26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1....

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平成 25 年度 休廃止鉱山鉱害防止技術等調査研究事業 平成 26 3 地方独立行政法人 北海道立総合研究機構 環境・地質研究本部 地質研究所

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平成 25 年度 休廃止鉱山鉱害防止技術等調査研究事業

報 告 書

平成 26 年 3 月

地方独立行政法人 北海道立総合研究機構

環境・地質研究本部

地質研究所

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目 次

1 序論 ................................................................ 1-1

1-1. 背景 ................................................................ 1-1

1-2. 目的 ................................................................ 1-2

1-3. 委託期間 ............................................................ 1-2

1-4. 実施内容 ............................................................ 1-2

1-5. 調査委員会の設置・運営 .............................................. 1-8

1-6. 成果物 .............................................................. 1-9

2 各論 ................................................................ 2-1

2-1. 実証試験 ............................................................ 2-1

2-2. モニタリング.……………………………………………………………………………2-2-1

2-3. 適地可能性調査………………………………………………………………………・2-3-1

2-4. 坑廃水調査(自然浄化速度)………………………………………………………・2-4-1

2-5. バックグラウンド等水質測定…………………………………………………………・2-5-1

3 総論…………………………………………………………………………………………3-1

3-1. 本庫鉱山におけるパッシブトリートメント………………………………………・3-1

3-2. 適用可能性調査のまとめと今後の調査への提言…………………………………・3-3

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【図表一覧】

図 1-4-1-1 本庫鉱山位置図

図 1-4-1-2 表面流型人工湿地概略図

図 2-1-1-1 石灰石中和反応槽概略図と造成状況

図 2-1-2-1 表面流型人工湿地位置図

図 2-1-2-2 表面流型人工湿地詳細図(a)

図 2-1-2-2 表面流型人工湿地詳細図(b)

図 2-1-2-3 表面流型人工湿地の造成地 工事着工前

図 2-1-2-4 表面流型人工湿地の造成工事(2013 年 9 月)

図 2-1-2-4 表面流型人工湿地の造成工事(2013 年 10 月)

図 2-1-2-5 表面流型人工湿地の造成工事 遮水シート張

図 2-1-2-6 表面流型人工湿地の造成工事 土壌搬入

図 2-1-2-7 表面流型人工湿地の造成工事 ヨシ移植

図 2-1-2-8 表面流型人工湿地の造成工事完了

図 2-1-2-9 表面流型人工湿地の造成地 完了後

図 2-1-3-1 表面流型人工湿地の調査結果

図 2-2-1-1 表面流型人工湿地における観測機器設置位置

図 2-2-1-2 観測機器設置状況(上段:流入桝、下段:流出桝)

図 2-2-1-3 表面流型人工湿地の調査結果(水量(L/min))

図 2-2-1-4 表面流型人工湿地の調査結果(電気伝導度(25℃mS/m))

図 2-4-1 本庫鉱山酸化試験結果

図 2-4-2 A 鉱山酸化試験結果

図 2-4-3(a) B 鉱山酸化試験結果

図 2-4-3(b) B 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

図 2-4-4(a) C 鉱山酸化試験結果

図 2-4-4(b) C 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

図 2-4-5 D 鉱山酸化試験結果

図 2-4-6(a) E 鉱山酸化試験結果

図 2-4-6(b) E 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

図 2-4-7(a) F 鉱山酸化試験結果

図 2-4-7(b) F 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

図 2-4-8(a) G 鉱山酸化試験結果

図 2-4-8(b) G 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

図 2-4-9(a) H 鉱山酸化試験結果

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図 2-4-9(b) H 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

図 2-4-10(a) J 鉱山酸化試験結果

図 2-4-10(b) J 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

図 2-4-11 酸化試験結果まとめ

図 2-3-3-1 A 鉱山周辺図

図 2-3-3-2 A 鉱山処理場上流側の適地位置図

図 2-3-3-3 A 鉱山処理場上流側の適地状況

図 2-3-3-4 A 鉱山処理場下流側の適地状況

図 2-3-3-5 B 鉱山周辺の適地状況

図 2-3-3-5 B 鉱山周辺の適地状況

図 2-3-3-6 C 鉱山周辺の適地状況

図 2-3-3-7 D 鉱山周辺の適地状況

図 2-3-3-9 E 鉱山南麓側坑口~処理場の適地状況(富士上部坑口前)

図 2-3-3-10 F 鉱山処理場下流の適地状況

図 2-3-3-11 G 鉱山処理場周辺の適地状況

図 2-3-3-12 H 鉱山処理場下流の適地状況

図 2-3-3-13 J 鉱山処理場周辺の適地状況

図 2-2-3-1 表面流型人工湿地における成分濃度の変動①

図 2-2-3-1 表面流型人工湿地における成分濃度の変動②

図 2-3-1 自治体担当者のパッシブ処理技術導入に対する意向イメージ

図 3-1 滞留時間と濃度除去率の関係(Zn)

表 1-4-1-1 本庫鉱山の坑内水・坑廃水の水質

表 1-4-1-2 水量負荷値、水量及び面積の関係

表 1-4-2-1 現地調査実施日及び項目

表 1-4-3-1 観測器の仕様・性能

表 2-1-1 実証試験における処理原水の水質

表 2-1-1 実証試験における処理原水の水質

表 2-1-2-1 工事概要

表 2-1-2-2 表面流型人工湿地造成工事工程表

表 2-1-3-1 現地調査結果

表 2-2-3-1(a) 金属成分の分析結果

表 2-2-3-1(b) 一般成分の分析結果

表 2-5-1 A 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-2 A 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

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表 2-5-3 B 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-4 B 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-5 C 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-6 C 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-7 D 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-8 D 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-9 E 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-10 E 鉱山(北麓側)バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-11 E 鉱山(南麓側)バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-12 F 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-13 F 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-14 G 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-15 G 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-16 H 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-17 H 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 2-5-18 J 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-19 J 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

表 3-1 水量、滞留時間および容積の関係

表 2-3-3-1 適地調査結果一覧表

表 2-4-1 酸化試験採水試料の概要

表 2-3-1 自治体担当者のパッシブ処理技術導入に対する懸念

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1-1

1 序論

背景 1-1

休廃止鉱山においては、鉱石の採掘跡等から酸性で、鉛、亜鉛などの重金属が含まれて

いる坑廃水が発生する場合がある。こうした坑廃水を未処理のまま放置すると、休廃止鉱

山の下流に位置する公共水域において人の健康、農畜産物及び水産物等に深刻な社会問題

を引き起こす恐れが高く、このため地方公共団体等が中和処理等の鉱害防止事業を実施し

ている。 これら鉱害防止事業は、金属鉱業等鉱害対策特別措置法に基づく「特定施設に係る鉱害

防止事業の実施に関する基本方針(平成 15 年経済産業省告示第 90 号)」に則って、国の財

政支援の下、着実に実施されている。現在、坑廃水処理については、薬剤を用いた中和処

理法が、効率的・効果的な処理方法として、国内で広く用いられている。しかし一方で、

中和処理は、薬剤費、電力の使用など処理にかかる費用が高く、財政的な負担が大きい。

さらに坑廃水処理は収益を伴わないことに加え、永続的な事業であるという特殊性を有す

ことから、これに要するコストの低減は、中長期に亘る国民経済的負担の軽減という観点

からも重要な課題となっている。 従って、自然の浄化能力を活用したメンテナンスフリーの坑廃水処理システムであるパッ

シブトリートメントなど、コスト削減に大きく寄与する新たな鉱害防止技術の国内休廃止

鉱山への適用可能性等について、技術面、経済面等から検討を行い、その導入促進を図っ

ていくことが必要不可欠である。 このため、平成 25 年度から 2 か年に渡ってパッシブトリートメント(人工湿地による坑

廃水処理)技術について、人工湿地の仕様、処理効果およびコスト等について考察を行い、

さらに国内の鉱山へのパッシブトリートメントの適用可能性についても検討を行い、パッ

シブトリートメントの実用化および導入可能性について評価することとなった。 本調査結果については、現在、国の補助金を受け、休廃止鉱山の坑廃水処理を実施して

いる地方自治体等が、パッシブトリートメントの導入を検討する際の判断材料として活用

され、パッシブトリートメントが導入された場合には、国民経済的負担の軽減が計られる

こととなる。

目的 1-2

本調査研究事業は、休廃止鉱山の坑廃水処理を実施するにあたって、現場導入が期待さ

れるパッシブトリートメント(人工湿地による坑廃水処理)技術について実際の現場にお

いて、実用規模の人工湿地による実証試験を行い、浄化能力の検証、課題の抽出、改善策

の検討を実施する。さらに、技術面、経済面等からパッシブトリートメントの導入可能性

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1-2

について検討を行い、中長期的な坑廃水処理の費用の削減を図ることを目的とする。

委託期間:平成 25年 8月 6日~平成 26年 3月 20日 1-3

実施内容 1-4

1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成)

現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

流型人工湿地を造成し、実証試験を実施する。この試験により人工湿地の仕様、処理効果

およびコスト等について考察が可能となる。 モデル鉱山は、北海道枝幸郡枝幸町歌登の本庫鉱山とした。本庫鉱山においては、人工

湿地処理の導入をめざし、北海道及び地質研究所が、坑廃水調査、石灰石槽による簡易中

和試験及び小規模人工湿地による処理試験を平成 16 年より実施している(平成 22 年度から

は、北海道からの委託により実施)。これらの各種観測データ、水質変動及び処理試験のノ

ウハウ等を活用できることから当鉱山をモデル鉱山として選定した。 本庫鉱山の所在を、図 1-4-1-1 に示す。本庫鉱山は昭和 57 年より北海道が事業主体とな

って坑廃水処理を行っている義務者不存在鉱山であり、現在、100m 坑、70m 坑、文殊坑、

三和坑及び平安通洞坑の各坑口から坑内水の流出が確認されている。また、平安通洞坑及

び昭栄坑の坑口付近にズリ堆積場が存在し、これらの堆積場からも酸性の滲出水の流出が

確認されている。各坑廃水の水質(平成 24~25 年の平均値)を、表 1-4-1-1 に示す。各坑内

水で、排水基準の未達がある。 表 1-4-1-1 本庫鉱山の坑内水・坑廃水の水質

T-Fe(鉄) Cu(銅) Pb(鉛) Zn(亜鉛) Cd(カドミウム) As(砒素)

100m坑 5.2 8.78 0.01 0.15 0.62 <0.005 0.070

70m坑 6.3 9.45 <0.01 0.09 1.54 <0.005 0.156

文殊坑 4.8 0.76 0.07 0.52 0.67 <0.005 <0.005

三和坑 5.8 11.0 0.15 0.14 3.07 0.009 0.231

平安通洞坑 6.8 12.0 0.25 0.13 2.66 0.011 0.282

平安通洞坑前ズリ

堆積場滲出水4.0 0.51 0.68 1.32 6.56 0.045 <0.005

昭栄坑前ズリ堆積

場滲出水6.0 2.15 <0.01 0.06 0.48 <0.005 <0.005

排水基準値 5.8~8.6 10.0 3.0 0.10 5.00 0.10 0.10

pHmg/L

(彩色(オレンジ色)の部分は排水基準値未達を示す)

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1-3

枝 幸 郡

枝幸町歌登地区

本 庫 鉱 山

本 庫 鉱 山

札幌市

サケマス孵化場

第一~三沈澱池

第四沈澱池

第五沈澱池

0 500m

図 1-4-1-1 本庫鉱山位置図

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平成 25 年度の本調査研究事業の実証試験で造成した表面流型人工湿地は、本庫鉱山にお

いて将来的に現在の中和処理に代わる処理施設として活用できる規模とした。造成に際し、

下記の検討を行った結果、面積は 1、600~2,400m2の範囲を想定した。最終的には事業の

仕様書、用地の確保及び造成費用などを考慮して検討した結果、面積:1、927m2の表面流

型人工湿地を造成した。 本庫鉱山で 2006 年に造成した小規模人工湿地(面積:367m2)の場合と同様に、水量

負荷値を基準とする。水量負荷値は水量(m3/day)を人工湿地面積(m2)で除した値で、

排水処理における人工湿地では、この値は 0.02~0.2m/dayが適しているとされてい

る。小規模人工湿地の試験の結果では 0.2m/day前後より小さな値で効果がより高く

なっていたことから、本調査研究事業における表面流型人工湿地の水量負荷値は 0。2m/day程度に設定する。

実証試験に用いる処理原水の年平均水量:200l/min(288m3/day)である。ただし、処

理原水の水量は雪解けの時期(4 月下旬~6 月上旬)及び降雨時には増加し、平均水量

大きく超える。このため処理原水量の想定は平均水量から、その 1.5 倍 (約300L/min(432m3/day))程度とした。この水量の範囲で年間の 8~9 割の期間・日数が

対応可能である。 上記の想定と表 1-4-1-2 に示す水量負荷値および処理水量の関係から、面積を 1,600

~2,400m2とする。 表 1-4-1-2 水量負荷値、水量及び面積の関係

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1-5

本調査研究事業で造成した表面流型人工湿地と石灰石中和反応槽の仕様は以下の通り。 【表面流型人工湿地】 幅:20m、長さ:約 99m(幅:長さ、約1:5) 深さ:0.7m(水深 0.1m、湿地部) 面積:約 1,927m2(沈澱池:200m2、湿地部:約 1,712m2、越流部:15m2) 植生:ヨシ(枝幸町歌登で自生しているヨシを 0.5m 間隔で移植、総本数:約 1,640 本) 【石灰石中和反応槽】 幅:6m、長さ:16m、深さ:0.3m(石灰石部分) 面積:約 90m2 石灰石使用量:30m3(粒径:40~80 ㎜)

また、図 1-4-1-2 に処理原水の流れ、石灰石中和反応槽及び表面流型人工湿地の概略を示

す。鉱山元から流下する処理原水は、分流桝に一旦導入される。分流桝では、水量が大き

く増加した場合に、表面流型人工湿地と既存の集合桝~中和処理施設へ分流される。

1-4-2. 現地調査

処理原水と造成した表面流型人工湿地の流出水について、現地で水量、pH、電気伝導度

及び水温について測定を行い、併せて金属成分等の分析用試料を採取した。平成 25 年度に

ついては、表 1-4-2-1 に示す日程及び項目で実施した。表では実施した項目を○、未実施は

×を示している。現地での測定方法は、水量は容器法(13L 容器)、pH は携帯型 pH メータ

ー(横河電気社製:PH-81)、電気伝導度及び水温は携帯型電気伝導度計(堀場社製:ES-51)によってそれぞれの項目を測定した。

:処理原水の流れ

:観測機器設置点

図 1-4-1-2 表面流型人工湿地概略図

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1-6

表 1-4-2-1 現地調査実施日及び項目

水量 pH 電気伝導度 水温 採水 2013 年 11 月 16 日 ○ ○ ○ ○ ○ 2013 年 11 月 26 日 ○ ○ ○ ○ × 2013 月 12 月 10 日 ○ ○ ○ ○ ○ 2014 年 1 月 30 日 × ○ ○ ○ ○ 2014 年 2 月 13 日 × ○ ○ ○ ○

1-4-3. モニタリング

処理原水と造成した表面流型人工湿地の流出水について、水量及び水質(電気伝導度)

の連続観測を行い、通年の変動状況を把握する。処理原水については石灰石中和反応槽の

上流側に、流出水については表面流型人工湿地の流出口に、それぞれ設けた各水量観測マ

ス内に観測機器を設置した。観測機器の設置は平成 25 年 11 月 14 日、観測データの収得は

11 月 15 日 9 時 40 分より開始した。各観測機器の仕様・性能を表 1-4-3-1 に示す。 水位と電気伝導度については、20 分間隔で上記観測機器に記録する。水量は、現地調査

時に容器法(時間当たり(数秒~10 秒程度)の水量を測容器(13L 容器)で測定する)で測定した

実測値と、その時に記録された水位の観測値から、水位と水量の関係式(水位―水量曲線)を決定し、この式を用いて、記録された水位の観測値を水量に換算する。電気伝導度は、

観測器において 25℃に換算され、mS/㎝の単位で記録された値を、mS/m の単位に換算し

て取りまとめた。

表 1-4-3-1 観測器の仕様・性能

観測機器の仕様と性能 処理原水観測用 STS 製 DL/70N 水位-電気伝導度計 SN:771850

性能 水位 測定範囲:0~10m

精度 :±0。1%FS 分解能 :0。01%FS(5m計で 0。5mm)

電気伝導度 測定範囲:20μS/cm~20mS/m 精度 :±2%FS 分解能 :1μS/cm

人工湿地流出水観

測用 STS 製 DL/70N 水位-電気伝導度計 SN:771851 性能 同上

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1-4-4. 適応可能性調査

国内の休廃止鉱山を対象としたパッシブトリートメント技術の導入可能性について評価

を行う。本調査は、全国の休廃止鉱山を対象として実施されることから、全国の休廃止鉱

山に関する水量・水質等の資料を有している独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機

構(以下、JOGMEC という)に再委託し実施した。委託期間は平成 25 年 9 月 26 日~平成

26 年 3 月 7 日である。 今回の適用可能性調査の対象とした鉱山は以下の 9 鉱山とし、各鉱山において下記の現

地調査を行った。 ・A 鉱山(秋田県横手市) ・B 鉱山(山形県南陽市) ・C 鉱山(京都府福知山市) ・D 鉱山(京都府亀岡市) ・E 鉱山(岡山県備前市)

・F 鉱山(福岡県糟屋郡久山町) ・G 鉱山(大分県豊後大野市) ・H 鉱山(宮崎県東臼杵郡美郷町) ・J 鉱山(鹿児島県鹿児島市)

【現地調査】 現地調査は、以下に示す事項を測定、観察及び記録した。

(ア) 坑廃水処理事業主体への聞取調査:パッシブトリートメント技術導入に対する

事業主体の意向や懸念についてヒアリングし、記録した。 (イ) 適地調査:鉱山周辺域を含め、パッシブトリートメント施設を建設する場合の

適地調査を行い、必要に応じ簡易測量を行った。 (ウ) 坑廃水調査:要処理坑廃水を採水し、pH 及び電気伝導度等の水質を把握したほ

か、表面流型人工湿地処理を想定した坑廃水の Fe 酸化速度と重金属除去速度を

把握した。 (エ) バックグラウンド水質測定:坑廃水が放流される河川の上流の水量、pH 及び電

気伝導度等の水質を把握するほか、鉱山下流直近の利水点及び環境基準点の pH及び電気伝導度等の水質調査を行った。

調査委員会の設置・運営 1-5

環境影響等の専門家 6 名からなる委員会を設置し、委員会を開催する。本委員会の設置・

運営についても、JOGMEC に委託している。JOGMEC は経済産業省の委託事業を数多く

実施しており、委員会の設置・運営に関して十分な経験・実績を有している。専門委員に

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氏名 役職 専門

井上 千弘 国立大学法人東北大学大学院 環境科学研究科 教授環境修復、地下水・土壌汚染

五十嵐 敏文国立大学法人北海道大学大学院 工学研究院 環境循環システム部門 教授

土壌・地下水汚染の評価と浄化、湿原環境保全、坑廃水処理

笹木 圭子 国立大学法人九州大学大学院 工学研究院 教授資源処理・環境修復工学

所 千晴 早稲田大学 理工学術院 環境資源工学科 准教授資源循環工学

田﨑 雅晴 清水建設株式会社 技術研究所 環境バイオグループ グループ長土壌汚染、微生物、環境影響評価

張 銘独立行政法人産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門 地圏環境リスク研究グループ グループ長

環境リスク管理

ついては下記に示す。本委員会においては、観測・分析データの妥当性や調査の進め方等

について検討を行う。 平成 25 年度の委員会は、平成 26 年 2 月 6 日、JOGMEC 東京本部において開催し、本

事業で得られた知見や情報を審議した。審議内容を別添資料「平成 25 年度鉱害防止技術適

用可能性調査検討委員会議事録」に示す。

成果物:調査報告書電子媒体(CD-ROM)5式、実績報告書及び収支清算書一式 1-6

Page 14: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-2-1

2 各論

2-1. 実証試験

本実証試験は、pHの上昇などを目的とした石灰石中和反応槽と実用規模の表面流型人工

湿地(1,927m2)を造成し、表 1-4-1-1 に示す坑廃水で昭栄坑前ズリ堆積場滲出水を除いた各

坑廃水を集水桝で混合させた水 (以降処理原水とする)を用いて実施した。 石灰石中和反応槽は人工湿地の上流側に設置しており、処理原水を最初に石灰石中和反

応槽を通過させた後、表面流型人工湿地に導入している。なお坑廃水が排水基準を超えた

まま環境中に流出することがないよう、表面流型人工湿地の通過後は、現在中和処理を行

っている中和処理施設(以降中和小屋)に導入し、中和処理を行った後、沈澱地に放流するよ

うにした。 処理原水の水量・水質について表 2-1-1 に示す。この値は、本庫鉱山で実施している小規

模人工湿地の試験結果(平成 24 年分)に基づいており、平成 24 年の平均値、最大値及び最小

値である。pH、鉛、亜鉛及び砒素の濃度が排水基準を超えている。 表 2-1-1 実証試験における処理原水の水質

2-1-1. 石灰石中和反応槽 石灰石中和反応槽は、1) 表面流型人工湿地は坑廃水のpHを上げる能力がほとんど無い ことから、簡易な方法で処理原水のpHを上昇させる、2) 表面流型人工湿地に移植したヨシ

の保護(特に移植から 3 年程度の期間)のためにpHの低い処理原水の流入を避ける、ことを

目的として表面流型人工湿地の上流部に設置した。石灰石中和反応槽の仕様を図 2-1-1-1 に

示す。石灰石を 30 ㎝程の厚さで敷き詰めた幅 2mの水路を 3 基接続し、そこに処理原水を

自然流下で導入してpHを上昇させる。面積は約 90m2 で、使用した石灰石の粒径は 40~80㎜で、概ね 80 ㎜に統一した。石灰の使用量は 30m3である。水路の底面及び側面には遮水

シートを張り、周囲に漏水がないようにした。 石灰石中和反応槽の仕様 ・幅:6(2m×3)m×長さ:16m×深さ:0.5m ・底面・側面に遮水シートを張る

T-Fe(鉄) Cu(銅) Pb(鉛) Zn(亜鉛) Cd(カドミウム) As(砒素)

処理水平均値 5.2 196 5.1 0.25 0.63 3.71 0.017 0.095

最大値 6.4 471 7.7 0.62 1.02 7.80 0.038 0.189

最小値 3.8 85.1 3.3 0.08 0.08 2.12 <0.005 0.056

排水基準値 5.8~8.6 10.0 10.0 3.0 0.10 5.00 0.10 0.10

pH水量

L/min

mg/L

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2-2-2

・石灰石:枝幸町歌登産出 30m3 ・粒径:40~80mm、概ね 80mm に統一

単位:m

処理原水の流れ

図 2-1-1-1 石灰石中和反応槽概略図と造成状況

石灰石反応槽遮水シート張

石灰石搬入

石灰石中和反応槽完成

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2-2-3

2-1-2. 表面流型人工湿地の造成 表面流型人工湿地の造成位置を図 2-1-2-1、詳細図を図 2-1-2-2 に示す。また造成工事の

概要を表 2-1-2-1 に、その工程表を表 2-1-2-2 示す。造成工事は、平成 25 年 8 月 27 日から

開始し、約 3 か月間行われた。 表面流型人工湿地は、中和処理施設(中和小屋)の前を通る林道を挟んだ向かい側で、昭栄

坑前ズリ堆積場の下流側から中和小屋の手前までの区域に造成した。造成用地は国有林内

の土地で、北海道が本庫鉱山の休廃止鉱山鉱害防止対策において借地している。本庫鉱山

の中和処理施設近辺では比較的平坦な土地で、過去の資料では、鉱山事務所などが建てら

れていた場所である。 湿地のサイズは、幅 20m、長さ約 99mで(幅:長さ、約 1:5)、沈澱池と植生を施した湿地

部からなる。沈澱池は深さ 0。8m、面積は 200m2、湿地部の面積は 1、712m2、湿地全体

の面積は 1、927m2(沈澱池と湿地部をつなぐ越流部 15m2を含む)である。造成用地内を溝

状に掘削し、掘削面は周囲への漏水を防ぐための遮水シートで覆った。掘削した中に厚さ

約 0。7mまで土壌を搬入した。搬入した土壌は、造成地内の土壌と歌登地区土壌採取地の

土壌を使用した。水深は 0。1m程度となるようにした。 表面流型人工湿地の植生は、酸性水にある程度耐性のあるヨシとした。枝幸町歌登地区

の町有地などに繁茂しているヨシ(高さ 1m 程度)の密生地から、20~30 ㎝程度の立方体の

ブロックを切り取り、約 50 ㎝間隔で移植した。移植の方法は、ブロック植えによりおこな

った。ヨシの総本数は約 1、640 本である。ヨシの移植完了後、1 週間程度沢水で養生を行

った。表面流型人工湿地は平成 25 年 11 月 16 日に完成し、処理原水の導入は 11 月 14 日か

ら開始した。 造成開始から完成までの状況について図 2-1-2-3~2-1-2-9 に示す。 なお今回の造成工事では、掘削の際に多くのコンクリート塊、巨石、柱などが出現し、

これらの処分で費用と時間が割かれた。また掘削後には、湧水も多く出現した。この湧水

が掘削面の成型や遮水シート張の際には障害となった。今後ほかの地域で、人工湿地処理

の導入を検討する際には、造成候補地において、過去の土地利用状況、地下水の状況など

の調査を十分に行ってから設計等を行うことが重要である。 また今回の造成工事では地山の一部も開削したことによって、高さ 3~5m 程度の急峻な

法面が出現した。この法面は、降雨や融雪期に崩壊の危険性が高く、崩壊した場合は土砂

等が表面流型人工湿地に流れ込み、処理効果に悪影響を及ぼす可能性が高いと判断した。

このため法面をブルーシートで覆う処置を施したが、今後、中和処理施設として長期にわ

たり使用することを考慮すると、芝張などの恒久的な法面保護対策を実施する必要がある。

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2-2-4

表 2-1-2-1 工事概要

第一~三沈澱池

第四沈澱池

第五沈澱池

0 500m

1 工 事 名 平成25年度本庫鉱山人工湿地整備事業(表面流型)

2 工 事 場 所 北海道枝幸郡枝幸町歌登字大奮

3 工 期 平成25年8月27日 ~ 平成25年11月29日

4 契 約 年 月 日 平成25年8月26日

5 発 注 者 地方独立行政法人北海道立総合研究機構

6 監 督 員 工 事 監 督 員 主査(地質汚染) 荻 野  激

7 請 負 者 井手上建設株式会社

8 現 場 事 務 所 北海道枝幸郡枝幸町歌登字大奮

工事概要

中和処理施設

平成 25 年 表面流型人工湿地

林道

図 2-1-2-1 表面流型人工湿地位置図

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2-5

日 27 28 29 30 31 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 1 2 3 4 5 6 7

曜日 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土 日 月 火 水 木 金 土

定 休 日 31 1 7 8 14 15 16 21 22 23 28 29 5 6 12 13 14 19 20 26 27 2 3 4 9 10 16 17 23 24

本工事01・

(実施)

7

計 画

実 施

11 12

準備工

あと片付け・書類作成

21

仮設工・水槽等設置工

15

8 9 10

工 種名  称

3

基礎コンクリート取壊工

土工、掘削工、整形仕上げ工、雑工

40

湿地整備工、保護工、植生工

25

本工事01・準備工

20

100.00%

39%

33%

完 成 日 平成25年11月15日

完 成 日 平成25年11月15日

13

91%

84%

21

土工、掘削工、整形仕上げ工

31

桝設置工、仮設工、基礎コンクリート取壊工

現地植生混入工、排水管渠工、あと片付け

17

水槽等設置工、湿地整備工シート張り

16

工事名:平成25年度本庫鉱山人工湿地整備工事(表面流型)

工期 自:平成25年 8月27日    至:平成25年11月29日

100.00%工事進捗率

2%

0%

桝設置工、書類作成

表 2-1-2-2 表面流型人工湿地造成工事工程表

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2-6

① ⑧

⑤⑦

② ⑥

沈砂池 底面積 A=147.6m2 越流堰 人工湿地 底面積 A=1,511.5m2上面積 A=200.0m2 A=15.0m2 上面積法面積 ① A=26.8m2 ④ A=12.8m2 法面積 ⑤ A=24.1m2 ⑧ A=1.41m2

② A=12.8m2 ⑥ A=116.0m2 ⑨ A=14.3m2③ A=21.5m2 法面積小計 A= 73.9m2 ⑦ A=14.3m2 ⑩ A=116.0m2 法面積小計 A=286.1m2

人工湿地総面積 ΣA=200.0+15.0+1712.5=1,927.5m2 H=0.7m高さ面積 A=1644.5㎡

A=1,712.5m2

9.62

0.75

0.9

0

2.00

0.1

0

10.000.90

越流堰

18.0

0

0.80(1.13)

(H

=0.7

m、

19.4

0)81.6

(H=0.7m、82.30)

(1.27)

人工湿地

2.00

1.0

0.8

0

1.00

沈砂地

(1.41)

0.7

0

20.0

1.00

18.0

0

4.50

0.90

0.7

0

83.00

20.0

(1.41)

0.75

1.00(1.41)

2.00 2.00 2.00

流量観測桝

0.80

8.20

16.0

010.0

2.0

0

0.8

0

5.0

1.00

(1.41)18.0

0

10.73

9.5

9.5

1.0

中和反応槽A=90.0m2

図 2-1-2-2 表面流型人工湿地詳細図(a)

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2-7

図 2-1-2-2 表面流型人工湿地詳細図(b)

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2-8

図 2-1-2-3 表面流型人工湿地の造成地 工事着工前

上段:上流側から

下段:下流側から

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2-9

図 2-1-2-4 表面流型人工湿地の造成工事(2013年 9月)

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2-10

図 2-1-2-4 表面流型人工湿地の造成工事(2013年 10月)

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2-11

図 2-1-2-5 表面流型人工湿地の造成工事 遮水シート張

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2-12

図 2-1-2-6 表面流型人工湿地の造成工事 土壌搬入

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図 2-1-2-7 表面流型人工湿地の造成工事 ヨシ移植

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2-14

図 2-1-2-8 表面流型人工湿地の造成工事完了

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2-15

図 2-1-2-9 表面流型人工湿地の造成地 完了後

上段:11月 26日

下段:12月 10日

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2-16

2-1-3. 現地調査 実証試験における現地調査は、平成 25 年 11 月 16 日~平成 26 年 2 月 13 日までの期間

で 5 回実施した。現地では処理原水及び表面流型人工湿地流出水について、水温(℃)、pH、

電気伝導度(EC、25℃:mS/m)、ORP(mV)及び水量を測定している。測定結果を表 2-1-3-1に、pH、電気伝導度(EC)および ORP の変動状況を図 2-1-3-1 に示す。

各測定項目の結果についてみると、pH では、最後の結果以外は流出水 pH が処理原水 pHよりも高くなっており、電気伝導度(EC)については全測定において流出水 EC が処理原水

EC よりも低下している。ORP につては、12 月以降の測定では、流出水 ORP が処理原水

ORP よりもが高くなっている。これらの結果については、1)試験開始当初はヨシの養生の

ために湿地内に溜めていた沢水の影響、2)11 月下旬頃までは雨が多かったこと、3)12 月以

降は湿地が雪に覆われており、融雪水の影響を受けたこと、が考えられ、1)~3)の影響によ

り処理原水が全体的に希釈されたためと考えられる。 表面流型人工湿地については、これまで実施している小規模人工湿地による試験の結果

から、今後流出水 pH の低下が予想される。今年度の結果を見るとまだ pH の低下は見られ

ていないが、pH の低下は金属成分の処理効果に影響を与える。したがって次年度について

も定期的にこれらの項目を測定し、表面流型人工湿地の浄化能力・効果について検討が必

要である。 表 2-1-3-1 現地調査結果

測定年月日 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水

2013/11/15 7.6 3.3 5.3 6.0 21.8 7.5 303 202 57

2013/11/26 7.2 4.9 4.7 6.3 19.5 17.9 364 221 374

2013/12/10 7.6 1.3 6.3 6.6 23.9 23.4 147 168 263 218

2014/01/30 2.8 0.2 6.9 7.1 36.8 30.9 193 233

2014/02/13 3.8 0.3 7.1 6.8 37.1 30.8 124 189 21

水温 EC(25℃) ORP 流量pH

(℃) (mS/m) (mV) (L/min)

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2-17

3.0

4.0

5.0

6.0

7.0

8.0

9.0

2013/11/15 2013/11/29 2013/12/13 2013/12/27 2014/1/10 2014/1/24 2014/2/7

pH

処理原水

石灰石槽

FWSF-out

out

原水

0

5

10

15

20

25

30

35

40

2013/11/15 2013/11/29 2013/12/13 2013/12/27 2014/1/10 2014/1/24 2014/2/7

電気伝導度(25℃:mS/m)

処理原水

石灰石槽

FWSF-out

原水out

0

50

100

150

200

250

300

350

400

2013/11/15 2013/11/29 2013/12/13 2013/12/27 2014/1/10 2014/1/24 2014/2/7

ORP(mV) 処理原水

石灰石槽

FWSF-out原水

out

図 2-1-3-1 表面流型人工湿地の調査結果

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2-18

2-1-4. 土壌分析 表面流型人工湿地において、造成時の土壌の金属成分等の含有量を把握するため、表面

流型人工湿地に使用した土壌の採取を実施した。土壌試料は上流から下流にかけて 8 地点

で採取した。採取した試料は、実験室に持ち帰り、風乾を行った後、試料保管ビンに移し、

デシケーター内で保管している。金属成分の含有量分析などについては、平成 26 年度に実

施する予定である。

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2-2-1

2-2 モニタリング 2-2-1. 水量の連続観測

処理原水(流入水)と表面流型人工湿地流出水(FWSF-out)について、水位・電気伝導度計

を設置し、水量の連続観測を実施した。設置場所を図 2-2-1-1、設置状況を図 2-2-1-2 に示

す。観測機器は、平成 25 年 11 月 14 日に設置し、11 月 15 日 9:40 から観測を開始した。

観測データは 20 分間隔で記録している。観測結果を図 2-2-1-3 に示す。観測記録は、平成

26 年 2 月 13 日 12:00 までであるが、これ以降(現在)も観測は継続している(平成 25 年度

最後のデータ回収が 2 月 13 日のため)。流入・流出水量については、水位―水量換算式に

よって、水位の観測記録から水量を算出している。なお流入水量については平成 25 年 12月 10 日 11:20 頃から平成 26 年 1 月 18 日 14:00 までのデータが欠測した。これは 12月 10 日のデータ回収後に、次の観測を開始させる設定にミスがあったことが原因と考えら

れる。 処理原水(流入水)量は、観測開始当初に大きく変動していたが、4 日目から 2 週間程度は

平均水量(200L/min)を超えて、350~360L/min 程度の水量が続いた。その後は、増減を繰

り返しながら、徐々に減少し、最後の現地調査時(平成 26 年 2 月 12 日)では 21L/min 程度

まで減少している。12 月上旬まで水量が平均を超えた量になっている原因については、こ

の時期に雨の量が多くなったことが考えられる。鉱山に設置している雨量計のデータを見

ると、9 月から 11 月中旬にかけて日雨量が 10 ㎜を超える降雨が断続的に続いていた。この

ため 11 月中旬まで坑廃水の水量が通常よりも多い状態が継続していたことが影響している

ものと思われる。 なお処理原水(流入水)量が大きく増加した場合には、坑廃水分流枡において、既設の集水

桝へ分流するようにしている。分流桝内に表面流型人工湿地側への排出口とその 30cm 程度

上部に従来の集水桝への排出口を設置しており、坑廃水量が増加して、上部にある従来の

集水桝への排出口まで水位が上昇すると坑廃水の一部が従来の集水桝に流れるようにして

いる。この高低差を調整することで、表面流型人工湿地へ流れる処理原水の水量を調整し

ている。今年度の観測結果を見ると、400L/min を超える水量は表面流型人工湿地に流入し

ていない(最大値 380L/min)。したがって水量が増加した場合においても、現在の分流桝内

の排出口の高低差で最大でも 400L/min 程度の流入量に収まるものと考えられる。 表面流型人工湿地からの流出水量は観測開始当初から2週間程度300L/minを超える水量

となっている。その後は処理原水量の変動と同様に徐々に減少し、最後の現地調査時点(平成 26 年 2 月 12 日)では 27L/min 程度となった。全体的には、流出水量は、処理原水量より

も同程度かやや少ない水量で流出している。 11 月中旬に一度大きく減少しているが、これはこの時期に気温が低下し、湿地表面や観

測桝内が一時凍結した影響と考えられる。また流出水量が流入水量を超える場合も何度か

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2-2-2

確認されているが、この原因としては、1)降雨によって湿地内の水が増加し一時的に流出量

が増加した、2)湿地上に積もっていた雪が一時的に解けた、ことが考えられる。

:処理原水の流れ

:観測機器設置点

図 2-2-1-1 表面流型人工湿地における観測機器設置位置

図 2-2-1-2 観測機器設置状況(上段:流入桝、下段:流出桝)

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2-2-3

2-2-2. 水質(電気伝導度)の連続観測

水量の連続観測と同様に、処理原水と表面流型人工湿地流出水(FWSF-out) について、水

位・電気伝導度計を設置し、水質(電気伝導度(EC))の連続観測を実施した。設置個所、設置

日時、観測開始日および観測方法は水量の連続観測と同様である(図 2-2-1-1、図 2-2-1-2 参

照)。また処理原水の電気伝導度(EC)についても観測機器が水位センサーと一体型であるた

め水量と同様に、平成 25 年 12 月 10 日 11:20 頃から平成 26 年 1 月 18 日 14:00 までの

データが欠測している。 処理原水の電気伝導度(EC)は、観測開始時(11 月 15 日:9:40 頃)は 27mS/m程度であっ

たが、そこから徐々に増加し、2 月上旬までに 37。5mS/mまで高くなった。この後は、最

終調査までほぼ 37mS/m程度で推移した。11 月下旬からの冬期間に電気伝導度が徐々に増

加する傾向はこれまで本庫鉱山で実施している小規模人工湿地による試験における観測で

も確認されている。電気伝導度はイオン濃度の増加とともに増加するが、次節で示す水質

分析の結果(表 2-)をみるとカルシウム(Ca)や硫酸イオン(SO4)などの濃度も 12 月以降は

徐々に増加しており、電気伝導度の結果と調和している。 流出水の電気伝導度(EC)は、全観測結果で処理原水ECより低下している。また観測開始

時(11 月 15 日:9:40 頃)の流出水の電気伝導度の値は沢水と同程度の 7mS/m程度であっ

たが、11 月 17 日 12:00 頃までに 20。3mS/mまで急上昇した。処理原水の表面流型人工

湿地への導入は 11 月 14 日の 16:00 頃に開始しており、3 日程度で処理原水ECに近い値

となった。したがって、3 日間程度で処理原水が湿地内の水とほぼ入れ替わったと考えられ

図 2-2-1-3 表面流型人工湿地の調査結果(水量(L/min))

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2-2-4

る。その後は降雨や融雪水の影響などで増減を繰り返しているが、処理原水の電気伝導度

(EC)の増加傾向と同調して 2 月上旬までに、27mS/mまで増加した。その後は 26mS/m前

後でほぼ推移している。流出水ECは処理原水ECより高い値となることはなく、常に一定程

度希釈されているものと考えられる。また処理原水の場合と同様に、流出水のCa・SO4濃

度も増加しており、電気伝導度の変化と調和的である。

図 2-2-1-4 表面流型人工湿地の調査結果(電気伝導度(25℃ mS/m))

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2-2-5

2-2-3. 金属成分および一般成分のモニタリング

現地調査の際に処理原水(流入水)と表面流型人工湿地流出水(FWSF-out)の採水も実施し、

採水した試料については、下記の成分及び方法によって分析を行った。 【金属成分】 Fe(全鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Pb(鉛)、Zn(亜鉛)、Cd(カドミウム)

:フレーム原子吸光法 As(ヒ素):電気加熱炉(ファーネス)原子吸光法 【一般成分】 Na(ナトリウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Mg(マグネシウム)、Cl(塩化物)、 SO4(硫酸):イオンクロマトグラフ法 SS:GFP(ガラス繊維ろ紙)法

分析結果を表 2-2-3-1 と、主な成分の変動状況を図 2-2-3-1 に示す。平成 25 年度は 4 回

の分析を行っているが、各調査における各分析結果を見ると、金属成分では Cd の一部を除

きいずれの成分濃度においても処理原水より流出水の濃度が低下している。また SS 及び一

般成分濃度についても Ca の一部を除き処理原水よりも流出水の濃度が低下している。この

結果は、現地調査の結果で述べたように、1)試験開始当初はヨシの養生のために湿地内に溜

めていた沢水の影響、2)11 月下旬頃までは雨が多かったこと、3)12 月以降湿地は雪に覆わ

れており、融雪水の影響を受けたことよって流出水が希釈され、濃度が低下したものと考

えられる。しかし、今年度は実証試験開始直後で、水質変化などのデータが十分に得られ

ていないため造成した表面流型人工湿地の評価を行うことは適切ではない。このため平成

26 年度では、年間を通じて表面流型人工湿地の実証試験を実施し、水質の変動などのデー

タを得た上で、浄化効果などの評価を実施する予定である。

表 2-2-3-1(a) 金属成分の分析結果

処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水

2013/11/15 2.39 1.66 0.21 0.24 0.19 0.05 0.69 0.17 2.89 1.85 0.026 0.018 <0.005 <0.005

2013/11/26

2013/12/10 7.40 2.60 0.28 0.28 0.09 0.04 0.50 0.27 1.63 1.51 0.012 0.013 0.099 0.023

2014/01/30 5.06 0.19 0.49 0.30 0.09 <0.01 0.29 0.11 2.31 1.20 0.007 <0.005 0.176 0.005

2014/02/13 5.10 0.24 0.52 0.33 0.08 0.01 0.24 0.12 2.36 1.27 0.007 <0.005 0.170 0.008

mg/L

採水年月日 Fe AsCdZnPbCuMn

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2-2-6

表 2-2-3-1(b) 一般成分の分析結果

処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水 処理原水 流出水

2013/11/15 5.8 5.7 0.7 0.6 15.3 15.8 2.9 2.4 5.1 4.8 65.2 58.8

2013/11/26

2013/12/10 8.5 3.8 8.8 7.7 1.0 0.8 21.4 20.2 2.5 2.5 6.2 5.4 81.5 73.6

2014/01/30 8.7 1.4 9.0 7.4 1.7 0.8 39.8 28.8 3.8 3.2 6.8 5.8 121 88.5

2014/02/13 9.3 0.5 9.0 7.5 1.0 0.8 41.6 30.6 3.8 3.2 5.9 5.6 126 93.1

mg/L

採水年月日 SO4ss Na K Ca Mg Cl

図 2-2-3-1 表面流型人工湿地における成分濃度の変動①

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図 2-2-3-1 表面流型人工湿地における成分濃度の変動②

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2-3-1

2-3 適用可能性調査 2-3-1. 調査対象鉱山の選定

今回の適用可能性調査対象となった 9 鉱山は、平成 24 年度までに実施された休廃止鉱山

鉱害防止技術等調査研究事業 19 鉱山水系調査の結果から、以下の条件により絞り込んだ結

果である。 坑廃水処理事業を実施していない鉱山は除く。 平成 23年度休廃止鉱山鉱害防止技術等調査研究事業報告書のパッシブ処理導入のコス

トパフォーマンス試算で建設費償却年数が 20 年を越えた鉱山は除外する。なお、欧州

では、人工湿地の建設において、その寿命を 20 年とする場合が多い。 平成 23 年度休廃止鉱山鉱害防止技術等調査研究事業報告書によれば、19 鉱山のうち、

処理水量の大きい順に、1。30m3/min、1。29m3/min、0。62m3/minの3処理場は、

パッシブトリートメント導入はコスト的に不利と判定されており、次の 0。47m3/minとの間あたりに導入効果のボーダーラインが想定される結果となったため、処理水量

が 0。5m3/minを越える鉱山を除外する。 平成 24年度休廃止鉱山鉱害防止技術等調査研究事業報告書の直近環境基準点水質予測

で、有害物質である Pb と Cd について環境基準をオーバーするとされた鉱山は除外す

る。Pb と Cd(及び As)は「人の健康の保護に関する環境基準」であり、「設定後直ち

に達成され維持されるよう努めるもの」とされているのに対し、Zn 等の「生活環境の

保全に関する環境基準」が「施策の推進とあいまちつつ可及的速やかにその達成維持

を図るもの」とされていることから、前者の基準オーバーを重視することによる。 平成 22年度休廃止鉱山鉱害防止技術等調査研究事業報告書で提案されたパッシブ処理

技術適用可能水質のうち、処理しにくい Cu10mg/L、Zn10mg/L、Cd0。15mg/L を越

える重金属含有量の処理原水をもつ鉱山は除外する。これらは好気性人工湿地プロセ

スのみでは処理しにくい元素である。 上記スクリーニングを踏まえ以下の9鉱山を選定した。A※、B※、C、D※、E、F※、G※、

H※、J※。但し※印は、金属鉱業等鉱害対策特別措置法に係る第 5 次長期計画中の、坑廃水

処理コスト削減のための類型区分Ⅱ-③(新技術導入して無処理放流化)に該当する鉱山で

ある。 2-3-2. 坑廃水処理事業主体への聞取調査

パッシブトリートメント技術導入に対する 9 鉱山の各事業主体の意向や懸念について、

以下の通りヒアリングし、記録した。

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2-3-2

2-3-2-1. A鉱山

平成 25 年 11 月 7 日、A 鉱山の事業主体である秋田県横手市の市民生活部生活環境課長

(兼部次長)、同課環境担当主査及び環境担当副主査に対し、パッシブトリートメント技術

のうち、特に人工湿地処理の特徴を説明したうえで、A 鉱山への同技術導入について、以下

のコメントを聴取した。 ・A 鉱山は年間約 800 万円の坑廃水処理事業費がかかっており、パッシブ処理により、こ

のコストが低減されるなら、同技術の導入に大変興味がある。 ・導入にあたって、必要となる土地面積、初期費用、現行処理と比較してコストメリット

が発生するまでの時間等の情報がほしい。 ・導入する場合の手順として、いきなり坑廃水の全量を処理するのではなく、中和処理と

の並列で処理を行うことで住民理解を深めた後に、全量パッシブ処理に移行していくと

いう流れが良い。 ・JOGMEC が候補地として提案した場所は横手市の土地である(詳細は後述)が、パッシ

ブ処理技術導入に十分な面積であるとは思えない。 ・地元住民と公害防止協定等は結んでいないが、過去の Cd 米の経験があり、パッシブ処理

技術導入に対する住民理解は得られにくい。 2-3-2-2. B鉱山

平成 25 年 12 月 9 日、B 鉱山の事業主体である山形県南陽市の農林課農林整備係主事に

対し、パッシブトリートメント技術のうち、特に人工湿地処理の特徴を説明したうえで、B鉱山への同技術導入について、以下のコメントを聴取した。 ・地元住民から B 鉱山の坑廃水処理場への意見はないが、近隣の某鉱山が中和処理澱物を

堆積している長が澤ダムについては、大雨への対策など問い合わせがあったことからも、

住民の関心(心配)がある程度存在すると言える。 ・担当者自身の立場からは、メンテナンス等の手間がなくなるため、導入に賛成である。 ・本年度の豪雨被害の際には、管理人が現場にいたため、状況が確認できたが、無人での

運転では緊急時の状況確認、緊急対応に不安が残る。 ・パッシブトリートメントについて、実績がもう少し積まれれば、導入についても前向き

に検討できると考える。 また、中和処理場の現地管理人に対しても、パッシブトリートメント技術のうち、特に

人工湿地処理の特徴を説明したうえで、B 鉱山への同技術導入について、以下のコメントを

聴取した。 ・パッシブトリートメントの導入については、費用削減効果の観点から、坑廃水の一部を

処理するだけでも意味があると考える。

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2-3-3

2-3-2-3. C鉱山

平成 25 年 12 月 18 日、C 鉱山の事業主体である福知山市農林商工部商工振興課係長に

対し、パッシブトリートメント技術のうち、特に人工湿地処理の特徴を説明したうえで、C鉱山への同技術導入について、以下のコメントを聴取した。 ・C 鉱山では昭和 46 年に第 3 坑の坑道耐圧閉そく工事を行ったが、翌年に豪雨により出水

したため、空気遮断方式に工事し直した経緯がある。 ・坑廃水処理費用について議論するとき、未だに上記の話題が挙がるため、新しい処理を

行うためには十分な説明が必要である。 ・パッシブトリートメントについては平成 24 年度のブロック会議で話を聞いており、担当

者としては興味を持っている。現在、機械の故障が相次いでおり、メンテナンスがほと

んど必要ないパッシブトリートメントは魅力的である。 ・パッシブ導入に当たっては、①雇用先の喪失、②下流の米農家の意見、が問題になる可

能性がある。 ・①について、現在、地元住民を管理人として雇用しているため、パッシブトリートメン

トによる無人処理となると、その雇用先が失われることになり、反対される可能性があ

る。 ・②について、過去にカドミウム米の被害を経験しているため、現在の処理に比べて、水

量変動時の安定性が劣ると考えられるパッシブトリートメント導入については、説明の

仕方が重要である。 2-3-2-4. D鉱山

平成 25 年 12 月 17 日、D 鉱山の事業主体である亀岡市産業観光部ものづくり産業課ものづ

くり支援係係長及び主査に対し、パッシブトリートメント技術のうち、特に人工湿地処理の

特徴を説明したうえで、D 鉱山への同技術導入について、以下のコメントを聴取した。 ・市が所有している土地がないため、人工湿地用の土地は農地を買い取って確保すること

になる。 ・奥条浸透水をポンプアップする際の電気代に人件費以外ではもっとも費用がかかってい

るため、奥条浸透水だけでもパッシブ処理を行う意味は大きい。 ・また、通洞坑水、砂川浸透水も自然流下で奥条地区まで導水することは可能。 ・奥条地区の住民においてはこれまで坑廃水処理場を目にする機会がなく、処理後水の方

流地点も同地区の下流に位置するため、同地区に人工湿地等を作成する場合には、詳細

な説明が必要である。 ・現在処理場がある鹿谷地区では、カドミウム汚染被害があった当時のことを知る人が多

く暮らしており、無処理で放流することに納得する人は少ない。 ・何らかの処理を行なっていれば住民の理解を得られるはずであり、処理形態が変わるこ

とに問題はない。

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2-3-4

・他方、処理形態を変更すると、水質が悪化して処理場を作り直したとの印象を与える可

能性もあり、より簡単な処理に移行したのだと説明する必要がある。 ・パッシブトリートメントを実際に導入した場合、処理開始後、数年間は費用が発生せず、

数年おきに内容物の処分費が発生することになり、予算確保の方法に課題がある。 2-3-2-5. E鉱山

平成 25 年 12 月 10 日、E 鉱山の事業主体である岡山県備前市の市民生活部環境課保全係

主査に対し、パッシブトリートメント技術のうち、特に人工湿地処理の特徴を説明したう

えで、E 鉱山への同技術導入について、以下のコメントを聴取した。 ・コストをかけない坑廃水処理への方向性は理解する。同技術できちんと処理することが

できれば、E 鉱山の一部の坑廃水を人工湿地で負荷を下げ、アクティブ処理のコストダウン

を図ることに関心はある。 ・E 鉱山下流には利水点が多く、河川水に対する住民の関心が高いので、パッシブ処理に対

する地元住民の理解が得られにくい。

2-3-2-6. F鉱山

平成 26 年 1 月 7 日、F 鉱山の事業主体である福岡県久山町の町民生活課主任に対し、パ

ッシブトリートメント技術のうち、特に人工湿地処理の特徴を説明したうえで、F 鉱山への

同技術導入について、以下のコメントを聴取した。 ・コストをかけずに坑廃水が処理できるのであれば検討してみたい。 ・F 鉱山坑廃水のうち、カラミ堆積場浸透水は、降水による急激な廃水量変動があるので、

人工湿地処理には向いていない。 ・現地周辺は「ホタルの里」として観光地化に取り組んでいるところであり、例え問題な

く処理できるとしても、イメージを損なう懸念があり、地元住民の理解が得られにくい。 ・現地周辺に適当なスペースが無く、あったとしても民有地や共有入会地で、町主導で使

用することができない。 2-3-2-7. G鉱山

平成 26年 1月 20日、G鉱山の事業主体である大分県商工労働部工業振興課主事に対し、

パッシブトリートメント技術のうち、特に人工湿地処理の特徴を説明したうえで、G 鉱山

への同技術導入について、以下のコメントを聴取した。 ・人工湿地について非常に興味はあるが、豊栄鉱山の現在の処理施設の代わりに導入する

のは厳しいと考えている。

・仮に採用するとして、周辺に適当な場所がない。

・地元の注目度は高いため、現在の中和処理同様にきちんと処理ができるシステムではな

いと導入はできない。

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2-3-5

・急激に増水した場合には人工湿地方式では対応できない水量になると考えている。

2-3-2-8. H鉱山

平成 26 年 1 月 16 日、H 鉱山の事業主体である宮崎県美郷町の建設課主幹に対し、パッ

シブトリートメント技術のうち、特に人工湿地処理の特徴を説明したうえで、H 鉱山への

同技術導入について、以下のコメントを聴取した。 ・現処理場の代替になるのであれば、適用には前向きに考えたいと思っているが、現時点

ではそのような状況ではない。

・仮に適用するとした場合、周辺に適当な場所はない。

・最終鉱業権者と美郷町(当時は北郷村)とで和解した経緯もあり、下流の河川に影響が

出ないのであれば、導入に対する理解は得られると考えている。なお、五十鈴川に環境

保護団体がいる。

2-3-2-9. J鉱山

平成 26 年 1 月 9 日、J 鉱山の事業主体である鹿児島県鹿児島市の経済局経済振興部産業

支援課ものづくり係主事及び主査に対し、パッシブトリートメント技術のうち、特に人工

湿地処理の特徴を説明したうえで、J 鉱山への同技術導入について、以下のコメントを聴取

した。 ・J 鉱山下流には鹿児島市民の上水道源があり、農業用利水と違って、影響を受ける人口が

格段に大きい。 ・坑廃水にヒ素が含まれているために、パッシブ処理に対する地元住民の理解が得にくく、

風評被害も心配である。 ・集中豪雨等による土砂崩れが頻発する鹿児島県内では湿地が土砂で埋められる懸念があ

る。 ・現状施設でも落ち葉によるトラブルが多く、メンテナンスに手間がかかっていることか

ら、人工湿地でも同様なトラブルが予想される。 ・現状施設の敷地以外に市の所有地が無い。 ・パッシブ処理では、下流の重金属環境基準をクリアできるのか心配である。 2-3-2-10. まとめ

以上 9 鉱山での坑廃水処理事業を実施する各自治体のパッシブ処理技術(人工湿地)導

入に対する意向を、模式的に示すと図 2-3-1 のとおりである。また、各自治体担当者にパッ

シブ処理技術(人工湿地)導入への懸念を回答していただいたところ、表 2-3-1 のとおり、

「適用可能スペースが無い」と「地元住民の理解が得られない」の 2 項目が 9 鉱山中 7 鉱

山で、懸念事項のトップであった。なお、この懸念項目は、JOGMEC 側が自治体側にあら

かじめ選択肢として提示したものであり、完全に自由な回答とはなっていないことに留意

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2-3-6

が必要である。

図 2-3-1 自治体担当者のパッシブ処理技術導入に対する意向イメージ

表 2-3-1 自治体担当者のパッシブ処理技術導入に対する懸念

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2-3-7

2-3-3. 適地調査

調査対象 9 鉱山の鉱山周辺域を含め、パッシブトリートメント施設(人工湿地)を建設

する場合の適地調査を行った。この場合、適地の判断基準として、本庫鉱山で造成中の 1、000~2、000m2規模の人工湿地が出来そうな平地であり、坑廃水が排出されるレベルより

下流側で、かつ一定規模の集落(複数の家屋からなる)より上流側に位置する土地を考慮

した。 2-3-3-1. A鉱山

平成 25 年 11 月 7~8 日、A 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 A 鉱山坑廃水処理施設は東西から山が迫った南北に細長い谷合に位置する。処理場上流側

(北側)に堆積場が存在し、A 鉱山の主要な坑廃水である坑廃水は上記堆積場の南で流出し、

処理場まで 100~200m 側溝導水されて中和処理されたあと、処理場から約 500m 下流(南

側)の集落の北端あたりで放流される。 人工湿地候補地としては、処理場上流側の三坑前に約 1,000m2、処理場下流側で集落の

北側に約 3,500m2の平地を確認した。後者は車道により 5m×50m、5m×150mの長方形に

分断される部分と、およそ 50m四方の正方形の区画からなり、長方形部分と正方形区画と

の間には 1m程度の段差(南側が低い)がある。 市役所市民生活部生活環境課によれば、いずれの土地も民有地では無いようである。

図 2-3-3-1 A 鉱山周辺図(小矩形が図 2-3-2 の範囲、 図 2-3-3-2 A 鉱山処理場上流側の適地位置図 大矩形が図 2-3-3-4 の範囲を示す)

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2-3-8

図 2-3-3-3 A 鉱山処理場上流側の適地状況(左が下流側三角形範囲、右が上流側四角形範囲)

図 2-3-3-4 A 鉱山処理場下流側の適地状況

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2-3-9

2-3-2. B鉱山

平成 25 年 12 月 9 日、B 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 B 鉱山坑廃水処理施設は、南陽市市街地の北約 13km の山中に位置し、処理後の坑廃水

は大筋川に流入後、3km 程度硫化した後、吉野川と合流する。約 7km 離れた位置に吉野鉱

山が存在する。吉野鉱山の中和澱物は長ヶ沢ダムに堆積している。 対象坑廃水は、処理場より上のレベルにある大切坑坑内水及び立坑前ズリ浸透水をそれ

ぞれ約 1km 程度自然流下で導水し、前山湧水、甚兵衛沢湧水は処理場下流 1km の集水槽

からポンプアップで導水している。消石灰による中和処理を行った後、河川に放流してい

る。 人工湿地候補地としては、処理場のすぐ下流側(北東)にある約 2、000m2の旧沈澱池、

および約 500 m2の前山湧水の中継槽のある土地を確認した。どちらも市の管理する土地で

ある。

図 2-3-3-5 B 鉱山周辺の適地状況

(左が旧沈澱池 約 2、000m2、右が前山湧水集水ピット 約 500m2)

○処

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2-3-10

候補地①(休耕地)

候補地②(旧沈澱池)

2-3-3. C鉱山

平成 25 年 12 月 18~19 日、C 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 C 鉱山坑廃水処理施設は、福知山市市街地北東約 6.5km の山中に位置し、処理後の坑廃

水は在田川に流入後、3.5km 程度硫化した後、大規模河川である由良川と合流する。 対象坑廃水は、処理場より上のレベルにある第 3 坑坑内水及び浸透水を約 700m の導水

管で導水し、中和処理を行った後、河川に放流している。 人工湿地候補地としては、第 3 坑口の上部にある旧沈澱池に約 1、500m2の空き地を確認

した。(現在は荒地)また処理場上流に約 3,900 m2の休耕地があり、市役所農林商工部商工

振興課によれば数年前から使用されていないとのことであった。

図 2-3-3-6 C 鉱山周辺の適地状況

C 鉱山坑廃水処理場

河川

坑廃水処理場

休耕地

候補地① 処理場上流休耕地 (約 3、900m2)

候補地② 第 3 坑坑口上沈澱池 (約 1、

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2-3-11

2-3-4. D鉱山

平成 25 年 11 月 29~30 日、D 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 D 鉱山坑廃水処理施設は、亀岡市市街地から約 5km 西側の行者山の麓に存在する。処理

施設の周辺には石材所や民家、水田、耕作地が存在する環境であり、坑廃水放流口の 20m下流には民家、水田がある。 処理原水は通洞坑内水、奥条浸透水、砂川浸透水の 3 種類であり、通洞坑内水は自然導

水、奥条浸透水及び砂川浸透水はポンプにて処理場に揚水される。原水槽まで導入した後、

中和処理を行い、処理場脇の河川に放流している。 処理場周辺や奥条浸透水集水桝周辺について適地調査を行ったが、すべて私有地であり、

人工湿地を建設するような適地の確保は困難であると思われた。

図 2-3-3-7 D 鉱山周辺の適地状況

処理場

奥条浸透水集水

奥条浸透水集水桝付近

平地はすべて住宅もしくは耕作地。

緩和槽(処理後水を砂川に排水する)下流側の土地

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2-3-12

2-3-5. E鉱山

平成 25 年 12 月 10~11 日、E 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 E 鉱山坑廃水処理施設は、東西に連なる山地の北麓側と南麓側に分かれて存在する。いず

れも処理場より上のレベルにある複数の坑口から排出される坑内水を集め、100~500mパ

イプ導水して中和処理し、処理場脇を流れる河川に放流している。 北麓側処理場周辺では、坑口から処理場まで、宅地や墓地が多く、適当な敷地の確保は

困難であるように見えた。また、南麓側処理場周辺では、坑口から処理場に至る途中に約 1、000m2の平地を確認することができたが、中石金谷坑口・富士坑口の上流にあたる。 市役所市民生活部環境課保全係によれば、上記平地は個人所有地である。

図 2-3-3-8 E 鉱山北麓側坑口~処理場の状況(宅地・墓地が占有)

図 2-3-3-9 E 鉱山南麓側坑口~処理場の適地状況(富士上部坑口前)

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2-3-13

2-3-6. F鉱山

平成 26 年 1 月 7~8 日、F 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 F 鉱山坑廃水処理施設は、北から南へ流れる小河川と車道の間に立地し、坑廃水は処理場

の北に位置する坑内水と堆積場浸透水を坑口前貯水槽に一旦貯水し、そこからパイプ導水

約 100m を経て処理場に導かれる。中和処理後は、処理場脇を流れる河川に放流している。 坑口前貯水槽から処理場までは、小河川を跨ぐ形となり、平地はない。一方処理場下流

約 100mに約 2,000m2の平地、さらに 300m下流に約 1,000m2の平地が確認できた。前者に

はビニルハウスや耕作中の畑がある。後者には最近まで水田として使用していた形跡があ

るが、現在携帯電話のアンテナ塔が立っている。 町役場町民生活課によれば、上記平地は個人所有地である。また、処理場周囲の山林は、

現地集落の共有林野となっている。

図 2-3-3-10 F 鉱山処理場下流の適地状況

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2-3-14

2-3-7. G鉱山

平成 26 年 1 月 20~22 日、G 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 G 鉱山坑廃水処理施設は小河川脇に立地し、坑廃水は処理施設から上流約 300m から流

出し、側溝とパイプにて導水されている。中和処理後は、処理場脇を流れる小河川に放流

している。 坑廃水流出口から処理場までは急こう配の谷地形で平地はない。処理場の車道をはさん

だ向い側に約 2,000m2の平地(おそらく昔の選鉱場跡)があり、県庁商工労働部工業振興

課によると、現在地元自治体の所有地となっているが、一部にコンクリート舗装部が残っ

ているほか、登山客用の小屋が設営されている。また、処理場から約 200m下流に約 1,000m2

の平地があるが、河川に近く、不安定な地盤である。

図 2-3-3-11 G 鉱山処理場周辺の適地状況 2-3-8. H鉱山

平成 26 年 1 月 16~17 日、H 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 H 鉱山坑廃水処理施設は、急峻な地形に立地しており、周辺は林に覆われている。処理

原水は主に大切坑坑内水であり、処理場から標高差プラス約 250m の位置にある大切坑か

ら約 900m 下流の調整池まで導水され、そこからさらに約 300m 下流の処理場に導水され

る。坑廃水は処理場から 180m 上流に位置するスライム堆積場からの浸透水と大切坑坑内

水が合流して処理原水となるが、浸透水は強い降雨後にのみ認められるため、通常は大切

坑坑内水のみ中和処理し、処理場近くの河川に放流される。

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2-3-15

処理場付近は急峻な斜面が多く平地も林であるため、適当な敷地の確保は困難であるよ

うに見えた。処理場より 2km前後下流に位置する第一利水点の横に平地(約 2、000m2)が

確認できたが、私有地であった。

図 2-3-3-12 H 鉱山処理場下流の適地状況 2-3-9. J鉱山

平成 26 年 1 月 9~10 日、J 鉱山において、前述の観点から、適地調査を行った。 J 鉱山坑廃水処理施設は、北から南へ流れる小河川と車道沿いに、坑廃水流出口(大切坑)

と処理場からなる部分と、その南側約 200m で、処理場から標高差マイナス約 50m の場所

に設置されている沈澱池の、2 か所に分かれて立地している。大切坑坑内水は処理場で中和

処理されたあと沈澱池に側溝・パイプ導水され、沈澱池の上澄水は沈澱池脇を流れる河川

に放流される。 大切坑とほぼ同じレベルで車道をはさんだ向い側に約 3,000m2の広さの平地があるが、

処理場周辺は急峻な地形で、平地が少ない。

処理場

第一利水点(処理場より 2km 程度下流)横の空き地

面積約 2、000m2。私有地。

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2-3-16

ズリ集積場であった場所(第一堆積場)で、市役所経済局経済振興部産業支援課ものづく

り係によれば、所有者は旧鉱業権者である。沈澱池東側で沈澱池より 10m程度上のレベル

に約 2,000m2の平地(養鶏場跡)があるが、民地であり、傍らに 1 軒の民家がある。沈澱

池南側で沈澱池より 5m程度上のレベルに約 2,000m2の平地があるが、建設業者の資材置き

場として利用されている。

図 2-3-3-13 J 鉱山処理場周辺の適地状況 2-3-10. まとめ

適地調査の結果を、表 2-3-3-1 に示す。D 鉱山と H 鉱山では、坑廃水が排出されるレベ

ルより下流側で、かつ一定規模の集落(複数の家屋からなる)より上流側に、1,000~2,000m2規模の人工湿地が出来そうな平地は存在せず、E 鉱山も全部の坑廃水処理に利用できる適地

は確認できなかった。A 鉱山、B 鉱山、C 鉱山及び G 鉱山では、上記条件に適う平地で、

自治体所有に係る土地が存在するが、F 鉱山及び J 鉱山では私有地のみであった。

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2-3-17

表 2-3-3-1 適地調査結果一覧表

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2-4-1

2-4 坑廃水調査(自然浄化速度) 本事業の実施鉱山である本庫鉱山および適用可能性調査対象 9 鉱山の坑廃水の自然浄化

(酸化)速度を比較し、対象 9 鉱山の中から人工湿地に適した坑廃水を選定するため、以

下の酸化試験を行った。

<試験方法> ・ 現地で 500mL のポリ瓶に坑廃水(主に総合原水)を 5 本採水し、内 1 本はその場で酸

固定、2 価鉄固定を行う。 ・ 残り 4 本については、数日後に一斉に開封し、ある程度水を捨て水位を下げたのち、

蓋を開けたまま静置する。 ・ 4 本のうち 1 本は開封直後に酸固定及び 2 価鉄固定を行い、これを 0 日目試料とする。 ・ 残りの 3 本については、それぞれ 3 日後、7 日後、28 日後に上澄み液を 0。45µm フィ

ルターにてろ過を行い、同様に酸固定、2 価鉄固定を行う。 ・ 採水時には水温、pH・電気伝導率・酸化還元電位・溶存酸素濃度を測定し、採水試料

については、全鉄、2 価鉄、亜鉛、カドミウム、鉛、砒素の 6 元素について測定を行っ

た。

表 2-4-1 酸化試験採水試料の概要

2-4-1. 本庫鉱山

本事業にて人工湿地の造成等を行っている本庫鉱山の坑廃水について、酸化試験を行っ

た結果を図 2-4-1 に示す。 採水日のデータについては、今回未測定であるが、平成 25 年 7 月の調査結果を参考値と

して比較すると、鉄については酸化試験時点では検出限界以下まで減少しており、大部分

が沈澱していると考えられる。また、砒素についても、参考値が 0。11mg/L であるのに対

し、酸化試験開始時には検出限界近くまで減少していることから、鉄とともに共沈してい

ると推測される。酸化試験後は pH に大きな変化はなく、亜鉛については、28 日後も排水

基準値を下回らなかった。

経過日数 酸固定、2 価鉄固定 ろ過の有無

採水日 現地 未ろ過(2 価鉄試料のみろ過)

0 日目(開封日) 開封直後 未ろ過(2 価鉄試料のみろ過) ※ 酸固定前に一度攪拌を行う

3 日目 3 日目 上澄みをろ過 7 日目 7 日目 上澄みをろ過 28 日目 28 日目 上澄みをろ過

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2-4-2

図 2-4-1 本庫鉱山酸化試験結果

2-4-2. A鉱山

A 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-2 に示す。 開封日から pH、金属濃度ともに大きな変化はなく、開封 3 日後の時点で pH、亜鉛、鉛

の排水基準値(pH5.8-8.6、亜鉛 2mg/L、鉛 0.1 mg/L)を超過しており、開封 28 日後でも

排水基準値内にはならなかった。 A 鉱山坑廃水には鉄があまり含まれていない為、酸化試験による坑廃水の変化があまりな

く、A 鉱山の坑廃水は自然酸化による金属除去効果は低いと推測される。しかしながら、排

水基準値を超過する坑廃水中の亜鉛、鉛については、金属濃度がそれほど高くないため、

浸透流型人工湿地で処理できる可能性がある。

図 2-4-2 A 鉱山酸化試験結果

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2-4-3

2-4-3. B鉱山

B 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-3 (a) 及び図 2-4-3 (b) に示す。 採水直後から全鉄、2 価鉄ともに減少し、2 価鉄については開封時にすでに検出限界値近

くまで減少した。全鉄については、採水日から開封 3 日後までに 30mg/L 程度減少したも

のの、それ以降は濃度減少が緩やかになり、開封 28 日後にようやく排水基準値(Fe 10 mg/L)以下となった。pH及び砒素については、開封日7日目までにそれぞれpH3.23からpH2.44、0.072 mg/L から 0.004 mg/L まで下がっており、上記の鉄の沈澱によるものだと考えられ

る。そのほかの金属濃度については大きな変化はなく、亜鉛、鉛は開封 28 日後も排水基準

値(亜鉛 2mg/L、鉛 0.1 mg/L)以上であった。 B 鉱山坑廃水については、酸化試験でかなりの鉄が沈澱したものの、排水基準値以下まで

減少したのは 28 日後であり、亜鉛の濃度が 26mg/ L と高いため、人工湿地の処理は非常に

難しいと考えられる。

図 2-4-3 (a) B 鉱山酸化試験結果

図 2-4-3 (b) B 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

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2-4-4

2-4-4. C鉱山

C 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-4 (a) 及び図 2-4-4 (b) に示す。 酸化試験開始後から全鉄、2 価鉄ともに減少し、2 価鉄については開封 3 日後に検出限界

値近くまで減少した。全鉄については、採水日から開封 3 日後までに 20mg/L 程度減少し

たものの、それ以降は大幅な減少はなく、開封 28 日後の時点で 16。5mg/L 残存していた。

坑廃水のもともとのpHが3.12であり、さらに鉄の沈澱の影響により酸化試験開始後はpH3以下となっていたため、鉄の沈澱があまり生じなかったと推測される。As については、開

封 3 日目に排水基準値(砒素 0.1mg/L)以下まで減少しており、鉄と共沈したと考えられ

る。その他の金属については大きな変化はなく、亜鉛は開封 28 日後も排水基準値(亜鉛

2mg/L)以上であった。 C 鉱山坑廃水については、もともとの pH が低く、鉄の沈澱によってさらに低下する影響

で鉄が落ちにくいため、人工湿地の適用は難しいと考えられる。

図 2-4-4 (a) C 鉱山酸化試験結果

図 2-4-4 (b) C 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係)

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2-4-5

2-4-5. D鉱山

D 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-5 に示す。 酸化試験後 pH が若干上昇傾向にあるが、金属濃度については大きな変化はなかった。 D 鉱山坑廃水については、鉄がほとんど含まれておらず、酸化試験による坑廃水の変化

があまり見られなかったと考えられる。また、亜鉛、カドミウムについても排水基準値(亜

鉛 2mg/L、鉛 0.1 mg/L)は越えておらず、負荷量としては非常に低いため、浸透型人工湿

地が適用できる可能性がある。

図 2-4-5 D 鉱山酸化試験結果 2-4-6. E鉱山

E 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-6 (a) 及び図 2-4-6 (b) に示す。 2 価鉄については、採水後から開封 3 日後までに 21.7mg/L から 2.7mg/L まで減少してい

る。一方で、全鉄は採水後から酸化試験開始までに 130 mg/L 減少しているものの、その後

は大きな減少傾向はなく、開封 28 日後でも 405 mg/L 残存していた。pH については、も

ともと pH2.40 と非常に低く、さらに開封 7 日後には pH2.0 まで低下した。金属濃度では、

採水日から開封日にかけてやや減少しているものの、それ以降は大きく変化することなく、

開封 28 日後でも排水基準値(砒素:0.1mg/L)以上であった。 E 鉱山坑廃水は鉄の 2 価から 3 価への酸化は非常に早いが、坑廃水の pH が非常に低いた

め、溶存態のままとどまり、鉄が沈澱してにくいと推測される。また砒素についても鉄が

あまり沈澱しないことに起因するものだと考えられる。 以上の結果及び鉄の負荷量より、人工湿地には適さないと考えられる。

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2-4-6

図 2-4-6 (a) E 鉱山酸化試験結果

図 2-4-6 (b) E 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係) 2-4-7. F鉱山

F 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-7 (a) 及び図 2-4-7 (b) に示す。 もともとの pH が中性域であり、採水時点でほとんど鉄はなく、亜鉛が排水基準値(2mg/L)を超過しているのみであった。開封 3 日後に全鉄はほぼ 0 に近い値になったが、その他の

金属についてはほとんど変化がなく、亜鉛は開封 28 日後も排水基準値を超過していた。pHは、やや採水日よりは低下したものの、排水基準値内での変化であった。

F 鉱山坑廃水は、鉄があまり含まれておらず、酸化試験による坑廃水の変化があまり見ら

れなかったと考えられる。また、亜鉛は排水基準値を超過しているものの、負荷量として

は非常に低いため、浸透型人工湿地が適用できる可能性がある。

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2-4-7

図 2-4-7 (a) F 鉱山酸化試験結果

図 2-4-7 (b) F 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係) 2-4-8. G鉱山

G 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-8(a) 及び図 2-4-8(b) に示す。 鉄は、採水時からほぼ 3 価鉄であり、開封 3 日目で検出限界値近くまで減少した。また、

鉛、砒素も同様に 3 日目で減少傾向が見られ、鉄との共沈の可能性がある。亜鉛について

は、開封 7 日目でも濃度の変化はなかった。pH は、もともと pH5.46 であるが、酸化試験

開始後は pH4.8~5.2 と若干低下した。 G 鉱山坑廃水は、酸化試験により、鉄、鉛、砒素について減少傾向が見られた。ただし、

排水基準値を超過している亜鉛については、酸化試験においては処理できなかったが、負

荷量としては非常に低いため、浸透型人工湿地が適用できる可能性がある。

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2-4-8

図 2-4-8 (a) G 鉱山酸化試験結果

図 2-4-8 (b) G 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係) 2-4-9. H鉱山

H 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-9(a) 及び図 2-4-9(b) に示す。 全鉄、2 価鉄ともに酸化試験開始直後から減少しており、2 価鉄は開封 3 日目でほぼ検出

限界値近くになった。全鉄も 3 日目までに 40mg/L 程度減少したが、その後はあまり大幅

な減少にはならず、開封日 7 日目時点で全鉄が 12.8 mg/L と排水基準値(鉄:10mg/L)以

上であった。pH については、もともと pH3.14 と非常に低く、酸化試験後はさらに pH2.8程度まで低下した。その他の金属については、大きな変化はなかった。 H 鉱山坑廃水について、鉄の 2 価から 3 価への酸化は非常に早いが、坑廃水の pH が非

常に低いため、溶存態のままとどまり、鉄が沈澱してにくいと推測される。しかしながら、

開封 7 日後で 12.8mg/L まで下がっているため、酸化速度を速めるような工夫をすることに

より、人工湿地での処理が可能となる可能性がある。

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2-4-9

図 2-4-9 (a) H 鉱山酸化試験結果

図 2-4-9 (b) H 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係) 2-4-10. J鉱山

J 鉱山の坑廃水について酸化試験を行った結果を図 2-4-9(a) 及び図 2-4-9(b) に示す。 全鉄、2 価鉄ともに酸化試験開始直後から減少しており、開封 3 日目でほぼ沈澱した。ま

た、砒素についても鉄と同様に開封 3 日目で検出限界値近くまで減少していた。pH につい

ては、もともとpH6.7と中性域だったが、開封日にはpH4.6、酸化試験開始後はさらにpH4.0まで低下し、排水基準値(pH5.8~8.3)を下回る結果となった。 J 鉱山坑廃水について、鉄の 2 価から 3 価への酸化及び 3 価からの沈澱が非常に早く、他

の金属についても排水基準値を超過しているようなものはないため、人工湿地での処理は

可能性であるとかんがえられる。

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2-4-10

図 2-4-10 (a) J 鉱山酸化試験結果

図 2-4-10 (b) J 鉱山酸化試験結果(pH と Fe の関係) 2-4-11. まとめ

酸化試験結果のまとめを図 2-4-11 に示す。 開封 3 日後までの坑廃水の pH 及び金属濃度を考慮し、人工湿地の適用可能性について、

「表面流型+浸透流型」、「浸透流型」及び「適用困難」の 3 つに分類した。 「表面流型+浸透流型」は酸化試験で比較的鉄、砒素が落ちやすく、亜鉛、鉛濃度があま

り高くない為、両方の人工湿地を用いることで処理ができる可能性がある鉱山であり、C、

H、J 鉱山が該当する。C、H 鉱山では、鉄濃度が排水基準値以下まで減少していないが、

湿地のように空気と接触する面積を増やすことにより、処理できる可能性があるため、「表

面流型+浸透流型」に分類した。また J 鉱山については、開封 3 日後は pH のみの超過であ

るため、浸透流型でなくても石灰水路を通すことによって処理が可能となると考えられる。

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2-4-11

「浸透流型」は、坑廃水中に亜鉛、鉛濃度が含まれている一方で鉄、砒素濃度が低いた

め、浸透流型人工湿地のみで処理できる可能性がある鉱山であり、A、D、F、G 鉱山が該

当する。D 鉱山については、すべての項目について基準を満たしているが、時期により、

亜鉛とカドミウムについて基準値を超過する場合があるため、「浸透流型」の分類とした。 「適用困難」については、坑廃水の金属含有量及び酸化試験の結果から適用が困難であ

ると想定される鉱山であり、B 及び E 鉱山が該当する。B 鉱山については、比較的鉄は落

ちやすいが、もともと坑廃水に含まれている亜鉛の濃度が 26mg/L と非常に高いため、人工

湿地の適用は難しいと考えられる。また、E 鉱山については、低 pH の影響で鉄の沈澱速度

が非常に遅く、また濃度も非常に高いため、「適用困難」と分類した。

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2-4-12

全鉄 二価鉄 亜鉛 カドミウム 鉛 砒素T-Fe Fe2+ Zn Cd Pb As10 2 0.1 0.1 0.1

採水日 参考 - 6.58 - - - 6.1 0.7 1.6 0.007 0.23 0.11

開封日 0 - - - - - 0.01> - 2.22 0.0135 0.452 0.0033日目 3 - - - - - 0.01> - 2.14 0.0139 0.433 0.0037日目 7 22.2 4.77 18.4 388 6.52 0.01> 0.1> 2.24 0.0143 0.452 0.00228日目 28 21.7 4.72 23.3 - - 0.01> 0.1> 2.55 0.0157 0.481 0.005採水日 -7 11.0 3.54 47.0 476 8.65 0.19 0.2 5.25 0.0361 0.701 0.001>開封日 0 22.7 3.80 37.1 468 6.50 0.17 0.2 5.33 0.0349 0.677 0.001>3日目 3 22.0 3.74 37.5 491 6.22 0.17 0.2 5.45 0.0353 0.684 0.001>7日目 7 22.4 3.78 19.2 487 6.16 0.17 0.2 5.57 0.0362 0.709 0.001>28日目 28 22.1 4.16 48.5 467 6.89 0.16 0.1 7.05 0.0425 0.82 0.001>採水日 -3 9.1 3.23 90.2 421 - 41.5 4.4 26.1 0.0598 0.606 0.072開封日 0 24.1 2.97 97.1 590 2.72 15.6 0.2 26.3 0.0605 0.605 0.0153日目 3 19.9 3.03 98.1 609 7.00 10.9 0.2 26.1 0.0603 0.601 0.0067日目 7 21.3 2.44 102.6 589 7.08 10 0.3 26.8 0.0596 0.591 0.00428日目 28 20.3 2.84 114.1 586 - 9.48 0.3 29.3 0.0679 0.677 0.001採水日 -1 13.8 3.12 84.5 509 8.54 39.5 18.7 6.25 0.019 0.009 0.112開封日 0 21.0 2.44 83.8 554 7.22 42.6 9.3 6.22 0.0187 0.009 0.1273日目 3 17.4 2.79 92.4 621 7.39 20.4 0.9 6.19 0.0195 0.009 0.0037日目 7 21.0 2.84 98.6 612 - 18.4 0.7 6.31 0.0195 0.009 0.00328日目 28 20.1 2.71 105.1 620 - 16.5 0.7 6.35 0.027 0.013 0.009採水日 -11 12.2 7.04 56.9 205 7.83 0.01 0.1> 0.73 0.0365 0.001> 0.006開封日 0 21.6 7.01 46.4 - - 0.01 0.1> 0.73 0.0365 0.001> 0.0063日目 3 22.0 6.63 45.6 321 6.80 0.02 0.1> 0.73 0.0357 0.001> 0.0067日目 7 20.8 7.01 53.1 240 - 0.01 - 0.73 0.0364 0.001> 0.00628日目 28 17.8 7.74 47.4 238 - 0.01 - 0.82 0.0406 0.001> 0.006採水日 -2 13.0 2.40 303.0 653 8.20 480 21.7 0.81 0.001 0.001 2.39開封日 0 22.2 2.56 271.0 615 7.59 348 4 0.78 0.001 0.002 1.783日目 3 19.5 2.52 277.0 617 7.31 359 2.7 0.76 0.001 0.001 1.817日目 7 21.1 2.00 323.0 615 7.15 431 1.8 0.79 0.001 0.001> 2.1428日目 28 20.3 2.44 300.0 619 - 405 2.4 0.79 0.0011 0.002 1.99採水日 -7 15.4 6.70 89.8 230 7.90 0.19 0.1> 3.46 0.0095 0.001> 0.002開封日 0 19.4 5.94 70.4 272 - 0.18 0.1> 3.5 0.0096 0.001> 0.0023日目 3 20.4 6.34 74.9 395 - 0.04 0.1> 3.29 0.0093 0.001> 0.001>7日目 7 19.3 6.29 73.7 297 - 0.05 0.1> 3.34 0.0095 0.001> 0.001>28日目 28 17.7 6.20 76.1 262 7.44 0.02 0.1> 3.47 0.0104 0.001> 0.001>採水日 -7 8.8 5.46 43.0 220 9.62 2.09 0.1> 2.65 0.0094 0.007 0.002開封日 0 21.2 4.79 40.7 489 8.18 2.39 0.8 2.6 0.0092 0.008 0.0033日目 3 21.4 5.19 41.2 339 6.76 0.02 0.1> 2.62 0.0092 0.002 0.001>7日目 7 20.4 5.12 40.9 352 6.70 0.04 0.1> 2.78 0.0099 0.002 0.001>28日目 28 17.9 4.99 41.5 343 7.38 - - - - - -採水日 -4 15.4 3.14 169.8 443 7.82 57.6 57.6 1.38 0.0029 0.004 0.002開封日 0 18.3 2.97 136.8 483 - 56.1 12.1 1.36 0.003 0.004 0.0023日目 3 20.3 2.94 149.5 605 - 16.7 1.1 1.3 0.0028 0.004 0.001>7日目 7 20.7 2.89 156.5 609 6.96 12.8 0.9 1.4 0.003 0.004 0.00128日目 28 17.9 2.83 163.6 584 6.80 - - - - - -採水日 -5 15.4 6.70 28.2 148 7.40 10.5 6.6 0.83 0.0038 0.006 0.039開封日 0 19.2 4.66 23.1 267 - 10.3 3.7 0.86 0.0037 0.006 0.0393日目 3 20.6 4.07 26.8 400 - 0.59 0.6 0.86 0.0039 0.001 0.0027日目 7 19.0 4.09 26.4 446 - 0.09 0.1> 0.86 0.0041 0.001 0.00228日目 28 17.5 4.10 28.0 390 7.04 0.11 0.1> 0.9 0.0043 0.001 0.003

J鉱山

pH

人工湿地適用可能性

【表面流型+浸透流型(石灰水路)】pHのみ超過しており、表面流型及び

pHを排水基準値まで上げる設備(浸透流型もしくは石灰水路)を使用する

ことで処理できる可能性あり。

【表面流型+浸透流型】pH、鉄が超過しており、亜鉛についても

時折基準値以上になる。表面流型と浸透流型を組み合わせる

ことによって処理ができる可能性あり。

【浸透流型】鉄があまり含まれておらず、

pHと亜鉛のみ超過しているため、浸透流型で処理できる可能性あり。

【浸透流型】鉄は含まれておらず、亜鉛のみ超過しているため、浸透流型で処理できる

可能性あり。

【適用困難】鉄濃度が非常に高く、沈殿しにくいため、

人工湿地での処理は非常に難しいと考えられる。

G鉱山

pH、亜鉛

H鉱山

pH、鉄

E鉱山

pH、鉄、砒素

F鉱山

亜鉛

C鉱山

pH、鉄、亜鉛

D鉱山

なし

【浸透流型】時々亜鉛、カドミウムが超過する程度

であり、負荷量は非常に小さい。浸透流型のみで処理できる可能性あり。

【表面流型+浸透流型】pH、鉄、亜鉛が超過しており、

表面流型と浸透流型を組み合わせることによって処理ができる可能性あり。

A鉱山

pH、亜鉛、鉛

B鉱山

pH、鉄、亜鉛、鉛

【適用困難】pH、鉄、亜鉛、鉛が超過しており、亜鉛の濃度が非常に高いため、

人工湿地での処理は難しいと考えられる。

【浸透流型】鉄は含まれておらず、pH、亜鉛、鉛のみ超過しているため浸透流型で

処理できる可能性あり。

DO(mg/L)

mg/L開封3日後の時点で

排水基準値を超過しているもの

本庫鉱山

(pH)、亜鉛、鉛

鉱山名 日付 水温 pHEC

(mS/m)ORP(mV)

図 2-4-11 酸化試験結果まとめ

Page 69: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-1

2-5 バックグラウンド等水質測定 調査対象 9 鉱山において、坑廃水が放流される河川の上流の水量、pH 及び電気伝導度等

の水質を測定・計測するとともに、鉱山下流直近の利水点及び環境基準点の pH 及び電気伝

導度等の水質についても測定を行った。 2-5-1. A鉱山

A鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表2-5-1に示す。

また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系調査

結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近環境

基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-2 に示す。表中「23 渇水期」

は平成 23 年 10 月 28~30 日、「23 豊水期」は平成 23 年 11 月 14 日、「24 融雪期」は平成

24 年 5 月 22~25 日の採水調査結果である。 今回、バックグラウンドとして調査した YN-1 第二堆積場上流沢(ハとロ)の水量がこれ

までと比較してやや大きいほかは、各調査地点の水量・水質とも大きな変化は認められな

い。5。47mg/L を示す YN-5 筍沢浸透水をはじめ、YN-4 水上沢浸透水と YN-6 三坑坑内水

の DO がやや低いが、集水された YN-7 総合処理原水の段階では、DO 値 8.65mg/L とほぼ

飽和状態とみてよい。 利水点兼環境基準点の YN-29 真人橋(成瀬川頭首工)の流水量は、処理原水の 3~8 千

倍にも達するため、計算上、水質の良好な利水点兼環境基準点の金属負荷量(水量×水質)

が、処理原水の金属負荷量よりもかなり大きくなっている。

表 2-5-1 A 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

YN-1 第二堆積場上流沢(ハとロ) 平成25年11月7日 302.3 12.3 6.98 14.6 192 7.37YN-4 水上沢浸透水 平成25年11月8日 31.9 12.1 4.02 30.6 413 7.45YN-5 竹の子沢浸透水 平成25年11月8日 108.1 11.5 3.56 41.4 461 5.47YN-6 三坑坑内水 平成25年11月8日 2.6 12.4 3.58 44.2 206 7.60YN-7 総合処理原水 平成25年11月8日 142.5 11.0 3.54 47.0 476 8.65YN-12 処理後水 平成25年11月7日 72.4 12.2 7.14 40.7 220 8.68YN-29 真人橋(成瀬川頭首工) 平成25年11月7日 - 11.3 6.97 14.9 231 9.00

調査日調査地点 pH

Page 70: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-2

表 2-5-2 A 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-2. B鉱山

B鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表2-5-3に示す。

また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系調査

結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近環境

基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-4 に示す。表中「23 豊水期」

は平成 23 年 11 月 26~29 日、「23 渇水期」は平成 23 年 12 月 14~16 日、「24 融雪期」は

平成 24 年 5 月 20~22 日の採水調査結果である。 昨年度までの結果と比較すると、処理原水量及び放流水量が増えているのみで、特段大

きな変化はない。なお B 鉱山については、溶存酸素計の不具合により、DO を測定してい

ない。 放流点から MS-35 大筋川末端利水点兼環境基準点までの距離は約 2.8km、この利水点の

流水量は処理原水の 4~6 百倍で、処理原水の金属負荷量(水量×水質)は利水点のそれよ

り小さい。

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23渇水期 0.07 7.25 0.19 <0.01 <0.001 0.007 <0.001 <0.00123豊水期 0.07 6.96 0.22 <0.01 <0.001 0.007 <0.001 <0.00124融雪期 0.18 7.43 0.12 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.0003H25.11.7 0.30 6.98 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23渇水期 0.11 3.70 0.4 3.78 0.778 6.56 <0.001 0.05123豊水期 0.12 3.71 0.3 3.78 0.992 6.86 <0.001 0.05124融雪期 0.16 3.38 0.9 3.20 0.520 7.80 <0.001 0.052H25.11.8 0.14 3.54 0.2 - 0.701 5.25 <0.001 0.036

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23渇水期 0.05 6.77 1.2 0.50 0.087 0.87 <0.001 0.00723豊水期 0.06 6.86 0.8 0.27 0.062 0.50 <0.001 0.00424融雪期 0.15 8.06 0.3 0.12 0.017 0.31 <0.001 0.003H25.11.7 0.07 7.14 - - - - - -

<利水点兼環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23渇水期 326.73 8.29 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00123豊水期 390.52 7.67 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00124融雪期 1345.82 7.58 0.4 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.0003H25.11.7 - 6.97 - - - - - -

採水地点 採水期 pH

YN-1 第2集積場上流沢

採水地点 採水期 pH

YN-29 真人橋(成瀬川頭首工)

YN-7 総合処理原水

採水地点 採水期 pH

YN-12 処理後水

採水地点 採水期 pH

Page 71: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-3

表 2-5-3 B 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-4 B 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-3. C鉱山

C鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表2-5-5に示す。

また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系調査

結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近環境

基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-6 に示す。表中「23 豊水期」

は平成 23 年 10 月 19~21 日、「23 渇水期」は平成 23 年 12 月 14~16 日、「24 梅雨期」は

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

MS-12 大筋川上流 平成25年12月9日 1,373.3 4.2 7.02 6.2 189 -MS-1 南沢立坑下湧水 平成25年12月9日 2.1 5.3 3.06 166.5 432 -MS-9 殿物埋立場浸透水 平成25年12月9日 49.2 10.0 3.73 63.7 346 -MS-7 大切坑坑内水 平成25年12月9日 5.1 9.3 5.46 40.7 177 -MS-34 原水集水池周りの浸透水 平成25年12月10日 20.0 9.2 4.26 37.8 344 -MS-20 前山湧水 平成25年12月9日 13.8 8.8 3.12 137.0 411 -MS-24 甚兵衛沢湧水 平成25年12月9日 9.2 6.2 2.55 175.1 427 -MS-11 総合処理原水 平成25年12月10日 281.5 9.1 3.23 90.2 421 -MS-14 処理後水(放流水) 平成25年12月9日 124.0 6.4 7.09 8.7 224 -MS-35 大筋川末端利水点 平成25年12月9日 - 5.5 6.79 8.4 220 -MS-33 第一利水点(測点) 平成25年12月9日 - 6.3 6.94 9.9 235 -

調査地点 調査日 pH

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 1.05 6.98 0.18 0.02 0.002 0.411 <0.001 0.00423渇水期 2.03 7.10 0.42 0.03 0.003 0.349 <0.001 0.00324融雪期 1.00 6.95 0.24 0.03 0.003 0.530 <0.001 0.005H25.12.10 1.37 7.02 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.06 3.53 47.3 0.21 0.622 29.10 0.004 0.06023渇水期 0.07 3.54 31.4 0.11 0.562 17.20 0.008 0.03524融雪期 0.07 3.12 52.0 0.88 0.750 40.00 0.087 0.110H25.12.10 0.28 3.23 41.5 - 0.606 26.10 0.072 0.060

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.05 6.11 1.0 0.01 0.011 2.16 0.004 0.00723渇水期 0.06 7.01 1.2 0.01 0.018 2.00 0.004 0.00724融雪期 0.07 7.82 0.7 0.01 0.009 1.20 0.002 0.007H25.12.9 0.12 7.09 - - - - - -

<利水点兼環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 37.50 6.44 0.3 0.01 <0.001 0.15 <0.001 <0.00123渇水期 29.34 6.18 0.3 0.01 <0.001 0.14 <0.001 <0.00124融雪期 41.51 7.31 0.2 0.01 0.001 0.17 <0.001 0.001H25.12.9 - 6.94 - - - - - -

採水地点 採水期 pH

MS-12 大筋川上流

採水地点 採水期 pH

MS-33 第一利水点(B)

MS-11 処理原水

採水地点 採水期 pH

MS-14 放流水

採水地点 採水期 pH

Page 72: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-4

平成 24 年 7 月 15~18 日の採水調査結果である。 過年度の調査結果と比較すると、処理原水を除く各ポイントで pH が低くなっており、調

査時に雨が降っていたため、それに起因するものと推測される。なお、処理水については、

調査時は処理場の運転が停止中だったため、シックナー上澄水を測定した。 FK-3 第 3 坑坑内水でも DO 値は 8。38mg/L と高く、坑口を出た時点ですでに酸化が進

んでいることを示している。そのため、坑内水集水桝及び処理原水槽付近でかなりの鉄澱

物が沈澱していた。 放流点から FK-19 在田川農業用利水点までの距離は約 1km、この利水点の流水量は、処

理原水の 5 倍強であり、処理原水の金属負荷量(水量×水質)が利水点のそれを上回る場

合がある。一方、放流点から FK-37 環境基準点(旧波美橋)までの距離は約 5km で、流水

量は 2~4 万倍に達するため、水質の良好な環境基準点の金属負荷量が、処理原水の金属負

荷量よりもかなり大きくなっている。

表 2-5-5 C 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

FK-1 ヒモン谷上流 平成25年12月18日 50.0 8.8 5.70 14.9 319 10.36FK-3 第3坑坑内水 平成25年12月18日 85.0 13.6 3.02 77.6 453 8.38FK-12 処理原水 平成25年12月19日 98.8 13.8 3.12 84.5 509 8.54FK-13 処理水 平成25年12月19日 - 9.8 5.55 60.8 226 9.89FK-19 在田川農業用利水点 平成25年12月18日 - 8.8 6.26 25.0 258 11.20FK-37 環境基準点(旧波美橋) 平成25年12月18日 - 8.8 6.33 20.8 323 -

調査地点 調査日 pH

Page 73: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-5

表 2-5-6 C 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-4. D鉱山

D鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表2-5-7に示す。

また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系調査

結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近環境

基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-8 に示す。表中「22 豊水期」

は平成 22 年 10 月 14 日、「22 渇水期」は平成 23 年 1 月 7 日、「23 渇水期」は平成 24 年 2月 4~5 日、「24 梅雨期」は平成 24 年 6 月 30 日の採水調査結果である。 昨年度までの結果と比較すると、バックグラウンドとして測定した砂川上流及び放流水

の水量が減少している他は大きな変化は認められない。なお今回は、総合原水を採水し、

水質分析を行っているため、砂川浸透水だけだった昨年度までと比較して金属濃度が若干

低くなっている。 OT-7 通洞坑坑内及び OT-8 水奥条浸透水の DO 値については、それぞれ 6.40mg/L、5.20mg/L と比較的低いが、原水槽で集水しているため、総合原水では飽和に近い状態にな

っている。 放流点から OT-14 山内川農業用水利水点までの距離は約 1。8km、この利水点の流水量

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.03 7.01 0.24 <0.01 0.001 0.011 0.007 <0.00123渇水期 0.01 7.60 0.10 <0.01 <0.001 0.010 0.009 <0.00124梅雨期 0.02 6.55 <0.08 <0.01 <0.001 0.009 0.011 <0.0003H25.12.18 0.05 5.70 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.10 3.04 41.8 0.19 0.014 6.61 0.162 0.02723渇水期 0.10 3.18 29.7 0.08 0.013 4.32 0.037 0.01524梅雨期 0.13 2.93 42.0 0.37 0.011 8.20 0.065 0.035H25.12.19 0.10 3.12 39.5 - 0.009 6.25 0.112 0.019

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.13 7.23 0.2 <0.01 <0.001 0.25 0.005 0.00323渇水期 0.09 6.79 0.2 <0.01 0.002 0.40 0.001 0.00224梅雨期 0.97 7.54 0.1 <0.01 <0.001 0.53 <0.001 0.004H25.12.19 運転休止 5.55 - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 4.24 7.86 0.3 <0.01 0.001 0.08 0.002 <0.00123渇水期 3.89 7.79 0.3 0.01 <0.001 0.10 0.002 <0.00124梅雨期 5.30 8.09 0.3 <0.01 <0.001 0.08 0.004 0.001H25.12.18 - 6.26 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 1830.42 7.61 0.2 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.00123渇水期 3632.97 7.44 0.1 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00124梅雨期 3179.00 7.44 0.1 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.0003H25.12.18 - 6.33 - - - - - -

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

FK-1 ヒモン谷上流

採水地点 採水期 pH

FK-12 処理原水

採水地点 採水期 pH

FK-13 処理水

FK-19 在田川農業用水利水点①

採水地点 採水期 pH

FK-37 波美橋(A)

Page 74: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-6

は処理原水の約 1~5 百倍で、処理原水の金属負荷量(水量×水質)は利水点のそれより小

さい。また、放流点から OT-15 環境基準点(並河橋)までの距離は約 4km であり、流水量

は処理原水の約 1 千倍あり、処理原水の金属負荷量は環境基準点のそれより小さい。

表 2-5-7 D 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

OT-3 砂川上流 平成25年11月28日 4.1 7.8 7.43 15.0 164 8.85OT-7 通洞坑坑内水 平成25年11月28日 37.1 14.0 6.55 58.8 197 6.40OT-8 奥条浸透水 平成25年11月28日 18.0 14.2 7.29 58.9 164 5.20OT-9 砂川浸透水 平成25年11月28日 32.4 13.3 7.05 39.8 202 7.30OT-9' 総合原水(水質のみ) 平成25年11月28日 - 12.2 7.04 56.9 205 7.83OT-10 処理場放流水 平成25年11月28日 39.6 10.7 7.63 51.0 186 8.70OT-14 山内川農業用水利水点 平成25年11月28日 - 6.4 7.74 19.7 135 8.90OT-15 環境基準点(並河橋) 平成25年11月28日 - 7.6 7.77 19.1 162 10.30

調査地点 調査日 pH

Page 75: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-7

表 2-5-8 D 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-5. E鉱山

E鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表2-5-9に示す。

また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系調査

結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近環境

基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-10(北麓側)と表 2-5-11(南

麓側)に示す。表中「23 豊水期」は平成 23 年 10 月 28~30 日(北麓側)と平成 23 年 10月 23 日(南麓側)、「23 渇水期」は平成 23 年 12 月 7~9 日(北麓側)と平成 23 年 12 月 8~10 日、「24 梅雨期」は平成 24 年 6 月 25~26 日(北麓側)と平成 24 年 6 月 23 日(南麓

側)の採水調査結果である。 複数ある個別坑内水のうち、IT-11 大盛鉱山坑内水の示す DO 値 6.70mg/L が最も低い溶

存酸素量で、他の坑内水は流出口付近ですでに飽和している。E 鉱山に属する個別坑廃水の

ほとんどは ORP 値が高く、流出口ですでに酸化が進んでいることを示している。それでも

流出口から処理場に至る集水枡や貯水槽に沈澱物がほとんどないのは pH3 より酸性の水質

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 0.77 7.80 2.40 <0.002 <0.005 <0.003 0.009 <0.00122渇水期 0.52 7.71 0.16 <0.002 <0.005 0.005 0.009 <0.00123渇水期 0.55 7.53 <0.08 <0.01 <0.001 0.003 0.006 <0.00124梅雨期 0.60 7.19 0.23 <0.01 <0.001 0.008 0.009 0.000H25.11.29 0.004 7.80 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 0.15 6.38 0.1 1.30 <0.005 1.60 0.006 0.07622渇水期 0.02 6.79 0.0 0.95 <0.005 1.80 0.003 0.09423渇水期 0.01 6.84 <0.08 0.58 <0.001 1.42 0.003 0.08524梅雨期 0.02 6.68 <0.08 0.53 <0.001 1.80 0.009 0.091H25.11.29 0.03 7.04 0.0 - <0.001 0.73 0.006 0.037

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 0.33 7.12 0.0 0.14 <0.005 0.18 0.003 0.01722渇水期 0.03 7.10 0.1 0.10 <0.005 0.20 0.003 0.01723渇水期 0.28 7.55 <0.08 0.04 <0.001 0.21 0.002 0.02124梅雨期 0.31 6.79 <0.08 0.05 <0.001 0.26 0.005 0.023H25.11.29 0.04 7.63 - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 12.10 7.30 0.2 <0.002 <0.005 <0.003 0.002 0.00122渇水期 4.51 7.17 0.3 <0.002 <0.005 0.02 0.003 0.00123渇水期 6.90 7.41 0.3 <0.01 <0.001 0.02 0.002 0.00124梅雨期 4.34 7.58 0.5 <0.01 <0.001 0.02 0.007 0.001H25.11.29 - 7.74 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期22渇水期23渇水期 17.33 7.60 0.2 <0.01 <0.001 0.00 0.001 <0.00124梅雨期 30.18 7.33 0.2 <0.01 <0.001 0.00 0.003 <0.0003H25.11.29 - 7.77 - - - - - -

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

OTN-3 砂川上流

採水地点 採水期 pH

OTN-9 砂川浸透水

採水地点 採水期 pH

OTN-10 放流水

OTN-14 山内川農業用水利水点

採水地点 採水期 pH

OTN-15 並河橋(B)

Page 76: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-8

であるためと考えられる。 北麓側の放流点から IT-16 八塔寺川利水点②までの距離は 1km 弱、この利水点の流水量

は処理原水の 2~3 百倍程度で、処理原水の金属負荷量(水量×水質)が利水点のそれを上

回る場合がある。また、放流点から MT-29 小松原堰環境基準点まで 5km 超の距離で、こ

の環境基準点の流水量は、差が大きい場合処理原水の 1.5 千倍程度あるが、差が小さい場合

3 百倍程度となるうえに、処理原水の金属負荷量が環境基準点のそれを上回る場合がある。 南麓側の放流点から MT-14 金剛川利水点④までの距離は約 1km、この利水点の流水量は

処理原水の 2~3 百倍程度で、処理原水の金属負荷量が利水点のそれを上回る場合がある。

また、放流点から MT-29 小松原堰環境基準点まで 5km 超の距離で、この環境基準点の流

水量は、差が大きい場合処理原水の 3 千倍程度あるが、差が小さい場合 2~3 百倍程度とな

るうえに、処理原水の金属負荷量が環境基準点のそれを上回る場合がある。

表 2-5-9 E 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

MT-29 環境基準点(小松原堰) 平成25年12月10日 - 13.2 7.49 14.5 138 8.45MT-14 金剛川利水点④ 平成25年12月10日 - 11.1 7.03 25.8 114 8.85IT-16 八塔寺川利水点② 平成25年12月10日 - 11.0 7.32 13.3 95 8.71IT-7 風隠池沢流末 平成25年12月10日 - 9.6 7.31 11.4 160 8.72IT-8 共栄鉱山坑内水 水枯渇 - - - - - -IT-9 寿鉱山坑内水 平成25年12月11日 60.2 13.5 2.71 204.0 493 8.02IT-10 大盛新坑坑内水 水枯渇 - - - - - -IT-11 大盛鉱山坑内水 平成25年12月11日 5.4 11.5 2.69 191.0 488 6.70IT-12 板屋処理原水 平成25年12月11日 54.0 10.5 2.65 207.0 531 9.09IT-13 板屋処理後水 運転休止 - - - - - -KT-2 栄和鉱山坑内水 平成25年12月11日 18.0 14.1 2.64 253.0 636 8.25KT-4 富士上部坑坑内水 平成25年12月11日 6.9 13.9 2.48 873.0 651 8.08KT-6 中石金谷鉱山坑内水 平成25年12月11日 30.0 13.4 2.82 127.7 593 8.15KT-7 富士鉱山坑内水 水枯渇 - - - - - -KT-8 金谷処理原水 平成25年12月11日 57.0 13.0 2.41 303.0 653 8.17KT-11 金谷処理後水 運転休止 - - - - - -KT-1' 宮奥川中流(砂防堰堤下) 平成25年12月11日 - 13.6 3.17 67.0 521 8.42

調査地点 調査日 pH

Page 77: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-9

表 2-5-10 E 鉱山(北麓側)バックグラウンド等水系調査経時比較表

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.44 7.13 <0.08 <0.01 <0.001 0.003 0.001 <0.00123渇水期 0.23 7.20 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.00124梅雨期 1.50 6.66 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 0.001 <0.0003H25.12.10 - 7.31 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.10 2.87 81.8 0.08 <0.001 1.31 0.019 0.00323渇水期 0.10 2.90 125.0 0.06 <0.001 0.97 0.045 0.00224梅雨期 0.28 2.69 100.0 0.07 <0.001 1.20 0.028 0.004H25.12.10 0.05 2.65 - - - - - -

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.12 7.00 0.4 <0.01 <0.001 0.02 0.003 <0.00123渇水期 0.10 6.95 0.6 <0.01 <0.001 0.01 0.002 <0.00124梅雨期 1.25 6.04 0.9 <0.01 <0.001 0.10 <0.001 0.001H25.12.10 運転休止 - - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 21.48 6.96 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00123渇水期 19.94 7.23 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00124梅雨期 99.23 7.16 0.2 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 0.001H25.12.10 - 7.32 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 155.93 6.89 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00123渇水期 36.37 7.00 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00124梅雨期 86.15 7.49 0.1 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.0003H25.12.10 - 7.49 - - - - - -

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

IT-6 風隠池沢流末

採水地点 採水期 pH

IT-12 処理原水

採水地点 採水期 pH

IT-13 処理水

IT-16 八塔寺川農業用水利水点②

採水地点 採水期 pH

MT-29 小松原堰 (補、A)

Page 78: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-10

表 2-5-11 E 鉱山(南麓側)バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-6. F鉱山

F 鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表 2-5-12 に示

す。また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系

調査結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近

環境基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-13 に示す。表中「22 豊水

期」は平成 22 年 11 月 2 日、「22 渇水期」は平成 23 年 1 月 14~15 日、「23 渇水期」は平

成 24 年 1 月 31 日~2 月 1 日、「24 梅雨期」は平成 24 年 7 月 12~13 日の採水調査結果で

ある。 バックグラウンドとした NG-1 中河内川最上流は、調査当日流水がなく、窪みに溜まって

いた河川水を測定した。 NG-4 大切坑坑内水の DO 値が 7。94mg/L を示しているが、貯水槽で滞留させたあとの

処理原水を測定したため、このようにやや高い値を示していると考えられる。大切坑坑内

水は遮水プラグから流出しているため、流出直後の坑廃水の DO 値はこれより低いものと

推定される。 放流点から NG-10 轟川農業用利水点までの距離は約 1km、この利水点の流水量は処理原

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.00 5.79 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.00123渇水期 0.00 6.07 <0.08 0.01 0.001 0.009 <0.001 <0.00124梅雨期 0.20 5.94 0.19 <0.01 <0.001 0.004 <0.001 <0.0003H25.12.11 水枯渇 - - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.05 2.58 519.0 0.40 <0.001 2.10 2.990 0.00223渇水期 0.03 2.69 625.0 0.31 <0.001 1.84 2.940 0.00124梅雨期 0.12 2.45 290.0 0.23 0.002 1.40 1.500 0.002H25.12.11 0.06 2.40 480.0 - 0.001 0.81 2.390 0.001

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.06 6.42 0.4 <0.01 <0.001 0.01 0.024 <0.00123渇水期 0.05 8.18 0.7 <0.01 <0.001 <0.003 0.042 0.00124梅雨期 0.14 6.71 1.2 <0.01 <0.001 0.04 0.007 0.001H25.12.11 運転休止 - - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 16.67 6.91 0.3 0.01 <0.001 0.05 <0.001 <0.00123渇水期 8.96 6.78 0.3 <0.01 0.001 0.05 <0.001 <0.00124梅雨期 23.61 7.00 0.4 <0.01 <0.001 0.05 <0.001 <0.0003H25.12.10 - 7.03 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 155.93 6.89 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00123渇水期 36.37 7.00 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.00124梅雨期 86.15 7.49 0.1 <0.01 <0.001 0.01 <0.001 <0.0003H25.12.10 - 7.49 - - - - - -

MT-14 金剛川農業用水利水点④

採水地点 採水期 pH

MT-29 小松原堰 (補、A)

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

KT-1 宮奥川上流

採水地点 採水期 pH

KT-8 処理原水

採水地点 採水期 pH

KT-11 処理水

Page 79: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-11

水の数十倍程度で、処理原水の金属負荷量(水量×水質)が利水点のそれを上回る場合が

ある。一方、放流点から KN-2 雨水橋環境基準点までは約 10km の距離で、この環境基準

点の流水量は、処理原水の 1~3 千倍にも達するため、計算上、水質の良好な環境基準点の

金属負荷量が、処理原水の金属負荷量よりもかなり大きくなっている。

表 2-5-12 F 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-13 F 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

NG-1 中河内川最上流 平成26年1月7日 溜り水 10.1 7.58 16.4 163 9.35NG-4 大切坑坑内水 平成26年1月7日 50.0 15.4 6.74 89.8 230 7.94NG-5 処理場放流水 平成26年1月7日 50.0 10.3 7.07 91.2 212 9.38NG-10 轟川農業用水利水点 平成26年1月7日 - 8.6 7.63 18.5 150 10.21KN-2 雨水橋環境基準点 平成26年1月7日 - 10.6 7.16 31.3 106 10.74

調査地点 調査日 pH

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 0.07 7.26 <0.01 <0.002 <0.005 0.007 <0.001 <0.00122渇水期 0.79 7.56 <0.01 <0.002 <0.005 0.007 <0.001 <0.00123渇水期 0.04 7.70 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.00124梅雨期 0.19 7.48 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.0003H26.1.7 0.00 7.58 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 0.05 6.93 0.0 2.00 <0.005 3.90 0.002 0.00822渇水期 0.04 5.19 0.1 1.90 <0.005 4.30 0.001 0.01023渇水期 0.04 7.14 <0.08 1.52 0.015 3.32 0.002 0.00924梅雨期 0.07 4.72 0.1 2.90 <0.001 5.50 0.001 0.015H26.1.7 0.05 6.74 0.2 - <0.001 3.46 0.002 0.010

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 0.03 6.99 <0.01 0.03 <0.005 0.40 <0.001 0.00422渇水期 0.04 6.43 0.1 0.03 <0.005 0.82 <0.001 0.00523渇水期 0.03 7.83 <0.08 0.01 <0.001 0.28 <0.001 0.00324梅雨期 0.61 7.11 <0.08 <0.01 <0.001 0.15 <0.001 0.004H26.1.7 0.00 7.07 - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 1.73 7.61 <0.01 <0.002 <0.005 0.01 <0.001 <0.00122渇水期 2.62 7.21 0.1 <0.002 <0.005 0.01 <0.001 <0.00123渇水期 1.37 7.62 <0.08 <0.01 <0.001 0.02 <0.001 <0.00124梅雨期 5.68 7.58 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.0003H26.1.7 - 7.63 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

22豊水期 - - - - - - - -22渇水期 - - - - - - - -23渇水期 45.45 9.12 0.1 <0.01 <0.001 0.00 <0.001 <0.00124梅雨期 253.74 7.69 0.4 <0.01 <0.001 0.00 <0.001 <0.0003H26.1.7 - 7.16 - - - - - -

NG-10 轟川農業用水利水点

採水地点 採水期 pH

KN-9 雨水橋(A)

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

NG-1 中河内川最上流

採水地点 採水期 pH

NG-4 大切坑坑内水

採水地点 採水期 pH

NG-6 放流水

Page 80: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-12

2-5-7. G鉱山

G 鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表 2-5-14 に示

す。また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系

調査結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近

環境基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-15 に示す。表中「23 豊水

期」は平成 23 年 10 月 24~26 日、「23 渇水期」は平成 24 年 1 月 12~14 日、「24 梅雨期」

は平成 24 年 7 月 30 日~8 月 1 日の採水調査結果である。 昨年度までの結果と比較し、特段大きな変化はない。DO 値については、HE-2 鉱山 0mL、HE-8 第 2 ダム底設暗渠水でそれぞれ 5.10mg/L、6.54mg/L と比較的低い値であるが、すべ

ての坑廃水は調整槽でいったん集水されるため、最終的な処理原水はほぼ飽和状態となっ

ている。 放流点から、HE-22 宇田枝井路取水口の利水点までの距離は約 6.8km、この利水点の流

水量は処理原水の 3~7 十倍程度であり、処理原水の金属負荷量(水量・水質)が利水点の

それを上回る場合がある。また、放流点から直近の環境基準点(補助点)HE-19 岡橋まで

の距離は約 1.6km であり、この環境基準点補助点の流水量は処理原水の 2~7 十倍程度であ

り、水量増加による水質悪化等の場合、環境基準点のそれを上回る場合がある。

表 2-5-14 G 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

HE-1 鉱山上流九折川 平成26年1月21日 - 3.9 6.98 4.5 166 11.51HE-2 鉱山0mL坑 平成26年1月21日 - 14.1 5.87 34.7 226 5.10HE-3 鉱山-15mL坑 平成26年1月21日 - 11.0 6.83 13.0 191 9.04HE-8 第2ダム底設暗渠水 平成26年1月21日 - 7.2 6.54 10.0 212 6.54HE-9 第1ダム浸透水(ポンプ導水) 平成26年1月21日 - 11.3 2.94 6.3 342 10.35HE-10 総合原水 平成26年1月21日 1,740.0 8.8 5.46 43.0 220 9.62HE-11 第1段中和槽O.F.(炭カル処理後) 平成26年1月21日 - 9.8 7.64 45.1 154 9.89HE-12 第2段中和槽O.F.(消石灰処理後) 平成26年1月21日 - 9.9 8.58 45.2 108 9.92HE-13 放流水 平成26年1月21日 - 6.3 6.94 54.4 202 10.50HE-18 第2ダム浸透水+底設暗渠水 平成26年1月21日 - 7.1 4.25 114.4 273 9.65HE-22 宇田枝井路取水口 平成26年1月21日 - 5.9 7.53 7.9 198 11.54HE-28 犬養大橋 平成26年1月21日 - 8.7 7.66 17.4 178 10.48

調査地点 調査日 pH

Page 81: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-13

表 2-5-15 G 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-8. H鉱山

H 鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表 2-5-16 に示

す。また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系

調査結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近

環境基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-17 に示す。表中「23 豊水

期」は平成 23 年 10 月 16~17 日、「23 渇水期」は平成 23 年 12 月 22~23 日、「24 梅雨期」

は平成 24 年 6 月 9~11 日の採水調査結果である。 大切坑及び大切坑(三角堰)での DO 値はそれぞれ 8.09 mg/L 、7.82mg/L と比較的高い

値となっており、坑口から出てきた時点でかなり酸化している。そのため、坑口や三角堰

には鉄の沈澱物が多く確認できた。 放流点から HH-14 第一利水点までの距離は約 1.5km、この利水点の流水量は処理原水の

数十倍~1 百倍であり、処理原水の負荷量(水量×水質)が利水点のそれを上回る場合があ

る。一方で、放流点から HH-27 五十鈴橋環境基準点までの距離は約 40km、流水量は処理

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 33.63 6.67 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.00123渇水期 3.15 7.15 <0.08 <0.01 <0.001 0.003 0.001 <0.00124梅雨期 49.47 7.27 <0.08 <0.01 0.001 0.006 0.002 <0.0003H26.1.21 - 6.98 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.75 3.27 4.6 0.08 0.030 6.72 0.002 0.03123渇水期 0.57 5.56 2.5 0.03 0.006 2.49 0.003 0.01024梅雨期 3.00 4.55 3.1 0.11 0.033 4.40 0.006 0.021H26.1.21 1.74 5.46 -

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.75 7.82 <0.08 <0.01 <0.001 0.05 <0.001 0.00223渇水期 0.57 7.40 0.5 <0.01 0.002 0.67 0.001 0.00324梅雨期 3.00 7.68 0.2 0.01 0.002 0.56 0.001 0.003H26.1.21 1.74 6.94 - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 249.59 7.62 <0.08 <0.01 <0.001 0.00 0.002 <0.00123渇水期 40.82 7.70 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 0.003 <0.00124梅雨期 229.76 7.59 <0.08 <0.01 <0.001 0.00 0.003 <0.0003H26.1.21 - 7.53 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 55.78 7.20 <0.08 <0.01 <0.001 0.00 0.002 <0.00123渇水期 11.40 7.21 <0.08 <0.01 <0.001 0.06 0.002 <0.00124梅雨期 60.54 7.18 <0.08 <0.01 <0.001 0.06 0.003 0.000H26.1.21 - - - - - - - -

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

HE-1 鉱山上流九折川

採水地点 採水期 pH

HE-10 総合原水

採水地点 採水期 pH

HE-13 放流水

HE-22 宇田枝井路取水口

採水地点 採水期 pH

HE-19 岡橋 (補、A)

Page 82: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

2-5-14

原水の数千~1 万数千倍になるため、処理原水の金属負荷量は環境基準点のそれより小さく

なる。

表 2-5-16 H 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

表 2-5-17 H 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-9. J鉱山

J 鉱山周辺で、バックグラウンド等の測定点において水質測定した結果を表 2-5-18 に示

す。また、平成 22 年度以降の休廃止鉱山鉱害防止技術調査研究事業において得られた水系

調査結果のうち、バックグラウンド、処理原水、処理後水、下流直近利水点及び下流直近

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

HH-1' 大切坑 平成26年1月16日 - 13.9 3.22 163.0 423 8.09HH-1 大切坑(三角堰) 平成26年1月16日 27.0 15.4 3.14 169.8 443 7.82HH-2 スライム堆積場浸透水 平成26年1月16日 - 11.3 3.26 149.3 341 3.87HH-3 鉱山沢末端 平成26年1月17日 140.0 6.4 7.02 13.8 214 10.80HH-6 放流水 平成26年1月16日 31.0 3.0 6.30 140.4 247 11.87HH-14 第一利水点 平成26年1月16日 - 6.4 8.27 16.8 147 11.39HH-27 五十鈴橋 平成26年1月16日 - 11.4 7.87 3.6 195 9.00

調査地点 調査日 pH

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 33.63 6.67 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.00123渇水期 3.15 7.15 <0.08 <0.01 <0.001 0.003 0.001 <0.00124梅雨期 49.47 7.27 <0.08 <0.01 0.001 0.006 0.002 <0.0003H26.1.21 - 6.98 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.75 3.27 4.6 0.08 0.030 6.72 0.002 0.03123渇水期 0.57 5.56 2.5 0.03 0.006 2.49 0.003 0.01024梅雨期 3.00 4.55 3.1 0.11 0.033 4.40 0.006 0.021H26.1.21 1.74 5.46 2.1 - 0.007 2.65 0.002 0.009

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.75 7.82 <0.08 <0.01 <0.001 0.05 <0.001 0.00223渇水期 0.57 7.40 0.5 <0.01 0.002 0.67 0.001 0.00324梅雨期 3.00 7.68 0.2 0.01 0.002 0.56 0.001 0.003H26.1.21 1.74 6.94 - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 249.59 7.62 <0.08 <0.01 <0.001 0.00 0.002 <0.00123渇水期 40.82 7.70 <0.08 <0.01 <0.001 0.01 0.003 <0.00124梅雨期 229.76 7.59 <0.08 <0.01 <0.001 0.00 0.003 <0.0003H26.1.21 - 7.53 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 55.78 7.20 <0.08 <0.01 <0.001 0.00 0.002 <0.00123渇水期 11.40 7.21 <0.08 <0.01 <0.001 0.06 0.002 <0.00124梅雨期 60.54 7.18 <0.08 <0.01 <0.001 0.06 0.003 0.000H26.1.21 - - - - - - - -

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

HE-1 鉱山上流九折川

採水地点 採水期 pH

HE-10 総合原水

採水地点 採水期 pH

HE-13 放流水

HE-22 宇田枝井路取水口

採水地点 採水期 pH

HE-19 岡橋 (補、A)

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2-5-15

環境基準点の各測定点について、今年度調査結果を含めて表 2-5-19 に示す。表中「23 豊水

期」は平成 23 年 10 月 27~28 日、「23 渇水期」は平成 24 年 1 月 9~10 日、「24 梅雨期」

は平成 24 年 7 月 28~29 日の採水調査結果である。 SY-4 大切坑坑内水の DO 値が 7.43mg/L を示している。坑口からすぐの地点での値であ

るが、坑道は密閉されていない状態なので飽和状態に近いものと考えられる。 放流点から SY-20 川辺ダム下利水点までの距離は 5km 超、この利水点の流水量は処理原

水の数 2~4 百倍程度で、処理原水の金属負荷量(水量×水質)は利水点のそれより小さい。

また、放流点から SY-22 両添橋環境基準点までは 10km 超の距離で、この環境基準点の流

水量は、処理原水の 3~5 百倍程度で、処理原水の金属負荷量は利水点のそれより小さい。

表 2-5-18 J 鉱山バックグラウンド等水質測定結果表

水量 水温 EC ORP DO(L/min) (℃) (mS/m) (mV) (mg/L)

SY-1 岩屋川最上流 平成26年1月9日 3,760.0 9.8 7.37 13.1 188 9.03SY-4 大切坑 平成26年1月9日 167.0 15.4 6.71 28.2 148 7.43SY-6 放流水 平成26年1月9日 167.0 12.8 6.79 27.3 157 8.43SY-8 岩観橋下 平成26年1月9日 - 10.4 7.61 16.8 193 9.15SY-20 川辺ダム下 平成26年1月9日 - 9.6 7.65 13.9 193 9.57SY-22 両添橋(環境基準点) 平成26年1月9日 - 11.2 7.52 18.7 186 9.16

調査地点 調査日 pH

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2-5-16

表 2-5-19 J 鉱山バックグラウンド等水系調査経時比較表

2-5-10. まとめ

パッシブトリートメント技術を適用するにあたって、坑廃水の持つ特徴そのもののほか

に、各鉱山を取り巻く自然環境に留意する必要がある。バックグラウンド、利水点、環境

基準点の水質は、この面で端的な指標となると考えられる。 今回の調査では、予算的な制約により水質分析まで行えなかったが、pH、EC、ORP、DO などの指標により、昨年度までに実施した水系調査結果に大きな変化がないことを確認

した。 人工湿地処理を考慮する場合、処理プロセス初期の沈澱に DO 値が大きく影響すること

が予想される。一般に坑口を出た直後の坑廃水の溶存酸素濃度は低いが、処理場に至る過

程で飽和状態に近くなり、対象 9 鉱山の処理原水の多くは溶存酸素に飽和した状態で中和

処理プロセスに導入されている。ただし、E 鉱山のように坑廃水の酸化が進んでも pH が低

いために沈澱が進まない例もある。このような坑廃水は好気性の人工湿地処理には向いて

いないものと考えられる。 対象 9 鉱山のバックグラウンドの金属負荷量(水量×水質)はいずれも小さい。一方、

<バックグラウンド>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 3.08 7.53 0.09 0.01 0.001 0.015 <0.001 <0.00123渇水期 2.00 7.32 0.09 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.00124梅雨期 9.76 7.18 <0.08 <0.01 <0.001 <0.003 <0.001 <0.0003H26.1.9 3.76 7.37 - - - - - -

<処理原水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.21 5.90 18.3 0.01 0.006 1.01 0.028 0.00423渇水期 0.12 6.65 12.6 <0.01 0.003 0.72 0.039 0.00224梅雨期 0.70 3.81 6.5 0.02 0.019 1.00 0.049 0.007H26.1.9 0.17 6.70 10.5 - 0.006 0.83 0.039 0.004

<処理後水>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 0.21 7.69 0.3 <0.01 <0.001 0.06 0.001 <0.00123渇水期 0.12 7.51 0.1 <0.01 <0.001 0.03 0.001 <0.00124梅雨期 0.97 7.43 0.4 <0.01 0.002 0.14 0.017 0.002H26.1.9 0.17 6.79 - - - - - -

<利水点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 60.75 7.67 0.2 0.01 0.002 0.01 0.001 <0.00123渇水期 47.86 7.58 0.2 <0.01 <0.001 <0.003 0.001 <0.00124梅雨期 184.45 7.47 0.1 0.01 <0.001 0.01 0.002 <0.0003H26.1.9 - 7.65 - - - - - -

<環境基準点>

水量 T.Fe Cu Pb Zn As Cd(m3/min) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L) (mg/L)

23豊水期 78.77 7.58 0.1 <0.01 <0.001 0.00 0.001 <0.00123渇水期 62.05 7.62 0.1 <0.01 <0.001 <0.003 0.001 <0.00124梅雨期 232.53 7.02 0.1 <0.01 <0.001 <0.003 0.001 <0.0003H26.1.9 - 7.52 - - - - - -

採水地点 採水期 pH

採水地点 採水期 pH

SY-1 岩屋川最上流

採水地点 採水期 pH

SY-4 大切坑

採水地点 採水期 pH

SY-6 放流水

SY-20 川辺ダム下

採水地点 採水期 pH

SY-22 両添橋(A)

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2-5-17

利水点や環境基準点では、水質的には良好でも、水量の大きさにより、計算上、坑廃水の

金属負荷量よりも大きくなる可能性があるが、このような場合、坑廃水の金属負荷量の変

動を緩衝する効果を期待できると言える。A 鉱山、B 鉱山、J 鉱山などがこれにあたる。

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3-1

3 総論 3-1. 本庫鉱山におけるパッシブトリートメント

本庫鉱山におけるパッシブトリートメント(人工湿地による坑廃水処理)の導入について

は、これまで小規模人工湿地による試験を実施し、検討を行ってきている。小規模人工湿

地における試験結果から、表面流型人工湿地単独では、pH、Pb(鉛)及び Zn(亜鉛)について

は排水基準を満たすことは困難であることが明らかとなっている。また表面流型人工湿地

の下流に、石灰質の砂利を利用した浸透流型人工湿地を設置することで、pH、鉛及び亜鉛

などの成分についても排水基準値を守ることが可能になることも明らかになっている。こ

のため、本庫鉱山においてパッシブトリートメントを導入する場合には、表面流型人工湿

地と浸透流型人工湿地の 2 基の湿地を、表面流型が上流に来るように直列に配置して、坑

廃水を流すようにすることが必要となる。 本調査研究事業では、平成 25 年度に 1,927m2 の表面流型人工湿地を造成し、平成 26 年

度は実用規模の浸透流型人工湿地を造成する予定となっており、この 2 基の人工湿地によ

る処理効果を検証し、本庫鉱山におけるパッシブトリートメントの導入について検討する

計画である(平成 25 年度の仕様書による)。 そこで、平成 26 年度に造成する実用規模の浸透流型人工湿地の規模・仕様について、小

規模人工湿地による試験の結果から検討を行った。浸透流型人工湿地は、湿地内部を流下

させるために、基材として使用する石灰質の砂利の中を通過する滞留時間が重要となる。

このため規模の検討については、表面流型人工湿地の場合と異なり、滞留時間を使用した。

小規模の浸透流型人工湿地における平均滞留時間(75L/min で 13.5 時間)から、水量の変化

による滞留時間の変化を求めた。この滞留時間の変化と亜鉛濃度の除去率の関係を、図3-1-1に示す。 これをみると概ね 15時間よりも長い滞留時間で処理効果が高くなっていることが明らか

である。したがって、実用規模の浸透流型人工湿地は、浸透流型に導入する水量(表面流型

人工湿地の場合と同様の 200~300L/min)において、滞留時間が 15 時間以上となる規模が

必要である。 表 3-1-1 に導入水量と規模(容積m3)の関係を示す。この表から、実用規模の浸透流型人工

湿地の規模は 600~1000m3程度と想定できる。また仕様については、最終的に確保できる

造成用地の大きさ、工事予算などによって決定されるが、想定される仕様を下記に示す。 【実用規模の浸透流型人工湿地】 幅:14~16m、長さ:48m(約 1:3) 深さ:1.0~1.5m 面積:672~768m2 体積:792~1008m3 内部基材:石灰質の砂利(φ40~150 ㎜)

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3-2

表 3-1 水量、滞留時間および容積の関係

平成 25 年度の仕様書によると、平成 26 年度は、実用規模の表面流型人工湿地における

各種調査と実用規模の浸透流型人工湿地の造成を実施する計画である。浸透流型の完成後

は 2 基の人工湿地を使用した実証試験を行い、金属成分の濃度変化、植物の状況、土壌の

含有量変動及び石灰質の砂利の状況などについて、データを収集し、処理効果について評

価を行う必要がある。

間げき率 0.3

L/min m3/h 400 500 600 700 800 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500

50 3 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100.0 110.0 120.0 130.0 140.0 150.0

70 4.2 28.6 35.7 42.9 50.0 57.1 64.3 71.4 78.6 85.7 92.9 100.0 107.1

90 5.4 22.2 27.8 33.3 38.9 44.4 50.0 55.6 61.1 66.7 72.2 77.8 83.3

100 6 20.0 25.0 30.0 35.0 40.0 45.0 50.0 55.0 60.0 65.0 70.0 75.0

120 7.2 16.7 20.8 25.0 29.2 33.3 37.5 41.7 45.8 50.0 54.2 58.3 62.5

140 8.4 14.3 17.9 21.4 25.0 28.6 32.1 35.7 39.3 42.9 46.4 50.0 53.6

160 9.6 12.5 15.6 18.8 21.9 25.0 28.1 31.3 34.4 37.5 40.6 43.8 46.9

180 10.8 11.1 13.9 16.7 19.4 22.2 25.0 27.8 30.6 33.3 36.1 38.9 41.7

200 12 10.0 12.5 15.0 17.5 20.0 22.5 25.0 27.5 30.0 32.5 35.0 37.5

220 13.2 9.1 11.4 13.6 15.9 18.2 20.5 22.7 25.0 27.3 29.5 31.8 34.1

240 14.4 8.3 10.4 12.5 14.6 16.7 18.8 20.8 22.9 25.0 27.1 29.2 31.3

260 15.6 7.7 9.6 11.5 13.5 15.4 17.3 19.2 21.2 23.1 25.0 26.9 28.8

280 16.8 7.1 8.9 10.7 12.5 14.3 16.1 17.9 19.6 21.4 23.2 25.0 26.8

300 18 6.7 8.3 10.0 11.7 13.3 15.0 16.7 18.3 20.0 21.7 23.3 25.0

350 21 5.7 7.1 8.6 10.0 11.4 12.9 14.3 15.7 17.1 18.6 20.0 21.4

400 24 5.0 6.3 7.5 8.8 10.0 11.3 12.5 13.8 15.0 16.3 17.5 18.8

450 27 4.4 5.6 6.7 7.8 8.9 10.0 11.1 12.2 13.3 14.4 15.6 16.7

500 30 4.0 5.0 6.0 7.0 8.0 9.0 10.0 11.0 12.0 13.0 14.0 15.0

600 36 3.3 4.2 5.0 5.8 6.7 7.5 8.3 9.2 10.0 10.8 11.7 12.5

700 42 2.9 3.6 4.3 5.0 5.7 6.4 7.1 7.9 8.6 9.3 10.0 10.7

800 48 2.5 3.1 3.8 4.4 5.0 5.6 6.3 6.9 7.5 8.1 8.8 9.4

900 54 2.2 2.8 3.3 3.9 4.4 5.0 5.6 6.1 6.7 7.2 7.8 8.3

m3

図 3-1 滞留時間と濃度除去率の関係(Zn)

Page 88: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

3-3

今後、国内の多くの休廃止鉱山における坑廃水処理において、パッシブトリートメント

の導入を図るためには、この本庫鉱山における実用規模の人工湿地による実証試験の結果

および評価が重要となる。したがって、まずこの本庫鉱山での導入を図ることが重要であ

り、一つのパッシブトリートメントの導入例を作ることによって、国内におけるパッシブ

トリートメントの可能性について明らかにしていく必要がある。

3-2. 適用可能性調査のまとめと今後の調査への提言 本年度の適用可能性調査は、前年度まで実施していた水系調査 19 鉱山から、一定の条件

を設定し、9 鉱山に絞って調査を実施した。 調査内容は、事業主体へのパッシブ処理技術検討に対する懸念等のヒアリング、人工湿

地処理を想定した場合の適地調査、坑廃水の自然浄化速度の予備的調査、バックグラウン

ド・利水点・環境基準点の水質観測、である。 ヒアリングの結果、Zn 等が問題となっている処理場ではパッシブ処理に対する期待が大

きく、As 等有害金属が問題になっている処理場では、懸念が大きかった。 適地調査の結果、1,000~2,000m2の平地面積が下流にある場合もあったが、多くは私有

地であった。 開封 3 日後までの坑廃水の pH 及び金属濃度を考慮し、人工湿地の適用可能性について、

「表面流型+浸透流型」、「浸透流型」及び「適用困難」の 3 つに分類した。「表面流型+浸透

流型」は酸化試験で比較的鉄、砒素が落ちやすく、亜鉛、鉛濃度があまり高くない為、両

方の人工湿地を用いることで処理ができる可能性がある鉱山であり、C、H、J 鉱山が該当

する。「浸透流型」は、坑廃水中に亜鉛、鉛濃度が含まれている一方で鉄、砒素濃度が低い

ため、浸透流型人工湿地のみで処理できる可能性がある鉱山であり、A、D、F、G 鉱山が

該当する。「適用困難」については、坑廃水の金属含有量及び酸化試験の結果から適用が困

難であると想定される鉱山であり、B 及び E 鉱山が該当する。 バックグラウンド等水質調査の結果から、利水点及び環境基準点での金属負荷量と坑廃

水の金属負荷量を比較して、坑廃水の水質変動による影響を相対評価した。 今後の調査について、パッシブ処理に対する期待が比較的大きく、人工湿地処理に適す

る平地がある鉱山に対象を絞り、本庫鉱山実証試験結果を参考に、適用可能性の高い鉱山

のパッシブ処理について、コスト試算等を含め、定量的に評価することが望ましい。

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1

【参考資料】 平成 25 年度鉱害防止技術適用可能性調査検討委員会議事録

1. 日時:平成 26 年 2 月 6 日(木) 14:00~17:00 2. 場所:JOGMEC 本部 16GH 会議室 3. 出席者:以下のとおり

所 属 氏 名 役 職 備 考

東北大学大学院環境科学研究科

井上 千弘 教授 委 員

早稲田大学理工学術院

所 千晴 准教授 委 員

北海道大学大学院

工学研究院

五十嵐 敏文 教授 委 員

清水建設株式会社

技術研究所 環境バイオグループ

田﨑 雅晴 グループ長 委 員

独立行政法人産業技術総合研究所

地圏資源環境研究部門

地圏環境リスク研究グループ

張 銘 グループ長 委 員

経済産業省

商務流通保安グループ

鉱山・火薬類管理官付

小泉 朋幸 鉱害防止担当

課長補佐

経済産業省

商務流通保安グループ

鉱山・火薬類管理官付

千葉 明 鉱害防止専門職

地方独立行政法人北海道立総合研究機構

環境・地質研究本部 地質研究所

黒沢 邦彦 所長

地方独立行政法人北海道立総合研究機構

環境・地質研究本部 地質研究所

資源環境部

遠藤 祐司 資源環境部長

地方独立行政法人北海道立総合研究機構

環境・地質研究本部 地質研究所総務課

土屋 節子 課長

地方独立行政法人北海道立総合研究機構

環境・地質研究本部 地質研究所

資源環境部 資源環境グループ

荻野 激 主査(地質汚染)

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2

4. 議事内容:以下のとおり 池田部長:忙しい時期に、遠路お越しいただき、委員および出席者の皆様に感謝申し上げる。委

員の皆様には人工湿地を見学してもらうべきであったが、予算の関係から実現させられ

ず申し訳ございません。本庫はパッシブトリートメントの国内導入第 1 号の案件というこ

とから大変重要であると考える。JOGMEC も平成 22 年から 19 鉱山での現況把握調

査を実施しており、本年度はその中から 9 鉱山を対象に適用可能性調査を行った。本

日は導入についての提言をいただきたい。 黒沢所長:北海道立総合研究機構ではこれまで長期にわたり、人工湿地型パッシブトリートメントの

研究を行ってきた。海外では導入例が多いこの技術を国内に導入したいと考えている。

本年度は表面流型の人工湿地、来年度には浸透流型の湿地を造成する。活発な議論

により、提言をいただきたい。 縄田課長代理:本委員会の委員長として、事務局は井上教授を推薦する。異論がないため、井上

教授を本委員会の委員長として選任する。

所 属 氏 名 役 職 備 考

北海道経済部産業振興局

環境・エネルギー室 産炭地・保安グループ

和地 浩幸 主査(鉱害対策)

北海道経済部産業振興局

環境・エネルギー室 産炭地・保安グループ

横井 宏典 主査(鉱害対策)

JOGMEC

金属環境事業部

池田 肇 部長

JOGMEC

金属環境事業部

小林 幹男 上席研究員

JOGMEC

金属環境事業部 調査技術課

迫田 昌敏 課長

JOGMEC

金属環境事業部 調査技術課

縄田 透 課長代理

JOGMEC

金属環境事業部 企画課

砂田 和也 課員

JOGMEC

金属環境事業部 調査技術課

三浦 貴生 課員

Page 91: 26 年3 - METI1-3 委託期間:平成25年8月6日~平成26年3月20日 1-4 実施内容 1-4-1. 実証試験(表面流型人工湿地の造成) 現在中和処理を行っている義務者不存在鉱山(モデル鉱山)において、実用規模の表面

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【HRO 荻野主査による報告について】 五十嵐委員:資料 26 ページの人工湿地造成の写真にみられる搬入物は石灰石か。 荻野主査:写真に写っているのは表面流型人工湿地であり、普通の土壌である。表面流型人工湿

地手前の浸透流型石灰石槽で処理水の pH を上昇させてから水を導入する。 五十嵐委員:重金属量の分析はトータル量で測定しているのか、溶存態量のみ測定しているの

か。 荻野主査:今年度の試験ではトータル量で分析を行っている。来年度以降はトータル量と溶存態

量を分けて測定したい。 五十嵐委員:資料 38 ページにある濃度除去率を測定するための採水は処理前後の水を同時に

採水しているのか、それとも流入から滞留時間をおいて排出される水を処理後水として

いるのか。 荻野主査:採水は処理前後でほぼ同時に行っている。過去にも同様の指摘を受けたことがあるが、

長期的にみると水質の変化を考える上でそれほど影響がないと評価している。 所委員:現在建設している人工湿地では石灰石中和槽、沈砂池、表面流型人工湿地、浸透流型

人工湿地を直列に配置することが計画されているが、処理水の pH は最初の石灰石中

和槽で上げてしまうのか、それとも最終的に浸透流型人工湿地で上げるのか。 荻野主査:石灰石中和槽は規模も小さく、3 年程度使用すると鉄の沈澱物によって石灰石表面が

覆われてしまい中和効果が落ちてくる。低 pH の水が直接植物が生えている表面流型

人工湿地に入ってしまうと植物の成長に悪影響があるため、後段の浸透流型人工湿地

が完成しても最初の石灰石中和槽は必要。 所委員:2~3年経過して中和効果が落ちた石灰石中和槽内の石灰石は取り替えることを想定して

いるのか。 荻野主査:今後人工湿地が本格的な坑廃水処理設備として稼働するのであれば、石灰石中和槽

の定期メンテナンスとして石灰石の入れ替えが必要になる。 所委員:新しくパッシブトリートメント設備を建設する際のデータは貴重であるので是非残しておい

てほしい。処理機構の解明に必要であると考えられる、アルミニウム、シリカ、マンガン

等の共存イオン含有量についてデータは集めているか。 荻野主査:これまでナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウムについて測定した結果、アルミニ

ウムはほとんど含まれないことが分かっている。シリカは測定していないため、今後測定

を行う。 所委員:今までの知見で鉄は溶存態とコロイドでどちらが多いのか。 荻野主査:pH が変動するので pH が低いときには溶存態が多いが、平均的には鉄の溶存態はそ

れほど多くない。一方、亜鉛、マンガン、カドミウム、銅は 9 割以上溶存態で存在する。

鉄と砒素は 50%程度が非溶存態で存在する。 所委員:設備立ち上げ時の土壌分析はどれくらいの頻度でどのような試験を実施しているのか。

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荻野主査:人工湿地を作った当初土壌の採取をした。今後春から実施する予定である定期サンプ

リングでは、面積が大きいためどれくらいの頻度で行うか、何ヵ所サンプリングを行うか

検討する。 田崎委員:表面流型人工湿地と浸透流型人工湿地でそれぞれどのような反応で金属が除去され

ているのか。 荻野主査:表面流型人工湿地については鉄が酸化されて砒素と共に水酸化物として沈澱する。浸

透流型人工湿地では水の pH が大きく上がることにより沈澱する。水酸化物、あるいは

炭酸塩など、どのようか形態であるか調査中である。 田崎委員:鉄の負荷量を考えると年間でかなりの量の鉄が沈澱すると考えられるが、表面流型人

工湿地が沈澱物で塞がるということはないのか。 荻野主査:既設の小型人工湿地で 7 年間試験を実施している。そこでは湿地の上流側~中部に

かけて鉄の沈澱がみられるが、中部~人工湿地出口側には沈澱物がみられない。ヨシ

が密集生長して詰まるということもない。試験開始から 5 年程度におけるサンプリングで

は数 cm 程度の沈澱物が溜まっていることが確認された。 田崎委員:雨などで水量が増加した場合、人工湿地に入る水量は調整するのか。 荻野主査:新設の人工湿地では湿地への流入量に上限がある。オーバーフローは中和小屋に送

られる。 張委員:処理水の水質によっては人工湿地を利用した処理フローの順序を検討する必要があるの

で、データは可能な限り取得しておくのがよい。 荻野主査:溶存態が多いため、浸透流型を先に配置すると、短期間で目詰まりが起きる可能性が

ある。また、As(III)、As(V)の測り分けを行っている。 井上委員長:調査結果をみると水質が大きく変動しているがこれはなぜか。 荻野主査:本庫では坑内水と集積場浸透水の 2 つが汚染源となっている。この内、集積場浸透水

は、春先の雪融けや秋(10~11 月)の大雨による水量増加によって水質が大きく悪化

する。特に秋の大雨に強く影響を受ける。 井上委員長:実規模の人工湿地を造成した後も、処理後水を中和処理場に戻す必要があるのか。 荻野主査:人工湿地の処理能力、処理可能期間を把握するまでは、中和処理場も併用する必要

がある。 井上委員長:下流での利水状況はどうか。サケ・マス孵化場の他に利水施設はないか。 荻野主査:通年ではないがサケ・マス孵化場で水を利用している。秋に稚魚を放流する前までは、

大量に水を利用している。他方、周辺の酪農地帯では河川水を使用していない。 井上委員長:雪解け時のデータは取得できるか。 荻野主査:経済産業省との契約が迅速に行われれば可能である。もしも契約が間に合わなくても、

機構の予算で 4 月あるいは 5 月に現地調査にいくことを検討したい。 五十嵐委員:金属除去率のデータは処理設備のどの点で水質を測定して計算しているのか。 荻野主査:施設全体が完成していない今年度は、原水と人工湿地出口の水質から計算している。

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五十嵐委員:厳しい気候条件で人工湿地による処理が行われているが、雪の影響は問題ないの

か。 荻野主査:雪の重みでヨシが倒れるが、今までの経験上根が残っていれば雪が融けると元に戻る。 井上委員長:カドミウムについて得られたデータはあるか。 荻野主査:カドミウムは他の金属に比べて処理効果が小さい。浸透流型湿地によりある程度除去さ

れており、そのメカニズムは pH が上がることが要因と考えられるが、炭酸塩・水酸化物

などどの形態で沈澱しているかは現在調査中である。 井上委員長:硫化水素が生成されて硫化物として沈澱しているとは考えられないか。 荻野主査:人工湿地は好気的であり、ORP は+100mV 程度であるため硫酸還元は起こっていな

いと考えられる。 小林上席研究員:資料 38 ページのデータを見ると亜鉛に対して鉛の除去率が安定していないが

これはなぜか。 荻野主査:鉛の濃度は分析機器の検出限界に近いレベルであるため、分析精度の影響が考えら

れる。 所委員:TOC や炭酸塩は測定しているか。浸透流型人工湿地ではこれらの値が重要となる可能

性がある。 荻野主査:測定を検討する。 【JOGMEC 迫田課長による報告について】 五十嵐委員:坑廃水の酸化試験を実施するにあたり、地質研究所等と相談はしたのか。鉄は pH3。

5 以上であれば一晩置いただけで沈澱するので試験しなくてもわかる。 迫田課長:地質研究所の方から資源・素材学会にて「好気性湿地では鉄と砒素が除去できるが、

亜鉛とカドミウムは除去できない」という内容の発表があり、本調査を思いついた。 五十嵐委員:DO にもよるが鉄濃度が高くて pH が 3。5 以上であれば亜鉛も除去可能であるが、

鉄濃度が低ければ亜鉛は水酸化物としてしか除去できない。これは原水の水質をみれ

ばだいたい予想がつく。 五十嵐委員:自治体担当者へのアンケートを実施する際に初めから項目を提示したのか。 迫田課長:提示している。 五十嵐委員:項目は初めから提示してしまうと多めに回答してしまうため、提示せずにアンケートを

実施するのがよい。そうすれば本当に困っていることだけを提示してもらえる。 所委員:酸化試験の評価基準として亜鉛のみ基準値を超えるものを△としているがこれはなぜか。 迫田課長:亜鉛は浸透流型人工湿地で除去できる可能性があるため、亜鉛が基準を超過しただけ

で人工湿地処理に不適と判断するのは適切でないと考えたためである。 所委員:pHも石灰石を用いることで上昇し、鉄が多ければ鉛や銅等は後段の処理で除去できる可

能性もあるため、アルミニウム等の濃度も測定し総合的なパッシブトリートメントの適用

可能性という欄を設けて詳細調査を行う鉱山を判断した方がよいのではないか。また、

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鉄の負荷量が大きい坑廃水は設計上、人工湿地で処理できるのか。閉塞するかどうか

についての試験が必要であると考える。 迫田課長:鉄の酸化は進行するが、pH を上げなければ沈澱することはないため、石灰石等を用い

て pH を上昇させる必要がある。 井上委員長:バックグラウンド、利水点、環境基準点、処理水の水質だけで負荷量を評価できるの

か。まだ現段階で評価することは難しいのではないか。 迫田課長:将来的に水系を絞ることができれば、綿密に調査することができる。 五十嵐委員:レーダーチャートは水量軸をとって金属濃度を表示した方が見やすいのではないか。

濃度と水量がうまく表現できるよう検討してほしい。 遠藤部長:表面流型湿地の場合、中性領域では欧米で 10-20 g/m2/day という除去目安があるの

で、鉄に限ってはこのような表現方法もあると考えられる。これは石炭鉱山における

Netalkaline な廃水を対象とした指標である。Netacidic な廃水の場合は石灰石で

pH を上げないと鉄は沈澱しない。 所委員:水量に換算するとどのくらいか計算する指標はあるか。 遠藤部長:本庫の場合金属鉱山であり、pH が低いので条件が異なる。ただ、10-20 g/day・m2 と

いう数値に当てはめると、既設の人工湿地で平均 70 l/min となるが、この値は人工湿

地に対してやや過大となる。 五十嵐委員:通常の沈澱池は表面負荷率(=水量÷面積)や粒子の沈降速度を基に設計している。

pH3。5 以上の領域で二価の鉄が酸化して沈澱する場合、このような考え方ができるが、

pH が低い場合は中和に時間がかかるのではないか。 遠藤部長:pH が低い場合は鉄酸化バクテリア等を使って鉄の酸化を進行させるといった方法は議

論されているが、いずれにせよ pH を上げる必要がある。 遠藤所長:鉄濃度が大きいと石灰石中和槽の寿命が短くなる。数 mg/l 以上あると 1~2 年で石

灰石中和槽がダメになるため、1 mg/l 以下でないと処理が難しい。また、DO の値も考

慮しなければならない。 田崎委員:冬場に湿地が凍ることはないのか。面積を大きくして滞留時間が長くなると凍結の心配

がある。 荻野主査:本庫の場合、表面が凍結することで、水量は減るが、水の流れが停止することはない。 池田部長:JOGMEC では別の鉱山元で地温測定を実施している。雪に埋もれる期間は地温が氷

点下になることはないが、雪が無い状態で外気温が下がる冬の初めは最も地温が低下

するため、人工湿地が凍るリスクがある。 張委員:坑廃水の酸化試験は、専門的には実験前から結果が予想できるかもしれないが、自治体

や住民への説明資料としては用いることができる。 池田部長:本庫の事例の成功なくして他の坑廃水処理場への適用可能性における説明責任は果

たせないとの考えで JOGMEC はプロジェクトに参加している。本庫のプロジェクトが長

期的に安定して処理できることを確認することが次のプロジェクトの実用化に向けての

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試金石になる。 【全体討論】 池田部長:今回 JOGMEC の報告の中でダイアグラムを提示したのは、今後人工湿地の設計フロ

ーを作成する際、本庫のプロジェクトを参考にして pH や含有金属成分濃度、共存イオ

ンの違いについて考察できるのではないかとの考えがある。今後更にこれらのデータを

指標として設計マニュアルをどのように示すことができるか検討する。 井上委員長:日本の場合は水質や水量の変動を加味しなければならないので処理場の設計が難

しくなる。今後も地道にデータを積み上げて日本版の設計指針を作ることが重要。将来

的に東南アジア等の途上国へも移転していくべき処理技術であるので、日本の進み方

にも関係すると考える。 井上委員長:住民理解について自治体関係者に話を訊くと「住民の理解を得られない」ということ

が固定概念のように言われるが、実際自治体が地元住民とどこまで議論しているのか

疑問である。本庫の場合はどうか。 荻野主査:役場(町)まで説明は行っているが、そこから住民まで届いているかは不明。地元住民

への説明会等は行っていないため今後行いたい。 井上委員長:養殖場や酪農等の利害関係者はどのくらいいるのか。 遠藤部長:数は把握していない。現プロジェクトでは人工湿地の処理後水を中和施設で処理して

から河川に放流している。人工湿地で安定的に重金属を処理できることが確認されて

から中和処理を停止することになるため、その段階では住民への説明が必要と考えて

いる。 所委員:鉄や DO に関する知見は重要であるのでデータを蓄積すべきである。JOGMECnews に

も取り上げられていたが、「パッシブトリートメント」というワードは馴染みにくい可能性が

ある。個人的な意見であるが、”sustainable treatment”というワードを提案する。 井上委員長:活発な議論に感謝する。繰り返しになるが、日本第 1 号のこのプロジェクトをぜひとも

成功させてほしい。委員一同そのための助力は惜しまない。 小泉課長補佐:第 5次長期計画のもと、坑廃水処理コストの削減、そのためのパッシブトリートメント

の導入に力を入れていきたいと考えている。引き続き力を貸していただきたい。本日の

活発な議論に感謝する。 以上