サイトカインのシグナル伝達 -...

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226 第24巻 第3号(2003) サイトカインのシグナル伝達 佐藤慎太郎*,審良静男* はじめに サイトカインは細胞間の情報伝達を担う可溶性 タンパク質の総称である.免疫反応,炎症反応だ けではなく,細胞増殖,分化,生殖といったほぼ すべての生命機能に何らかのサイトカインが関 わっている.サイトカインは標的細胞上に存在す る特異的受容体(レセプター)に結合し,細胞内 シグナル伝達経路を介して種々の遺伝子発現を制 御し,個々の生理活性を示す.サイトカイン遺伝 子が同定されてからわずか20年足らずの間にこれ らのレセプターとシグナル伝達分子,転写因子が 次々と同定され,それらの機能が明らかにされる のに伴い,サイトカインが細胞に作用して遺伝子 発現に至るまでの過程が明らかとなってきた.特 に,JAK l STAT経路は免疫系において最も重要 なサイトカインシグナル伝達経路である.ま た,IL-1とIL-18のレセプターは,細胞内に Tol111L-1R相同領域(TIRドメイン)を有してお り,リポポリサッカライド(LPS)などの菌体成 分の認識に関わるToll様レセプター(TLR)と共 通のシグナル伝達経路を利用しており,近年注目 されている.本稿では,サイトカインレセプター と,上記2つのシグナル伝達経路について概説す る. サイトカインレセプター サイトカインレセプターはその構造的特徴から 大きく7種類に分類される(図1)1・2).ほとんど のサイトカインレセプターの下流にはリン酸化酵 素(キナーゼ)が存在しており,その酵素活性が シグナルを伝達するのに重要であることが知られ *大阪大学微生物病研究所癌抑制遺伝子研究分野 ている.TGF一βやEGFのレセプターはその分子 の細胞内領域にキナーゼ領域を持ち,リガンド (ニサイトカイン)の結合によりレセプターが凝 集することでキナーゼ活性が上昇する.最も多く のサイトカインが利用する1型,ll型レセプター にはキナーゼ領域が存在しないが,Janus kinase (JAK)ファミリーと呼ばれるチロシンキナーゼ がレセプターの細胞内領域に恒常的に会合してお り,レセプターの凝集によってJAKが活性化し て下流にシグナルを伝えている. サイトカインの特徴としてよく挙げられるのが その機能の多様性である3).例えば,もともとB 細胞の活性化因子としてクローニングされたイン ターロイキン(IL)一6は,その後の研究から肝細 胞の急性期タンパク質産生,指口球からの血小板 産生,破骨細胞の活性化,神経細胞の分化誘導な ど,多彩な機能を有していることが明らかになっ ている.このように,1つのサイトカインが様々 な細胞に作用し,しかも異なった作用を発揮する のである.しかし,1つのサイトカインに対する レセプターが細胞ごとに異なるわけではない.し たがって,サイトカインの機能の多様性はサイト カインレセプターの多様性を反映したものではな く,各細胞ごとの細胞内シグナル伝達分子,また は転写因子の発現の違いを反映したものと考えら れている. 一方,複数のサイトカインが同一の作用を示す 重複性もまたサイトカインの大きな特徴の一つで ある3).例えば,肝細胞に作用し,急性期タンパ ク質を誘導するのは皿.一6だけではなく,leukemia inhibitory factor(LIF), oncostatin M(OSM)など によっても同様の現象が認められる.このサイト カインの機能重複性はサイトカインレセプターの クローニングによって次々と明確に説明されるよ Presented by Medical*Online

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226 循 環 制 御 第24巻 第3号(2003)

サイトカインのシグナル伝達

佐藤慎太郎*,審良静男*

はじめに

 サイトカインは細胞間の情報伝達を担う可溶性

タンパク質の総称である.免疫反応,炎症反応だ

けではなく,細胞増殖,分化,生殖といったほぼ

すべての生命機能に何らかのサイトカインが関

わっている.サイトカインは標的細胞上に存在す

る特異的受容体(レセプター)に結合し,細胞内

シグナル伝達経路を介して種々の遺伝子発現を制

御し,個々の生理活性を示す.サイトカイン遺伝

子が同定されてからわずか20年足らずの間にこれ

らのレセプターとシグナル伝達分子,転写因子が

次々と同定され,それらの機能が明らかにされる

のに伴い,サイトカインが細胞に作用して遺伝子

発現に至るまでの過程が明らかとなってきた.特

に,JAK l STAT経路は免疫系において最も重要

なサイトカインシグナル伝達経路である.ま

た,IL-1とIL-18のレセプターは,細胞内に

Tol111L-1R相同領域(TIRドメイン)を有してお

り,リポポリサッカライド(LPS)などの菌体成

分の認識に関わるToll様レセプター(TLR)と共

通のシグナル伝達経路を利用しており,近年注目

されている.本稿では,サイトカインレセプター

と,上記2つのシグナル伝達経路について概説す

る.

サイトカインレセプター

 サイトカインレセプターはその構造的特徴から

大きく7種類に分類される(図1)1・2).ほとんど

のサイトカインレセプターの下流にはリン酸化酵

素(キナーゼ)が存在しており,その酵素活性が

シグナルを伝達するのに重要であることが知られ

*大阪大学微生物病研究所癌抑制遺伝子研究分野

ている.TGF一βやEGFのレセプターはその分子

の細胞内領域にキナーゼ領域を持ち,リガンド

(ニサイトカイン)の結合によりレセプターが凝

集することでキナーゼ活性が上昇する.最も多く

のサイトカインが利用する1型,ll型レセプター

にはキナーゼ領域が存在しないが,Janus kinase

(JAK)ファミリーと呼ばれるチロシンキナーゼ

がレセプターの細胞内領域に恒常的に会合してお

り,レセプターの凝集によってJAKが活性化し

て下流にシグナルを伝えている.

 サイトカインの特徴としてよく挙げられるのが

その機能の多様性である3).例えば,もともとB

細胞の活性化因子としてクローニングされたイン

ターロイキン(IL)一6は,その後の研究から肝細

胞の急性期タンパク質産生,指口球からの血小板

産生,破骨細胞の活性化,神経細胞の分化誘導な

ど,多彩な機能を有していることが明らかになっ

ている.このように,1つのサイトカインが様々

な細胞に作用し,しかも異なった作用を発揮する

のである.しかし,1つのサイトカインに対する

レセプターが細胞ごとに異なるわけではない.し

たがって,サイトカインの機能の多様性はサイト

カインレセプターの多様性を反映したものではな

く,各細胞ごとの細胞内シグナル伝達分子,また

は転写因子の発現の違いを反映したものと考えら

れている.

 一方,複数のサイトカインが同一の作用を示す

重複性もまたサイトカインの大きな特徴の一つで

ある3).例えば,肝細胞に作用し,急性期タンパ

ク質を誘導するのは皿.一6だけではなく,leukemia

inhibitory factor(LIF), oncostatin M(OSM)など

によっても同様の現象が認められる.このサイト

カインの機能重複性はサイトカインレセプターの

クローニングによって次々と明確に説明されるよ

Presented by Medical*Online

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サイトカインのシグナル伝達 227

IL-2・一7, IL-9, IL-F11,

IL-12, IL-t3,IL-15

など

Cys

WSXWS

FN

IFN一(x, P, y, TNF-ct, P, FasL TGF-P, BMP EGF, PDGF,

IL-10    など      など     FGFなど

Cys Cys

Kinase

1レ8など

_舞

IL-1, IL-18

9墨

1型サイトカインil型サイトカイン  TNF・Fas  セリン1スレオニンチロシンキナーゼ型 ケモカイン 免疫グロブリン

 レセプター   レセプター   レセプターキナーゼ型レセプター  レセプター   レセプタースーパーファミリー

図1 サイトカインレセプターファミリー

  サイトカインレセプターは構造的特徴から7種類に分類される.これらのレセプターに結合するサイトカインを上

   に示している.

   工型サイトカインレセプターは細胞外領域にフィブロネクチン様領域(FN)を持ち,またWSXWSというアミノ酸

  モチーフを有している.また,4つのシステイン残基(Cys)が規則正しく並ぶ構造も有している. ll型レセプター

   もFNとCysを持つが, Cysの並び方が異なる. TNF-Fasレセプターの細胞外領域はCysに富んでいる.レセプター

  の細胞内領域にキナーゼ領域(kinase)を有するものもあり,リン酸化するアミノ酸の種類により,セリン/スレオ

  ニンキナーゼ型とチロシンキナーゼ型が存在する.ケモカインレセプ週期は7回膜貫通型のGタンパク質結合型レ

  セプターである.IL-1ファミリーサイトカインのレセプターは免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーに属し,細

  一高はIg様領域に富んでいる,

うになった.すなわち,複数のサイトカインがレ

セプターを共有することが明らかになったのであ

る.例を挙げると,IL-6,LIF, OSMのレセプター

はどれもgp130と呼ばれるサブユニットを共有

している.また,いずれも好酸球の増殖を促進す

るIL-3, IL-5, GM-CSFのレセプターはβ鎖を共

有し,IL-2,皿!7, rL-15もγ鎖を共有している.

しかし,レセプターサブユニットを共有しないサ

イトカインにおいても機能の重複が認められる場

合がある。例えば,巨核球の前駆細胞は皿.一3,

TPOのどちらによっても増殖が誘導されるが,

これらはレセプターのサブユニットを共有してい

ない.そのかわり,これらのレセプターが始動す

るシグナルはよく似ている.つまり,サイトカイ

ンの機能重複性はシグナル伝達経路の共有によっ

ても説明されうるのである.

 このように,サイトカインの個々の機能を理解

するには,そのレセプターとシグナルの性質を理

解することが重要である.

JAK l STAT経路

1型,1[型レセプターのシグナル伝達経路は

JAK l STAT経路と呼ばれている4)5)。このシグナ

ル伝達経路は,非レセプター型チロシンキナーゼ

のJAKと,転写因子としての働きを有するsignal

transducers and activators of transcription (STAT)

で構成され,細胞膜(レセプター)から核(遺伝

子発現)までを直結した非常にシンプルな経路で

ある(図2).レセプターの凝集によって活性化

したJAKはレセプターの細胞内領域の特定のチ

ロシン残基をリン酸化する(図2b).このリン酸

化チロシン残基に,細胞内に存在するSTAT分

子がそのsrc-homology 2(SH2)ドメインを介し

てレセプターに会合し,JAKによってチロシン

リン酸化を受ける(図2c).チロシンリン酸化を

受けたSTATはレセプターから離れ,それぞれ

のリン酸化チロシン残基とSH2ドメイン同士で

会合し二量体を形成する.この二量体STATは

迅速に核内に移行し,転写因子として働いて遺伝

子発現を誘導する(図2d). JAK l STAT経路は

サイトカインシグナル伝達の機能を明確に説明で

きるものとして期待され,JAKとSTATファミ

リーのクローニングが精力的に行われた.現在ま

でにJAKファミリーは4種類(Jak1,2,3,

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228循環制御第24巻第3号(2003)

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麗〆核一R三〉   遣伝子発現

図2 JAK/STAT経路   (本文参照)

Tyk2)が, STATファミリーは7種類(STAT 1,

2,3,4,5a,5b,6)が報告されている(図3).

それぞれのJAK, STATファミリーのノックアウ

トマウスの表現系とそれらを用いた解析から,活

性化を誘導するサイトカインとレセプターが同定

され,個々のサイトカインの機能におけるJAK,

STATファミリーの重要性が明らかになってきた6・7).

JAK 1 STAT経路のネガティブフィードバック

機構

 サイトカインのJAK!STATによる正のシグナ

ルを負に制御する分子群も同定されてきている.

cytokine inducible S:H2-protein(CIS)は当初サイ

トカインによって共通に転写誘導される応答遺伝

子としてクローニングされた分子で,その後

STAT5によって転写誘導されることが明らかに

なった8).誘導されたCISはIL-2やIL-3などの

レセプターに会合し,STAT5の活性化を阻害す

る.すなわち,CISはSTAT5のネガティブフィー

ドバックを調節していると考えられる.CISの発

見から2年後の1997年,構造的にCISに類似し

た分子のSupPressors of cytokine signaling(SOCS)一1

が3つのグループから報告された9~11).SOCS-1

はJAKファミリーに直接会合してキナーゼ活性

を抑制し,インターフェロンーγ(IFN一γ)のシ

グナルを負に調節していることが明らかにされて

いる.SOCS-1はIFN一γによって強く誘導される

ため,SOCS-1はIFN一γのネガティブフィード

バック調節因子である.現在までのところ,

CISI SOCSファミリーに属する分子として8種類

(CIS, SOCS-1~7)が報告されている12).

IL-1 Rを介するシグナル伝達

 他のサイトカインと同様に,1レ1の機能も多

岐にわたるが,とりわけ細菌感染に伴いマクロ

ファージから産生されると血管内皮細胞やリンパ

球を活性化したり,また発熱や急性期タンパク質

を誘導するなど,生体防御において重要な役割を

果たしている13).H11刺激による標的遺伝子の

発現誘導には,2種類の異なるファミリーの転写

因子であるNF一κBとAP-1が深く関与しており,

これらの分子の活性化には前述したJAK l STAT

経路とは異なる2種類のキナーゼカスケードが中

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・TA’rs m===]國=土止工正=コ

サイトカインのシグナル伝達 229

 リガンド

0

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m一[======コ851

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                     鰭1 848

STAT6 [===

IFN・馬β,γ

IFN-eq P

IL6サイトカインファミリーEGF, GのCSF,0レ29響レ10

1t“2

曇L-2,匡レ72鳳,噂重5,肇L●3,

IL・5, G梱・CSF,プロラクチン,

エリスロポエチン

IL-4, eL-13

図3 STATファミリーの構造とそれぞれを活性化するリガンド

STATファミリーは約100 kDa前後のタンパク質で,ほぼ中央部にDNA結合領域(DNA), C末端にSH2ドメイン,

STATの活性化に必須のチロシン残基(Y),およびMAPキナーゼに認識されるセリン残基(S)が存在する.

STAT3とSTAT5は様々なサイトカインで活性化されるが,その他は比較的特異的なサイトカインで活性化される.

               IL-I R/AcP TLRs

                   lll) E.1

                   継

                  講匙ご

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         曹

    IKKs 〈egSille

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轟K為、

mA:P::K)ti図4 1L-1 Rを介するシグナル伝達経路

   (本文参照)

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230 循環制御第24巻第3号(2003)

心的な役割を担っている(図4).未刺激時,

NF-rc Bは抑制因子である1κBと結合しており,

通常細胞質内に存在している14).1κBは刺激依

存的にリン酸化を受け,それに続くユビキチン・

プロテアソームの機構により分解される.その結

果,1κBから解放されたNF一κBは核内に移行

し,遺伝子発現を誘導する.1995年以来1κBを

リン酸化するキナーゼの同定が試みられ,1997

年に1κBを特異的にリン酸化するキナーゼ,

IKKα,IKKβが同定された14). IKKα,βは互

いに高い相同性を有し,700~900kDaの大きな

複合体(IKK複合体)の中に存在している.

IKK複合体の中にはIKKの活性化分子であるNEMO I IKKγも含まれている15・ 16). IKK分子そ

れぞれのノックアウトマウスを用いた解析から,

いずれもNF一κBの活性化に必要であることがわ

かっているが,IL-1やLPSなどの炎症性刺激に

よるNF一κBの活性化には特にIKKβが必須であ

ることが明らかになっている17、22).

 M-1はまずIL-IRに結合し,その複合体がシグ

ナル伝達能を有するIL-1R-AcPと会合することで

シグナルを惹起する.IL-1R, IL-1R-AcPの細胞

内領域には酵素活性を有する機能的ドメインが存

在しない.これらの複合体にはアダプター分子で

あるMyD88がTIRドメインを介して刺激依存的

にレセプターのTIRドメインに会合することが

明らかにされている23・24).MyD88は分子内にも

う一つのタンパク質一タンパク質会合ドメインで

あるDeathドメインを有している.このDeathド

メインを介して,MyD88はセリン・スレオニン

キナーゼのIRAK(IL-1R Associated Kinase)と会

合し,そこでIRAKは活性化される. IRAKはこ

れまでのところ4種類(IRAK-1,一2,一M,一4)

が同定されているが,NF一κBの活性化に至る経

路においてはIRAK-1と,その上流に位置し

IRAK-1キナーゼとして働いていることが最近報

告されたIRAK-4が重要であると考えられてい

る25~27).活性化したIRAK-1はレセプター・一一一/

MyD88複合体から離れ,下流のシグナル伝達分

子であるTRAF6と会合する.ついで, TRAF6は

TABI I TAB2/TAKI複合体と会合し,これによ

りTAKIが活性化される28・29)。活性化したTAK1

はNrKのリン酸化を誘導し,リン酸化され

たNIKはIKKカスケードを介して最終的に

NF一κBを活性化する.活性化したTAK1は同時

にMAPKKファミリーもリン酸化することによ

りMAPKファミリーであるJNK, P38の活性化と

それに続くAP-1の活性化も誘導する.

 IL-18RはHt-IRファミリーに属しており,そ

の構造やシグナル伝達経路は1し1のそれと同様

である.

 近年,皿rlのシグナル伝達に関与する分子の

ノックアウトマウスが次々と作製・解析され,

MyD88, IRAK, TRAF6の経路は生体内において

もNF一κBの活性化に必要であることが示されて

いる.

おわりに

 JAK l STAT経路もIL-1Rを介する経路もショ

ウジョウバエからヒトに至るまでよく保存されて

おり,その生体内での重要性はこのことからも容

易に想像ができる.レセプター,シグナル伝達分

子のクローニングが進み,機能の多様性と重複性

をもつサイトカインの複雑な働きが理解されるよ

うになってきた.また,種々のノックアウトマウ

スを用いた解析から,それぞれの分子が生体内の

どこでどのように働いているかも解明されつつあ

る.サイトカインの作用機構が明らかになってき

た今,今後はサイトカインシグナル伝達系の臨床

的な応用が実現されることが期待される.

文 献

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サイトカイ.ンのシグナル伝達 231

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