生物資源科学実験(学部3年目)
作物学研究室 担当2013年 6月18日 ~ 7月10日
毎週 火・水曜日計8回
植物の成長程度の把握の仕方を、圃場に栽植してある作物を用いて、教えます。
• 圃場試験
• 実験室内実験 作物から試料を採取する. 試料中の成分について定量する.
作物を栽培する. 栽培中のバイオマスの変化を追う.
大きく分けて2種類の実験
成長解析
内生成分分析
実験の日程成長解析 植物体の成長に伴う
乾物変化を追う
緑色のエリア
生育中のバレイショに異なる処理を行い,成長の速度を調査,処理が成長に及ぼす影響について解析する
黄色のエリア
窒素分析作物生産にとって重要な肥料の1要素,窒素の動向を調べる
処理が葉内の窒素含有率に及ぼす影響について調査する。また傍証的に、タンパク質含有量とSPAD(緑度値)についても調査。
青色のエリアデンプン分析 多くの作物で,光合成産物の最終形態としてストックされる
デンプン,その含有量を調べる処理が、葉内の炭水化物蓄積量(貯蔵糖:デンプン)に及ぼす影響について調査。
植物(作物)の成長を把握するには
今回は...乾物重を測る
茎の長さ,葉の枚数...etc
(バイオマスの指標)
水(体内含水率)の変化を省いて考える
ex: 未成熟な組織:80 - 90 %
成熟した組織:70 - 80 %
発育ステージによって含水率は変化する
乾物重の増加パターンを追う乾物重
時間
いくつかの時期の植物組織を採取・乾燥させ,その重量を量る.
S字曲線
乾物重
時間
乾物重の増加パターンが異なる2種の作物 の場合
2種の作物,成長(乾物重増加)のスピードが異なる.T1 T2
W2
W1
w2
w1
これらのスピード を比べるためには,場面を限定した比較が必要
場所と時系列を限定...乾物重
時間
W2
W1
T1 T2
w2
w1
乾物増加量(W2 - W1) / (T2 - T1)
時期限定!1/A (m2)
面積限定
個体群成長速度 Crop Growth Rate =
単位(g / m2 / day)
成長関数
乾物重
時間
W2
W1
T1 T2
w2
w1
CGR (g / m2 / day)
では,この2種作物で,CGRはなぜ異なったのか?
収量が高い種の作物の CGR > 収量が低い種の作物のCGR
CGRの差が,最終的な収量の差に影響した
CGR=個体群成長速度!乾物生産のスピード 光合成が関与?
光合成能力を測るには何を測定すれば良い?
6CO2 + 6H2O = (CH2O)6 + 6O2
光合成器官では,
の化学反応が行われている.
CGRの差異を光合成能力に言及するには光合成反応系におけるCO2やO2の収支の経時変化を追えば良い.
光合成反応系におけるCO2やO2の収支の経時変化を追う
個体や群落の全光合成器官: 個体ごと同化箱に入れて,各ガスの出入りを綿密に測定.
同化箱法(ガスチャンバー法)
圃場条件下では極めて難しい.大掛かりな測定システムが必要
個体中のある1枚の葉:小規模な測定装置で個葉の能力を推し量る.
その値が,個体や群落の値を反映する代表値か不明その葉の能力が、たまたま特徴的である可能性はおおいにある.
光合成反応系におけるCO2やO2の収支の経時変化を追う
個体内、群落内、更に圃場内における「多点」測定が必要
LICOR社 LI-6400
このような特別な施設や装置を使わずにもっと簡単に光合成能力を測るには?
個体が有する「葉面積」を測る
葉面積指数(LAI: Leaf Area Index)単位土地面積あたりの葉面積(m2 / m2)
葉面積
時間T1 T2
L2
L1
mean LAI = (L2-L1) / (lnL2-lnL1)
mean LAI(平均葉面積指数)を算出する
葉面積
時間T1 T2
L2
L1
L2 = L1*eR(T2-T1)
mean LAI = (L2-L1) / (lnL2-lnL1)
= (1/R) *L1*(eR(T2-T1) - eR0)
= (1/R) * (L2-L1)
一定期間(T1~T2)における葉面積:積分式 !T2-T1L1*eRTdt = [(1/R)*L1*eRT ]T2-T1 0 0
L2 / L1 =eR(T2-T1)
L2 = L1*eR(T2-T1)
ln(L2 / L1) = ln eR(T2-T1) = R (T2-T1)
R = (lnL2 - lnL1) / (T2-T1) 代入
= [(T2-T1)*(L2-L1)] / (lnL2-lnL1)
平均値なので,(T2-T1)で割る.
係数Rの算出
mean LAI(平均葉面積指数)を算出する葉面積指数(LAI: m2 / m2)
個体群成長速度(CGR:g / m2 / day)
光合成器官の大きさ(LAI: m2 / m2)作物の乾物生産速度(CGR:g / m2 / day)
乾物生産速度/光合成器官の広さ
純同化率(NAR: Net Assimilation Rate)葉面積あたりの乾物生産速度(g / m2 / d)
葉面積1m2あたり葉の成長寄与度
乾物生産速度/光合成器官の大きさ
g / m2 / d
NAR= CGR / mean LAI
個葉の乾物生産能力(炭素固定能力)の高さ
純同化率(NAR)
個葉の光合成能を表している
各器官の乾物重増加速度
乾物増加量(W2 - W1) / (T2 - T1)
時期限定!1/A (m2)
面積限定単位
個体群成長速度(CGR)
Crop Growth Rate =
(g / m2 / day)
器官別の乾物重増加速度もCGRと同様に算出
葉の場合/ (T2 - T1)
時期限定!1/A (m2)
面積限定単位
葉重増加速度(Leaf GR)
Leaf Growth Rate =
(g / m2 / day)葉乾物増加量(LW2 -L W1)
茎の場合
根の場合
Stem Growth Rate 茎重増加速度(Stem GR)
Root Growth Rate 根重増加速度(Root GR)
同様に
各器官への乾物分配率Dry matter distribution ratio: DR
葉の場合/ CGR
個体群成長速度
!100
葉への乾物分配率Leaf DR = (%)
葉乾物重増加速度
Leaf GR
単位
茎の場合
根の場合
Stem DR 茎への乾物分配率
Root DR 根への乾物分配率
同様に
塊茎の場合 Tuber DR 塊茎への乾物分配率
成長解析におけるこれら成長関数は,作物の成長を客観的に評価するための重要な値となる.
今回,成長解析に用いる作物は, ジャガイモ
5/08 ジャガイモ 品種「男爵薯」植付6/06 中耕除草6/05 萌芽 6/07 物質A処理→
6/19 第1回目サンプリング7/02 第2回目サンプリング
2種類の処理◯物質A 30ppm溶液を 生長点を中心として葉面に 散布(物質A散布区)◯上記の薬剤の代わりに 水道水を散布(対照区)
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