ISO 13857 の概要と日本人への適用の妥当性 - JST

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385

Vol. 48 No. 6(2009)

1. は じ め に

ISO/IEC Guide 51に基づく国際機械安全標準の体系において,広範な機械にわたって一般に利用される標準をグループ安全規格と呼び,そのなかで,人体の寸法や運動特性に依拠して規定された数値を扱ったものとして ISO 13854,ISO 13855,ISO 13857の三つがある.このうち,ISO 13857 1)は,人が指,腕または足を伸ばしたり開口部に挿入したときに到達可能な領域を示しており,機械のリスク低減において機械の一部やガード等により危険源から人を隔離する保護方策を採る場合(図 1参照 2)),必要な寸法および設置位置である “安全距離” を定めている.従来,安全距離については,上肢に関する ISO

13852と下肢に関する ISO 13853が別々にあったが,直近の改定時に日本からの提案で両者の統合が図られ,2008年に改めて新規格として発行された経緯がある.さらに,この際,本規格の欧州以外の地域の人種への適用についても疑義を提出した.すなわち,現行の規定値は欧州各国で測定された人体寸法データをおもな根拠としており,このため,欧米人と明らかに体格が異なる日本人を含むアジア人種にとっては安全とはいえないおそれがあるという事実である.もともと,この課題は,旧 ISO 13852および 13853を JIS化する際にも指摘されていた 3)が,改定に先立ち,(社)日本機械工業連合会のもとで,現行規格値の妥当性を検証する調査が実施された 4).

本稿では,ISO 13857の概要について改定審議中の内容も交えて述べるとともに,前述の調査において,(独)労働安全衛生総合研究所も参画した測定結果の一部について紹介する.

2. ISO 13857の概要

ISO 13857は 2008年に新しく発行された規格であるが,以前の ISO 13852および 13853に対して規定自体については特段の技術的な変更はない.これは原案作成を担当した ISO/TC199/WG6において,審議の結果,現行の規定値に大きな問題は報告されていないと判断されたためである.換言すれば,ISO 13857の規定値はあくまでも経験則であって,その危険性が明らかにされればただちに修正される用意がある.以下では,まず,ISO 13857を適用する際の留意点を概説し,つ

形状や寸法の工夫で危険源に人が触れないようにすることは,機械のリスク低減としてきわめて本質的である。この際,適切な寸法を与えるのが ISO 13857である。また,ISO 13857は,安全防護の正当性を計る基準でもあり,ガードの上を越えたり開口部から手を通したりしても危険区域への到達を阻止するのに必要なガードの大きさと設置位置を示す。ただし,ここで規定された数値は欧州各国で得られた人体計測値をおもな根拠にしており,欧米人と明らかに体格が異なるわが国の労働者にとって必ずしも適切とはいえなかった。本稿では,この ISO 13857の概要を述べるとともに,本規格の規定値を日本人に適用することの妥当性を検証した測定結果について紹介する。キーワード:機械安全,国際標準,安全距離,人体寸法

ISO 13857の概要と日本人への適用の妥当性

† (独)労働安全衛生総合研究所:〒204─0024 東京都清瀬市梅園 1─4─6

†齋さい

  藤とう

     剛つよし

安全/環境関連国際規格特集号

Eホッパ

危険箇所

連結足場

A

図 1 ホッパの形状による危険箇所到達の阻止 2)

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安 全 工 学

ISO 13857の概要と日本人への適用の妥当性 

いで各種安全距離を記載順に紹介する.ただし,ISO

13857は安全距離を詳細な数表としておのおの示していることに本義があるが,紙面の都合上,それら具体的な値については割愛する.

2.1 適用範囲と仮定改めて “安全距離” とは,人が危険源に触れるのを

防ぐために必要な危険源と保護構造物(ガードまたは機械の一部)との間に設けるべき距離のことである.ISO 13857には上肢と下肢による種々のアクセスに対する安全距離が記されており,機械のリスクアセスメントにおいて危険源の同定およびそれを設計で除去する場面で欠くことのできない指標となっている.ただし,その適用には,あくまでも物理的障害物に

よって人を隔離しさえすれば適切な保護を達成できることが前提になる.したがって,対象となる危険源はおもには機械的危険源となり,放射線,粉塵,騒音等の他の危険源に対しては必ずしも有効でない.また,電気的危険源については,充電部への接触可能性の評価に別途テストフィンガーを用いた試験手順を定めている場合 5)があり,注意が必要である.また,安全距離を定めるにあたって ISO 13857では

いくつかの仮定を設けており,これらは箇条 4 . 1 . 1にまとめられている.例えば,人が爪先立ちになったり,できる限り背伸びをしたり,あるいは開口部に強引に手指を押し込むことは考慮するが,椅子に乗ったり,壁に手を添えて体を支えたりすることは想定されていない.さらに,飛び跳ねる等はせずに基準面に足を着けた状態であって,このとき靴は履いているが靴底の厚さは一般的なものに限っている(これは今回の改定で日本からの指摘で明確化された).特に,おのおのの値は 14歳以上(開口部を通しての到達については3歳以上)の人の 95%をカバーすることを基準に定められおり,統計上 95パーセンタイル値を超えるまたは 5パーセンタイル値を下回る極端な体型の人は本規格の規定では保護されない.安全距離の適用の際は,これらの仮定をリスクアセスメントにおいて考慮する必要がある.なお,2 . 2節で述べる上方への到達と 2 . 3節で述べ

る保護構造物を越える到達については,危険源に高いリスクが見込まれる場合の値と低いリスクの場合の値があり,リスクアセスメントの結果に基づいて適切なほうを選択する指示がなされている.ただし,これはおもに本規格を参照する個別機械の安全規格(C規格)作成者に向けた指針ととらえるのがよく,一般の設計者が低リスク用の値を採用するにはきわめて慎重な判断が要求される.

2.2 上肢の上方への到達立位で上方に手を伸ばした際に届く高さであって,

危険区域への到達を阻止するのには,高リスクの場合は 2 . 7 m以上,低リスクの場合は 2 . 5 m以上を確保する必要がある.すなわち,現行の国際安全規格では,前項で述べた仮定のもとで,通常,人は 2 . 7 mの高さのものには触れられないとしている.

2.3 保護構造物を越える到達ガード等の上を越えて手を伸ばした際に届く領域で

あって,図 2に示すように,危険区域の高さ aと保護構造物の高さ bとの関係で定まり,低リスクの場合は表 1を高リスクの場合は表 2を,附属書 Aに従って適用する.表中にない値を補間して用いてはならない.なお,従来の ISO 13852では,表 1と表 2で “距離をとる必要がない” 箇所を記号 “-” で示しており混乱を招いていたが,今回の改定で “0 mm” と記載が改められた.また,図 2では,保護構造物が垂直に設置された場合を示しているが,傾斜しているときは保護構造物の上端を基準にとる.

2.4 動作を制限したときの周囲への到達14歳以上の人が直径 120 mm以下の円形開口部(ま

たは一辺 120 mm以下の四角形開口部)に腕を付け根まで通した状態で,物理的障害物の効果によって肘/手首/掌まで動作範囲が制限されたときに到達可能な領域を示したもので,つぎの 2 . 5節の特別な場合である.例として 300 mm以上の障害物で肘の動作範囲を制限したとき到達可能範囲を図 3に示す.なお,障害物の設置角度は任意でよい.ただし,本項目での重要な規定として,国際標準で

は,保護構造物に直径または一辺が 120 mmを超える開口部があるときは,もはや,それは開放された空間と同じとみなしており,前述の 2 . 3節を適用するとしていることを指摘しておく.

2.5 上肢による開口部を通しての到達長方形/正方形/円形といった各形状の開口部に上

肢を挿入した際に到達可能な距離(以下「開口通過到達距離」という)を扱ったもので,14歳以上を対象とした値と 3歳以上を対象とした値が規定されてい

記号 1:最も近い危険区域2:基準面3:保護構造物a:危険区域の高さb:保護構造物の高さc:安全距離(水平距離)

1

2

3

a b

c

図 2 保護構造物を越える到達(文献 1)に加筆)

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る.規格より 14歳以上に対する安全距離を表 1に掲載する.幅 4 mm未満の開口部についてさえ,すなわち,開口部があるのであれば,2 mm以上の安全距離が必要とされていることに留意されたい.他方,開口通過到達距離は,前述の上方への到達や

保護構造物を越える到達とは異なり,“体格”よりも “体型” のほうが影響する.すなわち,体が大きく手の長い人が必ずしも遠方まで到達するとは限らず,むしろ手が短くても細い人のほうが同形状の開口部により深く挿入できる可能性がある.実際,詳細な値を示すことは割愛するが,14歳以上に対する規定に比べ,3歳以上に対するほうが,より長く安全距離を確保することが要求される.この 3歳以上を対象とした安全距離は,例えば建築物付帯設備や農業機械など,子供のアクセスが前提となる環境で使用される機械の規格で引用されている.

2.6 下肢による開口部を通しての到達上肢の場合と同様の定形開口部に下肢を挿入した際

に到達可能な距離を示したもので,14歳以上を対象

とした開口 240 mmまでの値が規定されている.ただし,これら下肢に関する規定値は従来 ISO

13853として上肢を扱う ISO 13852とは別に規格化されていたが,その有用性は疑問視されていた 2).容易に理解できるように,下肢の規定を満足する安全距離を設けても,その開口部に上肢を挿入すれば容易に危険源に届いてしまう.このため ISO 13853の適用は,“開口部に決して上肢が挿入されないこと” が保証できる場合に限定されるが,現実には,そのような条件での機械の運用はほとんどあり得ない.以上のことから,本規格の策改定を扱う ISO/TC 199に対し “下肢に関する規定は廃止しないまでも,きわめて例外的な場合の値として,上肢に対する規定の一部とするのが適切である” と日本から提言したところ,この主張のとおりに両者を統合し新規格として策定し直す方針が承認され,今回の ISO 13857の発行に至った経緯がある.

3. 開口通過到達距離の日本人への適用妥当性

現行 ISO規格の多くは EN規格をもとに策定されて

表 1 定形開口部を通しての到達─14歳以上─ 1)

身体の部位 図 示 開口部安全距離 sr

長方形 正方形 円 形指 先

sr

e e≦ 4 ≧ 2 ≧ 2 ≧ 2

4< e≦ 6 ≧ 10 ≧ 5 ≧ 5

指関節までの指

sr

ees

r

6< e≦ 8 ≧ 20 ≧ 15 ≧ 5

8< e≦ 10 ≧ 80 ≧ 25 ≧ 20

または手 10< e≦ 12 ≧ 100 ≧ 80 ≧ 80

12< e≦ 20 ≧ 120 ≧ 120 ≧ 120

20< e≦ 30 ≧ 850* ≧ 120 ≧ 120

肩の基点までの腕

esr30< e≦ 40 ≧ 850 ≧ 200 ≧ 120

40< e≦ 120 ≧ 850 ≧ 850 ≧ 850

 *  長方形開口部の長さが 65 mm以下の場合には,親指がストッパーとして働くので,安全距離を 200 mmまで減じることができる.

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安 全 工 学

ISO 13857の概要と日本人への適用の妥当性 

おり,人の寸法や動作特性に依拠する規定や仕様については欧州各国で得られた人体測定値を根拠としているケースが多い.このため,欧米人と標準的な体格が明らかに異なる他の地域の人にとっては,規定を遵守しても必ずしも安全とはいえないおそれがある.そこで,一連の安全距離に関する規格の改定に先立ち,平成 15~17年度,(社)日本機械工業連合会のもとで,現行の規格値が日本人を含むアジア人種にとって適切なものかを検証する調査が実施された.本章では,この調査の一部として開口通過到達距離

に関する評価 6)のうち,15~69歳の男女 28人を対象

に長方形開口部を通しての到達距離を実測した結果を紹介する.

3.1 計 測 の 概 要衣料品のサイズ表示,あるいは自動車や家電製品等

の各種工業製品の設計等において,人体寸法の反映は大変重要であり,例えば文献 7)のように大規模な測定を実施して採録されたデータベースがすでにいくつか知られている.しかし,開口通過到達距離の評価では,ISO 13857の仮定に基づき,開口部になかば強引に手指を入れて故意に向こう側に触ろうとする挙動を想定し,上肢各部の変形までも考慮した到達を知る必要があるが,このような条件で計測を実施したデータはない.そこで,本調査では,任意のサイズの長方形及び正方形開口部を形成できる可動ゲートを備えた計測装置を製作し,開口通過到達距離を実測することとした.製作した計測装置の外観を図 4に示す.開口部を 2

枚のゲート板で作る構成とし,上側のゲート板を上下させることで長方形開口は 0~130 mm,正方形開口は0~125 mmの範囲で開口幅を任意に設定できる.到達距離の計測は,被験者に開口部からリニアスライド上に設けられた押板をできる限り遠方まで押してもらうことで行うが,このとき,指先で軽く弾かれただけで押板位置が変化してしまうことがないよう,定荷重バネを用いて押板に約 3Nの張力をかけることとした.また,挿入時にすり傷や内出血等の傷害を被ることを

表 2 同年齢層の日本人の寸法統計データ 7)との比較における被験者 28名の体型の分布状況

50

71 . 571 . 972 . 17373 . 373737373 . 475 . 576 . 876 . 777 . 477 . 977 . 877 . 877 . 895

67 . 568 . 267 . 668 . 368 . 569 . 16968 . 36971 . 371 . 972 . 172 . 772 . 973 . 373 . 472 . 975

64 . 665 . 364 . 965 . 665 . 8666665 . 466 . 16968 . 969 . 269 . 77070 . 370 . 270 . 2

6262 . 362 . 262 . 9636363 . 162 . 563 . 26665 . 866 . 366 . 767 . 167 . 367 . 866 . 825

57 . 958 . 958 . 45958 . 959 . 159 . 259 . 158 . 56261 . 562 . 262 . 463 . 163 . 26462 . 75

60─6950─5940─4930─3925─2920─2419161560─6950─5940─4930─3925─2920─24191815年齢(層)

年齢(層)

女 性

女 性

男 性

男 性

文献

7)のパーセンタイル値

文献

7)のパーセンタイル値

( a)第 2指の長さ(単位:mm)

1

8

2

3

11 12

4

95

10

6 7 27 28

18

19

13

20

14

15 16

2317

24

26

25

21

22

31 . 932 . 331 . 531 . 23131 . 631 . 631 . 129 . 937 . 537 . 336 . 535 . 93636 . 235 . 535 . 334 . 395

29 . 429 . 528 . 728 . 32828 . 128 . 328 . 127 . 333 . 233 . 33332 . 13232 . 332 . 131 . 830 . 775

28 . 127 . 927 . 226 . 726 . 426 . 526 . 526 . 726 . 131 . 331 . 23130 . 33030 . 129 . 929 . 928 . 850

26 . 726 . 52625 . 525 . 125 . 225 . 125 . 324 . 729 . 629 . 629 . 228 . 828 . 528 . 528 . 528 . 327 . 425

24 . 824 . 824 . 323 . 823 . 723 . 523 . 223 . 32327 . 527 . 427 . 326 . 926 . 726 . 626 . 226 . 425 . 15

60─6950─5940─4930─3925─2920─2419161560─6950─5940─4930─3925─2920─24191815

( b)指付け根の厚さ(単位:mm)

1

8

2 3 4

11

5

126

7

18

19

28

20

27

15

16

23

17

2410

9

13

14

21

22

25

26

61 . 4

66 . 1

69 . 5

72 . 7

77 . 8

障害物あり

850 mm

550 mm≧300

障害物なし

≦12

0≦

120

到達可能範囲

到達可能範囲

図 3 肘の動作を制限したときの到達可能範囲(文献 1)に加筆)

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防止するため,予備的実験の結果,ゲート板の被験者に触れる縁部には半径 2.5 mmの丸みを設け,さらに計測時に被験者にハンドクリームを塗布する措置を講じた.なお,この措置のため,ゲート 1枚の板厚が 5

mmとなり,表 1に示した 14歳以上に対する規定値のうち,e≦ 4 mmの微少開口については検討から除外することとした.長方形開口に対する計測では,まず人差し指を挿入

することとし,2 mmごとに開口幅を広げていき,人差し指の付け根まで達したら,ついで手,腕と続け,最終的に腕の付け根まで挿入する.人差し指を対象としたのは,予備的実験の結果,健常者においては他の指が邪魔にならないため,人差し指の場合が最も到達距離が長くなる傾向のあることが判明したことによる.ただし,指付け根まで挿入した時点では,他の指の場合および複数本組み合わせた場合も比べ,より長い到達距離を記録した.手首以降も同様に,できる限り遠方まで押板を押せるように被験者自ら掌の向きや挿入位置を自由に変え,数回の試行での最長距離を記録することとした.

3.2 被験者の体型限られた人数のなかでできる限りバラエティに富ん

だ体型の被験者を揃えるため,本調査では,年齢を七つの層に,また,BMI 値を高低の二つに分け,これに性別を加えた計 28階層におのおの該当する被験者候補を(社)人間生活工学研究センターが所有する被験者リストから選抜する方法で,被験者を募った.表 2

は,採用された被験者の体型の分布度合いを示す例として,各被験者の第 2指長さと指付け根厚が同じ年齢階層の文献 7)の寸法統計データのどの位置にランクするか示したものである.ここで,それぞれ黒丸で囲んだ番号は各被験者の実測値の位置を表しており,同

年齢の 95パーセンタイル値よりも長い第 2指の女性や指付け根厚が 95/5パーセンタイル値を外れる者等,非常に広範囲の体型の被験者が含まれていることがわかる.なお,これらの手指のサイズは,後述する微少開口幅での到達距離の評価において特に重要なファクターになる.

3.3 長方形開口通過到達距離の計測結果長方形開口通過到達距離の計測結果を図 5に,また,

その抜粋として開口幅 16 mmまでの数値結果を表 3

に示す.図 5中,実線は現行規定値を示している.結果として,測定した被験者の範囲では現行規格値を超える到達距離を示す者は確認されなかった.ただし,開口幅が 6,8 mmのときはマージンが非常に小さくなっており,規格値の不適切さが指摘されるとすれば,その可能性が最も高いと予想される.また,表 3では,16 mmの場合を除いて女性が最大

値を記録しているが,総じて,55 mm以下の開口については女性のほうがより遠方に到達する傾向にあり,開口通過到達距離が上肢形状の性別差を非常に強く反映することが示された.なお,紙面の都合上,正方形開口に対する結果は割

愛するが,長方形開口の場合に比べてより大きなマージンが確認されたことは付記しておく.

4. お わ り に

本稿では,ISO 13857が規定する各種安全距離の概要とともに,それらの日本人に対する妥当性を検証する調査で行った計測実験結果を述べた.あくまでも,当所が関係した結果のごく一部にすぎず,本調査の全容については文献 4)を一読されたい.機械の安全設計において人体寸法の反映が重要であ

ることは論を待たない.実際,先の ISO/TC199総会

ゲート板(下側)

押板

ボールネジ

リニアスライダ

リニアエンコーダ

高さ調節機構

ゲート板(上側) リニアエンコーダ

押板

ゲート板(上側)

3N

開口通過到達距離(板厚を含む)

正方形開口用ゲート板

0~18

0 m

m

0~125 mm

200 mm

0~13

0 m

m

長方形開口用ゲート板

200 mm

200

mm

図 4 製作した開口通過到達距離計測装置の外観

390

安 全 工 学

ISO 13857の概要と日本人への適用の妥当性 

では,人間工学関連規格を積極的に策定する方針からISO/TC159(人間工学)とのより密接な連携が確認されている.ISO/TC159が扱う規格 8)には,例えば “アクセスに適した開口部寸法決定の原理” 等があり,今後の進展が期待される反面,既存の人体寸法データを単純には利用できないことに対し,わが国での妥当性検証作業の充実が課題である.

参 考 文 献

  1) ISO 13857:2008 “Safety of machinery ─Safety distances to prevent hazard zones being reached by upper and lower limbs”,日本規格協会(2007)

  2) A.ノイドルファ:安全な機械の設計,NPO安全工学研究所(2002)

  3) JIS B 9707:2002「機械類の安全性─危険区域に上肢が到達することを防止するための安全距離」,日本規格協会(2002)

  4) (社)日本機械工業連合会:平成 17年度機械の安全なヒューマンインターフェイス分野の国際標準共同開発調査研究成果報告書(2006)

  5) IEC 60529 Ed. 2.1:2001 “Degrees of protection provided by enclosures(IP Code)”,日本規格協会(2001)

  6) Tsuyoshi SAITO, Hiroyasu IKEDA, Hiroshi YAMAZAKI, et al:An Evaluation of the Appropriateness of ISO/DIS 13857 for Japanese Persons, Proceedings of the 5th International Conference Safety of Industrial Automated Systems(SIAS 2007),pp.231─237(Nov. 2007, Tokyo)

  7) (社)人間生活工学研究センター:日本人の人体計測データベース 1992─1994(1998)

  8) 日本人間工学会 ISO/TC159国内対策委員会, URL:http://www.ergonomics.jp/jenc/TC159_04─07_v4.

pdf

表 3 開口幅 20 mmまでの到達距離結果抜粋

開口幅男 性 女 性

平均値 S . D. 最大値 平均値 S . D. 最大値6 . 0 3 . 4 0 . 7 4 . 8 4 . 1 1 . 2 7 . 2

8 . 0 8 . 8 3 . 4 13 . 9 10 . 4 3 . 8 14 . 5

10 . 0 16 . 1 2 . 0 19 . 8 19 . 7 5 . 7 32 . 9

12 . 0 31 . 0 7 . 2 38 . 9 35 . 5 2 . 6 41 . 8

14 . 0 41 . 0 2 . 0 44 . 8 50 . 4 15 . 5 81 . 6

16 . 0 62 . 1 15 . 1 85 . 6 74 . 8 5 . 8 84 . 1

(単位:mm) 

0 4 12 16 208

ISO 13857表 4規定値

120

長方形開口到達距離〔

mm〕

150

300

450

600

750

900

0

開口幅 e〔mm〕20 40 60 80 100 120

0

20

40

60

80

100

4 12 16 208

:男性:女性

図 5 長方形開口通過到達距離の計測結果