EVAR,TEVAR)における 術前シミュレーションシス …...大動脈瘤の血管内治療...

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大動脈瘤の血管内治療 EVAR,TEVAR)における 術前シミュレーションシステム 広島大学 心臓血管外科 教授 末田 泰二郎 講師 黒崎 達也

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大動脈瘤の血管内治療(EVAR,TEVAR)における

術前シミュレーションシステム

広島大学 心臓血管外科

教授 末田 泰二郎

講師 黒崎 達也

胸部大動脈瘤とは

動脈硬化により、動脈壁が拡張して瘤になったもの。

多くの場合は無症状であるが、大きくなると破裂して突然死の原因となる。

急性大動脈解離

大動脈の内膜に亀裂が入り、血管壁が内膜と外膜に分かれた状態(解離)。

解離が起こると、血管は薄皮一枚だけの状態となり、破裂して大出血、突然死してしまう可能性がある。とくに心臓の近くで解離が起こった場合、スタンフォードA型といい、緊急手術しなければ3日以内にほとんど(90%以上)の人が亡くなってしまう。

胸部大動脈瘤・解離の手術

体外循環を使って、心臓を止めて手術する。昔に比べると、ずいぶん安全にはなったが、大量に出血し、時には12時間以上かかる、非常に高侵襲でハイリスクな手術。

経皮的な胸部ステントグラフト(TEVAR)

極めて低侵襲に治療可能

胸部下行大動脈瘤には極めて有効な技術

弓部では使えない(頚部分枝動脈を閉塞)

弓部大動脈

腹部大動脈瘤腹部の大動脈が瘤化したもの。普段は全くの無症状であるが大きくなると破裂して大出血、突然死することがある。破裂する前に開腹して瘤の切除、人工血管による置換を行う。

腹部大動脈瘤のステントグラフト(EVAR)

腹部大動脈瘤用には4種類の市販ステントグラフト

日本では年間15,000例の腹部大動脈瘤手術の内

60%弱がステントグラフトで治療されている!

Medtronic 社 Endurant

弓部大動脈瘤に対するTEVAR

Total debranch

チムニーテクニック

胸骨正中切開が必要で低侵襲とは言えない

これで治療可能かが術前に予測できない

新しいデバイスの開発

新しいデバイスや技術が開発されつつあるが、本当にそれで大丈夫なのかを試す手段がない

従来技術とその問題点

EVAR,TEVARは標準的な術式となりつつある。

弓部大動脈瘤など、全例がステントグラフトで治せるわけではない。

そのために、分枝付きのステントグラフトやチムニーテクニックなどの複雑な手技、デバイスの研究開発が続けられている。

技術が高度になればなるほど、手術手技も煩雑になってしまう。このため、シミュレーションシステムの開発が必要である。

現在、そのようなシミュレーションシステムはない。

また、動脈瘤内部の流れについての研究もほとんどなく、内部の流れや圧力がどうなっているのか解明できていない。

従来のシミュレーション光造形を用いて、レジン製の動脈瘤モデルを作製レーザー光を用いて内部の流れを可視化

血管の硬さと異なるため、ステントによる圧着が難しい。

モデルの作成

・CTデータをSTLに変換、加工する

・3Dプリンタで石膏モデルを作成

・石膏を型にシリコン、ウレタンなどで作製

シミュレーションの概要

シミュレーションの概要

新技術の特徴・従来技術との比較

これから治療を行う動脈瘤と全く同じモデルが作成可能

血管と同じ硬さであるため、ステントによる圧着効果も確認できる

動脈瘤内部の流れを可視化解析することで、内部の圧力分布や動脈瘤の発症機序が解明できるかもしれない

その知見を用いて、新しいデバイスの開発につながる

想定される用途

治療の術前シミュレーション

新しく実施医や指導医になるためのトレーニング

新しいデバイスの開発、評価

企業への期待

日本は自家製ステントグラフトを臨床応用した世界のステントグラフト先進国であった

しかし商品化したのはすべて米国企業である

本技術を実用化し、シミュレータを使って新しいデバイスを開発したい

大動脈瘤に対するステントグラフト治療は患者が増加している成長分野である。既存技術の改良で新しいステントグラフトは作成可能である

今回の提案からさらに実用性のあるステントグラトのアイデアを出し日本発のステントグラフトを作ろう!

本技術に関する知的財産権

• 発明の名称:シュミレーションシステム及びステントグラフトの設置シュミレーション

• 出願番号 :特願2013-198677

• 出願人 :広島大学

• 発明者 :末田泰二郎、黒崎達也、二宮伸治、上口晃生

産学連携の経歴(1)名称:体外循環装置用の訓練装置、およびそのプログラム(基本特許)特願2003-344804 (出願日:2003. 2. 2)特許第3774769号 (登録日:2006. 3. 3)事業移転:泉工医科(株) 2007 メラCPBワークショップとして商品化

(2)名称:体外循環用訓練装置の血行動態算出方法およびそのプログラム特願2005-335851 (出願日:2005. 11. 21)(追加特許)特許第4284418号 (登録日:2009. 4. 3)

(3)名称:体外循環装置用の訓練装置(追加特許)特願2005-347895 (出願日:2005. 12. 1)特許第4867001号 (登録日:2011. 11. 25)

(4)名称:体外循環装置用の訓練装置、およびそのプログラム(追加特許)特願2008-061456 (出願日:2008. 3. 11)特許第4999186 (登録日:2012. 5. 25)

事業移転:JMS(株) (第1,2,3特許ともに) 近日商品化予定

お問い合わせ先

広島大学

産学連携コーディネーター 田井潔

TEL 082-257-5427

FAX 082-257-1567

e-mail : ktai@hiroshima-u.ac.jp