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欧米における 3D プリンティング最新動向のご紹介 日本3Dプリンティング産業技術協会 大庭 秀章 ラピッドプロトタイピング、ラピッドツーリングへの活用で発展してきた3D プリンティング(以後 AM Additive Manufacturing と略す)であるが、最近 AM でしか作れない形状の部品を活用して、製品の競争力を高める動きがあ る。さらに AM で実製品に使用される部品(特に金属)を製造するための、自動化、品質を維持するためのシミュレ ーションやプロセス監視、より安価・効率的なシステム開発のために ASTM が定義した 7 つの方式(下段に簡易に 解説)にとらわれない新しいアイデアが次々に生み出されている。また樹脂についても、エンジニアリングプラスチ ックの活用や、複合材料化など、実用化に向けた動きが進んでいる。この動きは、特に欧米で加速しており、現地で の展示会での製品発表や技術発表は、今後の動向を知る上での重要な意味を持つ。 今回の報告では、 16 年末から 17 年にかけて欧米で開催された展示会(formnext 2016rapid+tct 2017)での実例 を交えて、動向を紹介する。 【金属造形】 主流である粉末積層造形(SLM 方式)は、マルチビーム化による高速化、造形プロセスのモニタリングによる品 質確保、粉末回収・再利用、造形物取出しの自動化といった高機能化に向かう一方、 MIM (金属粉末射出成型)用の 材料や金属含有のフィラメントを FDM 方式で積層造形し焼結、金属パウダーを BJ 方式で固めて焼結するなど、簡 易的に金属造形物を得ることで、高速化、大幅な低価格化を実現する方式が発表され、こちらも一つの流れとなって いる。更に Direct Energy Deposition 方式も、大型部品の造形、補修などへ活用されつつある。また、溶融した金属 をインクジェット方式で吐出して直接金属造形物を得る方式の開発も進んでいる。 【樹脂造形】 粉末積層造形(SLS 方式)は、従来の PA12 から PA11, PP などへ使用材料が広がっている。更にシンタリングウ ィンドウを使わない溶融方式で、エンジニアリングプラスチック造形を行う研究も行われている。また、BJ と熱焼 結を組み合わせ、高速造形を可能とした装置も注目されている。 FDM 方式では、樹脂吐出時に炭素繊維などを練りこみながら造形し強度を飛躍的に高める工夫をした装置や、ヘ ッドの温度を高め、 PEEK などのエンジニアリングプラスチックを直接造形する装置などが登場し、従来の試作品の 域を超える造形が可能となってきている。また、連続的に造形を可能とした装置も発表されている。 Vat Photopolymerization Material Jetting など、紫外線硬化型樹脂を用いた方式】 CLIP と呼ばれる材料中の酸素濃度勾配を利用した高速造形が注目されており、スポーツシューズメーカーと組ん でソールのマスカスタマイゼーションへ応用が期待されている。また、セラミック材料を紫外線硬化樹脂と組み合わ せて造形する新しい方式も提案されている。 Sheet Laminationカーボンファイバーやグラスファイバーと樹脂を組み合わせて積層する装置が登場し、軽量かつ十分な強度をもつ 造形物が容易に得られる可能性が出てきている。 【安定した造形を実現するために】 粉末積層造形方式(SLS, SLM)では、材料の準備から回収までを自動化したシステムがコンセプトレベルで提案 されている。これにより、Little Dirty Secret と呼ばれる、粉体処理に対する作業員の負荷が大幅に軽減されるであ ろう。また、造形物品質を安定化するため、出来上がった造形物の密度測定や、CT スキャンによる欠陥チェックと いった計測・可視化技術に加え、造形前のシミュレーション(造形物の歪、熱変形など)にて造形プロセスを最適化 し、さらに、造形中の熱分布、レーザー強度のモニタリング等で、造形プロセスの異常を検知する仕組みも導入が始 まっている。 【参考】ASTM による 7 つの AM 方式 (いずれも、固化するプロセスを繰り返して立体を造形する) Power Bed Fusion 樹脂や金属の粉末の薄い層にレーザーなどを照射し、固化積層。通称 SLS, SLM 方式 Material Extrusion 熱可塑性樹脂をノズルから溶融して押し出して積層。通称 FDM 方式 Vat Photopolymerization 紫外線硬化樹脂の槽にレーザーを照射し、照射部を固化。通称 SLA 方式 Material Jetting 紫外線硬化樹脂やワックスなどをインクジェットヘッドから吐出して紫外線などで固化積層 Binder Jetting 樹脂や金属、砂の粉末の薄い層に、結着剤を吐出して、固化積層 Sheet Lamination シート状の素材の外形を、造形物の形に切り取りながら積層 Direct Energy Deposition 積層部に金属粉末を吹き付けながら、レーザーなどで溶融固着 3AM-E01 平成29年度 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿 1

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欧米における3D プリンティング最新動向のご紹介

日本3Dプリンティング産業技術協会 大庭 秀章

ラピッドプロトタイピング、ラピッドツーリングへの活用で発展してきた3Dプリンティング(以後AM:Additive Manufacturingと略す)であるが、最近AMでしか作れない形状の部品を活用して、製品の競争力を高める動きがあ

る。さらにAMで実製品に使用される部品(特に金属)を製造するための、自動化、品質を維持するためのシミュレ

ーションやプロセス監視、より安価・効率的なシステム開発のために ASTM が定義した 7 つの方式(下段に簡易に

解説)にとらわれない新しいアイデアが次々に生み出されている。また樹脂についても、エンジニアリングプラスチ

ックの活用や、複合材料化など、実用化に向けた動きが進んでいる。この動きは、特に欧米で加速しており、現地で

の展示会での製品発表や技術発表は、今後の動向を知る上での重要な意味を持つ。

今回の報告では、16年末から 17年にかけて欧米で開催された展示会(formnext 2016、rapid+tct 2017)での実例

を交えて、動向を紹介する。

【金属造形】

主流である粉末積層造形(SLM 方式)は、マルチビーム化による高速化、造形プロセスのモニタリングによる品

質確保、粉末回収・再利用、造形物取出しの自動化といった高機能化に向かう一方、MIM(金属粉末射出成型)用の

材料や金属含有のフィラメントを FDM 方式で積層造形し焼結、金属パウダーを BJ 方式で固めて焼結するなど、簡

易的に金属造形物を得ることで、高速化、大幅な低価格化を実現する方式が発表され、こちらも一つの流れとなって

いる。更にDirect Energy Deposition方式も、大型部品の造形、補修などへ活用されつつある。また、溶融した金属

をインクジェット方式で吐出して直接金属造形物を得る方式の開発も進んでいる。

【樹脂造形】

粉末積層造形(SLS方式)は、従来のPA12からPA11, PPなどへ使用材料が広がっている。更にシンタリングウ

ィンドウを使わない溶融方式で、エンジニアリングプラスチック造形を行う研究も行われている。また、BJ と熱焼

結を組み合わせ、高速造形を可能とした装置も注目されている。

FDM 方式では、樹脂吐出時に炭素繊維などを練りこみながら造形し強度を飛躍的に高める工夫をした装置や、ヘ

ッドの温度を高め、PEEKなどのエンジニアリングプラスチックを直接造形する装置などが登場し、従来の試作品の

域を超える造形が可能となってきている。また、連続的に造形を可能とした装置も発表されている。

【Vat PhotopolymerizationやMaterial Jettingなど、紫外線硬化型樹脂を用いた方式】

CLIP と呼ばれる材料中の酸素濃度勾配を利用した高速造形が注目されており、スポーツシューズメーカーと組ん

でソールのマスカスタマイゼーションへ応用が期待されている。また、セラミック材料を紫外線硬化樹脂と組み合わ

せて造形する新しい方式も提案されている。

【Sheet Lamination】

カーボンファイバーやグラスファイバーと樹脂を組み合わせて積層する装置が登場し、軽量かつ十分な強度をもつ

造形物が容易に得られる可能性が出てきている。

【安定した造形を実現するために】

粉末積層造形方式(SLS, SLM)では、材料の準備から回収までを自動化したシステムがコンセプトレベルで提案

されている。これにより、Little Dirty Secretと呼ばれる、粉体処理に対する作業員の負荷が大幅に軽減されるであ

ろう。また、造形物品質を安定化するため、出来上がった造形物の密度測定や、CT スキャンによる欠陥チェックと

いった計測・可視化技術に加え、造形前のシミュレーション(造形物の歪、熱変形など)にて造形プロセスを最適化

し、さらに、造形中の熱分布、レーザー強度のモニタリング等で、造形プロセスの異常を検知する仕組みも導入が始

まっている。

【参考】ASTMによる7つのAM方式 (いずれも、固化するプロセスを繰り返して立体を造形する)

・Power Bed Fusion 樹脂や金属の粉末の薄い層にレーザーなどを照射し、固化積層。通称SLS, SLM方式

・Material Extrusion 熱可塑性樹脂をノズルから溶融して押し出して積層。通称FDM方式

・Vat Photopolymerization 紫外線硬化樹脂の槽にレーザーを照射し、照射部を固化。通称SLA方式

・Material Jetting 紫外線硬化樹脂やワックスなどをインクジェットヘッドから吐出して紫外線などで固化積層

・Binder Jetting 樹脂や金属、砂の粉末の薄い層に、結着剤を吐出して、固化積層

・Sheet Lamination シート状の素材の外形を、造形物の形に切り取りながら積層

・Direct Energy Deposition 積層部に金属粉末を吹き付けながら、レーザーなどで溶融固着

3AM-E01 平成29年度 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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新たな車椅子強度基準の検討

埼玉県産業技術総合センター 技術支援室 ○香西 良彦、佐藤 宏惟、半田 隆志

埼玉県産業技術総合センター 事業化支援室 増渕 維摩

1.はじめに

車椅子の強度はJIS等により規定され使用者の安全が

図られており、キャスタアップ(介助者が車椅子の前輪

を持ち上げて、段差を乗り越える動作)時の負荷を想定

した耐久試験であるキャスタアップ繰返し試験が記載さ

れている。しかし、これらの規格を満たした車椅子にお

いても、キャスタアップ動作時に車椅子の背もたれが破

損する事故が臨床現場から報告されている。現在、「JIS

T 9201:2016 手動車いす」に、キャスタアップ時の負荷

を想定した耐久試験であるキャスタアップ繰返し試験が

記載されている。ここでキャスタアップする方法として、

手押しハンドルを水平に引くよう規定されているが、実

際には車椅子の手押しハンドルに体重をかけて押すなど

異なる方法でキャスタアップする者も多いという報告も

ある。そこで本研究では、キャスタアップの方法として、

手押しハンドルを水平方向に引く方法だけでなく、45°

方向に引く、下方に押すという方法も想定し、キャスタ

アップ繰返し試験の試験方法に関して、より実用性の高

い試験方法の提案を行うことを目的とした。

2.試験方法

ISO用ダミー(75.4kg)を乗せた車椅子にひずみゲー

ジを貼付し(図 1)、キャスタアップを行い、ひずみ量

(μST)を計測した。

1ch

2ch

5ch 6ch

ティッピングレバー

3ch

4ch7ch

8ch

ティッピングレバー

図 1 ひずみゲージ貼付位置

キャスタアップはティッピングレバー(介助者が足で

踏んで前輪を持ち上げるためのもの、位置は図 1参照)

を足で押さえた状態で、手押しハンドルを水平方向に引

く、45°方向に引く、ティッピングレバーには触れずに

手押しハンドルに体重をかけて下方に押す、という 3種

類の方法で行った。キャスタアップはそれぞれの方法に

おいて 3回繰り返した。ひずみゲージの出力は計測ユニ

ットを用いて1秒間あたりにつき100回コンピュータに

保存し、解析を行った。また、ビデオカメラにて試験経

過を撮影した。

3.結果

条件ごとのひずみ量は図2~4の通りであった。

-1250

-750

-250

250

750

1250

0 5 10 15 20

1ch 2ch 3ch 4ch

5ch 6ch 7ch 8ch

[s]

[μST]

図 2 水平方向に引いた時のひずみ量

図 3 45°方向に引いた時のひずみ量

-1250

-750

-250

250

750

1250

0 5 10 15 20

1ch 2ch 3ch 4ch

5ch 6ch 7ch 8ch

[s]

[μST]

図 4 下方に押した時のひずみ量

最大のひずみ量は真下に押した時の6chの1171.9μST

であった。この結果より、水平に引く方法よりも体重を

かけて下方に押す方法の方が車椅子への負荷が大きかっ

た。

4.おわりに

今回の結果により、現在JISが規定しているキャスタ

アップ方法は手押しハンドルを水平に引く方法のみであ

るが、下方に押す方法も追加する必要があると考える。

-1250

-750

-250

250

750

1250

0 5 10 15 20

1ch 2ch 3ch 4ch

5ch 6ch 7ch 8ch

[s]

[μST]

3AM-E02 平成29年度 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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積層造形物の表面処理による高付加価値化

埼玉県産業技術総合センター ○佐藤 宏惟、出口 貴久、南部 洋平、落合 一裕

町田 芳明、常木 裕己

1 はじめに

当センターで保有するインクジェット式積層造形

装置(Objet製 EDEN250)は、モデル樹脂とサポート

樹脂の2種類のアクリル系紫外線硬化樹脂を使用し

て高精細な立体モデルを造形する装置である。造形

直後の立体モデルはサポート樹脂に支えられており、

それをウォータージェット等で除去する。

積層造形装置は主に製品開発等の試作に活用され、

認知度の向上に伴い利用者が年々増加している。利

用企業からは、当センターで出力された積層造形物

(以下、「造形物」と呼ぶ。)に対して「内部を可

視化したい」、「着色がしたい」等の要望が多い。

しかし、積層造形物の表面にはサポート樹脂が残存

するため、内部を可視化したり、表面に対して着色

処理を施すことは容易ではない。

本研究では造形物の表面状態を観察・分析し、残

存サポート樹脂の除去方法を検討した。また、その

結果を元に内部可視化、着色の最適な方法について

検討した。

2 研究内容

図1に示したように 20mm角の立方体を造形した。ウォ

ータージェットによるサポート樹脂の除去後、切断した

断面を観察し、表面を赤外分光法により分析した。

続いて、サポート樹脂の除去方法について検討した。

具体的には 5%水酸化ナトリウム水溶液への浸漬時間を

検討し、サポート樹脂の残存状態への影響を調べるとと

もに、造形物の透明化による内部可視化が可能か検討し

た。造形物の透明度は、処理後の造形物を観察すること

により評価した。

また、浸漬とは別に、表面を平滑化することによる透

明化を試みた。本研究では、平面のみの機械的研磨とし、

砥粒径や研磨手順を検討した。

塗装では、一般的な樹脂の塗装に用いられているアク

リル系、ラッカー系等の塗料の濃度、塗装回数、下塗り

の有無等を比較検討した。

3 結果・考察

立方体の表面状態を図2に示した。上下面には約 10~

20μm、側面には約 150~400μmの樹脂層があった。赤外

分光法による分析により、この層はモデル樹脂とサポー

ト樹脂の複合物であることが分かった。

5%水酸化ナトリウム水溶液への各浸漬時間による表面

状態を図3に示した。9 時間以上浸漬した表面では残存

サポート樹脂はほとんど除去できていることが確認でき

た。

5%水酸化ナトリウム水溶液への浸漬により、上面は透

明となった(図4)。しかし、浸漬だけでは側面は透明に

ならなかった。さらに、機械的研磨をすることにより、

側面も透明となった(図5)。造形物に適した塗装手順で

塗装した一例を図6に示した。

その結果、以下のことが分かった。

① ウォータージェットによるサポート除去後の造形

物表面には、モデル樹脂とサポート樹脂の混在する

層があることが分かった。

② 残存サポート樹脂の除去には、5%水酸化ナトリウ

ム水溶液に 9時間浸漬することが有効であった。

③ 5%水酸化ナトリウム水溶液に 9 時間浸漬すること

で上面は透明化された。側面は機械研磨により、板

厚 50 ㎜の造形物の内部を可視化(透明化)するこ

とに成功した。また、それにより表面粗さ約

0.1μmRaの平滑面が得られた。

④ 造形物の塗装に応用できる塗装手順を得られた。ま

た、塗装手順ごとの平均塗装厚を測定したことで、

塗装後の寸法変化を予想し易くなった。

図1 造形方向

図2 造形物の表面状態

図3 浸漬時間と表面の関係

図4 浸漬結果(上面)

図5 研磨結果(側面)

図6 塗装結果

3AM-E03 平成29年度 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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産技総研の3D プリンター設備および支援紹介

(地独)神奈川県立産業技術総合研究所 事業化支援部 ○佐々 知栄子、阿部 顕一

1.はじめに

当研究所では、平成27年度より、大型のインクジェ

ット型 3Dプリンター(図 1)を導入した。企業からの

依頼を受け、依頼試験や受託研究で試作支援や製品開

発、技術開発などの支援も実施している。本稿では、

仕様や性能、利用方法および、3Dプリンターを活用し

た製品デザイン開発支援について紹介する。

図 1 3D Systems社 ProJet 5500X

2.導入機種の仕様と特徴について

3Dプリンターの主な仕様を表1に示す。本機種では、

硬度、素材が異なる 2 種類の材料を任意の配合比で混

合して造形できる。サポート材のワックスは、60℃で

溶解し、造形後の処理が容易で破損が少ないなどの特

徴がある。

表1 主な仕様

3. 3Dプリンターの造形支援の利用について

3Dプリンターの依頼試験・受託研究での試作開発の

造形支援の利用について紹介する。

3.1 料金について

依頼試験の料金は、「①前処理+②材料費+③3D プリ

ンター造形時間+④後処理」(表 2)の総計となる。造

形物の数や素材、大きさにより料金が異なる。

表 2 費用詳細

① 前処理 税込 2,916 円/時

② 材料費 ABSライク 税抜 @33 円/g

エラストマー 税抜 @40 円/g

サポート材 税抜 @19 円/g

※ 一般管理費(10%)及び、税

が加わる

③ 造形時間 税込 2,700 円/時

④ 後処理 税込 3,240 円/時

3.2 造形時間について

造形物を配置する際、造形物の向きや造形ステージ

範囲によって、造形時間が異なる。

○造形時間は、造形物の高さだけにほぼ比例する。

○造形物の複雑さは、造形時間に影響しない。

同じ大きさであれば、複雑な形状も、単純な形も

造形時間に影響しない。

○造形面積の大きさは、造形時間にほぼ影響しない。

造形の高さが同じであれば、多量の造形でも造形

スキャン範囲内に収まれば、1個でも 100個でも

造形時間にほぼ影響しないで造形できる。

○造形スキャンの2列分で造形時間は、ほぼ2倍と

なる(図2)。

図 2 造形スキャン

4. 3Dプリンターを活用したデザイン開発支援につ

いて

依頼試験だけでなく、3D プリンターを活用した製

品・デザイン開発支援も受託研究として実施している。

3Dプリンターを活用した試作検討を行うことで、設計、

試作、評価などの開発期間の短縮、効率化を図り、製

品の完成度を高めることができる。

5.まとめ

当研究所では、3Dプリンターを活用した造形支援や

製品開発の実績を蓄積して、より良い支援を目指して

いる。また、デザインを活用した造形支援においては、

製品化・商品化につながる技術指導や共同開発を行っ

ている。

出力方式 UV硬化型インクジェット造形方式

積層ピッチ HD モード 25 µm,UHD モード 16

µm,XHDモード 13 µm,

造形範囲 518 ×381 × 295 mm

材料 アクリル系樹脂

・VisiJet CR-WT -白(ABSライク)

・VisiJet CE-NT –ナチュラル

(エラストマー)

・VisiJet CE-BK –黒(エラストマー)

・VisiJet CR-CL -透明(ポリカーボ

ネートライク)

サポート

材料

VisiJet S500 Support Material

(ワックス)

スキャン範囲1列分に

収まっている場合

スキャン範囲 1 列分を少し

でも超えれば、2列分となる

収まっている場合

3AM-E04 平成29年度 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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図 1 Projet 5550X

表 1 主な仕様

名称 3D Systems Projet 5500X

方式 材料噴射式 (インクジェット式)

造形サイズ 518 x 381 x 295 mm

解像度 750 x 750 dpi x 13 μm(Z)

サポート 熱溶解性

その他 2種類材料混合

産技総研の3Dプリンター造形物の精度と強度の報告

(地独)神奈川県立産業技術総合研究所 事業化支援部 ○ 阿部 顕一、守谷 貴絵、佐々 知栄子、

大澤 寿、斉藤 光弘

企画情報連携部 羽田 孔明

1. はじめに

3D プリンターによる造形の主な目的が形状確認であ

るのは、3D プリンターによる造形物が、一般的な材料

とは異なる物性を有するためである。今後、3D プリン

ターの活用範囲を広げるためにも、神奈川県立産業技術

総合研究所に配備された 3Dプリンター造形物の機械的

物性を報告する。

2. 3Dプリンター

当研究所の 3D プリンターについて、造形物の精度と

強度について報告する。3Dプリンターの主な仕様を表1

に、外観を図1に表す。

3. 造形物の性能評価

3.1 評価方法

今回、機械製品に求められる性能のうち、寸法・形状

精度と引張強度について調査を行った。

寸法・形状評価では、一定間隔に丸穴を配列した試験

片を造形し、丸穴の位置、直径、真円度をそれぞれ測定

し、比較検討する。

引張強度では、JIS K 7161-2に準拠した引張試験片を

造形し、引張試験することで、弾性率、限界応力を測定

し、比較検討する。

3.2 試験片の造形

造形に当たっては、3D プリンターによる造形物は、

物性に方向性を有することが知られているが、方向性に

よる影響を評価するため、図2のように 6方向に配列し

て造形した。積層断面数は、A > B > Cとなる。A’、B’、

C’は水平面において90°回転したものである。

4. 試験結果

4.1 寸法・形状精度

三次元測定機を用いて、寸法及び形状を評価した。

寸法精度を評価するために、各穴位置を設計値と比較

した。各穴位置は、設計値と比較して、B、C 姿勢のよ

うに水平方向に配置した場合は、150 mm で約 0.2 ~

0.6 mm、距離に比例して縮小していた。ただしA姿勢

の場合、ほぼ設計値~ 0.2 ㎜の伸びが見られた。

次に、形状精度の評価のため、各穴の真円度を評価し

た。C姿勢のように、穴を水平に配置した場合、ほぼ真

円の結果が得られた。しかし、A、B 姿勢のように、縦

方向に配置すると、縦直径に比べ横直径が短い、縦楕円

になる結果が得られた。

4.2 引張強度

材料試験機を用いて、各試料に引張試験を実施した。

図 3 に姿勢の違いによる引張強さの一部結果を示す。

結果から、3Dプリンター造形物特有の方向性が現れた。

また、引張弾性率はA姿勢が約 1.9 GPaに対し、B、C

姿勢が約2.1 GPa。引張強さはA姿勢が約15 MPaに対

し、40 ~ 55 MPaとなった。

5. おわりに

3D プリンターが登場したばかりは、精度や物性の問

題から専ら形状検討用試作に使われていたが、将来は製

品製造に利用されることが想定されている。現状では、

機械部品として使用するには、精度・物性とも、通常の

加工機や一般材料に比べ見劣りするが、3D プリンター

だからこそできる利用分野を探索し活用できれば、もの

づくりの効果は高い。そのためにも、今後も各種の調査

や実験、造形事例を積み上げ、ものづくり支援技術の向

上を図っていく。

図 3 引張強さ 図 2 造形姿勢

3AM-E05 平成29年度 神奈川県ものづくり技術交流会 予稿

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