隅角部に発生したき裂に対する補強および補修工事 

工 事 報 告 9

岩 崎  初 美渡 口  雅 人IWASAKIMasato

***WATARIGUCHI

****Hatsumi

4き裂調査 事前の点検結果で確認されていたき裂の進展状況や新たなき裂の有無の確認、そして、き裂補修実施の判定のため、対象箇所の内外面のき裂の調査を行った。5き裂補修設計・施工 き裂調査で補修が必要と判断された場合のみ、補修設計と工事を、「鋼製橋脚隅角部の疲労き裂除去の手引き」2(以下「補修の手引き」と略す)に基づき実施した。

図-1 工事の流れ3. 補強工事 設計は、まず既存の図面に基づき補強構造を決定し、それに実橋の寸法測定結果を反映させた。また、既存の耐震補強用ブラケットや排水管、点検通路等の添架物の配置や機能も含めて検討を行った。 施工は、足場設置後、最初に、設計と施工性検討のために既設部材寸法等の詳細な調査を実施した。次に、施工の支障となる添架物を撤去し、補強要領に基づいた要領で補強部材を設置した。 補強構造は、隅角部の応力を50%削減することを条件とし、角柱の橋脚には当て板補強、丸柱の橋脚にはリング補強とした。

3-1. 角柱の橋脚(当て板補強) 補強要領では、角柱の橋脚については、当て板補強を施工することとしている。当て板の設計は、過去の検討結果により、隅角部の構造の適用範囲と標準設計方法が確立し

― 首都高速道路株式会社 鋼製橋脚隅角部補強工事2‐3 ―

伊 藤  慶 昭 永 野  智 宏河 井  誠 * **ITOU NAGANOKAWAI Yoshiteru TomohiroMakoto

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ている。そこで、その適用範囲の橋脚については、標準設計方法に基づいた設計を実施した。他の隅角部と隣接しているなど、補強位置の構造が複雑で適用範囲外の橋脚については、類似工事事例がある場合はそれを適用し、無い場合はFEM解析により構造を決定した。 当て板補強の施工事例を写真-1に示す。

写真-1 角柱(当て板補強)の例

3-2. 円柱の橋脚(リング補強) 補強要領では、円柱の橋脚の隅角部の補強は、FEM解析により補強構造を決定することとなっている。しかしながら、本工事の対象橋脚では、類似する構造の橋脚に対する補強の実績があったため、その構造(リング補強)を適用した。リング補強の施工事例を写真-2に示す。

写真-2 丸柱(リング補強)の例

4. き裂調査 事前の点検においては、大部分の橋脚では、橋脚外面の十字継ぎ手の溶接線についてのみ調査が行われていた。そのため、外面については、既存のき裂の進展の確認と新たなき裂の発生の確認を目的に調査を行った。内面については、事前の点検が行われていない橋脚が多かったため、き裂の存在の有無の確認を中心に行った。 調査は、磁粉探傷試験(以下、MT試験)により、溶接の3線交差部から300mmの範囲について行った。そして、表面にキズ(割れ)が確認された場合には、深さ2mm程度まで切削し、その深さや発生原因の確認を行った。ビード表面の割れの検出事例を、写真-3に示す。

 調査結果は、隅角部の構造(板厚、板組)、既存の非破壊検査や応力計測結果等の情報と併せて整理した。 キズ(割れ)の補修の必要性は、キズの長さと発生位置等により判断した。例えば、写真-4に示すように、表面キズの切削調査の結果、キズが未溶着に繋がることが確認された場合は、キズの発生原因が未溶着部を起点とした疲労き裂であると判断できる。そのような場合は、補修が必要であるとした。

写真-3 き裂検出例(角柱の場合)

写真-4 調査切削後未溶着部が露出した例(外面)

5. き裂補修工事5-1. 角柱橋脚の隅角部(大コア補修) 大コア補修は、主に疲労によるき裂が存在すると判断された箇所に採用した。補修では、補修の手引きに則り、き裂発生の原因となる未溶着部を、橋脚外面からφ100の磁気ボール盤でコア抜きし、除去する。補修のイメージを図-2に、施工状況を写真-5に示す。 φ100のコア先端のフランジ面とダイアフラムに配置するφ50のコアは、応力集中を緩和し新たなき裂が発生しないためのものである。また、コア抜きにより新たにできた溶接端部には、面取りや溶接ビード止端の棒グラインダーによる仕上げ等を行い、新たなき裂が発生しないように処理するとともに、MT試験により断面の検査を行った。

図-2 大コア補修イメージ

 ⒜ 外面   ⒝ 内面 

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写真-7 大コア施工結果(十字継手断面)

写真-8 ストップホール施工状況

写真-9 ストップホールMT結果

5-2. 円柱橋脚の隅角部(その1、貫通孔補修) 円柱橋脚では、角柱の大コア補修のように磁気ボール盤を、ウエブ面に設置するのは困難であるため、棒グラインダーを用いた切削により施工する必要がある。そして、その切削の方法は板組により異なるものとなる。

写真-5 大コア補修施工状況

 施工においては、き裂やその原因となる未溶着部を残さないようにコアの深さを決定するため、事前に、溶接部の未溶着部の正確な位置と長さを調査した。また工具の設置や作業の施工性の確認のため、内外面ともに十分に既設構造の寸法等の調査を行い、設計に反映した。さらに、施工が厳しい箇所については、通常の図面のみでは立体的な検討が困難であったため、3Dソフトや模型を利用して、詳細な検討を実施した(写真-6)。

写真-6 大コア補修検討例

 大コアの施工結果(十字継手断面)のMT試験結果の一例を写真-7に示す。⒜はき裂が除去できた例、⒝はき裂が残存した例である。⒝のように、き裂が長く大コア補修ではき裂が除去しきれなかった場合や、き裂が発生する可能性の高い溶接不良箇所が大コアの範囲外の十字継手断面に残存している場合には、その進展方向(梁中央側)にストップホールを追加して施工した。その施工状況を写真-8に示す。 ストップホールは、施工の手引きに則り、確認されたき裂の先端から150mmの位置にφ40の磁気ボール盤を使用して設置した。そして、き裂がストップホール施工位置の梁の中央側に内在していないことをMT試験にて確認した(写真-9)。 その他、梁や柱の角継手やT字継手断面に、き裂が残存している場合には、それらを切削して除去した。

 ⒜ 工具設置状況  ⒜ 健全な(き裂が除去できた)例

⒝ き裂が残存している例

⒝コア抜取状況

⒜3Dソフトのよる検討

⒞ 抜き取られたコア

⒝ 模型による検討

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写真-10 貫通孔補修施工状況

図-3 貫通孔補修(円柱橋脚・ウエブ貫通の場合)

写真-11 円柱橋脚補修状況(貫通孔補修)

 円柱橋脚の隅角部で横梁のウエブが円柱を貫通している板組構造の場合は、横梁ウエブまわりのスリットを溶接で埋める構造となる。その際に発生した未溶着部より き裂が発生している箇所が数多く発見されている。 補修では、未溶着部を除去するように切削を進め、横梁の隅角部の溶接線交差部を取除くことにより、外面・内面を貫通させた。この貫通孔を施工した結果、溶接線の交差部を除去し、それぞれの溶接線を分離することにより、未溶着の存在しない単純な溶接継手状態へと改善し、疲労き裂の原因を取り除くことができた。施工状況を写真-10に示す。 貫通孔の形状・大きさは、き裂の調査結果をもとに、過去に行われた隣接の橋脚の施工事例を参考に決定した。補修の方法を図-3に、補修の状況を写真-11に示す。

5-3. 円柱橋脚の隅角部(その2、切削除去補修) 円柱橋脚の隅角部で横梁ウエブが円柱に突合せ(ドン突き)の板組の場合も、隅角部の溶接線に未溶着部が存在する。この場合は、棒グラインダーによる切削で、円柱に沿って溶接交差部の未溶着部を除去した。施工の概要を図-4、施工状況を写真-12、施工結果を写真-13にそれぞれ示す。貫通孔補修と同様、それぞれの溶接線を分離することにより、単純な溶接継手状態へと改善ができる。

5-4. 角柱橋脚におけるスカラップ補修 角柱橋脚の場合、補修の手引きでは、前述の大コア補修が標準となっているが、スカラップ補修を用いた箇所がある。これは、損傷部付近にφ50の孔明けをして未溶着部を露出させ、船底状に切削しながら未溶着部を除去する方法である。

E – E(平面)

F – F(側面)

C – C(正面)

⒜ 平面図

⒜ 橋脚外面側

⒝ 橋脚内面側

⒝ 側面図

⒞ 正面図

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図-5 スカラップ補修イメージ図

写真-14 スカラップ補修施工状況

写真-15 スカラップ補修

5-5. 補修結果におけるき裂の判定例 き裂を補修し、その結果の妥当性を判断するためには、疲労によるき裂と他のキズ(割れ)とを区別する必要がある。本工事では、MT試験とマクロ試験を併用してそれを判定した。以下にその事例を示す。 写真-16⒜のMT試験結果の左上の線状指示模様は、それのみでは、き裂のように観察される。一方で、⒝のマクロ試験結果を見れば、熱影響部近くに位置し、溶着量も多く母材表面と平行に剥離していることが判る。そこで、両者を比較してみれば、これは製作時の溶接において強い引張拘束力により生じたラメラテアであると想定できる。 また、右上の線状指示模様については、MT試験とマクロ試験の両者から、溶込み不良部を起点とする熱影響部のき裂であると判定できる。

図-4 切削補修(円柱橋脚・ウエブ突合せの場合)

写真-12 切削除去補修施工状況

写真-13 円柱橋脚補修結果(切削除去補修)

 この補修方法を隅角部のき裂補修に使用された事例は少ない。しかしながら、一部の橋脚においては、既存の十字継ぎ手の溶接状態が悪く、期待できる溶着量が少ない箇所では、大コア補修により溶着部分を失うことを避ける方が良いと判断し、採用した。施工の概要を図-5、施工状況を写真-14、施工結果を写真-15にそれぞれ示す。

⒜ 平面図

⒝ 正面図

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写真-16 大コア十字継手断面キズ判定例

6. き裂補修部の防錆処理 補修した箇所へ雨水等の侵入を防止するため、紫外線を照射することにより硬化する樹脂製のシート(紫外線硬化型樹脂シート)を施工した。このシートは、硬化前は鋏で、自由な形状に加工することができる等の利点がある。シートを貼付後、現場塗装を行った。その施工状況と結果を写真-17、写真-18にそれぞれ示す。

7. まとめ 鋼製橋脚隅角部補強工事2-3について、その施工概要を報告した。 隅角部の補強工事や、補修工事では施工ミスがあった場合、新たな弱点を発生させる可能性が大きく、構造物全体の性能を低下させる恐れがある。また、本工事は、工事範囲が広いことや街路上の工事箇所が多く規制を要することなど、工程を左右する制約も多かった。

写真-17 紫外線照射状況(角柱大コアの例)

写真-18 シート貼付完了状況(円柱切削除去の例)

 本工事では、以上のような条件や課題があったが、十分に計画・検討を行うことにより、大きな問題も無く、無事故無災害で終えることができた。 本報告が、今後の同種の補強・補修工事の参考となれば幸いである。 なおIHIインフラシステムグループでは、本報告工事の他、IHIインフラシステムにおいて、神奈川地区、都心環状線の竹橋付近、IHIインフラ建設いおいて、渋谷線の池尻大橋付近、目黒線など、多くの隅角部補強工事を施工してきた。その結果、多くの知識と経験を得ることができ、当グループの大きな財産となっている。今後は、それらを活かして、橋梁の長寿命化工事に貢献してゆきたいと考えている。 最後になりましたが、本工事の施工にあたり、御指導および御協力を頂いた首都高速道路株式会社をはじめとする関係各位に深く感謝の意を表します。

〔参考文献〕1首都高速道路株式会社、鋼製橋脚隅角部の補強設計施工

要領(平成19年2月)2首都高速道路株式会社 保全・交通部鋼構造物疲労対策

グループ、鋼製橋脚隅角部の疲労き裂除去の手引き(平成19年2月)

完全溶込み側 K形グルーブ側

き裂

ルートフェイス

ラメラテア

スラグ巻込み

溶込み不良

溶込み不良

融合不良

⒝ マクロ試験結果

⒜ MT試験結果