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1 素数定理の初等的な証明について 提出日 平成21年8月30日 氏名 ぱんな ぱあこ 素数定理の証明は1896年にアダマールとド・ラ・ヴァレ・プーサンに よって示された。いずれもリーマンのゼータ関数に関する緩やかな予想を 証明する事によって得られた。素数定理のゼータ関数によらない初等的な 証明は不可能と思われていたが,1949年にセルバーグとエルデシュに よって示された。その後もいくつかの初等的な証明が試みられている。本 論では、統計的な手法による証明を紹介する。 ガウスが予想した素数定理は、十分大きな N について、N よりも小さい素数の数 " ( N ) " ( N )~ N log N というものである。整数 N の代わりに x>1なる実数を導入して素数定理を定義すると、 lim x "# $ ( x ) x log x = 1 と表される。 まず、 ) ( x ! を表す数学的な関数が存在すると仮定する。素数の分布を調べて行くと、 N が大 きくなるに従って ) ( x ! は一定の曲線に近づく。すなわち、それを表す関数が存在する。そもそ もガウスの素数定理はその関数を推定したものだった。そこで素数分布の「密度関数」を想定し、 それを ) ( x W とする。十分 x が大きいとき、区間 x から x x ! + にある素数の数が x x W ! " ) ( 近似的に等しいような関数である。このとき、 n までの素数の数はこの ) ( x W をつかって、 ! = n dx x W x 2 ) ( ) ( " と表される。 次に、十分大きな整数 n!の中に因数として小さな素数 p がいくつ含まれているか、数える。 今, a k p で割り切れるような最大の整数 k [] p a で表す。ある整数の素因数分解は一つ に定まるので、任意の二つの整数 a b について、 [] p ab [] p a [] p b がなりたつので、 [] p n ! [] p 1 [] p 2 [] p 3 +・・・+ [] p n

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素数定理の初等的な証明について 提出日 平成21年8月30日

氏名 ぱんな ぱあこ

素数定理の証明は1896年にアダマールとド・ラ・ヴァレ・プーサンに

よって示された。いずれもリーマンのゼータ関数に関する緩やかな予想を

証明する事によって得られた。素数定理のゼータ関数によらない初等的な

証明は不可能と思われていたが,1949年にセルバーグとエルデシュに

よって示された。その後もいくつかの初等的な証明が試みられている。本

論では、統計的な手法による証明を紹介する。

ガウスが予想した素数定理は、十分大きな Nについて、Nよりも小さい素数の数

!

" (N)は

!

" (N) ~N

logN

というものである。整数 Nの代わりに x>1なる実数を導入して素数定理を定義すると、

!

limx"#

$ (x)x

log x=1

と表される。

まず、 )(x! を表す数学的な関数が存在すると仮定する。素数の分布を調べて行くと、 N が大

きくなるに従って )(x! は一定の曲線に近づく。すなわち、それを表す関数が存在する。そもそ

もガウスの素数定理はその関数を推定したものだった。そこで素数分布の「密度関数」を想定し、

それを )(xW とする。十分 xが大きいとき、区間 xから xx !+ にある素数の数が xxW !")( に

近似的に等しいような関数である。このとき、 nまでの素数の数はこの )(xW をつかって、

!=n

dxxWx2

)()(" と表される。

次に、十分大きな整数 n!の中に因数として小さな素数 pがいくつ含まれているか、数える。

今, aがkp で割り切れるような最大の整数 kを [ ]pa で表す。ある整数の素因数分解は一つ

に定まるので、任意の二つの整数 a、 bについて、[ ]pab =[ ]pa +[ ]pb がなりたつので、

[ ]pn! =[ ]p1 +[ ]p2 +[ ]p3 +・・・+[ ]pn

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ここで、数列1、2、3、・・・、 nの中で kp で割りきれる項は、 kp 、2 kp 、3 kp 、・・・

であるから、その項の数を kN とすれば、十分大きな nについて、 kk p

nN = としてよい。さ

らに、kp で割り切れるが、 1+kp 以上のベキでは割り切れない項の項数を

kM とすれば、

k

M =kN ―

1+kN なので、

[ ]pn! = 1M +2

2M +3

3M +・・・

=(1N ―

2N )+2(

2N ―

3N )+3(

3N ―

4N )+・・・

=1N +

2N +

3N +・・・

=p

n+

2p

n+

3p

n+・・・=

1!p

n とすることができる。

したがって、大きな数 n について、n! は p<n なるあらゆる素数 p に対する式、 )1( !pn

p の積

で近似的に与えられる。そこでこの両辺の対数をとると、

!< "np

pp

nn log

1~!log ・・・①

となる。ここで十分大きなnについて、 nnn log~!log とみなせるので、 nの代わりに xとすれ

ば、

!< "np p

px

1

log~log

となる。ここで、この式の右辺を )(xW で表すことを考える。xが十分に大きいとき、点2から、

xまでをr個の区間にわけて、その区間間隔 jjj!!! "=# +1 とする。すると、第 j部分区間にあ

る素数は近似的に j! の値を持つとしてよい。そこで )(xW の性質より、第 j部分区間にある素数

の個数を、 jjW !! "#)( とすることができるから、

第 j部分区間にある1

log

!p

pの総和は近似的に、 !

"1

log

j

j

#

#jjW !! "#)( としてよい。このp<nの

総和だから、!r

2

!"1

log

j

j

#

#jjW !! "#)( すなわち ! "

x

dW2

)(1

log##

#

#と近似できる。よって

xlog ~ ! "

x

dW2

)(1

log##

#

#

となる。ここで~を=に置き換えて、両辺を xで微分すると

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log)(

1

!=

x

xxW

x !

xx

xxW

log

1)(

!=

となって、 )(xW を求めることができる。よって、 )(x! は

)(x! = dxxx

xx

!"

2 log

1

より求めることができる。

ここで、x

xxf

log)( = とすると、

2)(log

1

log

1)(

xxxf !=" である。一方、

dxxx

xx

!"

2 log

1= dx

x

x

!2 log1

― dxxx

x

!2 log

1 ~ dx

x

x

!2 log1

― dxx

x

!2 2)(log

1

と考えられる。 xが大きいときは上記の積分の第2項は第1項に対してはるかに小さいから。

以上より、 )(x! ~ dxx

x

!2 log1

― dxx

x

!2 2)(log

1= )2()( fxf ! =

2log

2

log!x

x

ここで、2log

2は

x

x

logに対してはるかに小さいので無視できる。よって

)(x! ~x

x

log

すなわち素数定理が得られる。

考察 この論法では、 )()( xWxdx

d=! を満たすような )(xW が存在すれば、素数定理は証明で

きたことになるが、この )(xW の存在を証明することは困難であると思われる。しかしながら、

ある数以下の素数の数が、なぜ対数関数に関連したx

x

logで表されるのか、という素朴な疑問に

答えるのに十分な論法である。大きなnに対して、という概算を行っているが、n! 以下の素数の

数を数えて、対数をとると )(xW の形が求められる、という展開は説得的である。

参考までに 1949年のセルバーグの証明の概略を示す。

チェビシェフの評価を改善したシルベスタ―(1892)の評価式

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045.1log

)(956.0 <<x

xx!

から、 045.1956.0 !!< Aa として、 2=+ Aa を示した後、背理法によって 1== Aa を示

して、証明したものである。ここに、

x

xa

)(inflim

!=

x

xA

)(suplim

!= ここで !

"

=xp

px )log()(# であり、

素数定理は 1)(

lim =!" x

x

x

# と等価である、としている。すなわち

x

x)(inflim

!!

x

x

x

)(lim

!

"#!

x

x)(suplim

!

ではさみうち法をつかっている。ここで、 2=+ Aa を証明するのに使った式が、セルバーグの

言う fundamental formula で

)()log(2)log(log)( xOxxp

xpxx

xp

+=!!"

#$$%

&+'

(

))

これはセルバーグがエルデシュの共同執筆の申し出を断ったあと、もしエルデシュの成果がなけ

れば、セルバーグは素数定理を示すことができず、セルバーグが示した唯一の成果である「美し

い」公式とエルデシュが呼んだものである。

エルデシュはこの公式から、 1lim1 =+

!"n

n

x p

pを示し、より良い結果として !" # 論法による証

明を示した。すなわち、 )log()()())1(( xxxx !"#!# >$+ がある正の )(x! が任意の

!"#$! 成立する、とした。

いずれにせよ、セルバーグ、エルデシュともに、ガウスの示した素数定理の初等的な証明には

成功したが、nより小さな素数の数を数えていくと、x

x

logに至る、という筋道がよくわからな

い証明方法と思われた。

感想 参考文献「素数に憑かれた人たち」p.161に不可能といわれていた素数定理の初等的な証

明は 1949年に発見された、とあった。不可能が可能になる、という話は好きな上に 1949年は私

の誕生年である。なにやら因縁めいたものを感じた。リーマンのゼータ関数はなんだかよくわか

らなかったので、その初等的な証明ならなんとかなるかもしれない、と思いさっそくインターネ

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ットで検索し必要な文献を amazon で購入した。しかしその初等的な証明も )(xO の表記法にな

じむことができず、すっきりわかった感じがしなかった。もうひとつの論文「作図不能問題」に

必要だと思い購入した参考文献、「数学とは何か」に素数定理をしめすのに統計的な方法を使った

例がでていた。これならなんとかわかりそうだったので、2 日ほど格闘したあと、紹介すること

にした。論文にすることはあきらめたが、セルバーグとエルデシュの先陣争いは興味深いもので、

なにより“My mind is open!”と叫ぶエルデシュは魅力的だった。夏休みの課題として 1週間ほど

使ったが、久しぶりに数学の本を読んで、いろいろな発見があり楽しかった。

参考文献

1)「素数に憑かれた人たち」 ジョン・ダービシャー 松浦俊介訳 2004 日本 BP社

2)「数学とは何か」 I・スチュアート改訂 森口繁一監訳 2005 岩波書店

3)“THE ELEMENTARY PROOF OF THE PRIME NUNBER THEOREM:

AN HISTORICAL PERSPECTIVE” by D・Goldfeld

http://www.math.columbia.edu/~goldfeld/ の論文より

4)「My Brain is Open」 Bruce schechter著 グラベルロード訳 2003 共立出版

5)「放浪の天才数学者 エルデシュ」 ポールホフマン 平石律子訳 2006 草思社