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当院での反復性中耳炎治療 平成2689日 関西中耳臨床研究会 ゆうき耳鼻咽喉科 結城和央

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当院での反復性中耳炎治療

平成26年8月9日関西中耳臨床研究会ゆうき耳鼻咽喉科 結城和央

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定義

反復性中耳炎:「過去6ヶ月間で3回以上、12ヶ月以内に4回以上の急性中耳炎に罹患」(2013年度版 小児急性中耳炎ガイドラインより)

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発表内容

統計:年齢分布、分離菌の検討Haemophilus influenzaeについて

治療:気をつけていること、治療アルゴリズム治療経過

遷延性中耳炎について

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急性中耳炎と反復性中耳炎の比較(2011~2014年)

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

症例数

年齢

急性中耳炎症例数(2011年~2014年)

0

5

10

15

20

25

0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14

症例数

年齢

反復性中耳炎症例数

59例

838例

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耳漏・鼻咽腔細菌検査(15歳未満、2011-2014年)

HAEMOPHILUS_INFLUENZAE

38%

STREPTOCOCCUS

_PNEUMONIAE

17%

MORAXELLA_CAT

ARRHALIS

15%

S.EPIDERMIDIS

14%

STAPHYLO._AUREUS_(MRSA)

9%

STAPHYLOCOCCUS_AUREUS

3%

ESCHERICHIA_CO

LI

2%

ALPHA-STREPTOCOCCUS

2%

反復性中耳炎症例(52株)

HAEMOPHILUS_INF

LUENZAE

27%

STREPTOCOCCUS_

PNEUMONIAE

17%MORAXELLA_CATARRHALIS

15%

STAPHYLOCOCCUS_AUREUS

12%

S.EPIDERMIDIS

7%

BACILLUS_SP

6%

PSEUDOMONAS_AERUGINOSA

5%

STAPHYLO._AUREUS_(MRSA)

3%

反復性でない中耳炎症例(196株)

分離菌に違いがあるか?(Fisher's exact test)

p=0.005p=0.035

→ Haemophilus InfluenzaeとMRSAが反復性中耳炎に多い

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薬剤耐性化率(薬剤感受性検査で(I)または(R)の率)

0

20

40

60

80

100

HAEMOPHILUS_INFLUENZAE

反復あり 反復なし

22株 52株

0

20

40

60

80

100

STREPTOCOCCUS_PNEUMONIAE

反復あり 反復なし

10株 34株

0

20

40

60

80

100

MORAXELLA_CATARRHALIS

反復あり 反復なし

9株 29株

• 意外に耐性化率が低い• 耐性化率の差はないよう

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反復症例にH.Influenzaeが多いのは?

H.influenzaeは「細胞内寄生」し、免疫や抗生剤から逃れる

一旦軽快し、1-2週後に再燃することが多い

βラクタム剤(ペニシリン、セフェム、カルバペネム)効きにくい

細胞内寄生HIにジスロマックやオゼックスが有効(山中)

特に再燃を繰り返す症例で、HIがあれば、一次治療後ジスロマックかオゼックスを考慮

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治療気をつけていること

治療アルゴリズム

治療結果

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治療で気をつけていること

鼓膜所見にとらわれすぎない

発熱、痛み、耳漏がなければ、抗生剤は使わない(遷延性中耳炎は経過を見る)

発熱持続時は、原因が他疾患にないか検討(気管支炎、肺炎、ウイルス疾患等)

環境・年齢に応じて治療目標のレベルを変える

兄弟なし、集団保育もなし→鼓膜正常化、膿性鼻汁もなくなるまで

兄弟、集団保育あり→膿性鼻汁、滲出性中耳炎、遷延性中耳炎は抗生剤使わず、気管支炎肺炎などで入院にならないことを目標に

2歳以下では耐性菌誘導のリスクから、抗生剤はすばやくOff

頻回にウイルス感染を繰り返す場合は、補中益気湯など

抗生剤は必要なときだけ最小日数

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反復性中耳炎の治療アルゴリズム

急性症状時(発熱、疼痛、耳漏必須)

AMPC40mg/kg or CDTR-PI 15mg/kg 5-7日

一次治療下熱はするが、鼓膜所見が改善しない場合、

抗生剤Off

繰り返す場合は漢方(補中益気湯)考慮鼻咽腔菌検査

下熱しないとき胸部疾患等、他疾患の除外中耳炎が原因なら、鼓膜切開

二次治療

Tubing入院点滴

三次治療

Haemophilus Influenzaeで反復していれば、ジスロマックかオゼックス内服

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反復性中耳炎患者(59例) 経過

例数

一次治療繰り返しで自然消退 35

二次治療:オゼックス/ジスロマックで消退 9

二次治療:鼓膜切開 0

三次治療:Tubing 0

三次治療:点滴入院中耳炎 0

他疾患※ 5

OME移行し鼓膜切開・Tubing 4

転院・経過観察中 6

※ 仮性クループ1例、喘息性気管支炎3例、気管支喘息発作1例

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抗生剤処方状況(反復性中耳炎59例)

ワイドシリン200

71%

メイアクトMS

11%

オゼックス

8%

クラバモックス

4%

クラリシッド

4%

フロモックス

2%

抗生剤処方頻度

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遷延性中耳炎について

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遷延性中耳炎(Semi-hot ear)

「耳痛発熱などの急性症状が顕在化していない状態で、急性中耳炎と見まがう鼓膜所見を呈している状態が3週間以上持続している状態」

上出先生の論文:中耳の粘膜病変が高度で、抗生剤治療に抵抗性、複数回の鼓膜切開やTubingが必要。「切開排膿が適切に行われない事態が懸念される」「109例中83例(76%)にTubingを施行した」

そんなに積極的な治療が必要??

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H26年4月(10ヶ月時)から保育所。同時期より中耳炎繰り返し、他院で両側鼓膜切開

その後トミロン、オラペネム、オゼックスを3週間内服もらうも中耳炎が治らないとのことで再度鼓膜切開勧められたが、H26年5月1日当院初診。

初診時(11ヶ月)、発熱(-)、食思良好、膿性鼻汁と湿性咳嗽(Rhonchi)あり。

補中益気湯、オノン、ムコダイン、メプチン処方

以後上気道炎と思われる発熱は月1,2回あるが、抗生剤使用することなく経過。補中益気湯、オノン、ムコダイン、ホクナリンテープ継続時々OMEにはなるが、急性中耳炎はない。

0歳11ヶ月男児

初診時

13日後 21日後

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鼓膜所見はあてにならない?

ガイドラインスコアでは、24ヶ月未満:3点発赤:2点膨隆:8点→ 13点:重症??

でも全身状態はよい(=遷延性中耳炎)

ガイドライン:耳痛2点、発熱2点、啼泣不機嫌1点と、全身状態の評価が低すぎるのでは?鼓膜所見で治療を決めるのは?

啼泣があるとさらに膨隆しているように見え、過大評価してしまう。

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遷延性中耳炎の経過

遷延性中耳炎は滲出性中耳炎として対応しているが、特に重症感染症や後遺症を残した症例は今のところない。※当院OME1108例中チュービングに至ったのは14例

遷延性中耳炎こそ「無症候性中耳貯留液」ではないのか?76%にTubingするのは?→ ただし保存的に様子を見ることで、内耳障害などの後遺症を残さないのか、Evidence・調査は必要か

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まとめ

反復性中耳炎では、Haemophilus influenzaeが起炎菌と思われる例が多く、オゼックス内服で消退する症例があった。

反復性中耳炎治療に際しては、鼓膜所見にとらわれず全身状態に応じて抗生剤を使用することで、二次治療まででほぼコントロールできた。

遷延性中耳炎に対して、滲出性中耳炎と同様に保存的に経過を見たところ、ほとんどの症例が自然治癒した。