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国際文化フォーラム通信 no. 70 2006412 TJFが毎年開催している「高校生のフォトメッセージコンテスト」 は、今回で9回目を迎えました。このコンテストは、日本の高校生 の生き方や暮らしぶりを、高校生自身が写した5枚の写真と文 章で、日本国内や海外の同世代の若者に伝えてもらおうとの趣 旨で行っています。 今回は全国67の高校から、 286作品 (写真1,430枚) が寄せられ ました。その内訳は、写真部や美術部などの部活動の一環と して制作した作品が138作品 48%) 、美術、日本語、情報などの 授業の一環として制作した作品が127作品 44%) 、個人制作が 21作品 7%) でした。 1 25 日に開催した審査会において、最優秀賞 (宮城県塩釜高等 学校の佐々木一貴さんの「フリースクールの兄貴分 不登校児フリースクール創る 村」) をはじめ、入賞作品26点を決定しました。 審査員長の田沼武能氏は、「佐々木さんの作品は、フリース クールに出かけ、頼れる兄貴的な存在の主人公に魅力を感じ て撮影した物語です。年齢の違う不登校の子どもたちが、悩 みを抱えながらも集団生活をしているフリースクールで、かつ て不登校だった主人公の飴屋君が、リーダーとして活躍する 姿を見事に表現しています。家族的な生活環境や、年齢の差 を超えたふれあいが生まれて、かつての不登校生がはつらつ と生活し楽しんでいるところに、作品の素晴らしさを感じまし た」と講評されました。 前任者のレオニー・ボクステル氏に続いて今回から審査員を お願いしたルーシー・キング氏 (豪日交流基金事務局長) は、応募作 品全般について、次のように感想を述べました。 「写真や文章から、主人公への友情、励まし、あこがれなど さまざまな愛情や感情があふれてくるようでした。特に印象的 だったのは、直接伝えられない気持ちを作品に託した生徒が 多いことでした。昨今、若い世代のコミュニケーションや対話 の不足が取り上げられることも多くありますが、このような機会 に、高校生が大切な友人に思いを伝えることができたことをう れしく思いました」 225 日には、上位入賞者6名を東京に招待し、授賞式と懇 親会を行いました。賞状や盾の授与の後、撮影者に自分の作 品について発表してもらう時間を設け、作品のねらいや制作中 のエピソードなどを語ってもらいました。審査員特別賞を受賞 した金子怜史さん (和光高等学校) は、中国の新疆ウイグル自治区 からやってきた留学生のワレスジャン・メメットさんのことが気 になり主人公になってもらいましたが、それまでは学校で接す るだけの友だちだった主人公の自宅やモスクにまで撮影に行 き、異なる国や宗教について知ることが新鮮だったという経験 を披露してくれました。また授賞式会場では入賞作品26点の 展示も行いました。 入賞作品はTJFのホームページ http://www.tjf.or.jp/photocon/の「過去の入賞作品」のコーナーでも閲覧できます。また、入 賞作品を中心に応募作品をまとめた写真集『伝えたい私たち の素顔 The Way We Are 2005』を7月初めに発行し、国内関 係者のほかアメリカ、オーストラリア、中国など海外の中高校で 日本語や日本について学ぶ同世代に届けるため、関係機関に 寄贈する予定です。さらに、英語圏の高校生向けには英文ホ ームページに、これまでの入賞作品から厳選した写真とエッセ イを掲載し、個性豊かな日本の高校生の姿を親しみやすく紹 介しています。 http://www.tjf.or.jp/thewayweare/(辻本京子・藤掛敏也) TJFニュース」では、 TJFの活動 報告や、 TJFの事業に関連する さまざまな動きをニュースとし てまとめ、お伝えしていきます。 応募作品286点から入賞26作品が決定! 高校生のフォトメッセージコンテスト 来場者を前に作品について語る佐々木さんと主人公の飴屋さん。 [写真:北郷仁] 入賞者とコンテスト関係者の記念撮影。 [写真:北郷仁] 新審査員の ルーシー・キング氏。

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Page 1: F70 060407 final - tjf.or.jp · ンサートの取材に入ったときだった。彼は奥松島に ある「創る村」というフリースクールで不登校の子ど もたちと一緒に生活している。彼も中学校の頃不登

国際文化フォーラム通信 no. 70 2006年4月

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TJFが毎年開催している「高校生のフォトメッセージコンテスト」

は、今回で9回目を迎えました。このコンテストは、日本の高校生

の生き方や暮らしぶりを、高校生自身が写した5枚の写真と文

章で、日本国内や海外の同世代の若者に伝えてもらおうとの趣

旨で行っています。

今回は全国67の高校から、286作品(写真1,430枚)が寄せられ

ました。その内訳は、写真部や美術部などの部活動の一環と

して制作した作品が138作品(48%)、美術、日本語、情報などの

授業の一環として制作した作品が127作品(44%)、個人制作が

21作品(7%)でした。

1月25日に開催した審査会において、最優秀賞(宮城県塩釜高等

学校の佐々木一貴さんの「フリースクールの兄貴分 不登校児フリースクール創る

村」)をはじめ、入賞作品26点を決定しました。

審査員長の田沼武能氏は、「佐々木さんの作品は、フリース

クールに出かけ、頼れる兄貴的な存在の主人公に魅力を感じ

て撮影した物語です。年齢の違う不登校の子どもたちが、悩

みを抱えながらも集団生活をしているフリースクールで、かつ

て不登校だった主人公の飴屋君が、リーダーとして活躍する

姿を見事に表現しています。家族的な生活環境や、年齢の差

を超えたふれあいが生まれて、かつての不登校生がはつらつ

と生活し楽しんでいるところに、作品の素晴らしさを感じまし

た」と講評されました。

前任者のレオニー・ボクステル氏に続いて今回から審査員を

お願いしたルーシー・キング氏(豪日交流基金事務局長)は、応募作

品全般について、次のように感想を述べました。

「写真や文章から、主人公への友情、励まし、あこがれなど

さまざまな愛情や感情があふれてくるようでした。特に印象的

だったのは、直接伝えられない気持ちを作品に託した生徒が

多いことでした。昨今、若い世代のコミュニケーションや対話

の不足が取り上げられることも多くありますが、このような機会

に、高校生が大切な友人に思いを伝えることができたことをう

れしく思いました」

2月25日には、上位入賞者6名を東京に招待し、授賞式と懇

親会を行いました。賞状や盾の授与の後、撮影者に自分の作

品について発表してもらう時間を設け、作品のねらいや制作中

のエピソードなどを語ってもらいました。審査員特別賞を受賞

した金子怜史さん(和光高等学校)は、中国の新疆ウイグル自治区

からやってきた留学生のワレスジャン・メメットさんのことが気

になり主人公になってもらいましたが、それまでは学校で接す

るだけの友だちだった主人公の自宅やモスクにまで撮影に行

き、異なる国や宗教について知ることが新鮮だったという経験

を披露してくれました。また授賞式会場では入賞作品26点の

展示も行いました。

入賞作品はTJFのホームページ(http://www.tjf.or.jp/photocon/)

の「過去の入賞作品」のコーナーでも閲覧できます。また、入

賞作品を中心に応募作品をまとめた写真集『伝えたい私たち

の素顔 The Way We Are 2005』を7月初めに発行し、国内関

係者のほかアメリカ、オーストラリア、中国など海外の中高校で

日本語や日本について学ぶ同世代に届けるため、関係機関に

寄贈する予定です。さらに、英語圏の高校生向けには英文ホ

ームページに、これまでの入賞作品から厳選した写真とエッセ

イを掲載し、個性豊かな日本の高校生の姿を親しみやすく紹

介しています。(http://www.tjf.or.jp/thewayweare/)

(辻本京子・藤掛敏也)

「TJFニュース」では、TJFの活動報告や、TJFの事業に関連するさまざまな動きをニュースとしてまとめ、お伝えしていきます。

応募作品286点から入賞26作品が決定!■高校生のフォトメッセージコンテスト

来場者を前に作品について語る佐々木さんと主人公の飴屋さん。[写真:北郷仁]

入賞者とコンテスト関係者の記念撮影。[写真:北郷仁]

新審査員のルーシー・キング氏。

Page 2: F70 060407 final - tjf.or.jp · ンサートの取材に入ったときだった。彼は奥松島に ある「創る村」というフリースクールで不登校の子ど もたちと一緒に生活している。彼も中学校の頃不登

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qクリスマス公演。創る村では全員音楽を勉強している。この日はクリスマスのオペラッタを児童館で公演した。彼は中央でバイオリンを弾く。w村の朝。晩秋の朝、いきなり駆けっこからはじまった。このフリースクールの一日は何から何まで驚かされる。eイワナ取り。創る村では年数回、鳴子温泉地獄谷に遊びに行く。タルマサ君はイワナ取りの名人。素手で岩下にいるイワナをつかまえる。この日は5匹ゲット。r昼食後。食卓を囲んで話が弾む。小学生3人と高校生2人に37歳のFさん。彼は一旦社会に出た後にまたこの村に戻ってきた。タルマサ君が話を引っ張る。小学生たちは学校には通っていないが、とても明るい。tキャビン前。定時制高校は午後5時から始まる。登校前にキャビン前の海を眺める。秋から生徒会長となった。これから忙しくなる。

僕がタルマサ君と初めてあったのは、「創る村」コ

ンサートの取材に入ったときだった。彼は奥松島に

ある「創る村」というフリースクールで不登校の子ど

もたちと一緒に生活している。彼も中学校の頃不登

校だったのだが、今は子どもたちと朝から駆けっこ

したり、川で鮎をつかまえたりと、昔、彼が不登校だ

ったとは信じられないほど元気で明るい。

今ではフリースクールで頼れる兄貴として、ここに

暮らす子どもたちから慕われている。また彼はバイ

オリンがとても上手だ。時々開かれる創る村のコン

サートで、大勢のお客さんを前にして、堂 と々演奏

する彼はとても格好よく見える。

まだまだ彼の一部しか撮影できてないと思うけれ

ど、いろいろな表情の写真を撮ることができた。こ

れからも彼にはフリースクールの子どもたちの兄貴

でいてほしいと思う。

趣味: ダンス、音楽好きなことば: 果報は寝て待て大切なもの: 今みんなが生きている地球。僕たちのフリースクール

は海辺にあって、ボート遊びや海水浴など日課みたいなもの。こんな自然環境が人の心を癒やしてくれると思う。こんな自然のままの地球のような生き生きと生きられる人間になりたい。

関心を持っていること:今は生徒会長になって、そのことでいっぱいいっぱいです。

将来の夢: 人生の芸術家。自分の人生を隅々まで演出できたらなんといいだろう。

メッセージ:大半の同級生たちが全日制に進学したので、この春に卒業します。どんどん就職や進学が決まっていて、自分の1年後のことを考えると、もう今からウハウハドキドキです。でも内心もう1年間楽しめるかなとも思って気楽な気持ちでいるのでした。しかしそんな3年生の秋口に生徒会長。公約は「胸をはって通える定時制に」です。定時制である境遇に引け目を持っているみんなに、もっと学校に誇りをもってもらいたいと思っています。会長として来年はしんどい1年間になるのではないかと思うと、布団の中で考え込んでしまいます。全日制にない4年生なので、精一杯卒業まで頑張りたいと思います。それから

写真を撮られることが大嫌いな僕なのですが、このフォトメッセージコンテストの主人公になることで、自分が変わることができるのではないかと期待しています。

最優秀賞

「フリースクールの兄貴分 不登校児フリースクール創る村」 佐々木一貴(宮城県塩釜高等学校)

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r

t

w e

■最優秀賞(1作品): 「フリースクールの兄貴分 不登校児フリースクール創る村」 佐々木一貴(宮城県塩釜高等学校)■優秀賞(2作品): 「決して忘れない川地生君との絆」 西口謙(大阪インターナショナルスクール)/「初恋から変わる君」 園部竜矢(岐阜県立岐阜

工業高等学校)■審査員特別賞(3作品): 「100%ナミリン~マレーシアを通して~」 藤本瞳(広島工業大学附属広島高等学校)/「新世界<ウイグル>」 金子怜史(和光

高等学校〔東京都〕)/「たいせつなこと」 久保田淳子(大阪市立工芸高等学校)■奨励賞(10作品): 「家族 写真 幸せ」 北浦加奈(大阪府立大手前高等学校定時制課程)/「幸(しあわせ)の証」 吉里演子(大阪市立工芸高等

学校)/「タナッキュー!! 夢見少女 I子」 志田奈穂(香川県立坂出高等学校)/「タイからやってきたミーン」 南知佳(大阪府立松原高等学校)/「夢は正夢」 大久保未来(トキワ松学園高等学校〔東京都〕)/「夢への実現」 松石季里子(聖和女子学院高等学校〔長崎県〕)/「島のアイドルひろみ」 國貞有希奈(愛媛県立今治北高等学校)/「ロバート、I will miss you.」 津川万里(大阪インターナショナルスクール)/「菜保子のメロディー」 中島ゆう子(和光高等学校〔東京都〕)/「めざせ最速保育士」 村上由紀子(秋田県立大館高等学校)

■努力賞(10作品): 「クリス進ム!!」 荒木かおり(広島県立庄原格致高等学校)/「多彩に多才な秋田美人」 石田あやか(秋田県立大館高等学校)/「常に向上心をもって前向きに生活しています」 小川誠太朗(市川高等学校〔兵庫県〕)/「我らのホームルーム委員長」 加藤めぐみ(埼玉県立深谷商業高等学校)/「ア・テンポ」 坂本久美(埼玉栄高等学校)/「麻利子のなかの『加奈』」 末廣麻利子(大阪府立大手前高等学校定時制課程)/「こういうのがずっと続くといいと思う」 瀬春香(神奈川県立市ヶ尾高等学校)/「食べづかれ」 田中茉梨奈(青森県立弘前高等学校)/「18歳のなぎなた道」 谷川朝美(広島県立庄原格致高等学校)/「18歳の子供」若尾悠太(大阪インターナショナルスクール)

■学校賞(7校): 埼玉県立深谷商業高等学校/兵庫県立鈴蘭台西高等学校/正則高等学校(東京都)/大阪インターナショナルスクール/筑紫台高等学校(福岡県)/大阪府立芦間高等学校/東京都立工芸高等学校

飴屋善たる

太まさ

(18歳)主人公

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中国の初等中等教育における日本語教育がもっとも盛んな

地域は遼寧省ですが、なかでも大連が最大の拠点でした。

1980年代後半から全国に先駆けて小学校に日本語を導入し

てきた同市ですが、近年は状況が一変しています。

TJFは2004年より「全中国小学校日本語教師研修会」を遼寧

省基礎教育研究教師研修センターと共催するなかで、大連で

は小学校を含め、初等中等教育における日本語教育が著しく衰

退していること、特に小学校から中学校の順に全廃していく危機

にあることを感じました。その背景には英語の導入を望む保護

者の声に区レベルの教育行政が応じた面があったようです。

TJFとしては、経済的に日本との相互依存関係が強い大連こ

そ、その地域性を生かした日本語教育が可能ではないかと考

え、2005年秋に大連市の行政者や校長等を含む第1回遼寧

省教育代表団を日本に招聘し、日本理解を深めてもらうとともに、

大連での日本語教育の将来性や日中間学校交流の可能性に

ついて意見交換を重ねました。その結果、双方の見解を一致

させることができました。

その後、市政府の支持を受けた大連市教育局から、今後、

大連において小中高校一貫の日本語教育カリキュラムの策定、

第二外国語としての日本語教育の導入、日本語教育を推進す

るための優遇政策の模索、日本語教師枠の拡大、教師研修の

強化といった一連の構想案が打ち出されました。それらの構想

を実現するための研究・実施機関として、大連教育学院に「日

本語教育学習研究センター」をTJFと共同で設立することとなり

ました。昨年11月30日にセンターの開所式が執り行われ、2年

間欠員だった日本語教研員の任命も行われました。

今後の見通しとしては、4月頃に教育局から一連の計画を正

式文書で各区に通達し、9月の新学期から日本語科目を中学

校で全面的に導入する体制を整えるとともに、全市の小中高

校の日本語教師を対象とする属性調査と能力評価を行い、そ

の結果に基づいて中長

期研修計画を制定する

予定です。そうした研修

の実施に関し、TJFとし

ては、日本側各方面の協

力を求めながら支援し

ていきます。

しかしながら、このプロジェクトの遂行にあたっては、何よりも

各区の教育行政者や校長の理解が欠かせないため、根気強

い働きかけが必要です。そのため、TJFは大連市各区の教育局

長を含む2回めの遼寧省教育代表団を、今年5月に日本に招聘

し、日本理解促進と意見交換を行う予定です。 (長江春子)

TJFでは、高校における中国語・中国理解教育の拡大をめざ

して、2004年度より中国国家観光局、日本中国友好協会と共

催で、全日空の協力を得て修学旅行セミナーを実施していま

す。第1回の一昨年末の北京セミナーに続き、昨年12月(12月26

~29日)には、第2回セミナーを大連で実施しました。大連で開

催した理由は、海外修学旅行のメインイベントでもある学校交

流の相手となる日本語教育を実施している高校が大連市内に

多くあること、日中関係を歴史、経済などさまざまな面から考え

られることなどがありました。

北京セミナーの総勢210名とは異なり、今回の参加者は38

名、事務局を含めてもバス1台に乗れる人数でしたので、バス

の中での自己紹介などを通じて、お互いの顔もわかり、期間中

に情報や意見の交換を積極的に行いました。帰国便が霧のた

め欠航し、滞在が1日延びるというハプニングがありましたが、全

日空が五つ星ホテルを用意してくれたこともあり、「1泊追加の

プレゼントだね」と、みなさんから温かいことばをかけていただ

き、翌日無事帰国しました。

参加者からは、経済開発区にある三菱電機大連機器有限公

司の工場見学で、今の日中経済関係を知ることができた、旅順

(二〇三高地、水師営など)や市内に残っている満鉄本社や社宅な

ど、日本の近現代史を考えるうえで欠かせない場所が訪問で

きた、などの感想を寄せていただく一方、時間的にゆとりがな

い、訪問地はもう一工夫したほうがいいなど、改善点も多数指

摘がありました。こうしたコメントを踏まえ、2006年度も引き続き、

修学旅行セミナーの企

画・運営に携わり、修学

旅行の中身の検討につ

ながる具体的なモデル

プランを提案するなど資

料の作成に力を入れて

いきます。 (水口景子)

国際文化フォーラム通信 no. 70 2006年4月

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地域の特性を生かした日本語教育推進プロジェクト誕生!■中国の初等中等教育における日本語教育

帰国便欠航で1泊追加のプレゼント■大連修学旅行セミナー

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2005年12月11日から16日までの6

日間、韓国の国際教育振興院の主

催で高校生のための韓国研修プログ

ラムが実施され、TJFは募集と引率の

面で支援しました。今回は北日本で

の韓国語教育の活性化を狙い、高

校教師ネットワークを通じて、北海

道、青森、福島県から参加者を募り

ました。各地域から約10名ずつ、高校生31名、引率者として校

長や高校教師、韓国語講師等4名、計35名が参加しました。プ

ログラムは韓国語の授業、韓服体験、新羅(シンラ)歴史探訪、

POSCOやヒョンデ自動車工場の見学などを通じて「より広く韓

国を知る」ことを目的に実施され、参加者はソウルや慶州を訪

れて「韓国」を体験しました。また自由時間の課題として、書店

の前でクリスマスの過ごし方についてアンケートを行ったり、大

学構内で学生にインタビューするなど、一般の人 と々接する機

会をつくったことで、より身近に韓国を感じることができたようで

す。出身地も韓国語の学習歴もさまざまな生徒たちがどのよう

に感じたのか、以下の感想文から読み取ってみましょう。

このほかに韓国の金属の箸を使ってみて、日本の割り箸につ

いて環境問題の視点から疑問をもった生徒、自分の韓国語が

通じず悔しい思いをした生徒など、それぞれの生徒が韓国に

対する認識を新たにし、「また行きたい」と思い始めています。

こうした研修で芽生えた関心をより確実に定着させるために、

学校や行政とともに支援していきたいと思います。 (森亮介)

去る3月15日、理事会・評議員会が開催され、q2005年度事

業概況中間報告および収支予算の一部変更の件、w2006年

度事業計画および収支予算書の件、以上二つの議案はいずれ

も承認されました。

また、理事・監事・評議員の一部交代があり、小林正夫理事、

楢原泰信監事、池本滋、猪口邦子、北見鐐三、畑野文夫評議

員が退任され、中村雅知氏(日本製紙グループ本社代表取締役社長)が

理事に、関根邦彦氏(講談社監査役)が監事に、北島義斉氏(大日本

印刷専務取締役)、関口裕氏(王子製紙常務取締役)、富田充氏(講談社イ

ンターナショナル代表取締役社長)が評議員に、新たに選出されました。

2005年度の事業はおおむね順調に進捗しました。2007年の財

団設立20周年に向けて、2006年度は継続事業の充実・発展を

図るとともに、新規事業にも取り組んでいく予定です。今年度も、

皆様のご支援ご協力をお願い申し上げます。 (田所宏之)

国際文化フォーラム通信 no. 70 2006年4月

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■第9回高校生のフォトメッセージコンテスト審査会開催(1月/東京)

■文部科学省委嘱事業「わかる授業実現のための教員の教科指導力向上

プログラム」高等学校における外国語教育の目標・内容・方法に関する研

究の実施(1~3月)

■第18回いっくら日本語スピーチコンテスト後援(1月/宇都宮)

■『国際文化フォーラム通信』第69号発行(1月)

■『小渓』No.27発行(1月)

■第9回高校生のフォトメッセージコンテスト授賞式開催(2月/東京)

■第4回初級学習者のための「話してみよう韓国語」後援(2月/東京・大

阪・鹿児島)

■「第5次高校生交流代表団」訪中プログラム事前研修協力(2月/福岡)

■第6回北陸地区高校生中国語発表会後援(3月/金沢)

■東京小石川ロータリークラブ等主催第6回高校生意見発表会後援(3月/

東京)

■Takarabako No. 7発行(3月)

■『ひだまり』第26号発行(3月)

実施事業一覧(2006年1月・2月・3月)

北海道と東北の高校生を真冬の韓国へ■高校生のための韓国研修プログラム

2005年度第2回通常理事会・評議員会の報告■理事会・評議員会

■デパートにもかかわらず、商品には値段の表示がなく、店員が各売場にデンッ!とかまえていました。今まで見たことのないその光景に驚きました。客は遠慮なく店員に話しかけ、店員はやたらと大きな声で答えていて、怖いほどでした。しかし、メンバーの子が遠慮なく話しかけているのを見て、私も!と思い、勇気を出して話しかけてみました。すると、それまで攻撃的に聞こえていた韓国語がとても穏やかに聞こえました。店員は私の目を見て話し、聞いてくれました。ふだん買い物をしている時に店員が近づくとそれとなく避けていた私にとって、外国で店員に自分から話しかけるなどということは、考えられなかったことです。 ……福島3年■この研修に参加するまで、私は民団の語学講座と家での勉強が中心だったので、同年代の韓国語仲間は一人もいませんでした。この研修に参加したことで韓国語を勉強しているたくさんの高校生の仲間ができ、韓国語や韓国の文化について思う存分語り合うことができて、本当に楽しい時間を過ごすことができました。 ……北海道2年■私には昨夏にホームステイ交流をした韓国人の友人がいる。今まではコミュニケーション手段はすべて英語で、韓国語にしようと思ったことはなかったが、今は韓国語で話したいと強く思うようになった。 ……青森1年■私たちの班がミョンドンなどに買い物に行ったときに地下鉄で声をかけてくれたおばさんとの会話や、店員さんとのコミュニケーションが一番心に残っています。それがもっとことばを知りたい、もっとたくさんのことを知りたいと思う原動力になっているんだと改めて感じました。 ……福島3年

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2007年6月に設立20周年を迎えるにあたり、こ

れまでの事業の軌跡を振り返り、今後を展望す

るなかで、2006年度からの事業の再編成を行い

ました。TJFの事業は、これからも継続して日本を

含む東アジア、北米、大洋州地域の小中高校生

間の「相互理解教育」の促進を主な柱としていき

ます。相互理解教育とは、小中高校生が互いの

「ことばと文化」に関心をもって学び、交流し、個

と個の対話を通して自他の理解を深め、互いの

つながりを実感していく過程を促すものです。TJF

は、その土台となる小中高校における外国語教

育(コミュニケーション能力の習得と資質形成を含む文化理

解を目標とした外国語教育)を促進するとともに、国境

を超えてそれらをつなげる「相互言語教育」とい

う連繋教育の可能性を追求していきます。若い

人が一人でも多くそうした実感を深めてくれるこ

とを願い、「ことばと文化」を学び、交流を深める

場を、学校の内外につくることに取り組みたいと

思っています。

この基本理念に基づいて2006年度より「国内

外の小中高校における外国語教育を促進する事

業」と「海外の日本語学習者と日本の同世代間を

つなぐ交流事業」を事業の両輪とすることにしま

した。

前者は、東アジア、北米、大洋州を中心とする

海外各国の小中高校の日本語教育関連プログラ

ムと、日本国内の高校の中国語、韓国朝鮮語教

育関連プログラムを主な内容とします。特に東ア

ジア地域については、互いの言語を「隣語」(隣人・

隣国の言語)として位置づけ、中国語・韓国朝鮮語・

日本語教育の連携を図り、相互言語教育の観点

から隣人・隣国との関係構築をめざすプログラム

を新たに設けました。

後者は、これまで各言語教育関連プログラム

および国際理解教育関連プログラムのなかに組

み込まれていた小中高校生の交流関連プログラ

ムを一つにまとめ、小中高校生間のデジタル交

流と人的交流を連携させるプログラムで、その可

能性を今後本格的に探っていきたいと思ってい

ます。これらの交流事業は、前者の小中高校に

おける外国語教育あるいは文化理解教育に基盤

をおいており、前者の事業を進めるなかで構築

した各国の小中高校の教師をはじめとする学校

関係者、教育行政者、大学研究者、民間の諸団

体・機関の関係者の方 と々のネットワークがあっ

てはじめて可能となるものです。

小中高校生の相互理解教育の場を質的・量的

に向上させるには、なによりも小中高校の先生方

とのネットワークが不可欠です。相互理解教育の

成否はひとえに先生方の肩にかかっているとい

っても過言ではありません。TJFとしては、小中高

校生の相互理解を促進する事業が、志を同じく

する国内外の先生方自身にとって役に立つ事業、

そして国内外の先生方と共に作り上げていく事業

にしていけたらと願っています。

中野佳代子

国際文化フォーラム通信70号2006年4月発行

発行人・編集人中野佳代子

デザイン・DTPオペレーション飯野典子

フォーマット設定鈴木一誌

出力・印刷・製本近代美術(株)

校閲(有)天山舎

財団法人 国際文化フォーラム〒163-0726 東京都新宿区西新宿2-7-1新宿第一生命ビル26階TEL 03-5322-5211 FAX 03-5322-5215E-mail: [email protected]://www.tjf.or.jp/

TJF事業の再編成――相互言語教育を土台とした小中高校生間の相互理解をめざして

I. 国内外の小中高校における外国語教育を促進する事業 海外の小中高校日本語教育関連プログラム

❈ 第3回全中国小学校日本語教師研修会共催(8月/大連)

❈ 遼寧省教育代表団招聘(5月)

❈ 大連市日本語教育支援

❈ 中国東北三省日本語教育活動への協力・助成

❈ 中国中高校日本語教師向け情報誌『ひだまり』の発行とホームページ

の制作・運営

❈ 写真教材「であい」ホームページの制作と運営

❈ 写真教材「日本の小学生生活」ホームページの制作と運営

❈「TJFフォトデータバンク(日本編)」ホームページの制作と運営

❈ 英語圏小中高校日本語教師向け情報誌Takarabakoの発行とホームペ

ージの制作・運営

日本の高校中国語教育関連プログラム

❈ 高等学校中国語教師研修会共催(7~8月/長春)

❈ 高等学校中国語教師研修会共催(8月/大阪・東京)

❈ 高等学校中国語教育研究会活動への協力・助成

❈「TJFフォトデータバンク(中国編)」ホームページの制作と運営

❈ 高校中国語教師向け情報誌『小渓』発行とホームページの制作・運営

日本の高校韓国朝鮮語教育関連プログラム

❈ 韓国語教師研修会共催(8月/京都・東京)

❈ 高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク活動への協力・助成

日本語・中国語・韓国朝鮮語教育連携プログラム

❈ 高校中国語・韓国朝鮮語の学習のめやすづくり(仮称)

❈『外国語教育を再考する:隣語のすすめ』(仮称)編集★注

II.海外の日本語学習者と日本の同世代間をつなぐ交流事業❈ 第10回高校生のフォトメッセージコンテスト開催

❈ 写真集『伝えたい私たちの素顔2005』発行(7月)

❈「The Way We Are」ホームページの制作と運営

❈「であいフォトエッセイカフェ」ホームページの制作と運営

❈「マイフォトエッセイフォーラム」(仮称)のホームページ開発★注

❈ 世界の高校生フォトメッセージ制作交流(仮称)の準備★注

❈ 日中学校交流活動協力

❈ 日米学校交流活動協力

❈ 国際教育活動ネットワーク活動への協力・助成

III.TJF広報❈『国際文化フォーラム通信』発行とホームページの制作・運営

❈『TJF事業報告2004-2005』(和英)の発行(9月)

❈『TJF20年史』(仮題)の編集★注

❈ 一般図書教材の管理・寄贈

❈ TJFホームページの制作と運営

2006年度事業計画一覧

★注:「TJF設立20周年記念事業」として、2007年4月から2008年3月にかけて実施を予定している事業。2006年度はその準備作業となる。