いち早く回復するアジア経済 -...

6
アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み 2010 White Paper on International Economy and Trade 158 第2章 欧米等先進国は、経済危機の影響による景気後退か ら緩やかに回復に向かうとみられるが、アジア経済は 2009 年第 2 四半期以降、既に著しい回復を見せている (第 2-1-2-1 図)。 アジア経済の回復には大きく分けて 2 つのパターン が存在する。輸出依存度の高いシンガポールやタイ等 については、実質 GDP 成長率が 2009 年の第 1 四半期 に大幅なマイナス成長となった後、2009 年第 4 四半期 には、韓国で前年同月比 6.0%、シンガポールで前年 同月比 4.0%、タイで同 5.8%まで回復しており、世界 経済危機前の成長率に戻っている。我が国について も、好調な中国を始めアジア地域にけん引され、2010 年にはプラス成長に転じると予想されている 2 一方、インド、インドネシアのように輸出依存度が 比較的低く、内需が底堅く推移した国では、実質 GDP 成長率がマイナスに転じることなく、危機前の 水準に近づいている。インドの 2009 年第 3 四半期の成 長率は、前年同期比 7.9%、インドネシアの 2009 年第 4 四半期の成長率は、同 5.4%となっている。また、中 国においても、拡大する投資・消費を背景に、2010 年第 1 四半期の成長率は前年同月比で 11.9%と高成長 を実現している。 (1)アジアの需要を底上げしたアジア各国の景気対策 中国を始めアジア各国では、公共投資や補助金を中 心とした大規模な景気対策が、投資や消費を刺激し、 需要を底上げしたことにより、世界の先陣を切って急 速な回復を実現している。 景気対策における財政支出額の対 GDP 比は、我が 国では 6.0%、中国では 13.3%に上るなど、アジア地 域では、欧米先進国の平均値の 2.2%を上回っている (第 2-1-2-2 図)。 アジア主要各国の景気対策の概要は、以下のとおり (第 2-1-2-3 表)。 ①日本 2008 812 月の 3 度に渡る景気対策において、定 額給付金による家計支援、雇用対策、中小企業資金繰 り対策等を実施(約 75 兆円)。2009 4 月の経済対策 では、低炭素革命(太陽光発電導入促進、環境対応車 買い替え促進等)関連、子育て支援、中小企業資金繰 り対策などを実施(約 57 兆円、国費約 15 兆円)、2009 12 月の経済対策では、雇用対策、景気対応緊急保 証の創設等を実施した(約 24 兆円、国費約 7 兆円)。 ②中国 2008 11 月に中国国務院常務会議決定として「内 2 いち早く回復するアジア経済 2 IMFWorld Economic Outlook 2010」では、2010 年の我が国の実質経済成長率を 1.7%と見込んでいる。内閣府「平成 22 年度の経済見 通しと経済財政運営の基本的態度」では平成22 年度の我が国の実質経済成長率を1.4%と見込んでいる。 第 2-1-2-1 図  アジア主要国の実質 GDP 成長率 -0.4 6.0 4.0 5.8 -1.2 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 1-3 4-6 7-9 10-12 2006 2007 2008 2009 日本 韓国 シンガポール タイ マレーシア 前年同期比(%) 資料:各国統計から作成。 10.7 6.0 5.4 1.8 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 2006 2007 2008 2009 中国 インド インドネシア フィリピン 前年同期比(%) 資料:各国統計から作成。

Transcript of いち早く回復するアジア経済 -...

  • アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み

    2010 White Paper on International Economy and Trade158

    第 2章 世界で存在感を高めるアジア

    欧米等先進国は、経済危機の影響による景気後退から緩やかに回復に向かうとみられるが、アジア経済は2009年第2四半期以降、既に著しい回復を見せている(第2-1-2-1図)。アジア経済の回復には大きく分けて2つのパターン

    が存在する。輸出依存度の高いシンガポールやタイ等については、実質GDP成長率が2009年の第1四半期に大幅なマイナス成長となった後、2009年第4四半期には、韓国で前年同月比6.0%、シンガポールで前年同月比4.0%、タイで同5.8%まで回復しており、世界経済危機前の成長率に戻っている。我が国についても、好調な中国を始めアジア地域にけん引され、2010年にはプラス成長に転じると予想されている2。一方、インド、インドネシアのように輸出依存度が比較的低く、内需が底堅く推移した国では、実質GDP成長率がマイナスに転じることなく、危機前の水準に近づいている。インドの2009年第3四半期の成長率は、前年同期比7.9%、インドネシアの2009年第4四半期の成長率は、同5.4%となっている。また、中国においても、拡大する投資・消費を背景に、2010年第1四半期の成長率は前年同月比で11.9%と高成長を実現している。

    (1)アジアの需要を底上げしたアジア各国の景気対策中国を始めアジア各国では、公共投資や補助金を中心とした大規模な景気対策が、投資や消費を刺激し、需要を底上げしたことにより、世界の先陣を切って急速な回復を実現している。景気対策における財政支出額の対GDP比は、我が

    国では6.0%、中国では13.3%に上るなど、アジア地域では、欧米先進国の平均値の2.2%を上回っている(第2-1-2-2図)。アジア主要各国の景気対策の概要は、以下のとおり

    (第2-1-2-3表)。

    ①日本2008年8~12月の3度に渡る景気対策において、定額給付金による家計支援、雇用対策、中小企業資金繰り対策等を実施(約75兆円)。2009年4月の経済対策では、低炭素革命(太陽光発電導入促進、環境対応車買い替え促進等)関連、子育て支援、中小企業資金繰り対策などを実施(約57兆円、国費約15兆円)、2009年12月の経済対策では、雇用対策、景気対応緊急保証の創設等を実施した(約24兆円、国費約7兆円)。

    ②中国2008年11月に中国国務院常務会議決定として「内

    2 いち早く回復するアジア経済

    2 IMF「World Economic Outlook 2010」では、2010年の我が国の実質経済成長率を1.7%と見込んでいる。内閣府「平成22年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」では平成22年度の我が国の実質経済成長率を1.4%と見込んでいる。

    第2-1-2-1図 �アジア主要国の実質GDP成長率

    -0.4

    6.0

    4.05.8

    -1.2

    -15.0

    -10.0

    -5.0

    0.0

    5.0

    10.0

    15.0

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    1-3

    4-6

    7-9

    10-12

    2006 2007 2008 2009

    日本韓国シンガポールタイマレーシア

    前年同期比(%)

    資料:各国統計から作成。

    10.7

    6.05.4

    1.8

    0.0

    2.0

    4.0

    6.0

    8.0

    10.0

    12.0

    14.0

    16.0

    2006 2007 2008 2009

    中国インドインドネシアフィリピン

    前年同期比(%)

    資料:各国統計から作成。

  • アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み 世界で存在感を高めるアジア 第1節

    通商白書 2010 159

    第2章

    需促進・経済成長のための10大措置 3」を打ち出し、2010年末までに4兆元を支出することとしている。さらに、自動車や鉄鋼等の10大産業調整振興政策や家電や自動車の購入補助(家電下郷、汽車下郷)といった消費刺激策も打ち出した。消費刺激策については、2009年12月の国務院常務会議で延長することが決定し、農村部の住民が建材を購入した場合に補助金を支給する「建材下郷」も加えられている。

    ③韓国政府は、金融危機以降急速に悪化した景気の回復を目的として、2008年11月、総額14兆ウォン(財政支出(11兆ウォン)+減税(3兆ウォン))の「経済難局克服総合対策」を発表した。次いで2009年1月、韓国政府は、「グリーン・ニューディール」政策を発表した。これは、省エネ・クリーンエネルギー技術開発を中心に、2012年までに中核9事業・関連27事業に、総事業費約50兆ウォン(正確には、50兆492億ウォン)を支出する計画で、約96万人の雇用創出を見込んでいる。さらに、2009年4月には28.4兆ウォンの2009年度追加補正予算(追加景気対策)を成立させた。また、内需の下支えのため、自動車の個別消費税の引き下げ(2008年12月~2009年6月)や新車買換促進減税(2009年5月~2009年12月)等も行われた。

    ④タイ2009年1月に、タイでは失業者の職業訓練、公共投

    資(鉄道、道路、空港等)、農業のインフラ整備、低

    燃費車普及支援(輸入関税率の引き下げ等)、低所得者向けに定額給付、中小企業支援(最低税率の適用拡大)等を盛り込んだ景気刺激策を発表(1,167億バーツ)。その後、3月には景気対策事業「ストロング・タイ2012」(予算額は総額で1兆4300億バーツ)を発表し、2009年10月から3年間の実施を予定している。

    ⑤マレーシア2008年11月、2009年3月に2度の景気刺激策を発表。中低価格住宅の建設や、地方のインフラ整備等に拠出するとしている。

    ⑥インドネシア2008年10月に、インドネシア政府は国債の買い戻

    しや外貨の買い戻し等の緊急経済対策を発表した(12.5兆ルピア)。2009年2月には、公共事業投資によるインフラ整備のほか、企業向けには法人税率の引き下げ、輸入関税・付加価値税、エネルギーコストへの補助、消費者向けには所得税率の引き下げなどによる減税などを盛り込んだ補正予算を成立させている(緊急経済対策と合わせて73.3兆ルピア)。

    3 事業分野は、〔1〕低中所得者層向け社会保障的な住宅建設、〔2〕農村インフラ整備、〔3〕鉄道・道路・空港・電力等の重大インフラ整備、〔4〕医療衛生・文化教育事業の発展、〔5〕生態環境整備、〔6〕自主的なイノベーションと構造調整、〔7〕地震被災地域の災害復興。

    第2-1-2-2図 �景気対策による各国の財政支出�(対GDP比)

    14.313.3

    9.4

    7.16.0 5.8 5.6 5.5

    4.13.2

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    タイ 中国 ベトナム インドネシア 日本 シンガポール 韓国 マレーシア フィリピン インド

    欧米平均2.2%

    (%)

    備考:欧米は、米国、カナダ、EU15(ギリシャ、アイルランド除く)、ノルウェー、スイス。

    資料:国連「World Economic Situation and Prospects 2010」から作成。

    第2-1-2-3表 �アジア主要国の景気対策と財政支出額

    内容 財政支出額(億ドル)

    日本

    ・定額給付金、減税措置(住宅ローン減税最大控除可能額引上げ等)、雇用対策、中小企業資金繰り対策

    ・低炭素革命、健康長寿・子育て支援、21世紀型インフラ整備

    2,975

    中国・インフラ整備を中心とした内需拡大対策・家電や自動車の購入補助(減税含む)などの消費

    刺激策5,853

    韓国

    ・総合経済対策(財政支出拡大、減税)と補正予算による雇用支援

    ・「グリーンニューディール政策」による公共事業・金融安定化のための支援

    534

    インド

    ・物品税引下げ、輸出企業支援、インフラ投資支援、住宅取得支援

    ・海外金融機関からの借入既成緩和、、国営銀行への資本注入

    384

    タイ ・中小企業支援、不動産市場の刺激等・雇用創出支援、低所得者向け定額給付 390

    マレーシア ・民間企業支援やインフラ投資等・中低価格住宅建設や地方インフラ整備 121

    インドネシア ・減税(所得税、法人税)、産業向け電力料金引き下げ・公共事業、インフラ投資等 71

    シンガポール・「回復パッケージ」として雇用保護・企業支援対策・企業の資金調達支援、中小企業融資の支援(融資

    枠及び政府保証の拡大等)106

    資料:経済産業省「通商白書2009年」、内閣府「世界経済の潮流2009年6月」、国連World Economic Situation and Prospects 2010から作成。

  • アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み

    2010 White Paper on International Economy and Trade160

    第 2章 世界で存在感を高めるアジア

    ⑦シンガポール企業の資金調達を支援するため、中小企業等への融資枠及び政府保証を拡大(23億シンガポールドル)。2009年度予算に「回復パッケージ」として雇用保護(雇用主に対し月給の12%を現金給付)、職業訓練、企業支援(法人税率の引き下げ等)、家計支援(物品・サービス税還付等)等を盛り込んだ(205億シンガポールドル)。

    (2)アジアの工業生産動向アジア各国では、消費刺激策による需要の増加により、工業生産が回復している(第2-1-2-4図)。中国では、家電製品の補助金政策により、デバイスやパネルの需要が増加した。特に韓国や台湾等では、中国向けの IT関連製品の輸出・生産が大きく回復している。また、中国では、景気対策に伴う建設財需要などの増加も生産増に寄与したとみられ、韓国では、減税により自動車の生産も伸びている。シンガポールでは IT

    関連に加え、非 ITの化学等で生産が回復している。さらに、ウォン安、円高等が、韓国企業の世界シェアの拡大の追い風となり、韓国では日本より一足早く生産が回復している。

    (3)中国を中心としたアジア域内貿易の活性化中国の景気対策は、自国のみならず、アジア域内の景気に大きな影響を及ぼしている。ASEAN、韓国、日本について、それぞれ中国、米国、EU向けの輸出動向をみると、いずれの国・地域も米国、EUへの輸出額は低迷しているものの、中国への輸出額は2009年に入り回復している(第2-1-2-5図)。アジア各国の景気対策は、特に中国を中心とした域内の貿易を活性化・緊密化させている。アジア域内の貿易比率は、2009年に入って上昇し、2009年10月には53%と世界経済危機前の水準を上回っている。また、中国側の統計から一般貿易(原材料除く)と加工貿易に分けて輸入状況をみると、部品を輸入し、

    第2-1-2-4図 �アジア主要国の鉱工業生産の推移

    マレーシア12.7

    タイ28.6

    シンガポール39.4

    日本18.5

    韓国31.8

    -40

    -30

    -20

    -10

    0

    10

    20

    30

    40

    50マレーシアシンガポール韓国

    タイ日本

    (前年同月比、%)

    資料:Bloombergから作成。

    (年月)

    鉱工業生産指数の推移①

    インド16.7

    中国12.8

    インドネシア5.5

    ベトナム13.6

    -10

    -5

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30

    2007年2月

    2007年4月

    2007年6月

    2007年8月

    2007年10月

    2007年12月

    2008年2月

    2008年4月

    2008年6月

    2008年8月

    2008年10月

    2008年12月

    2009年2月

    2009年4月

    2009年6月

    2009年8月

    2009年10月

    2009年12月

    2010年2月

    (前年同月比、%)

    資料:Bloombergから作成。

    鉱工業生産指数の推移②

    (年月)

    インド中国インドネシアベトナム

    2007年2月

    2007年4月

    2007年6月

    2007年8月

    2007年10月

    2007年12月

    2008年2月

    2008年4月

    2008年6月

    2008年8月

    2008年10月

    2008年12月

    2009年2月

    2009年4月

    2009年6月

    2009年8月

    2009年10月

    2009年12月

    2010年2月

    第2-1-2-5図 �アジア主要国・地域の対中国、米国、EU向け輸出の推移

    米国向け

    020406080100120140160180

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1

    2008 2009 2010

    (億ドル) ASEAN 10

    中国・香港向け

    EU向け

    資料:World Trade Atlasの中国・香港・米国・EUの輸出入総計から作成。

    0

    20

    40

    60

    80

    100

    120

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1

    2008 2009 2010

    (億ドル) 韓国

    中国・香港向け

    米国向け

    EU向け

    020406080100120140160180

    2008 2009 2010

    (億ドル) 日本

    中国・香港向け

    米国向けEU向け

  • アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み 世界で存在感を高めるアジア 第1節

    通商白書 2010 161

    第2章

    中国で組み立て、欧米等に再輸出するといった加工貿易は、緩やかに回復している。中国国内市場での最終消費が想定される一般貿易(原材料除く)は、2009年2月以降、加工貿易よりも速いスピードで拡大している(第2-1-2-7図)。このように、ASEAN、韓国、日本からの中国向け

    輸出の増加は、欧米向けの加工貿易によるものではなく、中国国内市場での消費が想定される一般貿易の増加が大きく寄与していると考えられる。中国の景気対策の影響からその持続可能性に注視する必要があるものの、中国の内需が拡大しつつあると考えられる。中国では、最終財輸入の急回復を誘導しているの

    は、内陸部の経済成長である。2008年11月から実施されている中国の4兆元の景気刺激策は、主に内陸部

    のインフラ整備を中心に構成されている。2009年の実質GDP成長率は、内陸部の重慶市では前年比14.9%、四川省は同14.5%、陝西省は同13.6%と中国全体の同8.7%を大幅に上回っている(第2-1-2-8図)。一方で、世界経済危機により輸出が大幅に落ち込んだことから、GDPの輸出依存度の高い上海市、浙江省、広東省といった沿海部地域では、内陸部よりも低い成長となっている。さらに、中国の輸出についてみると、アジア新興国の需要回復により、ASEAN・インド向けの最終財の輸出は、2009年8月から前年同月比プラスで推移しており、2009年12月には、同42.7%となっている(第2-1-2-9図)。こうしたアジア新興国向け輸出が拡大する一方で、中国の米国・EU向け輸出は、回復が遅れ

    第2-1-2-6図 �アジアの域内貿易比率の推移

    46

    47

    48

    49

    50

    51

    52

    53

    54

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10

    2006 2007 2008 2009

    (%)

    備考:アジアとは、ASEAN+6。資料:IMF「Balance of Payments Statistics」、World Trade Atlasから作成。

    第2-1-2-7図 �中国の品目別輸入状況の推移

    0

    50

    100

    150

    200

    250

    300

    2006 2007 2008 2009 2010

    一般貿易(原材料除く)加工貿易

    資料:CEIC Databaseから作成。

    (2006年=100)

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3

    第2-1-2-8図 �中国の地域別実質GDP成長率�(2009年)

    16.5

    13.112.412.0

    11.9

    11.7

    10.1

    10.0

    9.58.9

    8.2

    13.6

    13.3

    13.2

    13.1

    12.9

    11.110.7

    5.5

    16.9

    14.9

    14.513.9

    13.6

    12.4

    12.111.611.210.110.0

    8.1

    0

    2

    4

    6

    8

    10

    12

    14

    16

    18

    天津遼寧江蘇福建山東海南北京河北広東浙江上海湖南吉林湖北江西安徽

    黒龍江河南山西

    内蒙古重慶四川広西陝西

    チベット雲南寧夏貴州青海甘粛新彊

    沿岸部 中部 西部

    (%)

    資料:CEIC Database から作成。

    中国全体8.7%

    第2-1-2-9図 �中国の地域別最終財輸出動向

    42.7

    12.9

    1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112 1 2 3 4 5 6 7 8 9 101112

    2008 2009

    ASEAN・インド米国・EU

    -40-30-20-10010203040506070前年同月比(%)

    資料: World Trade Atlasから作成。

  • アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み

    2010 White Paper on International Economy and Trade162

    第 2章 世界で存在感を高めるアジア

    ている。アジア全体の最終財輸出の約6割は日米欧向け 4と

    されており、アジアの最終組立地とされる中国では、輸出総額が2009年12月にようやく前年同期比でプラスに転じるなど、回復に遅れがみられる。アジア経済の本格回復には、日米欧経済の復調が前提となる。しかし、中長期的には、アジア自身が外需のみならず、内需と両立した形で経済成長を実現できるような経済構造への変革が求められるところ、こうしたアジア内需拡大の動きが持続的なものとなることが期待される。

    (4)アジア向け投資の拡大各国政府による資金注入や政府保証による金融安定化策は、金融市場の不透明感を軽減させ、グローバルな資金の流れを回復に向かわせている。アジア向けの対外直接投資や証券投資等も拡大しており、経済危機の直接の影響が小さかったアジア金融市場に資本流入が進んでいる(第2-1-2-10図)。また、韓国ウォンや、インドネシアルピア等、世界経済危機後に大きく下落していたアジア通貨も回復しつつある(第2-1-2-11図)。こうした投資や資金流入がアジア経済の成長の原動力としても期待される一方で、地域によっては不動産価格の上昇等、資産インフレの懸念もみられ、各国の金融政策の動きに注目が集まっている。

    (5)引締めに転じるアジアの金融政策財政支出とあわせて行われてきた金融緩和策の中で、アジア各国の政策金利は引き下げられてきた。し

    かしながら、期待インフレ率の高まりや不動産価格の上昇等の資産インフレの懸念が生じていること、足元では消費者物価が上昇し始めていることなどから、各国で政策金利引上げの動きがみられるなど、出口戦略が模索され始めている(第2-1-2-12図)。アジア主要国における金融政策等の動きは、以下のとおり。

    ①中国中国では、2008年後半から政策金利が引き下げられ金融緩和政策をとってきた。2010年における「マクロ経済政策の基本方針」を決定する2009年12月の中国中央工作会議においても「適度に緩和的な金融政

    第2-1-2-10図 �アジア主要国への証券投資流入額(ネット)の推移

    Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ

    2006 2007 2008 2009

    ASEANインド香港韓国日本

    -2,000

    -1,500

    -1,000

    -500

    0

    500

    1,000

    1,500

    2,000(億ドル)

    備考:ASEANはインドネシア、タイ(2009Ⅰまで)、マレーシア(2008Ⅳまで)、シンガポール(2008Ⅳまで)、フィリピン、ベトナム。インドは2009Ⅰまで。

    資料:IMF「BOP」から作成。

    第2-1-2-11図 �アジア主要国の為替レートの推移

    2007年1月

    2007年3月

    2007年5月

    2007年7月

    2007年9月

    2007年11月

    2008年1月

    2008年3月

    2008年5月

    2008年7月

    2008年9月

    2008年11月

    2009年1月

    2009年3月

    2009年5月

    2009年7月

    2009年9月

    2009年11月

    2010年1月

    2010年3月

    2007年1月

    2007年3月

    2007年5月

    2007年7月

    2007年9月

    2007年11月

    2008年1月

    2008年3月

    2008年5月

    2008年7月

    2008年9月

    2008年11月

    2009年1月

    2009年3月

    2009年5月

    2009年7月

    2009年9月

    2009年11月

    2010年1月

    2010年3月

    資料:Bloombergから作成。

    (年月)

    資料:Bloombergから作成。

    (年月)

    インドネシアルピア102.1

    マレーシアリンギット94.1

    タイバーツ92.0 フィリピンペソ93.2

    ベトナムドン118.8

    (2007年1月1日=100)

    80

    90

    100

    110

    120

    130

    140

    150

    インドネシアルピアマレーシアリンギットタイバーツフィリピンペソベトナムドン

    対ドル為替レート②

    日本円72.3

    中国元87.5

    韓国ウォン122.5

    対ドル為替レート①(2007年1月1日=100)

    60

    80

    100

    120

    140

    160

    180日本円中国元韓国ウォンシンガポールドルインドルピー

    シンガポールドル91.2 インドルピー 102.7

    4 Global Trade Analysis Project(GTAP)DatabaseによりADB試算、2004年。

  • アジア「内需」とともに成長する我が国、持続的成長実現に向けたアジア・太平洋の枠組み 世界で存在感を高めるアジア 第1節

    通商白書 2010 163

    第2章

    策」を継続する方針を示している。こうしたなかで、中国人民銀行は預金準備率を2010年1月、2月、5月にそれぞれ0.5ポイント引き上げており、政策金利に変化はないものの、段階的な金融引締めの動きがみられる。

    ②韓国韓国銀行(中央銀行)は、2008年10月以降、政策

    金利を過去最低水準の2.0%まで引下げ、その後据え置いている。2009年11月の政策決定会合では、国内の生産が循環のピークに達していることなどから、韓国銀行総裁は「低金利の維持が経済に与える影響は、マイナス面よりプラス面の方が多い」との考えを示し、金融緩和を続けている。また同月には、韓国銀行はインフレ目標上限を3.5%から4.0%に引上げている。

    ③インドインドでは、2008年10月から2009年4月にかけて

    政策金利を引き下げる金融緩和政策を行った。しかし、2009年末以降、食品価格の高騰から物価上昇圧力が強まっており、インド準備銀行は2010年1月に預金準備率を0.75%ポイント引き上げた。また、同年3月、4月には政策金利(レポレート)を2か月連続で0.25%ずつ引上げるなど、金融引締めを進めている。

    ④インドネシアインドネシア中央銀行は、2009年8月に政策金利を

    6.5%に下げた後、消費者物価は、2010年のインフレ目標(4~6%)に沿っているためこの金利を据え置いている。

    ⑤マレーシアマレーシアでは、世界経済の回復と2009年10~12月期以降の国内経済の回復を理由に、2010年3月、5月に政策金利を0.25%ポイントずつ引上げて2.25%とした。インフレは緩やかな上昇にとどまると予測され

    第2-1-2-12図 �アジア主要国の政策金利と消費者物価指数の推移

    ベトナムインドネシア中国インド

    ベトナム8.0

    インド4.8

    資料:Bloombergから作成。

    (年月)4

    6

    8

    10

    12

    14

    16政策金利の推移②政策金利の推移①

    フィリピンマレーシア韓国タイ日本

    フィリピン4.0

    韓国2.0 タイ1.3

    日本0.1

    (年月)

    2008年3月

    2008年4月

    2008年5月

    2008年6月

    2008年7月

    2008年8月

    2008年9月

    2008年10月

    2008年11月

    2008年12月

    2009年1月

    2009年2月

    2009年3月

    2009年4月

    2009年5月

    2009年6月

    2009年7月

    2009年8月

    2009年9月

    2009年10月

    2009年11月

    2009年12月

    2010年1月

    2010年2月

    2010年3月

    2008年1月

    2008年2月

    2008年3月

    2008年4月

    2008年5月

    2008年6月

    2008年7月

    2008年8月

    2008年9月

    2008年10月

    2008年11月

    2008年12月

    2009年1月

    2009年2月

    2009年3月

    2009年4月

    2009年5月

    2009年6月

    2009年7月

    2009年8月

    2009年9月

    2009年10月

    2009年11月

    2009年12月

    2010年1月

    2010年2月

    2010年3月

    資料:Bloombergから作成。

    0

    1

    2

    3

    4

    5

    6

    7(%)

    2007年2月

    2007年4月

    2007年6月

    2007年8月

    2007年10月

    2007年12月

    2008年2月

    2008年4月

    2008年6月

    2008年8月

    2008年10月

    2008年12月

    2009年2月

    2009年4月

    2009年6月

    2009年8月

    2009年10月

    2009年12月

    2010年2月

    2007年2月

    2007年4月

    2007年6月

    2007年8月

    2007年10月

    2007年12月

    2008年2月

    2008年4月

    2008年6月

    2008年8月

    2008年10月

    2008年12月

    2009年2月

    2009年4月

    2009年6月

    2009年8月

    2009年10月

    2009年12月

    2010年2月

    資料:Bloombergから作成。

    (年月)

    資料:Bloombergから作成。

    (年月)

    インドネシア3.8

    インド1.5 中国2.7

    ベトナム8.5

    消費者物価指数の推移②

    インドネシアインド中国ベトナム

    マレーシアフィリピン日本韓国タイ

    (前年比、%) 消費者物価指数の推移① (前年比、%)

    -5

    -3

    -1

    1

    3

    5

    7

    9

    11

    13

    15

    マレーシア1.3

    韓国2.7タイ4.1

    マレーシア2.3

    インドネシア6.5

    中国5.3

    フィリピン4.2

    日本2.6

    -5

    0

    5

    10

    15

    20

    25

    30