緊急時に担架代わりになる - Taica · 避難所に来られた 要配慮者には、...

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2019.冬 特別 対談号 【Special Report特別対談】 「笑顔」が変える介護のミライ ~笑顔とスポーツの世界から介護を考える~ (“第46回国際福祉機器展 トークショー”より) 2019.冬 特別対談号 令和元年12月15日発行 発行/株式会社タイカ 〒125-0054 東京都葛飾区高砂5-39-4 三遊亭円楽 六代目 清水 宏保 トークショーコーディネーター 下元 佳子  ナチュラルハートフルケアネットワーク代表理事 日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会理事 理学療法士 緊急時に担架代わりになる 医 療・介 護 の 現 場 で 培 った 技 術 を 災害対策に活かしました。 避難所生活での負担を軽減し、安心な環境をつくる 避難所に来られた 要配慮者には、 少しでもリラックスできる 環境を提供したい 避難中に 体調を崩された方を そのまま搬送できる ものがあれば・・・ 災害現場の声.1 災害現場の声.2 α PLA Rの説明動画をご覧になれます。 〒125-0054 東京都葛飾区高砂5-39-4 TEL:03-5648-6630 / FAX:03-5648-6640 ウエルネス事業本部 お問い合わせ ホームページ TEL:0120-152047(無料) https://taica.co.jp/pla

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2019.冬特別対談号

【Special Report特別対談】「笑顔」が変える介護のミライ ~笑顔とスポーツの世界から介護を考える~

(“第46回国際福祉機器展 トークショー”より)

2019.冬 特別対談号

令和元年12月

15日発行 発行/株式会社タイカ 〒125-0054 東

京都葛飾区高砂5-39-4

三遊亭円楽氏

六代目

氏清水 宏保トークショーコーディネーター 下元 佳子 氏

ナチュラルハートフルケアネットワーク代表理事日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会理事理学療法士

緊急時に担架代わりになる

医療・介護の現場で培った技術を災害対策に活かしました。

避難所生活での負担を軽減し、安心な環境をつくる

避難所に来られた要配慮者には、

少しでもリラックスできる環境を提供したい

避難中に体調を崩された方をそのまま搬送できるものがあれば・・・

災害現場の声.1 災害現場の声.2

α PLA Rの説明動画をご覧になれます。

〒125-0054 東京都葛飾区高砂5-39-4TEL:03-5648-6630 / FAX:03-5648-6640

ウエルネス事業本部お問い合わせホームページ

TEL:0120-152047(無料)https://taica.co.jp/pla

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「笑顔」が変える介護のミライ

〜笑顔とスポーツの世界から介護を考える〜

これまで20年以上も教壇に立ち、介護の現場に向かう生徒たちに独自のアドバイスを送ってきた三遊亭円楽師匠。そして、競技引退後

に北海道札幌市で介護施設の運営に携わっておられる、元スピードスケート長野オリンピック金メダリストの清水宏保さん。

今回の対談テーマである「介護を成り立たせる笑顔や感謝」について、落語、スポーツそれぞれの分野からその大切さを語って

いただきました。

三遊亭円楽 × 清水宏保 特別対談

リボンリハビリセンターみやのもり株式会社two.seven

清水 宏保 氏代表取締役

Shimizu Hiroyau Profile長野オリンピック男子スピードスケート金メダリスト。引退後は大学院で医療経営を学び、現在はデイサービス「リボンリハビリセンターみやのもり」、スポーツジム「27Body」を経営。

ナチュラルハートフルケアネットワーク代表理事日本褥瘡学会・在宅ケア推進協会理事

下元 佳子 氏理学療法士

Shitamoto Yoshiko Profile現場での豊富な経験を踏まえ、介護技術、 福祉用具等の指導にも従事。療費者と介護者にやさしく、そして療養者の気持ちと状態が本当に良くなる「人を大切にするケア」を多くのケア現場に広げる仲間作りとして「ナチュラルハートフルケアネットワーク」を立ち上げ、その輪は全国に広がっている。

基準とするところの「高齢化」

でどんどん高齢者が増える中

で、“

長寿で健康な高齢者を目

指す”

ことそのものだと思いま

す。医療・福祉に関わる私たち

は、長寿の意味をいつも考えて

いるようで、実は最もマニュア

ル的にしか考えていないのでは

と思うこともあります。人それ

ぞれの役割や居場所の大切さ

は、本当に痛感しますね。

 リハビリに特化したデイサー

ビスを展開している清水さんに

も、近況を伺いました。

清水

テレビ等でも取りあげて

いただきましたが、デイサービ

スを開設し、スポーツジムを二

店舗運営して、そこに理学療法

士を配置しています。病院での

リハビリの在日数は180日が

ち、やることがあること」だそ

うです。それを読んだ時に「あ

ぁ、本当によかったな」と、私

は来年の2月で古希(70歳)で

す。かつての同級生が現役引退

してヒマを持て余す中、こちら

は定年もなく落語ができて、お

客さまに楽しんでもらえていま

す。病気して、終わりが来れば

それは寿命です。寿命には

「寿」がついているので、これ

は受け入れましょう。

その反面、自分の身体だから自

分でメンテナンスもしていま

す。さっきも清水さんに控え室

でスクワットを教わりました。

とにかくこうして皆さんと話せ

る場所がいろいろとあることが

嬉しい限りで、生かされている

と感じています。

下元

円楽さんのお話は、国が

の進歩です。私は父親が58歳で

肺がん、兄貴がおととし68歳で

膵臓ガンで亡くなっています。

「二人に一人がガンになる時

代」と分かっていながら、自分

のところに来るとは思ってな

かったんですね。

しかし、実際に病気になってみ

ると、運命なんだからと受け入

れました。そして、完治したあ

とは、しゃべることができる、

そして落語ができる場所が残っ

ていることの幸せを噛みしめて

います。

 円楽さんは闘病経験を経て、

いわゆる「長寿」というものを

調べてみたそうです。

円楽

長寿の条件とは、「何歳

になっても自分の居場所があっ

て、その場所が社会と接点を持

 理学療法士を本業として介

護、医療に関わる下元さんの進

行でトークショーはスタート。

さっそくお二人から近況をお聞

きしたいところですが、まずは

最近まで体調を崩されていた円

楽さんのご様子を伺います。

下元

会場のみなさんは、おそ

らく円楽さんの体調のことを気

にされていると思いますが、お

加減はいかがですか。

円楽

:体調?よくないですよ

(笑)。

一年に二度の大病には、自分で

も驚きました。去年と今年は本

当に厄なんじゃないかと、ひし

ひし感じました。ですが、あり

がたかったのは早期発見と医学

延命よりもやることがある幸せ、

それを痛切に感じました

限度のため、それ以降のリハビ

リ対応のためのジムです。デイ

サービス以外には、「サービス

付き高齢者向け住宅」という52

床の住宅をつくって、そこに

デイサービスを併設し、医療

とスポーツをミックスさせた

介護事業、健康産業を運営し

ています。2019年の10月

には、札幌から1時間ほどの

場所でデイサービスのコンサ

ルティング事業も始める予定

です。加えて、個人的には弘

前大学大学院に通いながら、

博士号取得を目指して、高齢

者の運動に対する免疫力向上

の研究に取り組んでいます。

 アスリートだからこそ持ち

うる視点で、介護、健康、研究か

らコンサルティングまで、清水

さんは縦横無尽に活躍されて

います。

 ここからは本日のテーマでも

ある「言葉とスポーツの世界か

ら介護へ」の部分で、まず円楽

さんに中央福祉医療専門学校の

客員教授として、介護現場に臨

む学生たちにどんなエールを

送っているのかを伺います。

円楽

これから現場に出る若い

子たちに「人嫌いにならない方

法」を教えています。年寄りに

は、若い頃の経験を鼻にかける

人もいれば、やさしい方もい

て、おのおので個性が違いま

す。学校ではマニュアルの中か

ら技術を教わるかもしれませ

ん。しかし、その技術から独自

のもうひとつのマニュアルをつ

くるのが自分です。人間には知

恵があって、こういう場合はこ

ういう風に接しよう、相手が怒

ったらどうして受け流そうか、

考えることができます。そのた

めには、時にはっきりした物言

いも大切です。それで怒られた

ら、「だってそちらが怒ったか

ら私も怒った」、「売り言葉に

買い言葉だよ、笑ったら笑うか

ら」と言いましょう。

 人間は言葉を持っているので

吠え合ってはいけない。そし

て、ひとつの方法論や印象だけ

で決めつけてしまわないこと

が、人嫌いにならない方法だと

円楽さん。

円楽

そしてもうひとつ考えな

ければならないのは、“

そちら

側”

に行っていない幸せです。

つまり、介護する幸せを感じな

さいと。落語の寄席の楽屋は、

大正生まれの95歳の師匠から、

入りたての16歳の子まで三世代

が同居しています。そこで、年

長者が口うるさく礼儀作法や技

術を教えてくれる。各種専門の

学校は、ライセンスを与えるた

めの勉強はするものの、人間学

のようなものは足りないかもし

れません。ですからその分、自

分が見てきた人や姿勢を紹介し

ながら、いずれは“

そちら側”

に行く可能性を感じながら、今

介護できる自分を幸せだと思い

なさい、と話をさせてもらって

います。

そして、日本語を駆使してコミ

ュニケーションをとる。自分が

笑顔でよい言葉がたくさん出て

いる間は、自分の精神状態は大

丈夫です。人同士をつなぐもの

が笑顔と言葉だとするなら、笑

顔が消えてきたら人嫌いになっ

ている、言葉が減ってきたら人

との関係を断ち切りたいと思っ

ている、そう思って間違いあり

ません。今日のテーマともつな

がりますが、ストレスチェッカ

ーとして「笑顔と言葉」を覚え

ておいてねというのが、いつも

の授業の締めになっています。

下元

医療福祉業界の中でも、

課題の根底には常にコミュニケ

ーションがあるような気がしま

す。円楽さんの話を聞くと、双

方向の会話が大事であること、

経験を積みながら自分のマニュ

アルをつくることなど、具体的

な手法できちんと人を育てる過

程が欠けているなと感じまし

た。

円楽

25年間、福祉関係の仕事

を手伝っていることは、あまり

ものと、一日型のデイサービス

を運営しています。定期的に訪

問していますが、特に一日型の

方は、夕方の時間帯はスタッフ

も仕事をこなしている状況にな

りがちです。例えば歩行器の横

でラダートレーニングをします

が、メニューを与えたら「黙っ

て見ているだけ」になってしま

う。その状況を見た時に、これ

ではいけないなと思いました。

そこにはコミュニケーションと

誘導が必要です。

 トレーニングもリハビリも、

一方的に受け入れると「飽き」

がくるのだそう。飽きないため

には、なぜその筋肉が必要か、

では欠かせない事柄ですが、一

方で大きな課題にもなっていま

す。そこには若い人だけではな

く、本来現場を引っ張っていく

はずの上の立場の人間が、マニュ

アル化され過ぎているために具

体的な実践につながっていない

実状があるのかもしれません。

 かねてより日本人は働き過ぎ

と言われており、「働き方改革」

も叫ばれています。そこで疑問

なのは、単に就業時間を短くし

たり、有給消化率を上げたりす

なぜそのリハビリなのか理論的

な裏付けが大切だと清水さんは

続けます。

清水

例えば先ほどのラダート

レーニングでいえば、「歩行は

足が上がらなければ、転倒して

骨折してしまう」、だからラダ

ーも「ちゃんと足を上げてやり

ましょう」といった危機感を与

えることも大事です。こうした

コミュニケーションの大切さ

を、若いスタッフはまだまだ勉

強する必要があるのを感じてい

ます。

会社全体の方向性としては、デ

イサービスはほぼリハビリ特化

型です。私は幼い頃からぜんそ

く持ちで、それに加えて椎間板

ヘルニアやすべり症といった症

状もあります。そうした中で、

自分がリハビリしてきた経験を

デイサービスに取り入れよう

と、病気、スポーツ、ケアをミ

ックスさせてリハビリを提供す

る環境作りを進めています。

 お二人の話に共通するのは

「しっかり向き合っていく姿

勢」と、その潤滑油となるコ

ミュニケーションが大事という

こと。まさしく医療福祉の分野

知られていませんよね。キャラ

クターとしては腹黒で売ってい

ますが、ほんとは良い人なんで

すよ(笑)。

下元

長年継続されていること

には頭が下がります。会場中が

良い人だとイメージしているん

じゃないでしょうか(笑)。

 弘前大学での博士号取得を目

指すなど、介護事業に対する思

いが伝わってくる清水さん。リ

ハビリに特化した事業につい

て、ここで改めて伺ってみまし

た。

清水

自分も良い人自慢ではな

いですが、実は介護施設の運営

だけではなく法務省からの依頼

で刑務所に慰問に行かせていた

だいています。刑務所の中は当

然外界のような自由はないの

で、人同士が話さなくなる、コ

ミュニケーション取らなくなる

ことで、どんどん認知症が進ん

でいく現状があります。刑務所

の中も高齢化しているんです。

施設の運営では、私は短時間の

ることが主眼で、本当に心身が

リフレッシュできるのかという

こと。お二人からは、本日登壇

のご縁のきっかけとなったマッ

トレスとのお付き合いや、睡眠

と体の関係などのお話も伺いま

した。

円楽

働き方よりも、休み方改

革ですよね。リフレッシュのた

めに適度な睡眠が必要で、寝過

ぎはダメですがレムとノンレム

の睡眠を見極めて、自律神経を

コントロールできるような知識

と方法、これを編み出さないと

休めませんよ。

私はタイカさんとお付き合いが

始まった頃に、アルファプラの

マットレスをいただきました。

これがまた、卵を落としても割

れない柔軟性や、包み込む性能

があって、すばらしい寝心地な

んです。もうひとつの使い方と

しては、お客さんが来た時に敷

いてあげています。夏はそれに

タオルケット1枚とシーツがあ

れば充分。ありがたいことに枕

までついてきて、ちょっと肩を

包み込むような形になっていて

抱いて眠るんです。これまでの

枕は高さや固さを気にしていま

したけど、寝相が悪い人にはこ

ういう形もいいなと。いろいろ

と重宝しています。落語家は枕

を大事にしますからね(笑)。

アスリートの方は寝ることに対

する意識がすごく高いですよ

ね。

清水

そうですね、寝ることが

回復、ガソリン補給につながる

ので大事です。

私は2010年に現役引退しま

したが、2006年のトリノオ

リンピックではタイカさんのマ

ットレスを送っていただきまし

た。最近ではスポーツ選手が寝

具の宣伝をすることは珍しくあ

りませんが、実はその先駆けが

タイカさんだと思います。日本

で最初にスポーツ選手用のマッ

トレスを開発してくださって、

いち早く取り入れさせてもらっ

た経緯があります。もちろん現

在も、自宅で使用させてもらっ

ていますよ。

下元

介護医療の分野でも睡眠

は大事な要素です。ところが、

「寝ること」に関してはまだ褥

瘡、床ずれを予防する視点しか

ないような気もしています。寝

るという状況の中には安定感、

適度な沈み込みなどいろいろな

 円楽さんは、防災の心得の大

前提には、地球環境に対する敬

意が必要だと続けます。

円楽

先日の環境サミットで

も、16歳の女の子が「負の遺産

を残すのか」と本当にいいこと

を言っていました。人間は産業

革命以来、自分が住んでいる地

球を我がモノにしています。と

ころが、地球は大先輩で人間

は”

住まわせていただいてい

る”

意識がなければいけませ

ん。日本は自然災害の多い国で

すが、それに加えて世界で唯一

の被爆国です。こうした特異な

ポジションを活かして、原子

力、エネルギー政策の見直し、

地球温暖化など、世界の旗振り

役ができるような国になって欲

しいですね。

下元

環境や災害は全てつなが

っていますよね。HCRの会場

にも各国からの来場者がいます

が、日本がすべきことは「モ

ノ」を紹介するだけではなく、

「ソフト」の部分をきちんと伝

えていくことだと思います。

 最後に清水さんからも、防災意識

について語っていただきました。

下元

今日会場にいらっしゃる

のは医療福祉関係者が多いと思

いますが、私も進行よりも聞く

側、学ぶ側におりました。たく

さんの意義あるお話が聞けたと

思います。みなさんまた明日か

らも、この対談をヒントに頑張

っていきましょう。

 さすが講演経験豊富なお二

人のトークは、笑いと含蓄に富

むものでした。タイカも「介護、

睡眠、防災」と今日のお話を糧

に、現場の方々と二人三脚でよ

り一層喜ばれる情報発信や製

品づくりに励んでいきたいと

感じました。

清水

実は2018年の9月に

北海道でも大きな地震があり、

北海道中が3日間くらい停電に

なって本当にたいへんでした。

北海道民は地震が来ないと過信

していたんですね。地盤がしっ

かりしているので、防災意識が

低かったんです。事実、自分の

家にも懐中電灯などの防災グッ

ズはありませんでした。でも、

この地震を契機に災害、防災に

対する意識が高まり、グッズを

備えることから始まって、なに

があっても最低限の物は置いて

おくことを考えるようになりま

した。

特に施設は去年の11月にオープ

ンしました。地震が9月だった

ため、まだ不幸中の幸いでした

が、これがもし自分たちの施設

が満床の状態で起きたらどう対

応すべきか、という課題も得る

ことができました。当事者にな

った時の意識改革ができた意味

では、いい経験だったと思って

います。『でるキャップ』も普

段は変哲もないものなんです

が、なにかあった時には迅速に

頭にかぶれるものなので、この

グッズをきっかけにまた防災意

識をみなさんにも高めて欲しい

です。

下元

そうですね。円楽さんが

お話しくださったように役割が

あって楽しめることが、一番の

元気の素ですね。

円楽

私は酒ですよ。医者に

「よかったですね、肺がんは酒

が飲めるので退院したら祝杯を

あげてください」と言われまし

た。「ありがとうございます」と。

 台風や地震など、日本は絶え

ず自然災害にさらされていま

す。タイカではこうした状況に

対応し、防災の情報共有やグッ

要素が関係してくるため、褥瘡

予防だけではなく、もっと良い

睡眠を実現するためにひとりひ

とりに合ったマットレスを選ん

でいただきたいと思います。

円楽

睡眠も大切ですが、以前

に清水さんと対談させてもらっ

た時に、リハビリ特化型の施設

を運営されているとのことで、

スポーツ選手の経験を活かす以

外にもいろいろできそうだねと

話をしました。

清水

話題に挙がったのが、

「好きなことでリハビリしよ

う」という話でしたね。

円楽

例えば、誰しも若い頃に

やりたかったことがあるはずで

す。本当は絵が描きたかった、

本が書きたかった、そういう人

には時間を与えて、筆や絵の具

を持たせればイキイキするんじ

ゃないかと。それぞれの施設の

中でもマニュアル一辺倒じゃな

く、個性を活かして好きなこと

をやらせてみたらと。

ズ開発などを進めています。お

二人は「防災」に関してどのよ

うな取り組みを行われているの

でしょうか。

下元

私が住んでいる高知県

は、南海大地震がいつ来てもお

かしくないと言われています。

カップラーメンができる3分以

内に、30m以上の津波が来るよ

うな危険地域が何ヵ所も存在し

ています。円楽さんは防災の日

に静岡に行かれたそうですが、

どのようなことをされたんで

すか。

円楽

9月1日は関東大震災が

あった日でもあります。タイカ

さんのサポートで、短い時間で

すが静岡のテレビ局で、防災の

心得と『でるキャップ』のご紹

介をさせていただきました。こ

のキャップは本当に軽量でパッ

とかぶれるし、すごいものを発

明したなと思っています。これ

までも自転車に乗ってヘルメッ

トをかぶって登下校したり、学

校のイスに敷いていた座布団が

防災頭巾になったりしていまし

たが、このグッズはそれ以上に

手軽です。事務所の本棚に置い

ておいてもすぐに使用できます。

落語家・中央福祉医療専門学校客員教授

三遊亭 円楽 氏6代目

Sanyuutei Enraku Profileテレビ番組「笑点」の大喜利への出演のほか、中央福祉医療専門学校の客員教授を務め、現代日本の抱える諸間題-人間関係の再生心の健康増進について「笑い」を基軸に授業を実施。

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基準とするところの「高齢化」

でどんどん高齢者が増える中

で、“

長寿で健康な高齢者を目

指す”

ことそのものだと思いま

す。医療・福祉に関わる私たち

は、長寿の意味をいつも考えて

いるようで、実は最もマニュア

ル的にしか考えていないのでは

と思うこともあります。人それ

ぞれの役割や居場所の大切さ

は、本当に痛感しますね。

 リハビリに特化したデイサー

ビスを展開している清水さんに

も、近況を伺いました。

清水

テレビ等でも取りあげて

いただきましたが、デイサービ

スを開設し、スポーツジムを二

店舗運営して、そこに理学療法

士を配置しています。病院での

リハビリの在日数は180日が

ち、やることがあること」だそ

うです。それを読んだ時に「あ

ぁ、本当によかったな」と、私

は来年の2月で古希(70歳)で

す。かつての同級生が現役引退

してヒマを持て余す中、こちら

は定年もなく落語ができて、お

客さまに楽しんでもらえていま

す。病気して、終わりが来れば

それは寿命です。寿命には

「寿」がついているので、これ

は受け入れましょう。

その反面、自分の身体だから自

分でメンテナンスもしていま

す。さっきも清水さんに控え室

でスクワットを教わりました。

とにかくこうして皆さんと話せ

る場所がいろいろとあることが

嬉しい限りで、生かされている

と感じています。

下元

円楽さんのお話は、国が

の進歩です。私は父親が58歳で

肺がん、兄貴がおととし68歳で

膵臓ガンで亡くなっています。

「二人に一人がガンになる時

代」と分かっていながら、自分

のところに来るとは思ってな

かったんですね。

しかし、実際に病気になってみ

ると、運命なんだからと受け入

れました。そして、完治したあ

とは、しゃべることができる、

そして落語ができる場所が残っ

ていることの幸せを噛みしめて

います。

 円楽さんは闘病経験を経て、

いわゆる「長寿」というものを

調べてみたそうです。

円楽

長寿の条件とは、「何歳

になっても自分の居場所があっ

て、その場所が社会と接点を持

 理学療法士を本業として介

護、医療に関わる下元さんの進

行でトークショーはスタート。

さっそくお二人から近況をお聞

きしたいところですが、まずは

最近まで体調を崩されていた円

楽さんのご様子を伺います。

下元

会場のみなさんは、おそ

らく円楽さんの体調のことを気

にされていると思いますが、お

加減はいかがですか。

円楽

体調?よくないですよ

(笑)。

一年に二度の大病には、自分で

も驚きました。去年と今年は本

当に厄なんじゃないかと、ひし

ひし感じました。ですが、あり

がたかったのは早期発見と医学

限度のため、それ以降のリハビ

リ対応のためのジムです。デイ

サービス以外には、「サービス

付き高齢者向け住宅」という52

床の住宅をつくって、そこに

デイサービスを併設し、医療

とスポーツをミックスさせた

介護事業、健康産業を運営し

ています。2019年の10月

には、札幌から1時間ほどの

場所でデイサービスのコンサ

ルティング事業も始める予定

です。加えて、個人的には弘

前大学大学院に通いながら、

博士号取得を目指して、高齢

者の運動に対する免疫力向上

の研究に取り組んでいます。

 アスリートだからこそ持ち

うる視点で、介護、健康、研究か

らコンサルティングまで、清水

さんは縦横無尽に活躍されて

います。

 ここからは本日のテーマでも

ある「言葉とスポーツの世界か

ら介護へ」の部分で、まず円楽

さんに中央福祉医療専門学校の

客員教授として、介護現場に臨

む学生たちにどんなエールを

送っているのかを伺います。

円楽

これから現場に出る若い

子たちに「人嫌いにならない方

法」を教えています。年寄りに

は、若い頃の経験を鼻にかける

人もいれば、やさしい方もい

て、おのおので個性が違いま

す。学校ではマニュアルの中か

ら技術を教わるかもしれませ

ん。しかし、その技術から独自

のもうひとつのマニュアルをつ

くるのが自分です。人間には知

恵があって、こういう場合はこ

ういう風に接しよう、相手が怒

ったらどうして受け流そうか、

考えることができます。そのた

めには、時にはっきりした物言

いも大切です。それで怒られた

ら、「だってそちらが怒ったか

ら私も怒った」、「売り言葉に

買い言葉だよ、笑ったら笑うか

ら」と言いましょう。

 人間は言葉を持っているので

吠え合ってはいけない。そし

て、ひとつの方法論や印象だけ

で決めつけてしまわないこと

が、人嫌いにならない方法だと

円楽さん。

円楽

そしてもうひとつ考えな

ければならないのは、“

そちら

側”

に行っていない幸せです。

つまり、介護する幸せを感じな

さいと。落語の寄席の楽屋は、

大正生まれの95歳の師匠から、

入りたての16歳の子まで三世代

が同居しています。そこで、年

長者が口うるさく礼儀作法や技

術を教えてくれる。各種専門の

学校は、ライセンスを与えるた

めの勉強はするものの、人間学

のようなものは足りないかもし

れません。ですからその分、自

分が見てきた人や姿勢を紹介し

ながら、いずれは“そちら側”

に行く可能性を感じながら、今

介護できる自分を幸せだと思い

なさい、と話をさせてもらって

います。

そして、日本語を駆使してコミ

ュニケーションをとる。自分が

笑顔でよい言葉がたくさん出て

いる間は、自分の精神状態は大

丈夫です。人同士をつなぐもの

が笑顔と言葉だとするなら、笑

顔が消えてきたら人嫌いになっ

ている、言葉が減ってきたら人

との関係を断ち切りたいと思っ

ている、そう思って間違いあり

ません。今日のテーマともつな

がりますが、ストレスチェッカ

ーとして「笑顔と言葉」を覚え

ておいてねというのが、いつも

の授業の締めになっています。

下元

医療福祉業界の中でも、

課題の根底には常にコミュニケ

ーションがあるような気がしま

す。円楽さんの話を聞くと、双

方向の会話が大事であること、

経験を積みながら自分のマニュ

アルをつくることなど、具体的

な手法できちんと人を育てる過

程が欠けているなと感じまし

た。

円楽

25年間、福祉関係の仕事

を手伝っていることは、あまり

リハビリの“

飽き”

を防止する

コミュニケーションと誘導

「言葉」を持つ人間のコミュニケー

ションの在り方とは?

ものと、一日型のデイサービス

を運営しています。定期的に訪

問していますが、特に一日型の

方は、夕方の時間帯はスタッフ

も仕事をこなしている状況にな

りがちです。例えば歩行器の横

でラダートレーニングをします

が、メニューを与えたら「黙っ

て見ているだけ」になってしま

う。その状況を見た時に、これ

ではいけないなと思いました。

そこにはコミュニケーションと

誘導が必要です。

 トレーニングもリハビリも、

一方的に受け入れると「飽き」

がくるのだそう。飽きないため

には、なぜその筋肉が必要か、

では欠かせない事柄ですが、一

方で大きな課題にもなっていま

す。そこには若い人だけではな

く、本来現場を引っ張っていく

はずの上の立場の人間が、マニュ

アル化され過ぎているために具

体的な実践につながっていない

実状があるのかもしれません。

 かねてより日本人は働き過ぎ

と言われており、「働き方改革」

も叫ばれています。そこで疑問

なのは、単に就業時間を短くし

たり、有給消化率を上げたりす

なぜそのリハビリなのか理論的

な裏付けが大切だと清水さんは

続けます。

清水

:例えば先ほどのラダート

レーニングでいえば、「歩行は

足が上がらなければ、転倒して

骨折してしまう」、だからラダ

ーも「ちゃんと足を上げてやり

ましょう」といった危機感を与

えることも大事です。こうした

コミュニケーションの大切さ

を、若いスタッフはまだまだ勉

強する必要があるのを感じてい

ます。

会社全体の方向性としては、デ

イサービスはほぼリハビリ特化

型です。私は幼い頃からぜんそ

く持ちで、それに加えて椎間板

ヘルニアやすべり症といった症

状もあります。そうした中で、

自分がリハビリしてきた経験を

デイサービスに取り入れよう

と、病気、スポーツ、ケアをミ

ックスさせてリハビリを提供す

る環境作りを進めています。

 お二人の話に共通するのは

「しっかり向き合っていく姿

勢」と、その潤滑油となるコ

ミュニケーションが大事という

こと。まさしく医療福祉の分野

知られていませんよね。キャラ

クターとしては腹黒で売ってい

ますが、ほんとは良い人なんで

すよ(笑)。

下元

長年継続されていること

には頭が下がります。会場中が

良い人だとイメージしているん

じゃないでしょうか(笑)。

 弘前大学での博士号取得を目

指すなど、介護事業に対する思

いが伝わってくる清水さん。リ

ハビリに特化した事業につい

て、ここで改めて伺ってみまし

た。

清水

自分も良い人自慢ではな

いですが、実は介護施設の運営

だけではなく法務省からの依頼

で刑務所に慰問に行かせていた

だいています。刑務所の中は当

然外界のような自由はないの

で、人同士が話さなくなる、コ

ミュニケーション取らなくなる

ことで、どんどん認知症が進ん

でいく現状があります。刑務所

の中も高齢化しているんです。

施設の運営では、私は短時間の

より良い睡眠という視点で、

自分に合った道具選びを

ることが主眼で、本当に心身が

リフレッシュできるのかという

こと。お二人からは、本日登壇

のご縁のきっかけとなったマッ

トレスとのお付き合いや、睡眠

と体の関係などのお話も伺いま

した。

円楽

働き方よりも、休み方改

革ですよね。リフレッシュのた

めに適度な睡眠が必要で、寝過

ぎはダメですがレムとノンレム

の睡眠を見極めて、自律神経を

コントロールできるような知識

と方法、これを編み出さないと

休めませんよ。

私はタイカさんとお付き合いが

始まった頃に、アルファプラの

マットレスをいただきました。

これがまた、卵を落としても割

れない柔軟性や、包み込む性能

があって、すばらしい寝心地な

んです。もうひとつの使い方と

しては、お客さんが来た時に敷

いてあげています。夏はそれに

タオルケット1枚とシーツがあ

れば充分。ありがたいことに枕

までついてきて、ちょっと肩を

包み込むような形になっていて

抱いて眠るんです。これまでの

枕は高さや固さを気にしていま

したけど、寝相が悪い人にはこ

ういう形もいいなと。いろいろ

と重宝しています。落語家は枕

を大事にしますからね(笑)。

アスリートの方は寝ることに対

する意識がすごく高いですよ

ね。

清水

そうですね、寝ることが

回復、ガソリン補給につながる

ので大事です。

私は2010年に現役引退しま

したが、2006年のトリノオ

リンピックではタイカさんのマ

ットレスを送っていただきまし

た。最近ではスポーツ選手が寝

具の宣伝をすることは珍しくあ

りませんが、実はその先駆けが

タイカさんだと思います。日本

で最初にスポーツ選手用のマッ

トレスを開発してくださって、

いち早く取り入れさせてもらっ

た経緯があります。もちろん現

在も、自宅で使用させてもらっ

ていますよ。

下元

介護医療の分野でも睡眠

は大事な要素です。ところが、

「寝ること」に関してはまだ褥

瘡、床ずれを予防する視点しか

ないような気もしています。寝

るという状況の中には安定感、

適度な沈み込みなどいろいろな

タイカのマットレスが縁となり登壇いただいたお三方。トークショーは常になごやかなムードで進んだ

アスリートの経験値を元にマルチな活動を展開する清水宏保氏

円楽氏は「中央福祉医療専門学校」でも、常に言葉とコミュニケーションの大切さを語っている

 円楽さんは、防災の心得の大

前提には、地球環境に対する敬

意が必要だと続けます。

円楽

先日の環境サミットで

も、16歳の女の子が「負の遺産

を残すのか」と本当にいいこと

を言っていました。人間は産業

革命以来、自分が住んでいる地

球を我がモノにしています。と

ころが、地球は大先輩で人間

は”

住まわせていただいてい

る”

意識がなければいけませ

ん。日本は自然災害の多い国で

すが、それに加えて世界で唯一

の被爆国です。こうした特異な

ポジションを活かして、原子

力、エネルギー政策の見直し、

地球温暖化など、世界の旗振り

役ができるような国になって欲

しいですね。

下元

環境や災害は全てつなが

っていますよね。HCRの会場

にも各国からの来場者がいます

が、日本がすべきことは「モ

ノ」を紹介するだけではなく、

「ソフト」の部分をきちんと伝

えていくことだと思います。

 最後に清水さんからも、防災意識

について語っていただきました。

下元

今日会場にいらっしゃる

のは医療福祉関係者が多いと思

いますが、私も進行よりも聞く

側、学ぶ側におりました。たく

さんの意義あるお話が聞けたと

思います。みなさんまた明日か

らも、この対談をヒントに頑張

っていきましょう。

 さすが講演経験豊富なお二

人のトークは、笑いと含蓄に富

むものでした。タイカも「介護、

睡眠、防災」と今日のお話を糧

に、現場の方々と二人三脚でよ

り一層喜ばれる情報発信や製

品づくりに励んでいきたいと

感じました。

清水

実は2018年の9月に

北海道でも大きな地震があり、

北海道中が3日間くらい停電に

なって本当にたいへんでした。

北海道民は地震が来ないと過信

していたんですね。地盤がしっ

かりしているので、防災意識が

低かったんです。事実、自分の

家にも懐中電灯などの防災グッ

ズはありませんでした。でも、

この地震を契機に災害、防災に

対する意識が高まり、グッズを

備えることから始まって、なに

があっても最低限の物は置いて

おくことを考えるようになりま

した。

特に施設は去年の11月にオープ

ンしました。地震が9月だった

ため、まだ不幸中の幸いでした

が、これがもし自分たちの施設

が満床の状態で起きたらどう対

応すべきか、という課題も得る

ことができました。当事者にな

った時の意識改革ができた意味

では、いい経験だったと思って

います。『でるキャップ』も普

段は変哲もないものなんです

が、なにかあった時には迅速に

頭にかぶれるものなので、この

グッズをきっかけにまた防災意

識をみなさんにも高めて欲しい

です。

下元

そうですね。円楽さんが

お話しくださったように役割が

あって楽しめることが、一番の

元気の素ですね。

円楽

私は酒ですよ。医者に

「よかったですね、肺がんは酒

が飲めるので退院したら祝杯を

あげてください」と言われまし

た。「ありがとうございます」と。

 台風や地震など、日本は絶え

ず自然災害にさらされていま

す。タイカではこうした状況に

対応し、防災の情報共有やグッ

要素が関係してくるため、褥瘡

予防だけではなく、もっと良い

睡眠を実現するためにひとりひ

とりに合ったマットレスを選ん

でいただきたいと思います。

円楽

睡眠も大切ですが、以前

に清水さんと対談させてもらっ

た時に、リハビリ特化型の施設

を運営されているとのことで、

スポーツ選手の経験を活かす以

外にもいろいろできそうだねと

話をしました。

清水

話題に挙がったのが、

「好きなことでリハビリしよ

う」という話でしたね。

円楽

例えば、誰しも若い頃に

やりたかったことがあるはずで

す。本当は絵が描きたかった、

本が書きたかった、そういう人

には時間を与えて、筆や絵の具

を持たせればイキイキするんじ

ゃないかと。それぞれの施設の

中でもマニュアル一辺倒じゃな

く、個性を活かして好きなこと

をやらせてみたらと。

ズ開発などを進めています。お

二人は「防災」に関してどのよ

うな取り組みを行われているの

でしょうか。

下元

私が住んでいる高知県

は、南海大地震がいつ来てもお

かしくないと言われています。

カップラーメンができる3分以

内に、30m以上の津波が来るよ

うな危険地域が何ヵ所も存在し

ています。円楽さんは防災の日

に静岡に行かれたそうですが、

どのようなことをされたんで

すか。

円楽

9月1日は関東大震災が

あった日でもあります。タイカ

さんのサポートで、短い時間で

すが静岡のテレビ局で、防災の

心得と『でるキャップ』のご紹

介をさせていただきました。こ

のキャップは本当に軽量でパッ

とかぶれるし、すごいものを発

明したなと思っています。これ

までも自転車に乗ってヘルメッ

トをかぶって登下校したり、学

校のイスに敷いていた座布団が

防災頭巾になったりしていまし

たが、このグッズはそれ以上に

手軽です。事務所の本棚に置い

ておいてもすぐに使用できます。

4 3

Page 4: 緊急時に担架代わりになる - Taica · 避難所に来られた 要配慮者には、 少しでもリラックスできる 環境を提供したい 避難中に 体調を崩された方を

基準とするところの「高齢化」

でどんどん高齢者が増える中

で、“

長寿で健康な高齢者を目

指す”

ことそのものだと思いま

す。医療・福祉に関わる私たち

は、長寿の意味をいつも考えて

いるようで、実は最もマニュア

ル的にしか考えていないのでは

と思うこともあります。人それ

ぞれの役割や居場所の大切さ

は、本当に痛感しますね。

 リハビリに特化したデイサー

ビスを展開している清水さんに

も、近況を伺いました。

清水

テレビ等でも取りあげて

いただきましたが、デイサービ

スを開設し、スポーツジムを二

店舗運営して、そこに理学療法

士を配置しています。病院での

リハビリの在日数は180日が

ち、やることがあること」だそ

うです。それを読んだ時に「あ

ぁ、本当によかったな」と、私

は来年の2月で古希(70歳)で

す。かつての同級生が現役引退

してヒマを持て余す中、こちら

は定年もなく落語ができて、お

客さまに楽しんでもらえていま

す。病気して、終わりが来れば

それは寿命です。寿命には

「寿」がついているので、これ

は受け入れましょう。

その反面、自分の身体だから自

分でメンテナンスもしていま

す。さっきも清水さんに控え室

でスクワットを教わりました。

とにかくこうして皆さんと話せ

る場所がいろいろとあることが

嬉しい限りで、生かされている

と感じています。

下元

円楽さんのお話は、国が

の進歩です。私は父親が58歳で

肺がん、兄貴がおととし68歳で

膵臓ガンで亡くなっています。

「二人に一人がガンになる時

代」と分かっていながら、自分

のところに来るとは思ってな

かったんですね。

しかし、実際に病気になってみ

ると、運命なんだからと受け入

れました。そして、完治したあ

とは、しゃべることができる、

そして落語ができる場所が残っ

ていることの幸せを噛みしめて

います。

 円楽さんは闘病経験を経て、

いわゆる「長寿」というものを

調べてみたそうです。

円楽

長寿の条件とは、「何歳

になっても自分の居場所があっ

て、その場所が社会と接点を持

 理学療法士を本業として介

護、医療に関わる下元さんの進

行でトークショーはスタート。

さっそくお二人から近況をお聞

きしたいところですが、まずは

最近まで体調を崩されていた円

楽さんのご様子を伺います。

下元

会場のみなさんは、おそ

らく円楽さんの体調のことを気

にされていると思いますが、お

加減はいかがですか。

円楽

体調?よくないですよ

(笑)。

一年に二度の大病には、自分で

も驚きました。去年と今年は本

当に厄なんじゃないかと、ひし

ひし感じました。ですが、あり

がたかったのは早期発見と医学

限度のため、それ以降のリハビ

リ対応のためのジムです。デイ

サービス以外には、「サービス

付き高齢者向け住宅」という52

床の住宅をつくって、そこに

デイサービスを併設し、医療

とスポーツをミックスさせた

介護事業、健康産業を運営し

ています。2019年の10月

には、札幌から1時間ほどの

場所でデイサービスのコンサ

ルティング事業も始める予定

です。加えて、個人的には弘

前大学大学院に通いながら、

博士号取得を目指して、高齢

者の運動に対する免疫力向上

の研究に取り組んでいます。

 アスリートだからこそ持ち

うる視点で、介護、健康、研究か

らコンサルティングまで、清水

さんは縦横無尽に活躍されて

います。

 ここからは本日のテーマでも

ある「言葉とスポーツの世界か

ら介護へ」の部分で、まず円楽

さんに中央福祉医療専門学校の

客員教授として、介護現場に臨

む学生たちにどんなエールを

送っているのかを伺います。

円楽

これから現場に出る若い

子たちに「人嫌いにならない方

法」を教えています。年寄りに

は、若い頃の経験を鼻にかける

人もいれば、やさしい方もい

て、おのおので個性が違いま

す。学校ではマニュアルの中か

ら技術を教わるかもしれませ

ん。しかし、その技術から独自

のもうひとつのマニュアルをつ

くるのが自分です。人間には知

恵があって、こういう場合はこ

ういう風に接しよう、相手が怒

ったらどうして受け流そうか、

考えることができます。そのた

めには、時にはっきりした物言

いも大切です。それで怒られた

ら、「だってそちらが怒ったか

ら私も怒った」、「売り言葉に

買い言葉だよ、笑ったら笑うか

ら」と言いましょう。

 人間は言葉を持っているので

吠え合ってはいけない。そし

て、ひとつの方法論や印象だけ

で決めつけてしまわないこと

が、人嫌いにならない方法だと

円楽さん。

円楽

そしてもうひとつ考えな

ければならないのは、“

そちら

側”

に行っていない幸せです。

つまり、介護する幸せを感じな

さいと。落語の寄席の楽屋は、

大正生まれの95歳の師匠から、

入りたての16歳の子まで三世代

が同居しています。そこで、年

長者が口うるさく礼儀作法や技

術を教えてくれる。各種専門の

学校は、ライセンスを与えるた

めの勉強はするものの、人間学

のようなものは足りないかもし

れません。ですからその分、自

分が見てきた人や姿勢を紹介し

ながら、いずれは“

そちら側”

に行く可能性を感じながら、今

介護できる自分を幸せだと思い

なさい、と話をさせてもらって

います。

そして、日本語を駆使してコミ

ュニケーションをとる。自分が

笑顔でよい言葉がたくさん出て

いる間は、自分の精神状態は大

丈夫です。人同士をつなぐもの

が笑顔と言葉だとするなら、笑

顔が消えてきたら人嫌いになっ

ている、言葉が減ってきたら人

との関係を断ち切りたいと思っ

ている、そう思って間違いあり

ません。今日のテーマともつな

がりますが、ストレスチェッカ

ーとして「笑顔と言葉」を覚え

ておいてねというのが、いつも

の授業の締めになっています。

下元

医療福祉業界の中でも、

課題の根底には常にコミュニケ

ーションがあるような気がしま

す。円楽さんの話を聞くと、双

方向の会話が大事であること、

経験を積みながら自分のマニュ

アルをつくることなど、具体的

な手法できちんと人を育てる過

程が欠けているなと感じまし

た。

円楽

25年間、福祉関係の仕事

を手伝っていることは、あまり

ものと、一日型のデイサービス

を運営しています。定期的に訪

問していますが、特に一日型の

方は、夕方の時間帯はスタッフ

も仕事をこなしている状況にな

りがちです。例えば歩行器の横

でラダートレーニングをします

が、メニューを与えたら「黙っ

て見ているだけ」になってしま

う。その状況を見た時に、これ

ではいけないなと思いました。

そこにはコミュニケーションと

誘導が必要です。

 トレーニングもリハビリも、

一方的に受け入れると「飽き」

がくるのだそう。飽きないため

には、なぜその筋肉が必要か、

では欠かせない事柄ですが、一

方で大きな課題にもなっていま

す。そこには若い人だけではな

く、本来現場を引っ張っていく

はずの上の立場の人間が、マニュ

アル化され過ぎているために具

体的な実践につながっていない

実状があるのかもしれません。

 かねてより日本人は働き過ぎ

と言われており、「働き方改革」

も叫ばれています。そこで疑問

なのは、単に就業時間を短くし

たり、有給消化率を上げたりす

なぜそのリハビリなのか理論的

な裏付けが大切だと清水さんは

続けます。

清水

例えば先ほどのラダート

レーニングでいえば、「歩行は

足が上がらなければ、転倒して

骨折してしまう」、だからラダ

ーも「ちゃんと足を上げてやり

ましょう」といった危機感を与

えることも大事です。こうした

コミュニケーションの大切さ

を、若いスタッフはまだまだ勉

強する必要があるのを感じてい

ます。

会社全体の方向性としては、デ

イサービスはほぼリハビリ特化

型です。私は幼い頃からぜんそ

く持ちで、それに加えて椎間板

ヘルニアやすべり症といった症

状もあります。そうした中で、

自分がリハビリしてきた経験を

デイサービスに取り入れよう

と、病気、スポーツ、ケアをミ

ックスさせてリハビリを提供す

る環境作りを進めています。

 お二人の話に共通するのは

「しっかり向き合っていく姿

勢」と、その潤滑油となるコ

ミュニケーションが大事という

こと。まさしく医療福祉の分野

知られていませんよね。キャラ

クターとしては腹黒で売ってい

ますが、ほんとは良い人なんで

すよ(笑)。

下元

長年継続されていること

には頭が下がります。会場中が

良い人だとイメージしているん

じゃないでしょうか(笑)。

 弘前大学での博士号取得を目

指すなど、介護事業に対する思

いが伝わってくる清水さん。リ

ハビリに特化した事業につい

て、ここで改めて伺ってみまし

た。

清水

自分も良い人自慢ではな

いですが、実は介護施設の運営

だけではなく法務省からの依頼

で刑務所に慰問に行かせていた

だいています。刑務所の中は当

然外界のような自由はないの

で、人同士が話さなくなる、コ

ミュニケーション取らなくなる

ことで、どんどん認知症が進ん

でいく現状があります。刑務所

の中も高齢化しているんです。

施設の運営では、私は短時間の

ることが主眼で、本当に心身が

リフレッシュできるのかという

こと。お二人からは、本日登壇

のご縁のきっかけとなったマッ

トレスとのお付き合いや、睡眠

と体の関係などのお話も伺いま

した。

円楽

働き方よりも、休み方改

革ですよね。リフレッシュのた

めに適度な睡眠が必要で、寝過

ぎはダメですがレムとノンレム

の睡眠を見極めて、自律神経を

コントロールできるような知識

と方法、これを編み出さないと

休めませんよ。

私はタイカさんとお付き合いが

始まった頃に、アルファプラの

マットレスをいただきました。

これがまた、卵を落としても割

れない柔軟性や、包み込む性能

があって、すばらしい寝心地な

んです。もうひとつの使い方と

しては、お客さんが来た時に敷

いてあげています。夏はそれに

タオルケット1枚とシーツがあ

れば充分。ありがたいことに枕

までついてきて、ちょっと肩を

包み込むような形になっていて

抱いて眠るんです。これまでの

枕は高さや固さを気にしていま

したけど、寝相が悪い人にはこ

ういう形もいいなと。いろいろ

と重宝しています。落語家は枕

を大事にしますからね(笑)。

アスリートの方は寝ることに対

する意識がすごく高いですよ

ね。

清水

そうですね、寝ることが

回復、ガソリン補給につながる

ので大事です。

私は2010年に現役引退しま

したが、2006年のトリノオ

リンピックではタイカさんのマ

ットレスを送っていただきまし

た。最近ではスポーツ選手が寝

具の宣伝をすることは珍しくあ

りませんが、実はその先駆けが

タイカさんだと思います。日本

で最初にスポーツ選手用のマッ

トレスを開発してくださって、

いち早く取り入れさせてもらっ

た経緯があります。もちろん現

在も、自宅で使用させてもらっ

ていますよ。

下元

介護医療の分野でも睡眠

は大事な要素です。ところが、

「寝ること」に関してはまだ褥

瘡、床ずれを予防する視点しか

ないような気もしています。寝

るという状況の中には安定感、

適度な沈み込みなどいろいろな

医療福祉関係者を中心に会場は大盛況となった 円楽氏の切れ味鋭いトークに清水氏もタジタジに…会場は笑いの渦に包まれた

 円楽さんは、防災の心得の大

前提には、地球環境に対する敬

意が必要だと続けます。

円楽

先日の環境サミットで

も、16歳の女の子が「負の遺産

を残すのか」と本当にいいこと

を言っていました。人間は産業

革命以来、自分が住んでいる地

球を我がモノにしています。と

ころが、地球は大先輩で人間

は”

住まわせていただいてい

る”

意識がなければいけませ

ん。日本は自然災害の多い国で

すが、それに加えて世界で唯一

の被爆国です。こうした特異な

ポジションを活かして、原子

力、エネルギー政策の見直し、

地球温暖化など、世界の旗振り

役ができるような国になって欲

しいですね。

下元

環境や災害は全てつなが

っていますよね。HCRの会場

にも各国からの来場者がいます

が、日本がすべきことは「モ

ノ」を紹介するだけではなく、

「ソフト」の部分をきちんと伝

えていくことだと思います。

 最後に清水さんからも、防災意識

について語っていただきました。

下元

今日会場にいらっしゃる

のは医療福祉関係者が多いと思

いますが、私も進行よりも聞く

側、学ぶ側におりました。たく

さんの意義あるお話が聞けたと

思います。みなさんまた明日か

らも、この対談をヒントに頑張

っていきましょう。

 さすが講演経験豊富なお二

人のトークは、笑いと含蓄に富

むものでした。タイカも「介護、

睡眠、防災」と今日のお話を糧

に、現場の方々と二人三脚でよ

り一層喜ばれる情報発信や製

品づくりに励んでいきたいと

感じました。

清水

実は2018年の9月に

北海道でも大きな地震があり、

北海道中が3日間くらい停電に

なって本当にたいへんでした。

北海道民は地震が来ないと過信

していたんですね。地盤がしっ

かりしているので、防災意識が

低かったんです。事実、自分の

家にも懐中電灯などの防災グッ

ズはありませんでした。でも、

この地震を契機に災害、防災に

対する意識が高まり、グッズを

備えることから始まって、なに

があっても最低限の物は置いて

おくことを考えるようになりま

した。

特に施設は去年の11月にオープ

ンしました。地震が9月だった

ため、まだ不幸中の幸いでした

が、これがもし自分たちの施設

が満床の状態で起きたらどう対

応すべきか、という課題も得る

ことができました。当事者にな

った時の意識改革ができた意味

では、いい経験だったと思って

います。『でるキャップ』も普

段は変哲もないものなんです

が、なにかあった時には迅速に

頭にかぶれるものなので、この

グッズをきっかけにまた防災意

識をみなさんにも高めて欲しい

です。

下元

そうですね。円楽さんが

お話しくださったように役割が

あって楽しめることが、一番の

元気の素ですね。

円楽

私は酒ですよ。医者に

「よかったですね、肺がんは酒

が飲めるので退院したら祝杯を

あげてください」と言われまし

た。「ありがとうございます」と。

 台風や地震など、日本は絶え

ず自然災害にさらされていま

す。タイカではこうした状況に

対応し、防災の情報共有やグッ

要素が関係してくるため、褥瘡

予防だけではなく、もっと良い

睡眠を実現するためにひとりひ

とりに合ったマットレスを選ん

でいただきたいと思います。

円楽

睡眠も大切ですが、以前

に清水さんと対談させてもらっ

た時に、リハビリ特化型の施設

を運営されているとのことで、

スポーツ選手の経験を活かす以

外にもいろいろできそうだねと

話をしました。

清水

話題に挙がったのが、

「好きなことでリハビリしよ

う」という話でしたね。

円楽

例えば、誰しも若い頃に

やりたかったことがあるはずで

す。本当は絵が描きたかった、

本が書きたかった、そういう人

には時間を与えて、筆や絵の具

を持たせればイキイキするんじ

ゃないかと。それぞれの施設の

中でもマニュアル一辺倒じゃな

く、個性を活かして好きなこと

をやらせてみたらと。

ズ開発などを進めています。お

二人は「防災」に関してどのよ

うな取り組みを行われているの

でしょうか。

下元

私が住んでいる高知県

は、南海大地震がいつ来てもお

かしくないと言われています。

カップラーメンができる3分以

内に、30m以上の津波が来るよ

うな危険地域が何ヵ所も存在し

ています。円楽さんは防災の日

に静岡に行かれたそうですが、

どのようなことをされたんで

すか。

円楽

9月1日は関東大震災が

あった日でもあります。タイカ

さんのサポートで、短い時間で

すが静岡のテレビ局で、防災の

心得と『でるキャップ』のご紹

介をさせていただきました。こ

のキャップは本当に軽量でパッ

とかぶれるし、すごいものを発

明したなと思っています。これ

までも自転車に乗ってヘルメッ

トをかぶって登下校したり、学

校のイスに敷いていた座布団が

防災頭巾になったりしていまし

たが、このグッズはそれ以上に

手軽です。事務所の本棚に置い

ておいてもすぐに使用できます。

好きこそものの上手なれ!?

上手な個性の活かし方

災害大国の持つ役割。「モノ」から

「ソフト」へと世界を牽引したい

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