Haemophihcs influenzae...

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昭 和56年9月10日 595 Ampicillin耐 Haemophihcs influenzae の迅 速 判定 法 の検 討 千葉大学医学部小児科学教室 黒崎 知道 中村 上 原 す ゞ子 寺島 沖本 由理 (昭和56年3月23日 受付) (昭和56年5月12日 受理) Key words: Ampicillin-resistant Haemophilus influenzae, Rapid 13-lactamase test 1973年 末 よ り,欧 米 に てAmpicillin耐 Haemophilus inftuenzae (以 下ABPC耐 H. influenzae) 感染症 が 出現 し,治 療 上 問 題 とな つ て い る.近 年 我 が 国 で もABPC耐 H. influenzae が 分 離 され,今 後本菌によ る全 身 感 染 症 の増 加 が予 測 され る.そ の際, 簡単で迅速に β-lactamase 産生 の有無 を判定す る方法 が必要 で あ る.臨 床分離 された H. influenzae 94株 につ いて, iodometric method を応用 し たRosenblattら の方法に じ たslidetestと, cephalosporin87/312を 用いた chromogenic method に て,β-lactamase産 生 の有 無 を 検 討 し.ABPCに 対する最小発育阻止濃度 (以 下MIC)と 比較 し,合 わ せ てABPCの 他4種 類 の 抗 生剤 の MICも 測 定 した. slide test, cephalosporin 87/312に て,β-lactamase産 生 が認 め られ た の は21株 で,2つ 方 法 と も陽 性 で あつ た.ABPCのMICは, β-lactamase産 生 株 で1.56μg/ml以 上であ り,非 産 生株 で は0.78 μg/ml以 下であ り,rapidβ-lactamase testの 信頼性を確認 し た.β-lactamase 産 生 株 のMICは,PIPC3.13~ 12.5μg/mlに てABPCと 交叉耐性を示 し た が, CP 0.39~0.78μg/ml, MINO 0.2~0.78μg/ml, 6059 ~0.1μg/mlと 感性であ り,抗 菌 力 は6059-S>MINO>CP>PIPCの 順 で あ つ た. H. infiuenzae は,下 気 道 感染 症 の 主要 原 因1菌で あ るが,小 児 化 膿 性 髄 膜 炎,特 に3ヵ 月 以 降3歳 未 満 の主 要 原因 菌 で も あ る.1973年 以 降,欧 米を 中 心 にABPC耐 性H.influenzaeに よる全身感 染 症 が 出現 し,治 療 上 問 題 と な つ て い る1).し し,H.influenzaeのABPC感 受 性 は 培 地,接 菌量 な どで 著 し く 影 響 を うけ2)3),デ ィスク法の み で は 耐 性 菌 と 断定 して は な らな い とされ て い る.か と い つ て,日 常 検 査 に てMIC測 定を施行 す る こ と も 困 難 で あ る.稀 に,β-lactamase非 生 性ABPC耐 性H.influenzaeが あ る が4)5),大 部 分 のABPC耐 性H.influenzaeで は,β-lac aseを 産 生 す る た め6),産 生能を簡便で 迅速に判 定 す る 方法 は 日常 検 査 に 有 用 で あ る.今 回,我 々 は,iodometric methodを 応 用 し たrapid test7)と,cephalosporin87/3128)を mogenic methodに て,β-lactamase産 を 判 定 し,ABPCに 対 す るMICと 比較検討 し た の で報 告 す る. 1.被 験株 1979年8月 か ら1980年2月 ま で に,千 葉大学小 児 科 お よび 関 連 病 院 小 児 科 で 分 離 され たH.infl- uenzaeと,1975年 以 来,上 記期間までに検討して ABPCに 低感受性 で あ つ た 株,計94株 で あ る. 同 定 は,グ ラ ム 陰 性 短 桿 菌 で,発 育 にX因 子, 別 刷請 求 先:(〒280)千 葉 市 亥 鼻1-8-1 千葉大学医学部小児科 黒崎 知道

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昭 和56年9月10日595

原 著

Ampicillin耐 性 Haemophihcs influenzae の迅速判定法の検討

千葉大学医学部小児科学教室

黒 崎 知 道 中村 明 上 原 す ゞ子

寺 島 周 沖 本 由理

(昭和56年3月23日 受付)

(昭和56年5月12日 受理)

Key words: Ampicillin-resistant Haemophilus influenzae, Rapid 13-lactamase test

要 旨

1973年 末 よ り,欧 米 に てAmpicillin耐 性 Haemophilus inftuenzae (以下ABPC耐 性 H. influenzae) 感染症

が 出現 し,治 療上問題 となつてい る.近 年我 が国で もABPC耐 性H. influenzae が 分離 され,今 後本菌 に よ

る全身感染症の増 加が予測 され る.そ の際, 簡 単 で迅 速 に β-lactamase 産生の有無を判定する方法が必要で

ある.臨 床分離 された H. influenzae 94株 につ いて, iodometric method を 応用 したRosenblattら の 方 法 に

準 じたslidetestと,cephalosporin87/312を 用 い た chromogenic method に て,β-lactamase産 生 の有 無 を

検討 し.ABPCに 対す る最小発育阻止濃度 (以下MIC)と 比較 し,合 わせてABPCの 他4種 類 の 抗 生剤 の

MICも 測 定 した. slide test, cephalosporin 87/312に て,β-lactamase産 生 が認 め られ た の は21株 で,2つ の

方法 とも陽性 であつ た.ABPCのMICは, β-lactamase産 生株 で1.56μg/ml以 上 で あ り,非 産 生株 で は0.78

μg/ml以 下 で あ り,rapidβ-lactamase testの 信 頼 性 を 確認 した.β-lactamase 産 生 株 のMICは,PIPC3.13~

12.5μg/mlに てABPCと 交 叉耐 性 を示 した が, CP 0.39~0.78μg/ml, MINO 0.2~0.78μg/ml, 6059-S 0.05

~0.1μg/mlと 感 性 で あ り,抗 菌 力 は6059-S>MINO>CP>PIPCの 順 で あ つ た.

緒 言

H. infiuenzaeは,下 気道感染症の主要原因1菌で

あ るが,小 児 化 膿 性 髄 膜 炎,特 に3ヵ 月 以降3歳

未 満 の主 要 原因 菌 で も あ る.1973年 以 降,欧 米 を

中 心 にABPC耐 性H.influenzaeに よ る 全 身 感

染 症 が 出現 し,治 療 上 問 題 となつ て い る1).し か

し,H.influenzaeのABPC感 受 性 は培 地,接 種

菌量 な どで 著 し く 影 響 を うけ2)3),デ ィ ス ク法 の

み で は 耐 性 菌 と 断定 して は な らな い とされ て い

る.か とい つ て,日 常検 査 に てMIC測 定 を 施 行

す る こ と も困 難 で あ る.稀 に,β-lactamase非 産

生 性ABPC耐 性H.influenzaeが あ るが4)5),大

部分 のABPC耐 性H.influenzaeで は,β-lactam-

aseを 産 生 す るた め6),産 生 能 を 簡 便 で 迅 速 に 判

定 す る 方法 は 日常 検 査 に 有 用 で あ る.今 回,我

々は,iodometric methodを 応 用 したrapidslide

test7)と,cephalosporin87/3128)を 用 い たchro-

mogenic methodに て,β-lactamase産 生 の有 無

を 判 定 し,ABPCに 対 す るMICと 比 較 検 討 し

た の で報 告 す る.

方 法

1.被 験 株

1979年8月 か ら1980年2月 まで に,千 葉 大 学 小

児 科 お よび 関 連 病 院 小 児 科 で 分 離 され たH.infl-

uenzaeと,1975年 以 来,上 記 期 間 まで に 検 討 して

ABPCに 低 感 受 性 で あつ た 株,計94株 で あ る.

同 定 は,グ ラ ム 陰 性 短 桿 菌 で,発 育 にX因 子,別刷請求 先:(〒280)千 葉市亥鼻1-8-1

千葉大学医学部小児科 黒崎 知道

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596 感染症学雑 誌 第55巻 第9号

V因 子 の 両 因 子 を 必 要 と し,porphyrintest陰 性

の 菌 と し た.菌 株 は,チ ョ コ レ ー ト培 地 に 純 培 養

し,5%ブ ド ウ 糖 加3%ス キ ム ミル ク(pH7-4)

に 入 れ,-70℃ に 凍 結 保 存 して お い た も の で あ

る.

2.Rapid β-lactamase test

1) Rapid slide test (iodometric method)7)

Rosenblattら の 方 法 に 準 じて 行 つ た -ペ ニ シ

リ ン ・ カ リ ウ ム100万 単 位 を 蒸 留 水1mlに 溶 解 し,

0.15mlず つ 分 注 し ,-20℃ に 凍 結 保 存 す る.

ヨ ー ド カ リ1.5gと ヨ ウ 素0.3gを0.1Mリ ン酸 緩

衝 液(pH6.4)100mlで 溶 解 して 作 成 した ヨ ウ素

液 を4℃ に 保 存 す る.上 述 の ペ ニ シ リ ン0.15m】

含 ん だ バ イ ア ル に ヨ ウ 素 液1.1ml混 合 し,ペ ニ

シ リ ン ・ ヨ ウ素 混 合 液 を 作 成 す る.固 型 培 地 上 に

発 育 し た コ ロ ニ ー を1エ ー ゼ と り,ペ ニ シ リ ン ・

ヨ ウ 素 混 合 液 を 滴 下 し た ガ ラ ス 板 上で 混 合 し,た

だ ち に0.4%デ ン プ ン液(DIFCO)を 滴 下 す る.

陰 性 な ら 紫 色 に 変 色 し,陽 性 な ら 白 色 と な る

(Fig.1).

最 終 決 定 は,β-lactamase微 産 生 株 を 検 出 す る

た め に5分 後 に 行 つ た.

2)cephalosporin 87/312 (Glaxo)(chromogenic

method)8)

cephalosporin 87/312は,β-lactamaseに 基 質 と

し て 作 用 す る.こ のcePhalosporinは, β-lacta-

maseに よ り,β-lactam環 が 開 裂 す る と 最 大 吸

光 度 が386nmか ら482nmに 変 化 し,こ の 結 果,

黄 色 か ら 赤 色 へ と 変 色 す る.今 回,我 々 は5%

馬 消 化 血 液 を 加 え た ト リ ブ ト ソ イ ブ イ ヨ ン(栄

研)で18時 間 培 養 し た 菌 液50μlとcephalosporin

87/312液50μlをmicroplateに て 混 合 し,30分

後 に 判 定 した(Fig.2),

3.抗 生 物 質 感 受 性 試 験

1)培 地

感 受 性 測 定 に は,荒 井 ら の 方 法9)に 従 つ て 作 成

し た 馬 消 化 血 液 を5%加 え たHeart infusion agar

(栄 研)を 用 い,増 菌 に は,5%ウ マ 消 化 血 液 加

ト リ プ ト ソイ ブ イ ヨ ン(栄 研)を 使 用 した.

2)使 用 抗 生 物 質

Fig. 1 Slide test for, e-lactamase production .

White colour on left shows /3-lactamase positive re-

action, whereas purple colour on right indicates a

negative result.

Fig. 2 Broth method utilizing the cephalosporin

87/312 (Glaxo) for detection of /3-lactamase pro-

ducing strains of H. influenzae. A colour change

from yellow to red occured in wells containing

ƒÀ-lactamase producing strains . Wells containing

no bacteria (two wells in right bottom) and non

ƒÀ-lactamase producing strains remained yellow .

Ampicillin (ABPC), Piperacillin (PIPC), Chl-

oramphenicol (CP), Minocycline (MINO), 6059-

S

3)MIC測 定

5%ウ マ消 化 血 液 加 トリブ トソ イ ブ イ ヨ ンに て

18時 間 増 菌 した 菌 液 を 生 食 水 に て106CFU/mlに

調 整 し,ミ ク ロプ ラ ンタ ーを 用 い て抗 生物 質 加 固

型 培 地 に5μlず つ 接 種 し,37℃,20時 間 培 養 後,

MICを 判 定 した .

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昭 和56年9.月10日597

Table 1 Distribution of MICs against H. influenzae (76 strains)

Mlc in μg/ml

4.血 清 型別

Bacto-H.influenzae antisera (DIFCO)を 用 い,

ス ライ ドグ ラス上 の 凝 集 に よ り 血 清 型 別 を 行 つ

た.

結 果

1.薬 剤 感 受 性

MIC測 定 を行 つ たH.influenzae94株 の うち,

同 一 症例 か ら の 同一 感 受 性 の 菌 で,臨 床 経 過

よ りone episodeと 考 え られ る 菌 に つ い て は,

1株 のみ を 集 計 に入 れ て,76株 のMIC分 布 を

Table1に 示 した.ABPC, PIPC, CP, MINOお

よび6059-Sの5剤 中,本 菌 が最 も良好 な感 受 性 を

示 した の は6059-Sで あ り,106CFU/ml接 種 に て

0.1μg/ml以 下 のMICを 示 した も のが,実 に96

%に 達 し,低 感受 性 の もの で も0.39μg/mlで あ

つ た.ABPCは0.39~0.78μg/mlセ こ ピー クを 示

した が,25μg/mlと 低 感 受 性 の株 もみ られ,2峰

性 を示 した.PIPCに 関 して は,0.2μg/ml以 下 と

1.56~12.5μg/mlに ピ ー クが あ り,ABPCと 同様

に2峰 性 を 示 した.CPに 関 して も,0.39~0.78

μg/mlと6.25~12.5μg/mlと2峰 性 を 示 した.

MINOに 関 して は,12.5μg/mlと1株 のみ が 低

感受 性 を示 した が,そ の他 は0.2~0.78μg/mlに

分 布 して い た.

2.β-lactamase産 生 能

前 述 の2つ の 方 法 に て施 行 し,そ の結 果 をTa-

ble2に 示 した.ABPCのMICO.78μg/ml以

下 の73株 は,す べ てiodometric methodお よび

chromogenicmethod両 法 と もに 陰性 で あ り,1.56

Table 2 Correlation between tests for detection

of PC-ase and agar dilution susceptibility to

ampicillin

MIC*: minimum inhibitory concentration in

μg/mI

μg/ml以 上 の21株 は す べ て 陽 性 で あ り,こ れ ら

を耐 性 菌 とした.

3.ABPC耐 性 菌 の検 討

1976年,慢 性 気 管 支 炎 の症 例 を筆 頭 に現 在 まで

12例 よ り分 離 され て い る(Table3).こ れ らの株

のMICをTable4に,そ の集 積 率 をFig.3に

示 す.PC剤 で あ るPIPCに は,ABPCと 交 叉

Fig. 3 Cumulative percentage of 14 ampicillin-resistant strains of H. influenzae inhibited by 5antibiotics.

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598 感 染症学雑 誌 第55巻 第9号

Table 3 Clinical diagnosis and bacteriological findings of Ampicillin-resistant H. in fluenzae

n.t*: non-typable N-P** : Nasopharynx

Table 4 MICs of 5 antibiotics against 1e-lactamase producing strains of H. influenzae

MIC in μg/ml

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昭和56年9月10日599

耐 性 を 示 す が,CP,MINO,6059-Sに 関 して は

低 感受 性株 は認 め られず,多 剤 耐 性 と考 え られ る

菌 は分 離 され て い な い.血 清 型 別 は,化 膿 性 関 節

炎 の症 例 の 関 節炎,血 液,鼻 咽 腔,お よび扁 桃 周

囲 膿 瘍 の 患 児 の 咽頭 よ り 分 離 され た株 がtypeb

で あ り,慢 性 気 管 支 炎 の症例(A.I.,M.N.)の 増

悪 期 に 分 離 され た 株 が,typeaお よびtypecで

あ った が,こ れ らの 株 以外 の株 で は す べ てnon-

typableで あつ た.

考 案

H.influenzaeは,下 気 道 感 染 症 の主 要 原 因 菌 で

あ るが,特 に3ヵ 月以 降,3歳 未 満 の小 児 化 膿 性

髄 膜 炎 の 主要 原 因菌 で あ る.小 林 ら10)は,本 邦 に

お け る13年 間 の小 児 化 膿 性 髄 膜 炎 の動 向 を各 機 関

に報 告 を 依 頼 し て 集 計 し,Haemphilusに よ る髄

膜 炎 は1972年 以 降 著 明 な 増 加傾 向 を 示 して い る

と述 べ,上 原 ら11)は,気 道 由来 のH.influenzae

で,ABPC耐 性 株 が1979年 よ り 増 加 傾 向 に あ る

と述 べ て い る.Syriopoulourら12)は,type bと

non-bのABPC耐 性 率,お よび 鼻 咽 腔 保 菌 者 よ

り分 離 され た 株 と,髄 液,血 液,耳 漏 の 病 巣 由 来

株 のABPC耐 性 率 は 類 似 して お り,ABPC耐 性

菌 に よ る 疾 患 と,ABPC耐 性H.influenzaeの 咽

頭 保 菌 とに関 連 が あ る こ とを 示 唆 して い る.以 上

よ り考 え る と,今 後,我 国 で もABPC耐 性E

influmzaeに よ る 全 身 感 染 症 が 増 加 す る も の と思

わ れ る.こ の よ うな 状 況 下,本 邦 で も1979年5

月,千 葉 市 立 病 院 に て2歳 男 児 の 化 膿 性 関 節

炎13),続 い て1979年9月 か ら11月 に か け て 国 立 岡

山 病 院 に お い て 化 膿 性髄 膜 炎3例14)の 計4例 の

ABPC耐 性H.influenzaeの 全 身 感 染 症 が 出現 し

て い る.Commitee on Infectious Diseasesで は1),

H.influenzae type bの 全 身 感 染 症 が 疑 わ れ た な

ら,非 経 口PC剤 とCPの 併 用 を勧 め て い るが,

CPの 血 液毒 性 を考 え る と,CPは 理 想 的 な 抗 生

剤 で は な い.抗 生 剤 感受 性 の結 果 は,培 養 後2~

3日 経 過 しな い と 得 られ な い し,ま た 本 菌 の感

受 性 は接 種 菌 量,お よび 培 地 に て 著 しい 影 響 を

うけ,デ ィス ク法 で 耐 性 を 示 して も 再 試 験 で 感

性 を示 す こ ともあ り,臨 床 の場 に お いて 使 用 薬 剤

の決 定 に 苦 慮 す る こ とが 多 々あ る.へBPC耐 性

H.influenzaeは,ほ とん どす べ て β-lactamaseを

産 生 す る の で,β-lactamase産 生 能 の検 出 のた め

の迅 速 か つ 信 頼 し うる 方 法 は,ABPC耐 性 株 を

予 測 す るの に 有用 で あ る.

この 期 待 を担 う方法 と して,rapidβ-lactamase

test15)が あ る.rapidβ-lactamase testの 利 点 と

して は,固 型 培 地 上 に 発 育 す るや 否 や 即 行 うこ

とが 可 能 で あ り,髄 膜 炎,膿 胸 等,純 培 養 状 に分

離 され る場 合 に は,一 夜 でABPC耐 性 か 否 か 判

定 可 能 で あ り,他 の方 法 よ りは 少 な くと も24時 間

早 く耐 性 に 関す る情 報 が 得 られ,適 合抗 生 剤 を

早 期 に 使 用 し うる こ とで あ る.rapid β-lactamase

testと して,acidometric method, iodometric me-

thod,chromogenic methodが あ るが,H.fnfluen-

zaeの β-lactamase産 生 能 の 判 定 に,cephalo-

sporin87/312を 基 質 と して 用 い るchromogenic

methodは,acidometric methodやiodometric

methodと 比 較 してbufferやpHの 調 節 が そ れ

程 厳 密 で な く,ま た,非 特 異 的 な反 応 もな く,菌

培 養液 や 固 型 培 地 上 の 菌 の β-lactamase活 性 の

迅 速 な 検 出 に信 頼 し うる方法 と され て い る16)17).

しか し,こ のcephalosporin87/3121入 手 困難 で

あ り,ル ー チ ンの検 査 に使 用 で きな い の が 実情 で

あ る.Skinnerら17)は,phenol redを 用 いたaci-

dometric methodの 方 が,iodometric methodよ

りも時 間 が か か らず 簡 便 で あ る と述 べ て い るが,

基 質 と して 用 い るPC剤 の量 に 差 が あ り,比 較

す る こ とに 関 し,や や 問 題 が あ る ので は な い か と

考 え る.iodometric methodは ヨー ドとデ ンプ ン

が 反 応 す る と紫 色 に な るが,β-lactamaseが 存 在

す る と,基 質 と して 用 い るPC剤 の β-lactam環

が 開 裂 し,ペ ニ シ ロ酸 と な る.こ の ペ ニ シ ロ酸

は ヨー ドと 結 合 しや す く,容 易 にペ ニ シ ロ酸 ・

ヨー ド結 合 物 が で き,デ ン プ ンを 作 用 させ て も

反 応 せ ず,白 色 の ま まで あ る といつ た 原 理 を

応 用 して い る.こ のiodometric methodを 用 い

たRosenblattら の方 法 は,我 々 の検 討 で はaci-

dometric methodほ どpH調 整 が 厳 密 で な く簡

便 で あ り,ABPCのMIC,お よびchromogenic

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600 感染症学雑誌 第55巻 第9号

methodの 結 果 と も一 致 し,時 間 も5分 以 内 で判

定 で き,信 頼 し うる方 法 で あ る.さ らに,変 色が

鋭 敏 で あ り,試 薬 の入 手 も容 易 な こ とか ら考 え る

と,日 常 検 査 室 で のル ーチ ンの検 査 に適 して い る

と 考 え られ る.し か し,Rosenblattら は 白金 耳

に とる 菌 量 が 少 な い と β-lactamase産 生 株 で も

変 色 せ ず,False-negativeに な る可 能 性 が あ り,

細 菌 を1エ ー ゼ 充 分 に とる 必 要 が あ る と 述 べ て

い る.我 々の 検 討 で も,菌 量 が 少 な い とFalse-

negativeに な り,1エ ー ゼ 充 分 に とる 必 要 が あ

る.と こ ろで,ABPC耐 性H.influeuaeに は,β-

lactamase非 産 生 株 も稀 に あ り,β-lactamase産

生 が 示 され れ ば,そ の菌 株 は 耐性 とみ な し,非 産

生 株 で あ れ ばMICに よ る最 終 判 定 を行 わ な け れ

ば な らな い とい うこ とを胆 に命 じて お くべ き で あ

る.一 定 のA8PCを 含 ん だ 培 地 にH.infzueuae

を接 種 し,そ の発 育 した コ ロニ ー数 の比 率 に よつ

てABPC耐 性 か否 か を決 定 す る方 法18)や,broth

dilution methodを 簡 便 化 したMICの 測 定 法19)

も報 告 され て い るが 一般 的 では な い.

抗 菌 力 に 関 して,最 近 新 薬 の 開発 が 目覚 しい

が,こ の 中 でEinfluenzae,こ とに β-lactamase産

生 性 のH.influenzaeに 対 して抗 菌 力 がす ぐれ 期 待

し うる抗 生 剤 の報 告 が み られ て い る20).こ の 中 で

今 回 我 々が 検 討 した6059-Sは,in vitroに て 良好

な感 受 性 を示 して お り,髄 液 移 行 も良好 で あ る こ

と よ り,期 待 し うる抗 生 剤 と して 今 後 の検 討 が 待

た れ る.

結 語

1.rapidβ-lactamase testと して,iodometric

methodを 応 用 したslide test(Rosehblatt,1978)

と,cephalosporin 87/312を 用 いたchromogenic

methodをH.influenzaeに 応 用 した .両 方 法 に

よ る β-lactamase産 生 性 の有 無 は完 全 に 一 致 し,

H.influenzaeに 対 す るABPCのMICと 相 関(陽

性株 はMIC1.56μg/ml以 上)し,A8PC耐 性

H.influenzaeの 早 期 判 定 に 信 頼 性 が あ り,日 常 検

査 に適 して い る.

2. ABPC耐 性H.influenzaeに 対 して,6059-S

は,MIC0.1μg/ml以 下 で 良 好 な 抗菌 力 を有 して

い た.

稿 を 終 るにあた り,御 校閲 いただ きました 千葉大学

小児科,中 島博徳教授 に深謝 いた します.

文 献

1) American Academy of Pediatrics. Committeeon Infections Diseases: Ampicillin-resistantstrains of Hemophilus influenzae type B.Pediatrics, 55: 145-146, 1975.

2) Marks, M. I. & Weinmaster, G.: Influencesof media and inocula on the in vitro suscepti-bility of Haemophilus influenzae to Co-trimoxazol,Ampicillin, Penicillin and Chloramphenicol.Antimicrob. Agents. Chemother., 8: 657-663, 1975.

3) 松 本 慶 蔵, 渡 辺 貴 和 雄, 平 塚 良 夫, 鈴 木 寛,

野 口行 雄, 永 武 毅: イ ン フ ル エ ンザ 菌 の抗

生 物 質 感 受 性(PC耐 性 菌 の 出現)と 血 清 型 別

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167-174, 1978.

4) 西 岡 き よ, 荒井 澄 夫, 本 田 一 陽, 会 田 博, 滝

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医 学 の あ ゆ み, 106: 199-201, 1978.

5) Markowitz, S. M.: Isolation of an ampicillin-

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7) Rosenblatt, J. E. & Neumann, A. M.: A

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8) O'Callaghan, C. H., Morsis, A., Kirby, S. M.

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昭 和56年9.月10日601

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Evaluation of Two Rapid Tests for Detecting Ampicillin-Resistant Strains of

Haemophilus Influenzae

Tomomichi KUROSAKI, Akira NAKAMURA, Suzuko UEHARA, Itaru TERASHIMA &

Yuri OKIMOTO

Department of Peidatrics, Chiba University, School of medicine

In 1979, systemic infections due to ampicillin-resistant H.influenzae were reported in Japan. Rapid detec-

tion of ampicillin resistance would be fascilitate to initiate adequate chemotherapy. A total of 94 strains of

H.influenzae isolated from clinical specimens out of children were tested with repid slide test, a modification of

iodometric method (according to Rosenblatt, 1978), and chromogenic method using Glaxo compound 87/312,

for detection of beta-lactamase.

The minimum inhibitory concentration (MIC) was determined by an agar dilution method. The inoculum

size was approximately 106 CFU/ml. The results of rapid beta-lactamase tests were compared with an am-

picillin MIC.

Twenty-one strains of H.influenzae were proved to be beta-lactamase positive by both methods. These

strains showed ampicillin MICs of •†1.56pg/ml. Seventy-three strains were negative beta-lactamase tests, which

presented ampicillin MIC, of •…0.78,ug/ml.

The 21 ampicillin-resistant strains were readily distinguished from 73 sensitive strains. Rapid beta-

lactamase tests were confirmed to be reliable indicators of ampicillin-resistant H.influenzae. These methods for

rapid beta-lactamase detection can be applied in routine laboratory examinations.