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単相性NMOから再発性NMOヘ

デビック先生が今から100年以上前にNMOの報告をした時は、男女同数程度の患者さんが報告されており、おそらく感染症に伴って起こった単相性NMO(1回きりの病気で再発しない)が多かったと思われます。

しかし今日私たちが経験するNMOの大部分は再発性NMOであり、女性のほうが男性よりずっと多いのです。NMO患者さんが10名いたらそのうち9名は女性です。

中 級

日本では明治24年に報告

NMOは英語のNeuromyelitis Opticaの略語で、日本語では視神経脊髄炎と訳されています。NMOは一般に、重症の視神経炎と横断性脊髄炎(脊髄の断面がすべて障害されているという意味で、重症の脊髄炎)を起こす神経難病です。

1894年にNMOの1剖検例をはじめて報告したフランス人医師Devic先生の名前をとってデビック病とも呼ばれています。

わが国でも1891年(明治24年)に、青山胤道先生が1例のNMOを報告していますが、その論文の中では、それまでにヨーロッパで報告されたのと同様の症例が考察されています。

デビック先生の名前が残ったのは、NMOの臨床的特徴だけでなく、剖検により病理学的所見を記載したことが重要だったのだろうと思われます。

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岩手県平泉町

東北大学神経内科NMO研究グループ

えぬえむおー

視神経脊髄炎(NMO)「NMOのこれまでの歴史」

BC63

あおやまたねみち

でびっく

たんそうせい

ししんけいせきずいえん

神奈川県鎌倉市

再発時にはパルスと血漿交換療法

NMOの急性増悪期(再発時)には、まずステロイドパルス療法をおこなうのですが、NMOではステロイドパルス療法をしても臨床的改善がみられないことや、パルス中にも症状がさらに増悪することが、MSよりはるかに多いです。

その場合、血漿交換療法で症状の改善が得られることが、しばしばあります(東北大学では単純血漿交換療法をおこなっています)。

アクアポリン4抗体の発見

2004年にNMOに特異な自己抗体であるNMO-IgGが報告され、さらにそれが実際にはアクアポリン4(AQP4)抗体であることがわかりました。

AQPとは「水分子を通す穴」でありAQP4は脳や脊髄などの中枢神経、特にアストロサイトという細胞の表面にたくさんあります。これはNMOの全体像、NMOとMSのいろいろな違いを明らかにするうえで、大変大きな発見でした。

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えぬえむおーあいじーじー

えーきゅーぴーふぉー

けっしょうこうかんりょうほう

葛西臨海公園(東京都江戸川区)

もちろん再発してからできるだけ早くこの治療を開始したほうが、治療効果が期待できます。NMOは視神経炎で失明したり、脊髄炎で歩けなくなったりすることがあるため、それを防ぐための再発後早期の血漿交換療法は、予後を左右するといえます。

再発予防にはステロイドや免疫抑制剤

NMOの再発予防療法も、MSと違う点があることがわかってきています。

特にMSの再発予防の第一選択薬であるインターフェロン・ベータは、NMOでは有効性がはっきりせず、投与開始後数カ月以内に重症の再発をした症例も報告されています。

NMOでは、ステロイドや、イムランなどの免疫抑制剤の再発予防効果が知られています。AQP4抗体陽性ならNMOの再発の可能性を考えて、発症早期から免疫抑制療法を考える必要があります。

NMOとMSは、病変の位置だけでは鑑別できない

AQP4抗体はNMOの診断に重要だと述べましたが、この抗体の研究が進み、いろいろなことがわかってきました。そのひとつは「病変がどこにあるかどうかだけではNMOとMSは区別できない」ということです。

実際、NMOの患者さんの約半数には脳病変があります。その脳病変の中にはMSと簡単に区別しにくいものもありますが、かなりNMOに特徴的と思われるものもあります。

また、視神経炎と脊髄炎だけを起こす症例は、すべてがNMOではなくMSの症例もあります。さらには、過去に視神経炎も脊髄炎も既往がなく、脳病変で発症するNMO症例もあることがわかってきました。

このあたりはややこしいのですが、要するにAQP4抗体を含めてNMOに特徴的な臨床症状は、検査所見があるかどうかが重要です。これらの情報は、最近の神経内科の学会のシンポジウムなどでも頻繁に取り上げられる

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http://w

ww.m

s.med

.toh

oku.ac

.jp/

東北大学大学院医学系研究科多発性硬化症治療学寄附講座http://www.ms.med.tohoku.ac.jp/

講座の研究内容や抗AQP4抗体測定についての連絡方法、学会情報のほか、MSとNMOそれぞれの治療方針や用語解説など、最新の情報が紹介されています。ユーザー登録すれば掲示板に参加可能で、専門医に医療相談ができます。 ブログでは国内外の新情報も紹介

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ようになっていますが、もちろん全ての神経内科の先生方がこれらの最新情報に詳しいわけではありません。

NMOの特徴に当てはまりそうなら先生に聞いてみましょう

臨床現場では、診断が難しい場合があるのはどの病気でも同じですが、NMOかMSかを鑑別することは、その後の治療方針を決めるためには、とても大切なことです。

これまでこのコーナーで述べたNMOの特徴に当てはまる所見がある場合は、主治医の先生に率直にうかがってみて良いと思います。先生と一緒に、最善の治療法を見つけていくことが重要です。

毛越寺(岩手県平泉町)